2019年から現在におけるベンチャーキャピタル(VC)ファンドの運用成績を見ていくと
・前年比10.5%のTVPI(投資倍率)の増加を記録
・1.478倍(2018年第4四半期)→1.632倍(2019年第4四半期)
・TVPIスプレッド:1.932倍(2019年第3四半期)→1.721倍(2020年第1四半期)に減少
参考文献:Venture capital saw record year in 2019, says efront
となっており、過去最高のTVPI(投資倍率)を記録する中、リスク(TVPIスプレッド)が減少している傾向にあります。
2020年第1四半期における流動化(イグジット)までの平均期間は約3.5年となっていますが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で今後は長期化すると予想されます。
TVPI(投資倍率)が1.6倍を超えたのは歴史的にも初めてのことであり、米国市場がTVPI(投資倍率)の増加を牽引する一方、西ヨーロッパ市場の運用成績は停滞傾向にありました。
2020年第1四半期においても過去10年間の平均を上回るTVPI(投資倍率)を記録していますが、e-frontは、2019年第4四半期がピークである可能性を示唆しており、2020年第2四半期以降は新型コロナウィルス感染拡大の影響を反映した運用成績になると考えられます。
ヨーロッパでは、リモートワークなどへの対応を企業が余儀なくされたにも関わらず「食品配達、モビリティ、ソフトウェア、バイオテクノロジー」といったセクターへ多くの投資が集まっており、2020年第2四半期においてもベンチャーキャピタル(VC)の取引額は史上3番目の数値を記録。
サイバーセキュリティやビデオ会議、ヘルスケアなどへの重要の高まりとともに英国とアイルランド、フランスなどでスタートアップ企業による資金調達が活性化し、今後は製薬やバイオテクノロジーなどのセクターへのスペシャリストファンドの増加が期待されています。
新型コロナウィルスによってヨーロッパにおいても大きな被害が出ていることからVCのエコシステムへの悪影響を懸念する声も少なくありませんでしたが、その影響を考慮した上で、ビジネスの機会を提供するセクターに資金が投じられており、今後もその傾向は続く可能性があると考えられます。
近年稀に見る強気相場だった2019年をピークとして新たな産業セクターへの需要が高まりつつある現在において、経営の継続を図る上でもVCからの投資を必要としている企業は少なくありません。
金融危機が訪れた2008〜2009年以来の世界的な景気の悪化は実体経済から始まり、従来の産業構造を破壊すると同時にデジタル化の潮流を生み出しました。
今後は、企業の倒産など経済の停滞を余儀なくされる一方で、デジタル化による新たな産業の創出やより効率的なビジネスモデルの確立に大きな注目が集まっており、企業の事業継続や中長期的な経営戦略の実行を図る上でも、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドの社会的役割は今後ますます重要になることでしょう。
・参考文献
Venture capital saw record year in 2019, says efront
Venture Capital Enjoys Record Performance In 2019
European VC deal value and fundraising activity approach record highs in H1
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