ベンチャーキャピタル(VC)投資トレンド予想2021|イグジット戦略やCVCファンドについて

コロナウイルスの感染拡大の影響によって加速されたデジタル化と不確実性の高まりによってこれまで事例のない新たなビジネスモデルへの投資がベンチャーキャピタル業界でも行われています。

 

リモートワークや感染症対策の普及によって教育+テクノロジー(エドテック)、ヘルスケア領域には多額の資金が投じられており、既存産業においてもコロナウイルスの感染拡大といった新たな変数を考慮した事業・財務計画の策定/推進を各企業が進めています。

 

また、データの利活用によってビジネスモデルの最適化を図る取り組みと同時にサイバーセキュリティの重要性も高まりを見せており、プライバシーテック市場にも大きな注目が集まりそうです。

 

2021年のIPO市場では引き続きバイオテクノロジーの大型調達が見込まれ、2010年代の「既存産業のオンラインビジネス化」の普及によって成長を遂げた企業がデジタル化の流れの中で、更なる事業規模の拡大を目指しているケースが確認されています。

 

本稿ではPitchbookが発表した「2021年8つのベンチャーキャピタルトレンド予測」について解説し、2020年代前半のIPO市場の将来性を検証していきます。

 

2021年 8つのベンチャーキャピタルトレンド予測

 1 バイオ・医薬品分野への積極的な投資

 

バイオテクノロジーや創薬分野への投資を行うベンチャーキャピタル(VC)への投資は2年連続で200億ドルを超える可能性があり、2021年に記録的なレベルに達する可能性があると示唆されています。

 

コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、バイオ医薬品分野への参入を検討している投資家が増加しており、市場流動性が高まる中で、ハイリスクハイリターンな投資対象としてバイオ・医薬品分野は高い関心を集めることでしょう。

 

2 老舗と新興VCの差が拡大

 

不確実性の高い市場環境においてこれまで安定した運用成績を収めてきたVCが有する知見と経験は何事にも変え難い信頼を投資家に提供します。

 

Pitchbookは、信頼を確立しているVC(Established managers)は、2012年以来初めてVC市場における資金調達全体の割合を75%以上に増加させると予想この結果、Established managersは継続したファンド設立が可能となる一方、新興VCは資金を調達するのが困難とされ、その格差がさらに拡大するともPitchbookは予想しています。

 

3 SPAC IPOの数は減少傾向に

 

米国では年始から多岐に渡る分野でSPAC(特別買収目的会社)がIPOを実施していますが、Pitchbookは「現在の環境でのSPACの確立は、強気相場での投資機会を求める投資アペタイトによって推進された可能性があります」 としています。

 

量的緩和や投資アプリ「Robinhood(ロビンフッド)」の普及による個人投資家層の拡大などを要因に2020年6月以降に大きな成長を遂げた米国投資市場においてSPAC(特別買収目的会社)の需要は高まりを見せていますが、強気相場終焉とともに市場における再評価がなされることでしょう。

 

2020年にIPOを実施したSPAC(特別買収目的会社)の30%未満が買収を完了するともPitchbookは予想しており、有望な未公開株式企業との合併が期限内に行えなかったSPAC(特別買収目的会社)についても今後は注視が必要と考えられます。

 

4 直接上場を通じたイグジットの増加

 

2021年にはSPAC上場ではなく直接上場を通じて10億ドル以上のイグジットがVCにもたらされるとPitchbookは予想しています。

 

NY証券取引所においては直接上場による資金調達が可能になったことから大規模なテック系スタートアップ企業などは直接上場によるメリットを享受しやすくなります。

 

5 レイターステージVC投資の活性化

 

レイターステージVC投資は2020年に過去最大の規模に拡大し、スタートアップ企業への多額の投資が継続していることを考慮すると、2021年も引き続き投資規模は拡大するとPitchbookは予想しています。

 

6 脱・西海岸

 

Pitchbookは、リモートワークの普及によって企業や従業員が高額な賃料を支払い続けてシリコンバレーに居続ける理由が少なくなったことから米国の西海岸におけるVC投資数は全体の20パーセントを下回ることになると予想しています。

 

7 非伝統的なVC

 

伝統的なVC以外の「非伝統的なVC(Nontraditional VC)」が市場を牽引しているとPitchbookは指摘しており、非伝統的な投資家戦略をもとしたVC投資が定着しているとしています。

 

非伝統的なVCは、企業、LP、PE、ソブリンウェルスファンド、ヘッジファンド、投資銀行などが挙げられ、将来の買収に向けた戦略的な投資を実施できるといった利点を有しているのが特徴です。

 

ソフトバンクグループが投資運用会社を設立し、多額の投資によって米国スタートアップ投資市場を大きく変化させたように非伝統的なVCは今後も市場での存在感を高めていくことでしょう。

 

8 ベンチャー債務 4年連続で250億ドルを発行

 

Pitchbookは、スタートアップ企業に対する融資は4年連続で250億ドル以上になると予想され、2,600件以上の取引件数に到達するともしています。

 

まとめ

ベンチャーキャピタル市場への投資は2021年も成長が続くと同時にイグジット手段の多角化によって市場流動性の向上が期待されます。

 

また、非伝統的なVCの参画によって投資市場はより多様かつ混沌とした環境となることでしょう。米国では各州ごとに有望なベンチャーキャピタルが存在しており、経営支援のみならず地域に根ざした官民学の連携などを実現することでスタートアップ市場を活性化させる取り組みも進んでいます。

 

IPO市場はSPACや直接上場によって新たなフェーズに到達することが予想され、上場までの期間が短期化されることで、シード・アーリーステージのスタートアップ企業への投資の重要性が増すことでしょう。