STO解説

INX|セキュリティトークン取引所が1億2950万ドル規模のIPO計画を発表

アメリカでは私募市場における新たな資金調達方法として多くの企業がSTOの採用を検討しています。

 

その多くはRegD506(c)を適用して行われますが、BlockstackはRegA+の規制のもとで2,800万ドル(約30億円)規模のSTOを実施しており、最大調達額が設けられているものの一般投資家も参加できることから大きな注目を集めました。

 

(※ちなみにこのBlockstackのSTOはICOと解釈されているケースがありますが、RegA+を適用している為当ブログではSTOとしています。)

 

アメリカでは多くの企業がSECへの登録が免除になる形でSTOを実施していますが、セキュリティトークン取引所「INX」ではIPOによる1億2950万ドル(約138億120万円)規模の資金調達を計画していることが明らかになりました。

 

これはブロックチェーン業界にとっても珍しいケースではありますが、過去には、マイニング企業アルゴ・マイニングがロンドン証券取引所「LSE」でのIPOにおいて3250万ドル(約34億6310万円)の資金調達に成功しています。

 

これまではSECの厳格な審査を避ける為に私募による小規模な資金調達が目立ったアメリカSTO市場ですが、IPOによる1億2950万ドル(約138億120万円)にも及ぶ資金調達計画の発表によって、さらなる市場の発展が期待されます。

 

今回は「INX」のIPOの詳細をはじめとして、アメリカにおける資金調達方法を紹介していきます。

 

SEC 登録義務免除要件「Regulation」について

アメリカにおける有価証券の募集・販売はSEC(アメリカ証券取引委員会)にて登録義務が課されています。

 

このSECへの登録は費用が高く、多くの時間が必要とされているため、シード期における資金調達を目指す企業にとってはハードルが高くなっています。

 

しかし、SECへの登録義務の免除要件である「Regulation」を満たすことができれば登録は不要となります。

 

そのためアメリカでSTOを実施するにあたっては、下記の「Regulation」が用いられています。

 

 

Regulation D

 

Regulation Dには

Rule 504
Rule 506(b)
・Rule 506(c)

の3タイプがあります。

 

いずれも証券発行者はSECへの登録届出の必要がなく、私募による資金調達が可能となっています。

 

現在のSTO市場では506(c)が1番多く用いられており、

 

・適格投資家限定
・ロックアップ期間(6〜12ヶ月)あり

 

といったデメリットがあるものの、不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)が可能であることから多くのプロダクトがSTOを行う際に用いています。

 

下記ではそれぞれの特徴についてまとめています。

 

Rule 504

 

・適格投資家限定
・不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)不可
・ロックアップ期間あり
・最大調達額:500万ドル/12ヶ月

 

Rule 506(b)

 

・適格投資家 非適格投資家(最大35人)
・不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)不可
・ロックアップ期間(6〜12ヶ月)あり
・最大調達額:上限なし
・非適格投資家への情報提供が必須

 

Rule 506(c)

 

・適格投資家
・不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
・ロックアップ期間(6〜12ヶ月)あり
・最大調達額:上限なし
・適格投資家であることを証明する手続きが必須

 

Regulation Dを用いたSTOを実施する際には、SECへ「Form D」と呼ばれる書類の提出が必須となります。

 

この「Form D」の提出は証券発行手続きに詳しい弁護士に委託する場合が多いとされています。

 

また、Regulation Dを用いたSTOの場合は「ロックアップ期間」が設けられているためにSTOの二次流通市場は流動性が低いことで知られています。

 

セキュリティトークン取引所ではロックアップ期間を経てから売買が開始されるため、tZEROやOpenFinance Networkでは今年の夏からようやく取り扱いが本格化してきています。

 

Regulation S

 

・アメリカ国外の適格投資家
・不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
・ロックアップ期間あり
・最大調達額:上限なし

 

RegSは調達の限度額がなく、ロックアップ期間も設けられていないといったメリットがあり、アメリカ以外の国に住む投資家にむけたSTOを行う際に用いられます。

 

Rule 506(c) との併用も可能となっていますが、アメリカにおける州法の違いから併用の取り扱いは難しいとされています。

 

Regulation A+

 

Regulation A+にも

・Tier1

・Tier2

の2タイプがあり、最大調達額に違いがあります。

 

Tier1

 

・適格投資家 非適格投資家
・不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
・ロックアップ期間なし
・最大調達額:2,000万ドル/12ヶ月
・SECへの目論見書提出が必要
・各州の証券監督機関、委員会の審査対象
・年次ごとの報告義務
・監査済みの財務諸表の提出義務
・二次流通市場における取引には州法が適用

 

Tier2

 

・適格投資家 非適格投資家
・不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
・ロックアップ期間なし
・最大調達額:5,000万ドル/12ヶ月
・SECへの目論見書提出が必要
・SECの審査対象
・各州の証券監督期間、委員会からの認定は不要
・年次、半年ごとの報告義務
・監査済みの財務諸表の提出義務
・二次流通市場における取引には州法が適用

 

アメリカ 暗号資産(仮想通貨)規制動向

 

アメリカではステーブルコインLibraについてアメリカ議会で公聴会が開催され、ビックテックの金融業界の進出について反対する法案が公開されるなど、規制強化を求める声が相次ぎました。

 

暗号資産業界は法整備が追いつかなかったことからICOプロダクトによる価格操作などの不正が横行し、多くの投資家が資産を失うといった事態に発展しました。

 

ICOへの規制は各国でその取り組みが行われていますが、今度はビックテックによる金融サービスとして暗号資産を活用する取り組みが行われるとのことで、既存の金融機関の保護にむけた取り組みが必要不可欠であると言えます。

 

アメリカでは約50億円の不正流出事件に発展した2016年6月の「The DAO事件」によって、SECはトークンを証券法のもとで規制することを決定しました。

 

2017年7月にはICOによるトークン発行を証券法上の「有価証券」に該当するとして規制を強化しましたが、ICOの乱立によってスキャムプロダクトが乱立するといった事態となり、多くの国々で社会問題にもなりました。

 

アメリカでも世界初の分散型銀行として話題を集めたアライズバンクがICOによって6億ドル(約680億円)の資金調達に成功しましたが、虚偽情報による詐欺と証券法違反の疑いからSECによる訴訟を経て、資産凍結の裁判所命令が出されました。

 

このアライズバンク事件は2018年11月にCEOであったジャレッド・ライスがFBIに逮捕されるといった事態に発展し、同年12月にはジャレッドCEOとスタンレーフォードCOOに対して270万ドル(約270億円)の支払いがアメリカ合衆国裁判所によってくだされました。

 

そのような中でアメリカでは下記のような規制への取り組みが行われています。

 

・SEC(証券取引委員会)がICOの有価証券への該当を定めた新たな枠組みを発表
・FINRA(米金融取引業自主規制機構)が暗号資産関連事業者に対して事前連絡の義務化
・「Token Taxonomy Act(トークン分類法)」

 

SEC ICOの有価証券への該当基準を明確化

 

SECは「Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets」を今年の4月に発表しています。

 

これをもとにしてSECはアメリカで初めてのICO承認を「Blockstack」に対して行っており、法規制に準拠したICOによる資金調達が今後は活性化すると期待されています。

 

ICOが有価証券に該当しない基準を「Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets」では明確化しており、ICOによる資金調達とイノベーションの促進にむけてSECは取り組みを進めています。

 

「トークン分類法(Token Taxonomy Act)」について

 

「トークン分類法(Token Taxonomy Act)」は2018年12月に発表され、暗号資産を「デジタルトークン」という新たなアセットクラスとして分類することを定めた法案です。

 

暗号資産をアメリカ証券法の「有価証券」の定義から排除することで、これまで曖昧だった判断基準に明確な定義を設けるとしています。

 

このことでブロックチェーン技術を活用した資金調達を促進させ、さらなるイノベーションの活性化を目指すと考えられます。

 

現在のところブロックチェーン企業の多くは、スイスの「クリプト・バレー」やマルタ共和国、リトアニアに集中しています。

 

アジアではシンガポールや中国がブロックチェーンによる経済活性化を目指し、各企業が取り組みを世界に先駆けて行なっているなど、アメリカとしては他国との競争にむけた取り組みが必要不可欠といえます。

 

そのような中で、「トークン分類法」が持つ意味は大きいと言えるでしょう。

 

2019年5月には「トークン分類法」によって暗号資産による売買益(キャピタルゲイン)の非課税基準が「600ドル(6万6000円)」に設定されるなど、暗号資産業界の活性化にむけて取り組みが行われています。

 

日本では暗号資産による売買益は少額取引においても雑所得になり、最大45%の所得税が課税されています。

 

FINRA 暗号資産取引所開設 事前連絡を義務化

 

FINRA(米金融取引業自主規制機構)はSEC認定の自主規制団体であり、今年7月には暗号資産関連の事業を行う前には事前報告を義務付ける規制が発表されています。

 

今後は暗号資産取引所の設立のみならず、カストディサービスや暗号資産ファンドの投資顧問サービスについても事前連絡と協議が必要となります。

 

FINRAの承認待ちとなっている企業は40社以上に及ぶとされており、このことによってアメリカよりも他国でブロックチェーン事業を行う企業の増加といったブロックチェーン企業の国外流出といった問題も指摘されています。

 

FINRAによる規制はアライズバンクのように大規模な詐欺を行う企業の撲滅には一定の効果を発揮していますが、法規制に準拠して新たなビジネスモデルを構築しようとする企業の発展の妨げになっているとも言えます。

 

そのためSECの「Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets」や「トークン分類法」による「有価証券」の明確な定義付けはアメリカの暗号資産業界の発展に大きな意味を持つと言えるでしょう。

 

参考文献

 

米国の証券取引委員会SECの規定の一つ。簡略化した登録を認めている。「証券の少額発行」に関する規定を定義したレギュレーションの一つ。

Stonewalled by FINRA, Up to 40 Crypto Securities Wait in Limbo for Launch

FINRA Encourages Firms to Notify FINRA if They Engage in Activities Related to Digital Assets

なぜセキュリティトークンがブームとなっているのか?アメリカの規制と証券市場|セキュリティトークン特集

アメリカを参考に日本のセキュリティトークンの規制を考える~token DPAとDS protocolの事例を参考に~

米国におけるSTO規制の現状:登録届け出と免除規定について解説

アメリカよりも大きな注目を集めるヨーロッパのSTO:その理由を解説

アメリカの投資家から資金調達をするために必要な知識:Regulation D(レギュレーションD)

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