tZERO|米国プライベートエクイティ投資市場にセキュリティトークンは必要?

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「二極化」は、資本主義の構造的欠陥と考えられてきましたが、混乱を極める現代社会の中で、どのようにセキュリティトークンが活用されていくのか、プライベートエクイティ投資市場の動向を踏まえて、今回は考察していきます。

 

セキュリティトークンを発行する企業のビジネスモデルや事業の新規性、成長性に関するデューデリジェンスは一般投資家には難しく、機関投資家が投資し、1年間のロックアップ(譲渡制限)期間を経て、セカンダリーマーケットで取引といった一連のプロセスが市場の健全性を保つためにも望ましいとされてきました。

 

機関投資家の多くは企業のROICなど資本効率性指標を参考に投資先を検討し、プライベートエクイティ投資においては新規性や成長性を加味した上で、投資判断を行います。

 

プライベートエクイティ投資は株式市場に流通している上場企業の株式に投資するよりもリスクが高いことを踏まえ、セキュリティトークンの発行には1年間のロックアップ(譲渡制限)がRule144に基づき米国では課されており、各国においても新たな投資商品としてどのような法律のもとで取り扱いを行うのか多くの議論が交わされています。

 

投資家保護と市場の健全性を目的として規制当局はセキュリティトークンに関する法整備を目指していますが、近年ではIPOによって大きなリターンを見込めるプライベートエクイティ投資市場が拡大し、「IPOゴール・オーバーバリュエーション」といった現象も確認されています。

 

また、上場市場においてもGAFAM銘柄に投資が集中し、その他の上場企業の格差が生まれており、資本主義の構造的欠陥とどのように向き合うべきなのか、実体経済への回帰について多くの議論が必要であると言えます。

 

 

2020年現在においてグローバルな展開を見せているセキュリティトークン企業の多くは、発行・管理・取引におけるコンプライアンスを重視し、より効率的な証券市場の実現に向けて規制当局との協議を継続して行っています。

 

投資家の多くは成長が見込まれる新興産業への投資や割安な株式への投資によって、中長期的な運用を行う一方で、2009年から現在にかけては新たな投資商品として暗号資産にも多くの資金が流れ込みました。

 

アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)は「The Crypto Price-Innovation Cycle」の記事の中で、2011年、2013年、2017年の3度のピークには一貫したサイクルが存在したことを明らかにしており、2020年5月現在においてはこれまでリスク資産とされてきたビットコインが、金融緩和・財政赤字を見越して、逃避資産として認知されてつつあります。

 

ビットコインは、株式市場との相関性が低いことから近年ではリスク資産の1つとして投資ポートフォリオへ組み込まれるなど、新たな投資商品としてその価値が再評価されつつあります。

 

また、これまで非流動的だった実物資産がトークン化されることで、2024年までに投資家のポートフォリオは大きく変化することを示唆する声もあがっています。

 

現在、多くの企業が資本効率の向上を目指し、日本でも2014年に発表された「伊藤レポート」をきっかけにROEを意識した経営の実践に取り組む企業も増えてきている一方で、これまでの株式や社債とは異なるアセットクラスの登場は今後の証券市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

 

tZEROについて

 

tZEROは、「Revolutionizing Capital Markets」を掲げ、証券市場がブロックチェーン技術を使用してセキュリティトークンを発行および取引することを目指しています。

 

トークンの概念は既存の市場メカニズムの中では異端であり、投機によって多くの投資家が損害を被った歴史があります。

 

セキュリティトークンは各国の法規制に準拠した有価証券をトークン化したものであり、より健全な形で証券市場にブロックチェーン技術を導入することができるとされています。

 

すでに金融機関でもブロックチェーン技術の採用が行われており、分散型金融市場インフラ(dFMI)の開発を手がける英国のFnality(エフナリティ)では

 

・各国の法定通貨とペッグしたステーブルコインの発行
・既存の銀行間で行われているコルレスバンク決済の維持
・中央銀行当座預金の利用

 

といった中央銀行・金融機関システムとの連携を前提とし、ピアツーピアのトークン市場の実現をめざしています。

 

証券のみならず資本市場全体の非流動資産の流動・効率性を高める上でもセキュリティトークンは非常に有用性の高い新たな概念であり、現在はその技術的な安全性と実用性を検証するフェーズにあります。

 

これまで各国の企業がブロックチェーン技術を活用して発行プラットフォームや取引所システム、プロトコルを開発し、コンプライアンス業務の自動化や投資家管理サービスを提供できることは証明されています。

 

しかし、市場に投資家を引き寄せ、セキュリティトークンが投資ポートフォリオに組み込まれ、従来の証券市場のように活発な取引が行われるためには新しい市場プロセスの策定と安全で堅牢な取引システムの構築が必要不可欠です。

 

tZEROは、新規性の高いセキュリティトークン市場の先駆的な企業として知られ、2020年5月現在、$147M(1億4700万ドル)の資金調達に成功しています。

 

・調達金額 リード投資家

 

2020年2月5日 Debt Financing $100M Neuberger Berman Group

2019年5月24日 Series A $20M New Enterprise Associates (NEA)

2018年11月17日 Venture Round $16M Eniac Ventures

2017年10月23日 Seed Round $8.5M Eniac Ventures

2016年9月20日 Seed Round $2.5M Eniac Ventures

 

参照:https://www.crunchbase.com/organization/zero-financial#section-investors

 

IPO前の企業への投資市場は60億ドル以上の取引量を記録する一方、米国においてはSharesPostとForge Globalの統合が発表されるなど、新たな展開を迎えています。

 

 

NASDAQ Private Market、EquityZen、Cartaといったプライベートエクイティ取引プラットフォーム間の競争は激化する一方で、ブロックチェーン技術を導入したATSであるtZERO・OpenFinanceNetworkはどのようにしてその地位を確立するのでしょうか?

 

米国プライベートエクイティ投資市場にセキュリティトークンは必要?

 

セキュリティトークン市場においては確固たる地位を築いているtZEROですが、ブロックチェーン技術を導入した取引所システムは他の取引所が不当な競争を強いられるとしてNASDAQからはボストンセキュリティートークン取引所(BSTX)の設立に反対の声もあがっています。

 

※ ボストンセキュリティートークン取引所:ATSではないSECに正式に規制された取引所として承認を待っています。tZEROの合弁会社なので、どのような棲み分けがなされるのか将来的な競合になるのか気になるところです。

 

詳しくはこちら(ボストンセキュリティートークン取引所(BSTX)|既存の証券取引所とブロックチェーンの融合に向けて

 

Fnality(エフナリティ)と同様に既存金融との共存を図ることが、ブロックチェーン企業には重要であると考えられますが、暗号通貨、セキュリティトークンおよび株式取引プラットフォームとして規制当局からの承認を待っているアプリ「tZERO Crypto」やセキュリティトークン取引所「tZERO ATS」の取扱銘柄の増加および証券会社(ブローカーディーラー)との連携には大きな期待が寄せられています。

 

米国においては「tZERO」などセキュリティトークン取引所での取引高が増加しない背景に1年間の譲渡制限があるとされてきましたが、NASDAQ Private Market、EquityZen、Cartaといったプライベートエクイティ取引プラットフォームでの取引が行われている現状を考慮すると、米国資本市場における「tZERO」の将来性は非常に明るいのではとも推測されます。

 

これまでの証券市場の常識を覆す

 

・FRBによる無制限の量的緩和
・GAFAMによる富の独占
・上場市場の存在意義の見直し

 

といった事象が確認される現在においては、グローバルなプライベートエクイティ取引市場の必要性も高まるのではとも考えられます。

 

証券会社tZERO Markets設立や上場企業の増加など、「tZERO」の取り組みがプライベートエクイティ投資市場にどのような影響を及ぼすのか、非流動資産のトークン化が大きな鍵を握ると予想します。

 

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