Trusted Web(トラステッドウェブ)について|「制度や第三者機関による信頼の担保」から「技術によって分散化された信用の担保」へ

日本では企業活動をはじめとして様々な領域で、デジタル技術を活用したコミュニケーションが普及しました。

 

今後は従来の社会システムへの巻き戻しとともに、生産性向上を目的としたリアルとデジタルの共立を図る取り組みが進むことが予想されますが、あらゆる厄災を事前に想定した新たな社会システムの構築が急務であると言えます。

 

現在、日本においてもデジタル庁の設立やマイナンバーカードの普及による行政のデジタル化の推進が図られていますが、組織内においては従来のシステムを維持することによる予算の確保など様々な課題が山積しており、デジタルインフラを整備することによってどれくらいのコストが削減されたかなど、目に見える形で物理的なビジネスモデルの弊害を提示し、組織に所属する個々人の「意識改革」を図ることが重要です。

 

「Trusted Web(トラステッドウェブ)」について

 

デジタル市場競争会議が今年の6月に発表した「デジタル市場競争に係る中期展望レポート概要」によると、デジタル社会の目指すべき方向性として下記の3つの事項が掲げられています。

 

1 多様な主体による競争

2 信頼(Trust)の基盤となる「データ・ガバナンス」

3 「Trust」をベースとしたデジタル市場の実現

 

「Trusted Web(トラステッドウェブ)」については、「データへのアクセスのコントロールを、それが本来帰属するべき個人、法人等が行い、データの活用から生じる価値をマネージできる仕組み」として定義されています。

 

パーソナルデータの利活用がブラックボックス化している従来の中央集権的なデータ・ガバナンスのままでは、監視社会やGAFAMなど一部のテック企業によるパーソナルデータ収集・悪用への懸念が生じており、デジタル社会の実現に向けてはどのように「Trust」を担保するかが重要です。

 

規制当局による是正勧告には限界があり、「データ・ガバナンス」を従来のネット構造にレイヤーとして組み込むことで「Trust」を担保し、一般市民の一人一人が安全なデータ流通によってデジタル化の恩恵を受けられる社会の実現を日本政府は目指しています。

 

そして、10月15日には「Trusted Web 推進協議会」が開催され、2021年3-7月にかけて予定される国際的な発表に向けて「アーキテクチャー/ロードマップ/アクションプラン」の策定スケジュールなどが明らかになり、タスクフォースにおける技術的な議論や国内外における情報発信などが検討されました。

 

参考資料についてはgithubで公開されており、「Trusted Web(トラステッドウェブ)」の構築に向け作成が予定されるホワイトペーパーの具体的な項目/内容がまとめられています。

 

取引記録の耐改ざん性/インセンティブとガバナンスの決定をトークンで実施するなどトレサビリティとガバナンスを構成する上で、ブロックチェーンの利活用が提示されており、「Trusted Web(トラステッドウェブ)」の技術要素の検討もなされています。

 

Trusted Web(トラステッドウェブ)の実現に向けて

 

「Trusted Web(トラステッドウェブ)」が構築されることによって、DXの推進やデジタル化がもたらす恩恵を享受できる社会の実現がなされ、一般市民がデジタル化に対する意識を変化させることにもつながります。

 

国が行政が積極的に「信頼性のある自由なデータ流通(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)」への取り組みを進め、技術の実装に向けたプリンシプル(原理、原則)を提示することも重要となり、その実現に向けては多くの一般市民がそのメリットを理解できる啓蒙活動が必要となると考えられます。

 

また、グローバルな分散型アーキテクチャーとの相互運用性や「Trust」を維持するインセンティブ設計など、「制度や第三者機関による信頼の担保」から「技術によって分散化された信用の担保」へと社会システムが移り変わろうとしている中で、様々な検討が今後も必要であると考えられます。

 

「Trusted Web 推進協議会」においては下記のような「デジタルID」の取り組み事例も紹介されており、「Trusted Web(トラステッドウェブ)」の実現に向けて民間企業による社会的機運の醸成も今後は重要になることでしょう。

 

・World Wide Web Consortium(W3C):SSI(自己主権型アイデンティティ)

・DIF(Decentralized Id Foundation)

・国連:ID2020

・Microsoft:ION

・カナダ:DIACC(Digital Identification and Authentication Council of Canada)

・UNiD:CollaboGate

bitFlyerbPassport

 

日本企業のDX推進に向けて

 

部分的なデジタル技術の活用によってコストを削減するのみならず、過去の成功体験に囚われない抜本的な組織変革が重要であるとアビームコンサルティングは示唆しており、従来の「習慣病」を認識し、改善していくことが日本企業のDXを推進するとしています。

 

近年では、小売業においてオンライン/オフラインデータを高速で分析し、店舗接客やネット通販の販売効率の向上を図るビジネスモデルの構築が行われたことで、大きく業績を伸ばす企業も増えてきました。

 

しかし、従来の企業/組織構造においては、デジタル化が行き届かない領域が数多く存在しており、業務/組織・人財(人材)/IT・新技術の観点からその阻害要因を洗い出し、今一度、競争優位性の獲得に向けて「習慣病」の改善、ひいては経営資源の再構築を行うことが必要とされています。

 

アビームコンサルティングは、日本企業が過去の成功体験を見直すために必要となる21の「習慣病」を提示しており、これらの多くはデジタル技術を活用したビジネスモデルの成功事例が広まり、旧態依然とした業務/組織・人財(人材)システムが構築されることで改善されることが望まれますが、重要なのは組織の「意識改革」であり、デジタル技術を活用することが目的ではありません。

 

また、戦略性のない縦割りの組織構造を有する企業においては、責任を取りたくがないために無意味とも思われる会議が行われ、指示待ちの企業文化が育まれてしまうこともありますが、それは個々人がその事業環境において最適化を図るべく行われているとも考えられ、一企業が作り上げてきた歴史や習慣を変えることは容易ではないと言えます。

 

実際の現場ではリモートワークによって業務効率が悪化し、アナログへの再回帰によって、ビジネスモデルの再評価がなされるといった事例もあり、デジタル技術を活用しないアナログなビジネスモデルは悪といった論で片付けられない側面も存在しています。

 

DXの推進によって人間関係がぎくしゃくし始めた、実際の現場では業務効率化のニーズが少なかった、それによってチームが崩壊し、収益が落ち込んでしまったといった事例は「成功体験を捨てきれない人材と組織」として片づけられる話ではなく、「組織に所属する個々人が腹落ちするまで話し合う」「組織のトップが覚悟を決めて習慣病の克服に取り組む」といったことも重要であると言えるでしょう。

 

すでに行政においてもデジタル化の推進が進む中、アビームコンサルティングは「現場の業務改善」「トップ主導の抜本的な改革」「自ら変革する意識の浸透・定着」が新たな企業文化を作っていくとしており、失敗を恐れずに「IT・新技術」の導入・検証を行う「アジャイル型PJ推進」を提唱しています。

 

 

・参考文献

日本企業のDXを阻むのは、「21の習慣病」–アビームコンサルティング

政府、「トラスト」担保するウェブ基盤構築へ初会合

TrustedWebPromotionCouncil/Documents

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