STOは、企業の効率的な資金調達を促進し、各国の産業振興および資本市場の活性化、投資家育成が図られると考えられてきました。
台湾の規制当局である台湾金融監督委員会は、STOに関する法的枠組みの整備に取り組み、証券市場の安全性を担保する一方、今回は下記のように厳格なSTO規制を施しています。
・調達の上限金額:NT $ 300,000(約1億円)
・新台湾ドル(NT $)建ての投資のみ
・証券ディーラーライセンスの申請が必要
・STOを発行する企業は台湾集中保管結算所との契約が必須
今回のSTO規制は同じ取引プラットフォームで実施されるSTOにのみ適用され、セキュリティトークンのみを取り扱う企業には「最低投資資本 1億ドル・営業利益 NT $ 1千万」といった条件が定められました。
台湾金融監督委員会がどのような基準をもとに規制を整備し、今後どのように市場形成を想定しているのかさらなる調査が必要と考えられますが、内容が厳格すぎることから早くも規制の見直しの声が高まっています。
STOは、法規制に準拠した資金調達方法として、スマートコントラクトを活用した業務プロセスの自動化や暗号資産による投資活性化などのメリットがあると考えられてきました。
すでに米国では、SECへの登録免除規定「Regulation」といったきめ細やかな法的枠組みが設けられていることからSTOによる資金調達が普及しています。

しかし、台湾や日本では私募市場における規制緩和への取り組みの歴史が米国よりも浅く、VCやPEファンドによるスタートアップ企業への投資もここ数年で注目を集めるようになったばかりです。
近年では、リーマンショック以降の金融緩和の影響からプラーベートエクイティ投資が加熱し、Weworkのようなオーバーバリュエーション・IPOゴールといった事例も確認されていましたが、資金調達環境が整備され、成長企業投資が盛んである米国においては実物資産のトークン化といったより安定的なキャピタルゲイン・利回りを期待できるユニークな取り組みも行われています。
米国のように資本市場が巨大で成熟している国では、STOはプライベートエクイティ市場における有効的な「資金調達方法の1つ」として位置付けられ、「Regulation」への準拠によって積極的な取り組みが実施されますが、台湾や日本といった国々でSTOが普及するには資本市場全体の発展が必要であり、そのためにも厳格な規制によって、既存の証券市場の安全性を担保するというのが重要であると考えられます。
「Regulation」に準拠し、これまで数多の私募市場における資金調達が実現されてきた米国と他の国々(特に新興国)の資本市場の成熟度には大きな隔たりがあり、まずは既存の証券市場の発展を優先することが将来的なSTOの普及につながるとも言えます。
これまで第三者割当増資などによって企業は資金調達をおこなってきましたが、セキュリティトークンによって資金調達を行うメリットについては下記のようなサービスやシステム開発によって、関連業務の効率化が図られることであるとも考えられます。
Instant Access :P2Pセキュリティトークン取引
TokenSoft Investment Accounts:自己管理アカウント
Knoxウォレット:セキュリティトークン管理用コールド・ウォレット
Securrency Interoperating System:ブロックチェーンと既存金融インフラのシームレスな統合を実現するオープンフレームワーク
米国のみならず、各国の資本市場の成熟に向けてセキュリティトークンおよび関連サービスをどのように活用するのか今後も多くの議論・ユースケースが必要であると言えるでしょう。
証券市場は、各国で証券規制が整備・施行されてきたためセキュリティトークンの導入については、慎重な取り組みが求められますが、最近では不動産セキュリティトークン(不動産小口化:米国ではLLCの部分的所有権のトークン化なので、RegS,Dに準拠)による取引高の増加が見込まれています。
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