セキュリティトークンP2P取引と不動産の部分的所有権(fractional ownership)についての考察

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・セキュリティトークンP2P取引について
・不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンの普及
・米国のユースケースを各国で展開するための法律構成の確認について

 

米国では不動産の部分的所有権(fractional ownership)のトークン化への取り組みが行われています。

 

不動産トークンプラットフォーム「RealT」と分散型取引所 (DEX)「Uniswap」は戦略的パートナーシップを締結し、ブロックチェーン上で米国不動産の部分的所有権トークンを購入することができるようになりました。

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)は、日本では馴染みのない権利ですが、ハワイなどで不動産のタイムシェア(1年の中で数ヶ月間だけ不動産を利用できる権利)を利用することで、休暇を楽しむこともできます。

 

※部分的所有権がセキュリティ(証券)に該当するかは検討が必要であると考えられますが、米国においては「real estate token」と表記されることが多く散見されます。

 

今回は、2020年4月のセキュリティトークン市場概況を踏まえて、P2P取引と不動産トークンの可能性について考察していこうと思います。

 

P2Pセキュリティトークン取引について

 

これまで、米国市場ではRegulationに準拠し、セキュリティトークン発行を行うケースが一般的でしたが、Rule144の適用によって、1年間の譲渡制限が設けられていました。

 

この譲渡制限によって、セキュリティトークン取引所は流動性の向上が見込めず、今年の4月にはATS(Altanative trading system)のライセンスを持つ「OpenFinanceNetwork」が上場企業への契約の見直しを求める発表が行われました。

 

取引高が見込めない現状においては、取引所の運営コストが大きな問題とされ、ボストンデジタル取引所の開設もナスダックが反対を表明するなど、米国においてはセキュリティトークン取引所の存在意義が見直されつつあります。

 

そのような中で、セキュリタイズはP2Pでのセキュリティトークン取引を可能とする「Instant Access」を発表。

 

・発行体によるKYC/AMLチェック
・DSプロトコルによってコンプライアンスに遵守した取引が可能
・P2P取引ネットワーク「AirSwap」を利用
・取引用URLリンクからセキュリティトークンが購入可能に

 

といった特徴が「Instant Access」にはあり、取引所を介さずともコンプライアンスに遵守した取引を実現できるとして、「Instant Access」によるセキュリティトークンの取引が、今後どのような広がりを見せていくのか大きな注目が集まります。

 

セキュリタイズはプライマリーマーケットのみらず、セカンダリーマーケットにおける新たなインフラストラクチャーを世に提供しました。

 

セキュリティトークン市場は、各国の資本市場の流動性を向上させ、企業活動の活性化を促進させるとして大きな期待が寄せられている分野ではありますが、個々の投資家がブロックチェーン技術によってコンプライアンスを遵守できることで新しい取引のあり方を実現できるとも考えられます。

 

既存の証券取引市場においても「投資家が統治するグローバルな取引所」についての議論が交わされており、P2Pによる国境を越えたセキュリティトークン取引の普及により、資本市場のさらなる発展が期待されます。

 

「世界の取引所、国境越えつながる」松本大氏

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンの普及

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンの登場によって、セキュリティトークン市場では取引高が増加しており、すでに「RealT」が発行した下記の不動産は完売となっています。

 

・20200 Lesure St, Detroit, MI 48235
・5942 Audubon Rd, Detroit, MI 48224
・9336 Patton St, Detroit, MI 48228
・16200 Fullerton Ave, Detroit, MI 48227
・9943 Marlowe St, Detroit, MI 48227

 

RealT HPでは物件情報を確認することができます。

 

「Uniswap」を通じて、ドイツ、香港、シンガポールなど世界40ヵ国以上の国々へ各不動産の部分的所有権は「RealTokens」として販売され、個人投資家も購入が可能です。

 

※ 米国投資家は対象外とされています。

 

投資家には月々の賃貸料金から配当が分配され、

 

米ドル(家賃)→米ドルペッグのステーブルコイン「DAI」→投資家のイーサリアムに送信(配当)

 

といった流れで配当がブロックチェーン上で瞬時に実施されます。

 

このことでこれまで金融機関や業者を介して行われていた配当の手続きが効率化され、人的コストの削減にもつながります。

 

RealTによって、不動産トークン取引は前月と比較して、約2倍になり、REST(不動産セキュリティトークン)はセキュリティトークン市場全体の総取引量の約15%を占めています。(2020年3月)

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)のトークン化によって、より多くの投資家が暗号資産による不動産投資を実現することができるでしょう。

 

一方で、不動産の部分的所有権は国ごとに法律の整備状況が異なり、そのトークン化に関する法律構成については慎重な議論が必要となります。

 

米国のユースケースを各国で展開するための法律構成の確認について

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)は投資家に低価格で複数の不動産物件に投資する機会を提供します。

 

リスク分散が重要視される昨今の投資環境においては、安定的な利回りを生み出す不動産投資においてもポートフォリオの多様化が重要であると考えられます。

 

一方で、投資家間での部分的所有権(fractional ownership)に関する契約の締結が必要になり、配当条件や投資家保護への条件など法的権利の確認、交渉サポートなどを弁護士に相談することも重要です。

 

また、タイムシェアは不動産の利用期間を予約(確保)するための権利であり、収益配当を生み出さないため部分的所有権(fractional ownership)とは区別して考えられています。

 

各国の「Fractional Ownership and Timeshare Law」

 

カリフォルニア州:「the Vacation Ownership and Timeshare Act of 2004

 

EU:「Directive 2008/122/EC of the European Parliament and of the Council of 14 January 2009 on the protection of consumers in respect of certain aspects of timeshare, long-term holiday product, resale and exchange contracts

 

米国の各州およびEU各国では上記の法律に準拠して部分的所有権(fractional ownership)のトークン化が行われている可能性が高いと考えられます。

 

※ 詳細についてはさらなる調査を行ってまいります。

 

日本においては

 

・信託受益権、匿名組合持分:公証役場での確定日付取得が必須
→私的自治の原則に則り、当事者間でアカウント契約を締結することで、「二項有価証券 その他の権利」としてセキュリティトークンを定義する

 

といった法律構成に関する議論も交わされています。

 

部分的所有権(fractional ownership)については各国で法整備の状況が異なることからすべての国々で米国・EUのユースケースを採用できるとは限りません。

 

しかし、将来的なセキュリティトークン市場の発展のためには不動産トークンの取引高増加が重要であると考えられ、その実現可能性については多くの議論が交わされることが期待されます。

 

まとめ

 

P2P取引と不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンはセキュリティトークン市場の発展を牽引することが予想されます。

 

P2P取引ネットワーク「AirSwap」、分散型取引所 (DEX)「Uniswap」を介したグローバルなセカンダリーマーケットの形成は、これまでのセキュリティトークン市場で必要とされてきた流動性の向上を担うものであり、米国不動産などこれまで投資対象とされてこなかった投資商品の購入も可能となります。

 

RealTでは、配当がステーブルコインで行われるなど、既存の資本市場では想定されていない取引のあり方について各国の規制当局がどのような見解を示すべきなのか検討の余地は必要ですが、各国の法律に準拠した形で暗号資産やトークンが利用されることで新たな資本市場の形成にもつながると考えられます。

 

・参考文献

 

Fractional Ownership – SirkinLaw APC
SirkinLaw APC has provided legal support and documents for fractional real estate projects, ranging from one house or condo to hundreds of units, throughout the...
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