STO入門

日本におけるSTOの未来|第一項有価証券や金商法改正について

セキュリティトークンは金商法の改正にともない「電子記録移転権利」と定義されており、発行する場合には、金商法で定められた「開示規定」が適用されると考えられます。

 

開示規定:有価証券届出書の提出・目論見書の交付・継続開示

 

改正金商法においては、「電子記録移転権利」を株式や債券と同様に「第一項有価証券」とすることを明記しており、売買や募集といった業を行う際には「第一種金融商品取引業」の登録が必要となります。(金商法改正法案28条 1項1号、29条)

 

STOを行うには「第一種金融商品取引業」への登録など事業者側の負担が大きく、一般社団法人新経済連盟は7月30日に「ブロックチェーンの社会実装に向けた提言~暗号資産の新法改正を受けて」を金融担当大臣ほか関係大臣宛てに提出しています。

 

第一項有価証券について

 

発行されたトークンに対する法律の適用や解釈が曖昧だったことから、金融庁はセキュリティトークンを「電子記録移転権利」と定義し、改正金商法の適用対象としました。

 

それ以外のトークンについては改正資金決済法の適用対象となることを定めており、「電子記録移転権利」を基準にして法律の適用を明確化しています。

 

・改正資金決済法(決済用途):ユーティリティトークン(ステーブルコインなど)
・改正金商法(投資用途):セキュリティトークン(電子記録移転権利)

 

セキュリティトークンは改正金商法の適用対象とされており、内閣府令によって定められている場合を除いて、「一項有価証券」に分類されます。

 

しかし、流通性が低い場合は1項有価証券に分類しないことを金融庁局長が国会審議において答弁しており、譲渡対象の制限やスマートコントラクト技術によるロックアップ期間の設定によって、セキュリティトークンの流通性を制限することを一般社団法人新経済連盟は提言しています。

 

セキュリティトークンの流通性を制限することで、1項有価証券として規制する実質的根拠がなくなることから、事業者のコストを軽減することができます。

 

また、STOは新たな資金調達方法として期待を集めていますが、1項有価証券制度は下記の場合を除いて、厳格な開示規制が課せられることがSTO市場の発展を妨げるともしています。

 

・適格機関投資家のみを対象にした私募
・募集対象者数50名未満の私募
・株式投資型クラウドファンディング

 

新経済連盟は、現状の1項有価証券制度はSTOに対応しきれていないことから制度設計の見直しについても提言を行なっています。

 

アメリカではSECと発行体が連携し、証券法が定めるSECへの登録免除規定(Regulation Dなど)を利用するなどSTOへの取り組みが盛んに行われています。

 

新経済連盟 将来的な規制枠組みについての要望

 

将来的な規制枠組みについても新経済連盟は下記のように要望をまとめています。

 

・米国の証券規制等も参考にしつつ、投資家属性等に応じたきめ細やかなルール導入
・少人数私募の取得勧誘(声かけベース)について、STOについて購入者ベースとする特例を設けることを含めた見直し
・株式投資型クラウドファンディングの1億円、50万円の上限を緩和

 

アメリカではSecuritizeやtZEROといったセキュリティトークン発行プラットフォームやOpenFinanceNetworkが取引所(セカンダリーマーケット)として機能しています。

 

AspencoinやResolute.FundといったSTOも登場してきており、セキュリティトークンの発行にる資金調達に成功しています。

 

SEC 登録義務の免除規定

 

SECへの登録は多額の資金が必要とされるため登録義務の免除規定として「Regulation」が定められています。

 

多くのSTOプロダクトは「RegulationD Rule 506(c)」の適応対象になっており、ネットでの募集が可能といった点で他のRuleよりも規制が緩和されています。

 

しかし、他のRuleにはない、「適格投資家限定」と定められていることから投資家属性等に応じたきめ細やかなルールとして参考になる点が多いと言えます。

 

1 RegD Rule 504

 

・年間500万ドルまで募集・販売可能
・適格投資家、一般投資家は購入可能(人数制限なし)
・基本的に一般勧誘は禁止

 

2 RegD Rule 506(b)

 

・年間募集金額に制限はなし
・適格投資家は購入可能(人数制限なし)
・一般投資家は35人まで購入可能
・一般勧誘は禁止

 

3 RegD Rule 506(c)

 

・年間募集金額に制限はなし
・適格投資家限定
・一般勧誘可能(ネットでの募集が可能)

 

日本でもこのように投資家の属性に応じてルールを設定することで、STO市場が発展することが期待されます。

 

日本におけるSTOの未来|金商法改正に向けての取り組み

 

日本では2017年4月に「改正資産決済法(仮想通貨法)」が施行されました。この法規制のきっかけとなったのが、2014年におこった116億円相当が盗難されたマウントゴックス事件。この時にはじめて仮想通貨が社会的に大きな話題を集めました。日本政府は「投資家保護」を明確に下記のように定めました。

 

・仮想通貨は支払い手段の一つであり、財産的な価値のある「通貨」であること。
・事業者は金融庁への登録が義務付けされ「仮想通貨業」とみなされること。
・法廷帳簿の提出を義務化。

 

当時としては世界に先駆けて規制が設けられ、内閣府令案やガイドラインも発表。しかし、2018年1月に「コインチェック事件」が起こり、多くの投資家が多額の資産を失うことになってしまったのです。このことによって日本政府としても「投資家保護」について厳格な規制を設ける道を模索し始めました。

 

日本はコインチェック事件の影響で、仮想通貨市場の発展が世界の中でも厳しいと言われています。2019年3月に発表された資金決済法・金融証券取引法の改正案も「投資家保護(利用者保護)」を重視した内容になっています。

 

今回は日本の暗号資産についての法規制について解説していきます。

 

2018年1月 コインチェック事件

 

 

日本の金融の歴史を辿っても例を見ない580億円相当のNEM/XEM通貨の盗難事件。コインチェック社はハッカーから届いたメールによってマルウェアに感染し、不正アクセスを許しました。そして、NEMをオンラインで管理(ホットウォレット)していたことでハッキングの被害を受けました。

 

このあおりを受ける形で、各仮想通貨交換業社には立ち入り検査が金融庁によって行われ、運営体制の見直しが行われました。また、この時期から仮想通貨市場は急速に減速し、詐欺的なICOプロジェクトによる不正やスキャムも問題となりました。コインチェックは2018年4月にマネックスグループによって100%子会社化され、2018年10月には停止していた新規口座開設を再開しました。

 

このコインチェック事件によって日本では「投資家保護」が重視されるようになりました。一方で、2018年にはヨーロッパの金融立国の多くが、ブロックチェーンの取引所やブロックチェーン企業の誘致に国を挙げて参画。すでに銀行でのST発行が発表されているリヒテンシュタインと比較するとその差は大きいと言えるでしょう。

 

2019年3月 資金決済法・金融証券取引法 改正案

 

 

そのような中で、2019年3月には「資金決済法」「金融証券取引法」の改正案が閣議決定されました。日本政府はこの法案によって「投資家保護」を明確にし、仮想通貨を従来の金融事業と同じ扱いと見なします。ICOについての規制を定めた国は数多くありますが、金融事業として厳格な審査を必要としている国は世界でもまだ少ないです。

 

ブロックチェーン企業が安心して運営を行うためには、金融関連の法律に準じた規制が必要不可欠なためにこの法案は世界に先がけたものだと考えられます。海外では2019年3月にバハマでセキュリティトークン規制法案についての草案が発表され、2019年秋の法案可決を目指しています。

 

弁護士を雇いバハマ証券規制当局との連携が必須となることや金融関連の法律に準じることが草案に盛り込まれており、罰金や懲役についても明確に定められています。このバハマの草案はコンプライアンス強化やマネーロンダリング防止を目的としており、日本の法案と同じように「投資家保護」を重視しています。

 

信託保全の方法について

 

 

しかしながら、「信託保全」の環境が整備されない限りは「投資家保護」は難しいといえます。信託保全:FX投資では義務化されており、100万円を取引所に預け入れた際には信託銀行に資産は預けられます。

 

信託銀行を通じて、第三者機関による信託状況の確認が行われ、仮に、取引所が破産した際にも資産を失うことがないという仕組みです。この信託銀行による「信託保全」が今回の法案でどこまで行われるかはまだ未知数であり、2020年春までに環境整備が急務と言えます。

 

日本におけるセキュリティトークン

 

河口湖の不動産をトークン化

 

 

RAX Mt,Fuji合同会社が2018年11月から不動産のトークン化プロジェクトを開始しました。

 

ブロックチェーン上で契約の詳細や配当金といった情報を確認することができるため、不動産とブロックチェーンは非常に相性が良く、世界中から投資を募ることができるといったメリットも存在します。アメリカのコロラド州にある高級ホテル「St. Regis Aspen」はSTOによって20億円の資金調達に成功するなど、国際的にみても「不動産STO」には大きな期待が寄せられています。

 

RAX Mt,Fuji合同会社の取り組みは日本で初の不動産をトークン化した事例であり、不動産市場の新しいビジネスモデルとして注目を集めています。今回は河口湖近くにあるゲストハウスがトークン化されましたが、これはRAX Mt,Fuji合同会社の株主のみへの発行で、日本の法律の準じたものとなっています。

 

日本では外国人観光客からも人気のスポットが数多く存在し、京都や北海道といった観光地の不動産がそのうちトークン化されて取引される可能性があります。

 

株式会社世界 不動産売買サービス

 

 

株式会社世界はマルタにある子会社「SEKAI LIMITED」を通じて、不動産のセキュリテートークンを発行するサービスを開始しました。これはイギリスにあるブロックチェーンプラットフォーム会社とシンガポールの投資銀行やコンサルティング会社などとの連携によって行われるもので、日本の法規制の監督外で行われます。

 

また、株式会社世界ではSTOによる「資金調達保証サービス」も不動産売買サービスと同じ連携スキームによってはじめています。STOによって資金調達を行いたい企業を支援するサービスとあって、その先進的な取り組みに注目が集まっています。

 

日本 暗号資産の税制改革について

 

ドイツでは取引における消費税が免除され、1年以上の長期保有の場合には売買によって得られたキャピタルゲインについても免除規定があります。

 

また、スイスやマルタ共和国では一般投資家の暗号資産取引によるキャピタルゲインについては税金は免除されています。

 

ヨーロッパではこのように税制の要件を緩和することによって多くのブロックチェーン企業の誘致に成功しており、ブロックチェーンを活用した産業育成に取り組んでいます。

 

そのような中で、日本では2020年春にも行われる改正資金決済法と改正金融商品取引法の施行にむけて下記のような取り組みが行われています。

 

日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)「2020年度税制改正要望書」

 

日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)「2020年度税制改正に関する要望書」

 

今回は日本の暗号資産の税制改革について解説していきます。

 

日本 暗号資産の税制改革について

 

日本では暗号資産の税率が他国よりも高いことで知られており、国内企業の暗号資産業界への新規参入や国外からのブロックチェーン企業の誘致は他国と比較してもハードルが高いと言えます。

 

TOYOTAや野村HDがブロックチェーン技術を導入する取り組みを行なっていますが、税制改革のために活動していた藤巻健史氏が参議院選挙で落選しました。

 

国の機関である国会において、暗号資産への税制改革などを問題提起していた藤巻健史氏の影響力は大きく、暗号資産業界でも税制改革の今後については悲観的な見方が少なくありません。

 

暗号資産取引においては総合課税から申告分離課税への変更が大きな論点となっており、将来的な暗号資産業界の発展にむけて税制改革には大きな注目が集まっています。

 

日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)「2020年度税制改正要望書」について

 

1.支払調書関係

 

金商法改正によって暗号資産のデリバティブ取引が金融商品デリバティブ取引に組み込まれることとなりました。

 

そのため暗号資産デリバティブ取引業者は金商業者として支払調書の提出義務があります。

 

しかしながら、支払調書を提出する準備ができていないこともあり、個人番号の取得準備期間として「3年間」の猶予期間をJVCEAは要望しています。

 

2.申告分離課税等関係

 

2-1 デリバティブ取引

 

金商法改正によって暗号資産デリバティブ取引も他のデリバティブ取引と同様の税制を適用することが適当であるとJVCEAは記載しています。

 

申告分離課税(所得税20%、住民税5%)、譲渡損失の損益通算や繰越控除(3年間)の適用が暗号資産税制の大きな論点と考えられてきましたが、JVCEAはこのことを強く要望しています。

 

2-2現物取引

 

経済インフラの健全な育成といった観点からデリバティブ取引よりも現物取引が優遇されるべきであり、申告分離課税の対象とし、譲渡損失の損益通算や繰越控除を認めることをJVCEAは要望しています。

 

3.簡易課税制度の導入

 

少額の決済利用における所得について課税対象から外すことや暗号資産交換所からの引き出しについても新たな課税制度を設ける必要性をJVCEAは記載しています。

 

4.暗号資産(仮想通貨)等の発行時に課せられる発行者への課税関係

 

改正金商法によってSTOによる資金調達は資本取引として会計処理され、調達した資金は課税対象外とされています。

 

しかし、ICOによる暗号資産の発行は販売とみなされ、課税所得とされる可能性があります。

 

将来的に暗号資産の会計慣行が整備された場合には、ICOによって調達された資金についても資本取引として認知することをJVCEAは要望しています。

 

5.暗号資産(仮想通貨)投資におけるエンジェル税制の設置

 

暗号資産は地域振興プロジェクトやスタートアップ企業・クリエイター支援などのプロジェクトに活用されており、新しい産業育成への取り組みとして期待されています。

 

そのため未公開株への投資と同じように上記のような暗号資産の活用事例への投資においてもエンジェル税制の設置をJVCEAは要望しています。

 

日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)「2020年度税制改正に関する要望書」について

 

【1】暗号資産のデリバティブ取引について、20%の申告分離課税であり、損失については翌年以降3年間、デリバティブ取引に係る所得金額から繰越控除ができることを確認する。

 

【2】暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることとする。

 

【3】暗号資産取引にかかる利益年間20万円内の少額非課税制度を導入する。

 

引用:2020年度税制改正に関する要望書/一般社団法人 日本仮想通貨ビジネス協会

 

日本におけるSTOの未来

 

 

アジアの中でもシンガポールでは金融庁がSTOガイドラインを発行するなどSTOを活性化させる動きを政府が主導となって行われています。フィリピンでは「CEZA(カガヤン特別経済地区)」 が独自の規制緩和策を打ち出せるなど、アジアのクリプトバレーを目指しています。

 

ベトナムやミャンマーでは取引所が禁止になっている国もあり、国ごとにブロックチェーンビジネスに対する取り組みは異なっています。そのような中で、日本は金融商品取引法の改正によって、必要な届け出(有価証券届出書)や金商業への登録が明確に規定されるものと考えられます。

 

適格投資家に限定されている場合や少人数の私募によって開示義務が定められるなどの規制の整備が2020年春にも行われることでしょう。

 

まとめ

 

 

日本は2017年に世界に先がけて法整備を行いましたが、コインチェック事件が起こるなど時代に規制が追いついていない状況が続いていました。今回の改定案でも「投資家保護」を重視した内容になっていますが、すでに既存の枠組みの中で様々な取り組みが行われていることを踏まえると、全てを包括的にまとめるのは難しいと言えます。

 

しかしながら世界を見渡すと、セキュリティトークン発行が盛んに行われており、法案の成立とともに新しいブロックチェーンの時代が日本に訪れることでしょう。

 

参考文献

 

「日本の仮想通貨規制は世界をリード 」改正案がセキュリティートークン市場に追い風な訳とは?QUOINE幹部にインタビュー【cointelegraph.】

金融庁 仮想通貨に関する新規制の内容を解説 改正案の閣議決定を受け

セキュリティトークンの動向【KPMGジャパン】

仮想通貨、取引所破産に備え信託で保全へ【日本経済新聞 電子版】

仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説

仮想通貨取引、「信託」で利用者保護【日本経済新聞 電子版】

https://coinpost.jp/?p=72428

https://cointyo.jp/article/10005612

https://innovationlaw.jp/wp/wp-content/uploads/2019/04/STO_Regulation_SS_190402.pdf

https://www.securitytokenacademy.com/info/the-tokenization-of-the-st-regis-aspen-resort-2133/

https://ceza.gov.ph

【プレスリリース】ブロックチェーンと暗号資産に関する要望を金融担当大臣ほか関係大臣宛てに提出

暗号資産に関する改正資金決済法等について

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