STO市場において法規制はどうあるべき?米国の最新事例を紹介

STO

米国では、SEC(証券委員会)への登録免除規定であるRegulationを利用して私募市場ので資金調達が行われており、これによって成長企業への投資が活性化されてきました。

 

一方で、IPO前に時価総額が高くなりすぎてしまい、上場後には株価が上がらない「オーバーバリュエーション」といった事例も近年では相次いでおり、米国においては上場市場と私募市場のあり方が見直されつつあります。

 

そのような中で、Regulation改正の提案が2020年3月4月に行われ、下記のような内容で米国SEC HPでは発表が行われています。

 

For Regulation A:

レギュレーションA+ の場合

・raise the maximum offering amount under Tier 2 of Regulation A from $50 million to $75 million; and

レギュレーションA+ tier2:最大調達額を5,000万ドルから7,500万ドルに引き上げ

・raise the maximum offering amount for secondary sales under Tier 2 of Regulation A from $15 million to $22.5 million.

レギュレーションA+ tier2:二次販売の最大調達額を1500万ドルから2,250万ドルに引き上げ

For Regulation Crowdfunding:

・raise the offering limit in Regulation Crowdfunding from $1.07 million to $5 million;

レギュレーション・クラウドファンディングの募集限度額を107万ドルから500万ドルに引き上げ

・amend the investment limits for investors in Regulation Crowdfunding offerings by:

レギュレーション・クラウドファンディング・オファリングの投資家に対する投資制限を次のように修正

・not applying any investment limits to accredited investors; and

認定投資家に投資制限を適用しない。

revising the calculation method for investment limits for non-accredited investors to allow them to rely on the greater of their annual income or net worth when calculating the limit on how much they can invest.

非認定投資家の投資限度額の計算方法を改訂し、投資できる限度額を計算する際に、年収または純資産のいずれか大きい方を選べるようにする。

For Rule 504 of Regulation D:

レギュレーションD 504の場合

raise the maximum offering amount from $5 million to $10 million.

最大提供額を500万ドルから1,000万ドルに引き上げ

参考文献:SEC Proposes Rule Changes to Harmonize, Simplify and Improve the Exempt Offering Framework

 

プレIPOフェーズの成長企業にとっては、レギュレーションA+の調達限度額の引き上げによって、より多くの資金調達ができるようになります。

 

また、Reg CFの調達限度額の引き上げに伴い、成長企業は資金調達のオプションとして新たな選択肢を得ることにもなります。

 

最大調達限度額の引き上げおよび認定投資家規則の変更は、2012年に施行されたJOBS法(Jumpstart Our Business Startups)と同様に、中小企業/スタートアップ企業への資本投入を活性化させ、成長を促進させるといった目的があると考えられます。

 

上記の取り組みが実現した場合には、私募市場の資金調達がより活発に行われるようになり、IPOなど上場市場の社会的な役割も変化を余儀なくされることが予想されます。

 

米国では、オルタナティブ投資がVCやPEを中心に盛んに行われており、今後は新興産業市場における成長企業への投資機会の拡大が各国の資本市場においては重要なテーマになるとも言えるでしょう。

 

そのような中で、STOによる資金調達に用いられている米国Regulationの変更は大きな意味を持つものと言えますが、一方で、SECに登録しセキュリティトークン取引所の開設を目指しているINX Ltd.が135億円にも及ぶIPOを実施するとの発表もあり、Regulationを基本として行われていた米国のSTOもセカンダリーマーケットを中心に新たなフェーズに入る可能性が出ています。

 

米国最大の登録証券(セキュリティトークン)販売 INXが135億円にも及ぶIPOを実施へ

ブロックチェーン企業による米国最大の登録証券(セキュリティトークン)販売を目指し、INX Ltd.は、1億3,000万ドルの新規株式公開(IPO)のために投資家へのロードショーを開始し、目論見書の更新などを手続きを進めています。

 

This is our initial public offering. We are offering 130,000,000 INX Tokens, (the “INX Tokens” or “Tokens”). Each INX Token (including fractions of INX Tokens) will entitle its holder to receive pro rata distributions of 40% of the Company’s cumulative net cash flow from operating activities, excluding any cash proceeds from an initial sale by the Company of an INX Token (“Adjusted Operating Cash Flow”). Commencing in 2021, the distribution will be calculated on an annual basis and paid on or before April 30 to parties (other than the Company or its subsidiaries) that hold INX Tokens on the preceding March 31. Each annual distribution will be based on the Company’s cumulative Adjusted Operating Cash Flow (net of cash flows which have already formed the basis for a prior distribution), calculated as of December 31 of the year prior to the distribution.

130,000,000のINXトークン(「INXトークン」または「トークン」)を提供しています。各INXトークン(INXトークンの一部を含む)は、INXトークンの会社による初期販売からの現金収入を除く、事業活動からの当社の累積純キャッシュフローの40%の比例配分を受け取る権利を保有者に付与します(調整済み営業キャッシュフロー」)。2021年に開始され、配布は年単位で計算され、4月30日までに、前の3月31日にINXトークンを保有する当事者(当社またはその子会社を除く)に支払われます。累積調整済み営業キャッシュフロー(事前の分配の基礎をすでに形成しているキャッシュフローの純額)、配布前の年の12月31日時点で計算されます。

参考文献:As filed with the U.S. Securities and Exchange Commission on March 2, 2020. Registration No. 333-233363 (UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION Washington, D.C. 20549 Amendment No. 7 to FORM F-1 REGISTRATION STATEMENT UNDER THE SECURITIES ACT OF 1933 INX LIMITED)

 

INX Ltd.は、BitLicenseの取得に向けて本社をジブラルタルからニューヨークに移転を予定しており、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)との協議を進めています。

 

IPOによって集めた資金は、暗号資産取引所INX DigitalおよびセキュリティトークンプラットフォームINX Securitiesの立ち上げに投じるとしており、AnchorageやBitGoとのパートナーシップを構築しています。

 

その他にも下記の企業とも提携を行っています。

 

Tokensoft:設計および技術アドバイザリーサービスの提供
Quantstamp:ファイリングに従って取引所のスマートコントラクトコードを監査

 

これまでマイニング企業であるArgo Mining が、ロンドン証券取引所でのIPOを通じて3,250万ドルを調達しましたが、INX Ltd.は、1億3,000万ドル規模での新規株式公開(IPO)を目指しており、tZEROやOpen Finance Networkといった既存のセキュリティトークン取引所とともに米国のSTO市場においては大きな役割を担うと考えられます。

 

米国におけるセキュリティトークン取引所は、ブローカーディーラー(BD)、代替取引システム(ATS)、登録投資顧問(RIA)などの証券関連のライセンス取得とともに、事業を行う州からの送金許可証が必要となりますが、SECへの登録を行いセキュリティトークンの発行・取引を行うことで、一般投資家への投資機会を提供できるとも想定されます。

 

米国最大の登録証券(セキュリティトークン)販売所として今後の米国STO市場を牽引するとも予想されるINX Ltdですが、市況環境が悪化している中でのIPOが成功するか否か大きな注目が集まることでしょう。

 

INX Ltd.の目論見書詳細

INXトークン:ERC20

トークンティッカー:INX

このオファリングで提供されるトークン合計:130,000,000トークン

最低募集額:7,500,000ドル

※7,500,000ドルを超える資金を調達しない限り、INXトークンの販売を完了しない。

調達資金の使用用途:暗号通貨およびセキュリティトークン取引プラットフォームを含むINXトレーディングソリューションの継続的な開発と運用のために、INXトークンの販売から調達した資金を使用する予定

募集の終了:

(i)提供されている130,000,000トークンのすべての販売

(ii)この登録ステートメントがSECにより有効と宣言された365日後

(iii)独自裁量によって短期間でオファリング終了する場合も

INX取引プラットフォームでのINXトークンの使用について:

INX証券取引プラットフォームで取引手数料の支払いとして使用される場合、INXトークンは、他の通貨を使用して支払われる手数料と比較して、所有者に少なくとも10パーセント(10%)の割引を付与します。

INXによる独自の裁量により、取引手数料の他の支払い方法と比較して、より大きな割引などのプロモーションインセンティブを提供する場合があります。

ただし、INXトークンに含まれる割引権利が10パーセント(10%)未満になることはありません。 INXトークンは、INXデジタル取引プラットフォームでの取引手数料の支払いとして使用することはできませんが、INXトークンの記録保持者に対して、INXデジタル取引プラットフォームでの取引手数料の割引を随時提供する予定です。

 

また、下記の事例も米国では取り組みが進んでおり、法整備の進展により市場の活性化が図られています。

 

・米国 暗号資産法2020

 

カテゴリー別に規制当局を明確にする法案を共和党議員Paul Gosarが提出。

 

暗号資産コモディティ:商品先物取引委員会(CFTC)
有価証券:証券取引委員会(SEC)
通貨:金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)

 

複数の公募型STOを実施しているドイツにおいても暗号資産とセキュリティトークンは金融商品に該当すると定める発表が行われており、明確な規制が設けられることで投資家保護の実現を図る規制当局の意図が見受けられます。

 

日本においても改正金商法が今年の春にも施行予定とされており、大手金融機関によるセキュリティトークン取引所(私設取引所)開設や証券取引の効率化に向けた取り組みを進めているなど、証券会社を中心とした市場形成が行われています。

 

レッドスワン、Polymathが不動産のトークン化を実施

 

個別の企業に目を移すと、テキサスにおいて商業不動産販売を手掛けるレッドスワンが、セキュリティトークン発行プラットファームPolymath(ポリマス)と提携し、22億ドル規模の不動産資産のトークン化を行っています。

 

・tZERO:英国において高級不動産のトークン化計画(2020 Q1)
・Habor:107億円規模の不動産トークン化を実施

 

上記の取り組みが米国ブロックチェーン企業によって行われてきましたが、Polymathも2社に続いて不動産のトークン化を行ったことで、ブロックチェーン技術を活用した不動産市場の流動性向上が米国では進んでいます。

 

日本においてもSecuritize(セキュリタイズ)とLIFULLが不動産のデジタル証券化の実証実験を行っており、不動産のデジタル化に向けた取り組みには今後も大きな話題を集めることでしょう。

 

まとめ

・私募による資金調達の活性化:規制緩和
・一般投資家への投資機会提供:SEC登録によるセキュリティトークン発行
・暗号資産市場の健全化:カテゴリーに応じた管轄の明確化

 

米国の最新事例を考慮すると、STO市場を発展の促進と法規制による投資家保護を図るためには上記のような取り組みが重要であると考えられます。

 

各国の資本市場の規模感にもよりますが、米国の資本市場が1996年の規制緩和から今に至る発展を遂げ、多くの成長企業を育成してきたことを考慮すると、米国における法整備のあり方が今後のSTO市場においても非常に重要な存在になるとも言えるでしょう。

 

発行のみならず取引市場においても大きな進展が見受けられる米国STO市場。

 

Regulation改正およびINX LtdのIPOが2020年以後のSTO市場を占う上でも重要な指針となると考えられます。

 

各報道への市場の反応

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