STOのメリット・デメリット|セキュリティトークン(デジタル証券)とは?

セキュリティトークン(デジタル証券)は「株式や不動産証券を担保にしたトークン」と定義され、米国ではスタートアップ企業の株式が発行/取引されています。2021年にかけては米国におけるATS(代替取引システム)の増加や証券取引所/証券会社が開発するセキュリティトークン(デジタル証券)取引所のローンチもスイスやシンガポールでは予定され、デジタルな金融インフラの整備が進むことでしょう。

 

 

あらゆる資産をデジタル証券化することで、より多くの投資商品を提供できるといったメリットがあり、私募や金融、デジタル資産などの領域でエコシステムの拡大が進むと考えられます。

 

 

また、すでに証券化されている株式などの資産を直接上場するの場合には、1年のロックアップ(譲渡)期間を待たずとも取引が可能となるために取引高の増加が見込まれます。一方で、セキュリティトークン(デジタル証券)取引所の存在価値については未知数な部分も存在し、プレIPOのレベルにまで到達していない企業の株式を一般投資家が購入する場合のリスクについて検討する必要があることでしょう。

 

未公開株式投資の活性化を目的としてSTOは2019年ごろから注目を集めてきましたが、2020年はロビンフットなど個人投資家が株式市場に参加し、多くの資金が流れ込みました。そのことから有望なテック系スタートアップ企業がIPOを選択しやすい市場環境が構築され、売り出し価格の2倍以上の初値をつけるIPO銘柄が続出。SPAC(特別買収目的会社)ブームが巻き起こるなど、ITバブル以来の好景気に株式市場は沸き上がりました。

 

セキュリティトークン(デジタル証券)取引所は、IPO/イグジットまでの長期化の改善を図ることを目的に近年ではその有用性を高めてきました。しかし、2020年時点では、上場数が少なく、魅力的な銘柄も限られてきたセキュリティトークン(デジタル証券)取引市場では、IPOを選択する企業が増加し、SPAC(特別買収目的会社)のスキームが普及したことなども背景に、米国ATSで取引高は減少し、短期的な売買が繰り返されている状況にあります。

 

米国の巨大な資本市場をもってしても新興市場に上場する企業は少なく、スイスやシンガポールでセキュリティトークン(デジタル証券)を取り扱う取引所が開設した場合にも同様の問題に直面すると想定されます。しかし、1つの金融インフラとしての有用性を検証することも重要であり、スイスSIX証券取引所が手がけるSDXではCBDCによるデジタル証券決済の概念実証も行われています。

 

セキュリティトークン(デジタル証券)の有用性を高める1つの施策としてはビットコインをはじめとしたデジタル資産市場の利活用があげられ、株式のみならず希少性の高い資産の組成に着目した市場形成が望まれます。

 

 

本稿では、各国での最新事例を参考にSTOのメリット・デメリットに関して解説していきます。

 

>>デジタル資産と私募市場の相互発展|セキュリティトークン(デジタル証券)市場予想2021

目次

セキュリティトークン(デジタル証券)市場について

>>機関投資家とデジタル証券/資産|ファンド型STOによる資金調達の促進

 

2020年は、米国のマイクロストラテジー社やスクエア社をはじめとして投資運用会社、保険会社も「価値の保全手段」として流動資産をビットコインに置き換えています。米ドルの価値下落によるインフレへのヘッジを目的にビットコイン投資は支持を集めており、国家の信頼に担保されず、発行枚数上限が限られた新たなアセットクラスとして価格が上昇。

 

機関投資家の大口投資のみならず決済手段としての普及が2021年は見込まれており、投資商品として新たな価値をビットコインは獲得することでしょう。希少性の高い資産を裏付けにしたセキュリティトークン(デジタル証券)がより多く市場に出回ることが期待され、デジタル資産の観点から取引所ビジネスを構築することが重要であると言えます。

 

STO市場においては、米国セカンダリーマーケットにおける取引高の減少が確認される一方、法規制に準拠した資金調達方法として日本ではユースケースの創出が行われています。

 

従来の投資商品との違いとしては、一般投資家も参加しやすい最低投資金額で透明性の高い性質であることが1つの定義として挙げられ、例えば、ポートフォリオされている不動産の賃料減額リスクを「見える化」した新たなREIT(不動産投資信託)のような設計のセキュリティトークン(デジタル証券)が普及することで、これまでカバーされてこなかった投資家ニーズへの対応が実現されると考えられます。

 

また、デジタル技術を活用した証券化コストの削減によって利回りの向上も期待され、魅力的な投資商品の開発/提供への動きを各証券会社が展開することで、従来の市場構造ではなしえなかった新たな可能性の追求が期待されます。

 

海外の事例としては、米国セキュリティトークン(デジタル証券)発行プラットフォーム「Vertalo」が、高級不動産やバーボンウィスキーのトークン化計画を発表し、各企業へプラットフォーム提供を行うなど継続的な顧客獲得に成功するなど、プライマリーマーケット(発行市場)の発展によるエコシステムの拡大が進行しています。

 

セキュリティトークン(デジタル証券)はこれまで対応しきれていなかった「投資家の本質的なニーズは何なのか?」といった課題に向き合った投資商品として開発が見込まれ、社会的課題の解決等に着目した事例も確認されています。

 

米国では、OverStock社の優先株式を裏付け資産としたセキュリティトークン(デジタル証券)「OSTKO」の取引高が増加したことを背景に、2020年8月には市場全体の時価総額が5億ドルを突破し、大手企業による市場への参画が期待されています。

 

一方、株式市場全体では小規模な新興市場としての意味合いが強く、取引高の減少が続く中で、継続的な市場機能を維持することが今後は求められるでしょう。

 

STO市場の規模感的には、セカンダリーマーケットでの利用者増加による手数料ビジネスの拡大が困難であるとの見方もあり、参入プレイヤーの淘汰が進行すると同時に、一握りの企業がどれだけ生き残れるかが現実的な市場展望であるとも言えます。

 

そのような状況下において、日本ではSBIホールディングス子会社のSBI e-Sportsがセキュリティトークン(デジタル証券)による第三者割当増資を行い、大手証券会社による市場形成が進行。

 

これまで培ってきた豊富な知見と経験を有した証券会社が参画している点において、日本のSTO市場は大きな可能性を秘めた独自のエコシコシステムが形成されており、Securitize JapanBOOSTRYLayerXといった企業の市場戦略が報道されるなど、社会的関心の高まりとともに投資家への認知度向上が期待されます。

 

>>デジタル証券取引所とセキュリティトークン市場|上場企業銘柄の充実に向けて

セキュリティトークン市場 最新事例 2020年7月

 

現在、セキュリティトークンに関する取り組みは各国で行われ、証券法のもとでSTOがどのように取り扱われるか明確になっている米国においては、多くのプロジェクトが実施されています。

 

ブロックチェーンを導入した証券取引所開設の是非についても協議が行われるなど、デジタルアセット市場の発展とともにさらなる資本市場の活性化や多様性の向上に期待が寄せられています。

 

すでに米国は、スタートアップ企業である「tZERO」がATSの認可を受け、各発行プラットフォームもブローカーディーラーやトランスファーエージェントのライセンスを取得しており、健全な市場形成に向けて市場関係者が国際標準組織の設立を行うなど、世界のSTO市場を牽引。

 

しかし、SECへの認可を目指しているセキュリティトークン取引所「The Boston Security Token Exchange(BSTX)」に関しては、Nasdaqなど既存の市場関係者からの反発もあり、SECはその認可などについて慎重な構えを見せています。

 

既存の証券法や証券取引所はセキュリティトークンに対応して構築されてはいないために概念実証など、より安全な運用や健全な市場形成に向けた取り組みを行うことが市場の発展には必要不可欠です。

 

日本においては今年の5月に金商法が改正され、「一般社団法人日本STO協会」や「ST研究コンソーシアム」など証券会社が中心となり、市場が形成されています。

 

米国や欧州諸国と比較すると市場形成は遅れていると言えますが、証券会社の主導のもと、市場形成が行われる事例は世界的にも珍しく、今年3月の「デジタルアセット債」の発行や実証も相次いで行われています。

 

東南アジア市場でも日本企業は積極的な展開を見せており、中国ではブロックチェーン上で、担保付きコマーシャルペーパーが発行されるなど、米国やヨーロッパにおける私募市場における資金調達といった側面のみならず、金融機関における証券のデジタル化による市場拡大も進行。

 

デジタルアセット市場は

 

・暗号資産

・従来の証券のデジタル化

・これまで証券化されたこなかった資産のデジタル化

 

といったように資本市場にさらなる多様性と繁栄をもたらすと考えられ、世界最大の新興市場である「NASDAQ」もデジタルアセットプラットフォームの構築をサポートするSaaSサービスの提供を開始しています。

 

また、産業のデジタル化による経済成長を図る取り組みが日本でも行われていますが、中国はすでに都市開発において、ブロックチェーンと最先端技術を組み合わせたインフラの構築を進めており、海外では、証券などのアセットビジネスのみならず資本市場全体でブロックチェーンの利活用が行われています。

 

セキュリティトークン市場においても、米国SEC登録免除規定「Regulation」に準拠した「利益分配トークン」や「米国1940年投資会社法に準拠した投資ファンド持分トークン」の発行が行われており、株式や債券のみならず、様々なアセットのトークン化の事例が確認されています。

 

プライベートエクイティ投資市場における新しい資金調達方法として注目を集めるSTOの最新事例をもとに将来的な利活用に向けて法規制や実物資産のトークン化などについて考察していきます。

 

>>デジタル証券取引所のメリット・デメリット|機関投資家とデジタル資産の現在

セキュリティトークン市場 最新事例 2020年8月

参照: (2020年8月8日15時・日本時間)

 

米国のEC重要の増加にともないナスダック上場企業「Overstock.com Inc」の株価が上昇したことなどを背景に、セキュリティトークン「OSTKO」の取引高が急増。

 

※ 「OSTKO」は「Overstock.com Inc」が発行する優先株式を担保にしたセキュリティトークンのことです。

 

セキュリティトークン市場全体の時価総額も5億ドルを突破し、「OSTKO」「TZROP」といった銘柄が市場を牽引している中、より多くの成長企業によるセキュリティトークン発行がデジタルアセット市場の発展には必要不可欠であると考えられます。

 

プライマリーマーケットにおいても米国クラウドファンディングプラットフォームを運営する「Republic」が1,600万ドルの資金調達(STO)に成功し、tZEROがAspen Digitalと提携を発表したことなど、8月前半はセキュリティトークンに関する報道が相次ぎました。

 

また、7月には東南アジアにおいてセキュリティトークン取引所に関する取り組みが、シンガポールとタイで相次いで報じられました。

 

シンガポールでは日本の証券会社「東海東京フィナンシャルホールディングス」が日本の不動産をデジタル証券化し、両国の資本市場活性化に向けた取り組みを展開。

 

タイでは、タイSECからセキュリティトークン取引所「ERX」が認可を受けたことで、デジタルアセットのさらなる普及が見込まれています。

 

証券化ビジネスとブロックチェーン|小規模案件のトークン化について

 

ブロックチェーンを活用した証券化コスト削減によるこれまで証券化できなかった小規模な実物資産の証券化(トークン化)が大きな注目を集めています。

 

日本の大手金融機関が保有する「ローン担保証券(Collateralized Loan Obligation:CLO)」は低金利による資産運用の困難さから近年では増加傾向にあります。

 

CLO:格付けの低い複数の企業へのローン債券をパッケージ化した投資商品

 

国内金融機関のCLO保有額
農林中央金庫(農林中金)七兆九千億円
三菱UFJフィナンシャル・グループ 二兆四千七百三十三億円
ゆうちょ銀行 一兆五千二百四十一億円

 

コロナウィルスの感染拡大を発端にした原油・エネルギー・ 航空業界の混乱および今後引き起こされる可能性のある様々な経済危機の影響によって、「ローン担保証券(CLO)」による損失リスクは高まりをみせていると言えます。

 

サブプライムローン問題から10数年が経過し、CLOの市場は6600億ドル規模に成長した一方で、高リスク投資を助長させるとして、

 

・資金調達手段の多様化

・バランスシートの良化

 

といった本来、証券化(securitization)によってもたらされるべきメリットおよび証券化ビジネスのイメージを毀損しているといった側面も存在しています。

 

また、これまでの証券化ビジネスは

 

・SPC管理のための作業が膨大

・小規模案を複数取り扱うにはの多くのアレンジャーを必要とする

 

といった課題を抱えていたために、近年では、案件のトレンドが小規模化している不動産・金銭債権のみならずPublic Private Partnership(PPP)インフラといったオルタナティブアセットが証券化される事例も増加している傾向にあります。

 

PPP方式によるインフラ整備は、国の財政資金のみならず民間資金も活用した官民連携によって発展途上国のインフラ投資市場を活性化するために取り組みが行われています。ADB(アジア開発銀行)はアジア太平洋地域におけるインフラ需要を約1.7兆(約190兆円)としており、市場の活性化が期待されていますが、政治・自然災害リスクなどから信用格付けはBBB以下の案件が多く、事業性が課題ともされています。

 

時代の移り変わりとともに多様な投資機会を提供してきた証券化ビジネスですが、今後はより正常な形で市場が発展することが期待されます。

 

証券化ビジネスの法規制について

日本は不良債権処理問題を背景に不動産市場においては証券化が進行しました。

 

 

また、近年では自治体の財源確保(地方空港運営など)を背景にインフラファンド投資も市場が形成されています。

 

オルタナティブアセット投資の現状と将来性

日本では東証インフラファンド市場が2015年に創出され、

 

 ・ジャパン・インフラファンド投資法人
・エネクス・インフラ投資法人
・東京インフラ・エネルギー投資法人
・カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
・日本再生可能エネルギーインフラ投資法人
・いちごグリーンインフラ投資法人
・タカラレーベン・インフラ投資法人

 

といった銘柄が上場しており、合計時価総額は959億円(2020年2月20日)となっています。

 

現在のところ再生可能エネルギーのファンドを中心として市場が形成されていますが、インフラの整備、維持に民間の資金を活用する取り組みとして近年ではEGS投資の観点からも大きな注目を集めています。

 

東南アジア地域でのPPP方式インフラ整備に関するファンドへの投資は非常に難しいと言えますが、日本のインフラファンド投資は景気に左右されにくい、より安全性の高いオルタナティブアセット(投資商品)として日に日にその存在感を高めています。

 

証券化ビジネスは不動産や「ローン担保証券(CLO)」といった金銭債券のみならずエネルギー発電や公共インフラ(空港、港湾)にも対象を広げています。

 

また、多様な実物資産が証券化されることで、より多くの投資家への投資機会を提供できるといったメリットがあり、近年では証券化業務の効率性を向上させるためにブロックチェーンを活用する取り組みが行われています。

 

三井物産、LayerXが次世代アセットマネジメント会社を設立

 

三井物産、LayerX、SMBC日興証券、三井住友信託銀行は2020年4月にブロックチェーン技術を活用した次世代アセットマネジメント事業を協業で行うために新会社を設立することを明らかにしました。

 

新会社である「三井物産デジタル・アセットマネジメント(仮名)」は、ブロックチェーンを活用した実物資産の証券化および管理コスト削減に取り組むためにシステム開発および実証ファンドの組成を計画。

 

大企業も参画し、アセットマネジメント領域におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されるとあって大きな話題を集めています。

 

三井物産:オルタナティブな実物資産のアセットマネジメント
LayerX:ブロックチェーン技術を活用した証券化・証券の管理の効率化
SMBC日興証券:金融商品の販売
三井住友信託銀行:不動産流動化(証券化)、コンサルティング

 

日本ではLayerXを中心としてブロックチェーンの社会実装が着実に進行しており、今後も様々な分野で協業による実証を通じて、実用化に向けた取り組みが行われることが将来的な市場の発展につながるとして、大きな期待が寄せられています。

 

また、世界各国では実物資産のトークン化への取り組みも行われており、Wave Financial Groupによるバーボンウィスキーのトークン化の事例を紹介します。

 

米国 Wave Financial Group バーボンウィスキーをトークン化

ウイスキーは、「時間が経つほどに熟成し、商品価値が向上していく」といった特徴があります。

 

投資商品としては長い期間保有することで、価格が上昇していくといったメリットがウイスキーにはあり、近年では世界的にもウイスキーの売上が向上していることからも市場の拡大が予想されています。

 

米国のデジタル資産企業のウェーブ・フィナンシャル・グループは、ケンタッキー州のワイルダーネス・トレイル蒸留所と共同で「ウェーブ・ケンタッキー・ウィスキー2020デジタルファンド」を立ち上げました。

 

これは、約2,000万ドル(約21.8億円)相当のバーボンウィスキーをブロックチェーン技術を活用してトークン化し、最大で400万本分のトークンとして販売する取り組みです。

 

ブロックチェーンを活用したトークン化によって、より多くの投資家に投資機会を提供し、市場の流動性を向上させるとして実物資産のトークン化への取り組みは今後も各国で行われることが予想されます。

 

ユニークな投資商品の流通にむけて

これまで手にすることのできなかったアセットクラスへの投資機会の増大は、より多くの投資家を育成します。

 

・これまでアレンジャーの不足によって組成されてこなかった小規模不動産の証券化

・インフラ、ウィスキーといったこれまで証券化されてこなかったアセットの証券化

 

ブロックチェーン技術による証券化・証券管理プロセスの効率化によって、上記のような事例が実現できる可能性があるとされており、各国の法規制に準拠した形でのトークンの活用など、新たな市場の創出が期待されています。

 

近年では、クラウドファンディングやソーシャルレンディングなど少額投資への関心が高まる中で、ブロックチェーン技術を活用したトークン化によってユニークな投資対象が世の中に出回ることで、日本の投資市場もより一層の拡大が図られることでしょう。

 

日本のSTO市場について

 

日本においてはSTO協会・ST研究コンソーシアムの設立や大手金融グループが証券取引の効率化に向けてブロックチェーンを活用する取り組みを実施するなど、2020年5月の金商法改正を経て、STOの社会実装に大きな関心が寄せられています。

 

日本では、改正金商法のもとで「1項有価証券」に該当するとされているセキュリティトークンですが、契約又は技術により流通性が制限されている場合は、1項有価証券としての規制を課す実質的根拠がないため、セキュリティトークンは2項有価証券に該当すると考えられています。

 

※2項有価証券は「みなし有価証券」とも言われ、集団投資スキーム持分や信託受益権と同様に有価証券届出書の企業内容などの開示規制が適用されないといった特徴があります。

 

この説をもとにして日本においてSTO市場の発展を目指すことが、現状にいては重要であるともいえ、「管理された流動性」が担保されている場合には、セキュリティトークンを2項有価証券とする内閣府令が必要になるとされています。

 

・譲渡対象の制限 (サービス内の会員やホワイトリスト掲載者にのみ譲渡可能)
・ロックアップ期間の設定 (発行又は譲渡がされた後6か月間は譲渡することができない)
・スマートコントラクト等の技術の活用により、流通性が制限されていることが担保されている

→「管理された流動性」が担保されている場合には、セキュリティトークンは1項有価証券(電子記録移転権利)に該当せず、2項有価証券とする内閣府令が必須

 

内閣府令のより具体的な内容としては上記の3点が想定され、アメリカSECの登録免除規定である「Regulation」のように

 

・投資家属性(適格投資家・一般投資家・国外投資家)
・不特定多数への勧誘行為の可否
・最大調達額の制限

 

といった私募用・海外投資家用・小規模IPO用といったきめ細やかな枠組み作りが必要であると考えられます。

 

野村グループ ブロックチェーンを活用した社債発行

 

野村證券株式会社、野村信託銀行株式会社、NRIおよび株式会社BOOSTRYが

 

「デジタルアセット債」(第1回無担保社債)
「デジタル債」(第2回無担保社債)

 

の発行を行っています。

 

・ブロックチェーンを活用した社債原簿管理
・発行者が社債権者を継続的に確認できること

 

を目的として、アプリを通じた自己募集やデジタルアセットの付与といった日本初の取り組みを実現しています。

 

社債の発行には、多くの事務作業が必要とされ、これまでは案件も大口のものに限定されてきました。

 

しかし、ブロックチェーン技術を活用することで、新たな資金調達手段として企業はデジタル債を発行することができるようになり、オンラインで小口化された投資商品として投資家はデジタル債を購入することができます。

 

タイでは、トヨタ自動車の海外子会社である「Toyota Leasing Thailand」がブロックチェーンを活用して社債の発行を行っています。

 

「ブロックチェーン債」に関する取り組みは、2018年8月に世界銀行が「bond-i(Blockchain Operated New Debt Instrument)」を発行したのを皮切りに

 

2019年4月:ソシエテジェネラルSFH(フランス)がパブリックブロックチェーンで債券を発行。
2019年8月:世界銀行が2度目の「bond-i」発行。
2019年9月:サンタンデール銀行(スペイン)がパブリックブロックチェーンで債券の発行と決済を実施。(同年12月に償還
2019年12月:中国銀行がブロックチェーン上で零細企業向けの融資債券を発行。

 

といった大手金融機関による取り組みが行われています。

 

また、ドイツでは「Fundament Group」が、2億5000万ユーロ(2億8000万ドル)分の不動産担保証券をセキュリティトークンとして発行する取り組みも行っています。

 

ブロックチェーン上で債券を管理することで、仲介業者を排除することができ、取引から決済までの時間を短縮できるとして、各国で取り組みが行われています。

 

また、これまで債券管理は中央清算機関が行ってきたことから、透明性の向上も期待されていおり、すでにサンタンデール銀行は、発行から決済(ERC-20を用いた)までの業務をブロックチェーン上で実施。

 

今後は全ての業務プロセスがブロックチェーンで行われることが考えられます。

 

技術革新による金融取引の効率化には大きな期待が寄せられており、日本でも大手金融グループが主体となって取り組みが進められています。

 

 

「Toyota Leasing」の取り組みについて

 

「Toyota Leasing」は、「Thai Bond Market Association」が開発を進めるブロックチェーンプラットフォームを活用して「ブロックチェーン債」の発行を行っています。

 

バンコク銀行が引受会社となり、機関投資家向けに「5億バーツ」の債券を発行。

 

この取り組みは、タイの規制サンドボックス内で行われ、タイ証券取引委員会(SEC)、タイ銀行が協働しています。

 

タイではブロックチェーン上での証券発行に関する認可に向けて取り組みを進めており、電子到着ビザ(eVOA)や海上におけるコンテナのトレーサビリティー管理などにもブロックチェーンを導入。

 

ブロックチェーンの活用が進むタイでは、「ライトネット(Lightnet)」と呼ばれるブロックチェーンスタートアップ企業が約34億円に及ぶ資金調達に成功しています。

 

ステラのブロックチェーンを利用したクロスボーダー決済を手がけており、2020年第1四半期には稼働を予定。

 

今回の「ライトネット(Lightnet)」の資金調達には、日本のセブン銀行が参加しており、銀行口座を持たない人々への金融包摂の実現などが期待されています。

 

タイでは、債券発行のみならず、ブロックチェーンの社会実装が着実に進行しています。

 

ちなみに、将来的には「ABS (資産担保証券)×セキュリティトークン」の市場規模拡大が予想されており、社債や不動産担保証券のトークン化にも大きな注目が集まることとなるでしょう。

 

不動産セキュリティトークン・P2P取引の可能性

 

・セキュリティトークンP2P取引について

・不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンの普及

 

米国では不動産の部分的所有権(fractional ownership)、ヨーロッパでは不動産担保証券のトークン化への取り組みが行われています。

 

不動産トークンプラットフォーム「RealT」と分散型取引所 (DEX)「Uniswap」は戦略的パートナーシップを締結し、ブロックチェーン上で米国不動産の部分的所有権トークンを購入することができるようになりました。

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)は、日本では馴染みのない権利ですが、ハワイなどで不動産のタイムシェア(1年の中で数ヶ月間だけ不動産を利用できる権利)を利用することで、休暇を楽しむこともできます。

 

※部分的所有権がセキュリティ(証券)に該当するかは検討が必要であると考えられますが、米国においては「real estate token」と表記されることが多く散見されます。

 

この章ではセキュリティトークン市場概況を踏まえて、P2P取引と不動産トークンの可能性について考察していこうと思います。

 

これまで、米国市場ではRegulationに準拠し、セキュリティトークン発行を行うケースが一般的でしたが、Rule144の適用によって、1年間の譲渡制限が設けられていました。

 

この譲渡制限によって、セキュリティトークン取引所は流動性の向上が見込めず、今年の4月にはATS(Altanative trading system)のライセンスを持つ「OpenFinanceNetwork」が上場企業への契約の見直しを求める発表が行われました。

 

取引高が見込めない現状においては、取引所の運営コストが大きな問題とされ、ボストンデジタル取引所の開設もナスダックが反対を表明するなど、米国においてはセキュリティトークン取引所の存在意義が見直されつつあります。

 

そのような中で、セキュリタイズはP2Pでのセキュリティトークン取引を可能とする「Instant Access」を発表。

 

・発行体によるKYC/AMLチェック
・DSプロトコルによってコンプライアンスに遵守した取引が可能
・P2P取引ネットワーク「AirSwap」を利用
・取引用URLリンクからセキュリティトークンが購入可能に

 

といった特徴が「Instant Access」にはあり、取引所を介さずともコンプライアンスに遵守した取引を実現できるとして、「Instant Access」によるセキュリティトークンの取引が、今後どのような広がりを見せていくのか大きな注目が集まります。

 

セキュリタイズはプライマリーマーケットのみらず、セカンダリーマーケットにおける新たなインフラストラクチャーを世に提供しました。

 

セキュリティトークン市場は、各国の資本市場の流動性を向上させ、企業活動の活性化を促進させるとして大きな期待が寄せられている分野ではありますが、個々の投資家がブロックチェーン技術によってコンプライアンスを遵守できることで新しい取引のあり方を実現できるとも考えられます。

 

既存の証券取引市場においても「投資家が統治するグローバルな取引所」についての議論が交わされており、P2Pによる国境を越えたセキュリティトークン取引の普及により、資本市場のさらなる発展が期待されます。

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンの普及

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンの登場によって、セキュリティトークン市場では取引高が増加しており、すでに「RealT」が発行した下記の不動産は完売となっています。

 

・20200 Lesure St, Detroit, MI 48235
・5942 Audubon Rd, Detroit, MI 48224
・9336 Patton St, Detroit, MI 48228
・16200 Fullerton Ave, Detroit, MI 48227
・9943 Marlowe St, Detroit, MI 48227

 

RealT HPでは物件情報を確認することができます。

 

「Uniswap」を通じて、ドイツ、香港、シンガポールなど世界40ヵ国以上の国々へ各不動産の部分的所有権は「RealTokens」として販売され、個人投資家も購入が可能です。

 

※ 米国投資家は対象外とされています。

 

投資家には月々の賃貸料金から配当が分配され、

 

米ドル(家賃)→米ドルペッグのステーブルコイン「DAI」→投資家のイーサリアムに送信(配当)

 

といった流れで配当がブロックチェーン上で瞬時に実施されます。

 

このことでこれまで金融機関や業者を介して行われていた配当の手続きが効率化され、人的コストの削減にもつながります。

 

RealTによって、不動産トークン取引は前月と比較して、約2倍になり、REST(不動産セキュリティトークン)はセキュリティトークン市場全体の総取引量の約15%を占めています。(2020年3月)

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)のトークン化によって、より多くの投資家が暗号資産による不動産投資を実現することができるでしょう。

 

一方で、不動産の部分的所有権は国ごとに法律の整備状況が異なり、そのトークン化に関する法律構成については慎重な議論が必要となります。

 

有限会社持分権(部分的所有権)のトークン化

 

米国の不動産トークンプラットフォーム「RealT」はデトロイトにある不動産「8342 Schaefer Highway, Detroit, MI 48228」をRegulationD、Sに準拠してトークン化。

 

フランスやドイツの投資家を中心として販売開始から10日間で4000のトークンを完売させました。

 

販売開始から10日間で不動産トークンを完売させたのは、これまでの最速記録であり、48カ国以上の投資家が参加。

 

フランス:26.93%

ドイツ:11.17%

スイス:10.94%

オランダ:8.33%

ベトナム:7.87%

ブルガリア:4.29%

 

「8342 Schaefer Highway, Detroit, MI 48228」には現在のところ259人の投資家がいます。(2020年4月28日16時)

 

RealTではデルフェア州でLLC(有限会社)を設立し、持分権をトークン化することで、海外の投資家向けに分散型取引所Uniswapを介して、販売。

 

LLC(有限会社)持分権の法的スキームを利用しているとされ、今後も「RealT」による米国不動産のトークン化に注目が集まることでしょう。

 

・米国 LLCスキーム (デラウェア州)
1 州の規定に基づいて有限会社(LLC)を設立
2 各シリーズのLLCの持分権をトークンに分割
各シリーズのLLCの持分権は、等しいトークンユニットに分割されます。

 

「8342 Schaefer Highway, Detroit, MI 48228」の不動産情報詳細

年間利回り:12.59%

総家賃:年間36,720ドル

トークンごとのレンタル年間$ 6.40

総トークン数:4000

タイプ:ファミリー向け

大きさ:3,230平方フィート

テナント有

エクィティ・マルチプル(投資回収率:投資してから何年で何倍になるか):2x-4x

・財務

総家賃/月$ 3,060.00

プロパティマネジメント (8.00%)-244.80ドル

RealTプラットフォーム (2.00%)-61.20ドル

固定資産税-$ 250.00

保険-81.29ドル

ユーティリティ-189.42ドル

維持費-99.17ドル

純家賃/月2,134.12ドル

純家賃/年25,609.44ドル

資産価格203,333.33ドル

キャップレート12.59%

※物件の利回りに関するすべての財務諸表は、現在の状況に基づいたものであり、いつでも変更される可能性があります。

 

不動産セキュリティトークン 各国の法律構成について

 

不動産の部分的所有権(fractional ownership)は投資家に低価格で複数の不動産物件に投資する機会を提供します。

 

リスク分散が重要視される昨今の投資環境においては、安定的な利回りを生み出す不動産投資においてもポートフォリオの多様化が重要であると考えられます。

 

一方で、投資家間での部分的所有権(fractional ownership)に関する契約の締結が必要になり、配当条件や投資家保護への条件など法的権利の確認、交渉サポートなどを弁護士に相談することも重要です。

 

また、タイムシェアは不動産の利用期間を予約(確保)するための権利であり、収益配当を生み出さないため部分的所有権(fractional ownership)とは区別して考えられています。

 

日本においては

 

・信託受益権、匿名組合持分:公証役場での確定日付取得が必須
→私的自治の原則に則り、当事者間でアカウント契約を締結することで、「二項有価証券 その他の権利」としてセキュリティトークンを定義する

 

といった法律構成に関する議論も交わされています。

 

不動産セキュリティトークンについては各国で法整備の状況が異なることからすべての国々で米国・のユースケースを採用できるとは限りません。

 

しかし、将来的なセキュリティトークン市場の発展のためには不動産トークンの取引高増加が重要であると考えられ、その実現可能性については多くの議論が交わされることが期待されます。

P2P取引と不動産トークンの将来性

 

P2P取引と不動産の部分的所有権(fractional ownership)トークンはセキュリティトークン市場の発展を牽引することが予想されます。

 

P2P取引ネットワーク「AirSwap」、分散型取引所 (DEX)「Uniswap」を介したグローバルなセカンダリーマーケットの形成は、これまでのセキュリティトークン市場で必要とされてきた流動性の向上を担うものであり、米国不動産などこれまで投資対象とされてこなかった投資商品の購入も可能となります。

 

RealTでは、配当がステーブルコインで行われるなど、既存の資本市場では想定されていない取引のあり方について各国の規制当局がどのような見解を示すべきなのか検討の余地は必要ですが、各国の法律に準拠した形で暗号資産やトークンが利用されることで新たな資本市場の形成にもつながると考えられます。

 

不動産セキュリティトークン市場の展望

セキュリティトークン市場において多くの注目を集めているのが不動産領域における流動性の向上です。

日本でもクラウドファンディングやソーシャルレンディングを活用して国内のみならず、海外の不動産への投資も近年では行えるようになるなど、市場の拡大が見込まれています。

一方で、コロナウィルスの感染拡大によって商業用不動産ではテナントの多くが休業を余儀なくされ、産業の構造的変化への対応が迫られています。

また、観光客の減少による宿泊施設の空室、不特定多数の人々が集まるシェアオフィスなど、ここ数年間で成長を遂げていた不動産事業に関しても業態の見直しが必要であると考えられます。

今後はSOHOのような形で在宅勤務が当たり前となり、どのように統制環境を整備していくのかなど、コンプライアンス遵守や企業文化の変化への対応も企業にとっては不可欠になるでしょう。

シュリンクしていく事業がある一方で、不動産領域においてはより小規模かつ効率性の高い新たなビジネスモデルの構築を模索する取り組みが重要であると言えます。

そのような中で、米国においてはVertalo、tZEROなどが不動産のトークン化事業を発表しています。

・既存のプライベートエクイティ取引所との差別化:成長企業が株式をトークン化することの意義
・SECへの登録免除規定Regulationへの準拠による1年間のロックアップ:取引高、上場銘柄がすぐに増えない

といった、これまでのセキュリティトークン市場の課題に対する1つの答えとして不動産トークンによる取引所の活性化は、将来的な市場の発展に向けて非常に重要であると考えられます。

・取引所(ATS)での不動産トークンの売買によるセキュリティトークン市場の活性化

・不動産証券化のバックオフィス業務へのブロックチェーン技術の活用による事業効率化の実現

など、不動産領域において大きな可能性を秘めているトークン化への取り組みが世界的に広まることで市場はさらなる発展が見込まれます。

この章では、2010年代の不動産市場動向を踏まえて、不動産トークンの可能性について探っていこうと思います。

Vertalo、tZERO $ 300Mの不動産をトークン化

Vertalo、tZERO、Prime Trust、およびAdvantage Blockchainは、$300Mの不動産をトークン化する4社間のパートナーシップを発表しました。

・Vertalo・Advantage:Tezosブロックチェーン上で不動産をトークン化

・Prime Trust:トークンを保管(カストディ)

・tZERO:パートナーであるブローカーディーラーDinosaur Financial Groupを通じて、ATSでトークンの取引を実現

上記のような流れで、不動産トークンの発行からセカンダリーマーケットでの取引を予定しています。

このパートナーシップは、ペンシルベニア州を本拠地とする「Real Estate Capital Management」のポートフォリオの段階的なトークン化の実現を目指すものです。

今後3か月でおよそ9000万ドルの不動産トークン化を予定しており、ペンシルベニア州とコスタリカのホテルのトークン化を皮切りに、一般投資家に向けた不動産投資機会の提供が実現されると考えられます。

「米国でReg Dを使用してSTO を行う場合、それらが取引可能になるまで1年待つ必要があります」

「この取り組みは不動産をトークン化しているため、すぐに上場され、すぐに取引できるようになります。」

「私たちは資金を調達するためにセキュリティトークンを使用していません。テクノロジーを使用してコストを削減し、コストを節約しています。」

VertaloのCEOであるDave Hendricks氏は上記のように述べており、セキュリティトークンによる不動産の資金調達よりも、現在はより安定した流通市場の構築を目指しているとしています。

Vertaloは、不動産オーナー、投資家、ファンドマネージャーが現在の不動産投資をトークン化するためのツールとしてVertalo Real Estateプラットフォームを開発したとしており、資産のトークン化に対応するためトランスファーエージェントの新たなあり方を指し示しているとも言えるでしょう。

レッドスワン、Polymathが22億ドル規模の不動産トークン化を実施

個別の企業に目を移すと、テキサスにおいて商業不動産販売を手掛けるレッドスワンが、セキュリティトークン発行プラットファームPolymath(ポリマス)と提携し、22億ドル規模の不動産資産のトークン化を行っています。

・tZERO:英国において高級不動産のトークン化計画(2020 Q1)
・Habor:107億円規模の不動産トークン化を実施

上記の取り組みが米国ブロックチェーン企業によって行われてきましたが、Polymathも2社に続いて不動産のトークン化を行ったことで、ブロックチェーン技術を活用した不動産市場の流動性向上が米国では進んでいます。

日本においてもSecuritize(セキュリタイズ)とLIFULLが不動産のデジタル証券化の実証実験を行っており、不動産のデジタル化に向けた取り組みには今後も大きな話題を集めることでしょう。

2020年代:不動産セキュリティトークン市場の可能性

リアルエステートセキュリティトークン(REST)市場では、不動産トークン化プラットフォームであるRealTに3つの新しい不動産物件が掲載されるなど、RESTの取引量はセキュリティトークン市場全体のおよそ15%に達しています。

これまでtZEROやOpen finance Networkにおいて取引高が増えないことを背景にSTO市場の将来性については懐疑的な声も少なくありませんでした。

リアルエステートセキュリティトークン(REST)は、米国のみならずドイツ(Black Manta)でも取り組みが行われており、STO市場の拡大に向けて大きな役割を果たすことが考えられます。

これまで一般投資家に出回らなかった高級不動産のみならず、成長が見込まれる東南アジアの不動産のトークン化についても大きな期待が寄せられます。

法的な要件が各国でどのように定義されリアルエステートセキュリティトークン(REST)が広まっていくのか。

悲観的な予想が強まる2020年代の不動産市場において、トークン化は新しい時代を切り開く大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

・ヨーロッパ セキュリティトークン市場について

TokenSoftは、スイスに設立された「TokenSoft International AG」を通じて、ヨーロッパでのセキュリティトークン事業を展開しています。

ヨーロッパ市場では、ドイツやイギリス、スイスを中心にSTOが実施され、各国の法規制に応じて様々な特徴を有しているのが特徴です。

スイスでは、blockimmoがブロックチェーンベースの不動産取引プラットフォームを開発し、2019年3月にはおよそ289万ドルの不動産(アパート、レストラン)取引に成功しています。

blockimmoは、「STX.SWISS」と共同で、株式の20%をセキュリティトークンとして発行し、STOを実施。

このSTOは、スイス金融市場監督局(FINMA)およびリヒテンシュタイン金融市場監督局(FMA)からの認可を受け、行われてます。

また、「OverFuture SA」は、ブロックチェーン上でIPOを行う「デジタルIPO」の実施を発表しています。

株主情報のブロックチェーン上での管理・共有を行うことで、IPOプロセスの効率化が図られるとされていますが、日本では

・主幹事証券会社
・株主名簿管理人
・株式会社証券保管振替機構

といったプレイヤーがIPOには必要不可欠であり、どのような規制に基づいてブロックチェーン上で、上場に向けた各種業務が行われるのか注目が寄せられています。

イギリスでは、株式をセキュリティトークン化し、IPO前のラウンドでSTOを実施する「ハイブリッドIPO」の実施を「Worldchess」が発表しており、ヨーロッパにおいては国ごとに多種多様なセキュリティトークンの活用を目指す取り組みが行われています。

そのような市場環境の中でもドイツでのSTOはヨーロッパ市場においても大きな注目を集めています。

ドイツでは、規制当局であるBafinからの認可を受けるために多くの企業がSTOプロジェクトの監査手続きに取り組んでいます。

ETO(Equity Token Offering)プラットフォーム「Neufund」は、3,387,752ユーロに及ぶETOに成功。

Bafinとの協議の中では、プロジェクトの開示情報の監査のみならず、

・最低投資額
・大口投資家限定

といったこれまで前例のない募集要項についても話し合いが行われました。

「Neufund」がBafinの認可を受けてからは、

・P2Pの中小企業向けの融資プラットフォームを運営する「Bitbond
・有望スタートアップ企業の投資ポートフォリオを提供しているVCファンド「StartMark

といった企業が社債セキュリティトークンを発行しています。

また、不動産証券を担保としたセキュリティトークンの発行も「Fundament Group」が行っており、ベルリン、ハンブルクなどを拠点とした不動産をポートフォリオとして、2億5000万ユーロに及ぶSTOが実施されています。

米国では「RealT」がRegS、Dに準拠して不動産事業を営む有限会社の部分的所有権のセキュリティトークン発行を実施し、Uniswapを通じて、海外投資家への販売を行っており、各国の規制当局および規制ごとに不動産セキュリティトークンの定義も異なることがわかります。

さらには、不動産開発プロジェクトへの参加証明書をセキュリティトークンとして発行するといったユニークな取り組みもBlack Mantaが実施しています。

その他のヨーロッパ諸国でも規制当局の認可を受け、下記のようにSTOが行われています。

デンマーク:ARYZE

リヒテンシュタイン:Smartchem

・新築不動産プロジェクト参加証明書のセキュリティトークン化

Black Manta Capital Partners(ブラックマンタ)は、ルクセンブルクに設立され、ドイツに子会社を展開し、セキュリティトークン事業に取り組んでいます。

今回、ブラックマンタはドイツの不動産企業であるTigris Immobilienとの協業によって、総額で$12 Million(およそ13億円)分の新築不動産のセキュリティトークンプロジェクトを開始しました。

ベルリン・フリードリヒスハイン=クロイツベルク区での不動産開発プロジェクトへの「Assert participation certificates(参加証明書)」をセキュリティトークン化(詳しくは公式HPを参照)と考えられ、高利回りな新築不動産プロジェクトに最小投資額500ユーロから参加できるのは特徴です。

・発行体:Tigris Immobilien

・トークン総額:1,999,500ユーロ(プロジェクト全体10,943,398ユーロ)

・最小投資額:500ユーロ

・種類:メザニン

・アセット:参加証明書(20%の収益配当)

・購入可能通貨:EUR/BTC

・利回り(税引前)IRR:8%pa

・期間:2020年4月14日-5月31日

・トークンの譲渡:可能

・プロトコル:ERC-20

・プロジェクト概要:新築不動産開発

(約2000平方メートル:それぞれ40〜60平方メートルのアパートユニットが建築予定)

リアルエステートセキュリティトークン(REST)市場について

リアルエステートセキュリティトークン(REST)市場は今年に入り、活況を呈しており、Realtによる米国不動産のセキュリティトークンプロジェクトによって、全体の取引高の15%を占めるようになりました。

米国では企業がSTOを行う場合にはSECへの登録免除規定であるRegulationに準拠してセキュリティトークンは発行されるために、Rule144に基づいて1年間のロックアップ期間が課せられます。

これは未公開企業の株式の短期売買を防止し、投資家保護を実現するための規制ではありますが、STO市場においては取引量が増加しないことから市場の将来性に疑問を呈する声も少なくありませんでした。

不動産セキュリティトークンはRegulationに準拠する必要がないことから取引高の増加に貢献することが予想され、そのことから2020年はSTO市場がより一層の拡大を遂げることが考えられます。

これまで不動産投資は一部の投資家限定のインカムゲイン型の投資商品として親しまれてきましたが、今後は一般投資家へより安定的で高利回りな海外不動産に投資できる機会が提供されることでしょう。

そのような市場環境の変化が予想される中で、ヨーロッパでもリアルエステートセキュリティトークン(REST)への取り組みが行われたことはさらなる市場の発展を期待させるものであり、より多くの国々で不動産市場の流動性および新規性の高い取り組みによる投資市場の活性化が図られると考えられます。

今回のブラックマンタとTigris ImmobilienのSTOは、ドイツとオーストリアの投資家限定で行われるものですが、今後はヨーロッパ全域を対象としたSTOの実施を検討しているとのこと。

 

参照:  https://blackmanta.capital/tigris-s17a/

今回の不動産開発プロジェクトの概要について、公式サイトで確認したところ非常に洗練されたアパートメントであることがわかりました。

このような不動産に投資できるとなると、国際的な流動性向上が見込まれることでしょう。

 

・ドイツ STO市場について

 

ドイツでは国債全年限でマイナス金利化が進んでいますが、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和とともにキャピタルゲインを得ることを目的として買いが殺到。

国債利回りは、財政悪化の指針として古くから知られていましたが、すでにその役割は失われており、債券市場における混乱の深刻さを物語っています。

財政均衡を最重要課題としてきたドイツ政府ですが、景気後退(リセッション)への備えとして、500億ユーロ(約5兆9000億円)の追加支出を行う姿勢を明らかにしています。

・4-6月期国内総生産(GDP)前期比0.1%減少
・ドイツ製造業PMI速報値43.6(予想:43.0)

米中貿易摩擦、イギリス合意なき離脱(ブレグジット)といった国際情勢の混乱とともに製造業や輸出が低迷しているドイツ経済ですが、景気刺激策として新たな産業の創出を模索している状況にあると言えます。

そのような中で、ブロックチェーン企業「ブラックマンタ(Black Manta Capital)」が、STOプラットフォームの立ち上げをドイツ連邦金融監督庁(BaFIN)から承認されたことが明らかになりました。

「ブラックマンタ(Black Manta Capital)」はルクセンブルクの企業であり、ヨーロッパを中心としてSTOプラットホームの展開を目指しています。

ドイツ連邦金融監督庁(BaFIN)からの承認を得るまでには申請から9ヶ月の期間を要したことが明らかになっていますが、ドイツではBitbond、Fundamentなどに次いでのSTO事例として注目を集めています。

今回のドイツ連邦金融監督庁(BaFIN)による承認によって、「ブラックマンタ(Black Manta Capital)」は今年の第4四半期にもSTOプラットホームの提供を始めるとしています。

BMCPコンサルティング(ウィーン)
BMCP社(マルタ)

といった企業とともに投資プラットフォーム市場の開拓を行うとしており、シンガポールにおいても「ブラックマンタ・アジア(Black Manta Capital Asia)」を設立する予定となっています。

ドイツはBlackMantaを含めるとすでに3件のSTOが、ドイツ連邦金融監督庁(BaFIN)に承認されており、世界的にも先進的な取り組みを行っています。

アメリカではSEC(証券取引委員会)が規制当局となっており、登録免除規定のRegulationを適用することで、私募によるSTOが多く行われています。

ドイツの場合は

公募債(Bitbond)
不動産担保証券(Fundament)

を裏付け資産としたセキュリティトークン発行が行われており、Fundamentの場合は2億5000万ユーロ(2億8000万ドル)規模のSTOを計画しているなど、大規模な資金調達が行われています。

・米国企業のヨーロッパ市場参入によるグローバル化について

“Due to the regulatory clarity in Switzerland and due to the comfort that the regulators have there with blockchain-based assets, the pace of innovation has been a little bit faster in Switzerland and so that’s why we do see more activity out in Switzerland,”

TokenSoft Inc.のCEOであるMason Bordaはこのように語っており、高い技術力を持つ米国企業が海外市場に参入することで、さらなる市場の発展が見込まれると考えられます。

規制が明確になっている地域では、ブロックチェーンシステム開発企業としてもカスタマイズがしやすい一方で、多くの国々ではセキュリティトークンおよび暗号資産に関する法規制が明確化されていないといった課題が存在しています。

また、法規制が定められた国や地域においても既存の金融市場の安定性を担保するために厳格なセキュリティトークン規制が整備されるといった事例もあり、米国においてもSEC登録免除規定「Regulation」の改正案が提出されるなど、セキュリティトークンをめぐる法規制に関しては今後も議論が必要であると考えられます。

TokenSoftのスイスでの展開がヨーロッパのセキュリティトークン市場にどのような好影響をもたらすのか大きな期待が寄せられていますが、米国企業の海外進出は各国のセキュリティトークンビジネスの高度化を図る上でも重要な意味を持つことでしょう。

アジア セキュリティトークン取引所や法規制について

アメリカでは、セキュリティトークンを活用した資金調達の事例が毎月報告されており、最近ではReg+を適用したICOがSECに認可され、これには一般投資家も投資に参加しています。

アジアではシンガポールやフィリピンCEZAにおいてセキュリティトークン取引所が開設されるなど、取り組みが行われており、各国は法規制の整備を急いでいます。

アジア各国で行われているSTOへの取り組みについて解説していきます。

シンガポール

シンガポールでは2017年8月にICOを規制することを発表。

これはICOを証券先物法の規制対象とすることを示したもので、その後もマネーロンダリング防止やテロ資金対策を目的としたライセンスの取得を義務化。

同年11月にはガイドラインによってICOが明確に規制されるなど、世界に先駆けて取り組みが行われました。

ICOを行うためにはライセンスの取得だけでなく、目論見書の提出なども必要とされています。

規制強化にいち早く取り組んだシンガポールは、現在アジアにおいても最も重要な拠点として知られており、ST取引所も開設されています。

2018年第4四半期には、ICOによって2億5100万ドルの資金調達が行われており、その件数は85件にも及んでいます。

シンガポールは世界の中でも暗号資産市場のけん引役ともいえますが、その多くは中国やロシアといった規制の厳しい国からの流入であることが考えられています。

iSTOX、1exchange (1X)といったセキュリティトークン取引所も開設されており、セカンダリーマーケットの創出にむけた取り組みがシンガポールではすでに行われています。

・セキュリティトークン取引所「iSTOX」に東海東京が出資へ

法規制に準拠した既存金融システムにブロックチェーン技術を活用する取り組みは連日のように報じられていますが、アジア市場においては中国人民元デジタル通貨発行など、中国が中心となってブロックチェーン技術の発展が行われると予想されてます。

金融領域のみならず、様々な産業分野においてブロックチェーン技術の活用が行われると考えられ、ベトナム・ホーチミン市におけるスマートシティ構築など、「社会実装」に向けた取り組みに関する報道から連日、目が離せない展開が続いています。

11月14日には、シンガポールのセキュリティトークン取引所「iSTOX」に東海東京フィナンシャル・ホールディングス(以下、東海東京)が出資を計画していることが明らかになりました。

東海東京は、将来的に日本市場におけるセキュリティトークン取引所の開設を目指しているとのことで、先週の「セキュリティトークン研究コンソーシアム」の設立に引き続き、日本でもセキュリティトークンへの取り組みが相次いで報じられています。

アメリカでは、tZEROやOne Financial Networkが1年間のロックアップ期間を経て、セキュリティトークン取引をスタートさせていますが、アジアにおいても各国で金融市場のデジタル化が進んでいると言えるでしょう。

東海東京は、「iSTOX」の親会社である「ICHX TECH」におよそ5億円の出資を行うとしており、シンガポールにおけるセキュリティトークン市場の活性化が期待されています。

また、日本企業が「iSTOX」を利用してセキュリティトークンを発行する取次を東海東京フィナンシャル・ホールディングスは計画しており、協業による相互的な発展が見込まれるでしょう。

アジア市場においては、中国人民元をデジタル通貨として発行するとの報道に大きな注目が集まっており、アリペイやウィーチャットペイなどスマホ決済サービス市場の競争激化が予想されます。

日本においてもソフトバンクとラインの包括提携(買収)によって、PayPayとLINE Payの統合などが話題となっていますが、多くの企業が金融サービスのデジタル化に取り組んでいることがわかります。

セキュリティトークン市場においては、セキュリタイズなど各国の法規制に準拠した発行プラットフォームが市場を牽引しており、日本においても2020年春の法改正をきっかけに市場の形成が行われると考えられます。

最近では、スタートアップ企業へのオーバーバリュエーションが国際的な問題とされてきましたが、未公開株式市場の流動性向上をセキュリティトークンは担うとされており、将来的には適正な企業価値の評価にも繋がることでしょう。

フィリピン

フィリピンではカガヤン経済特区庁(CEZA)が規制当局となっており、SRO(自主規制団体)にはアジアブロックチェーン暗号協会(ABACA)が指定されています。

ICOを行うためには目論見書の提出や詳細な情報開示が義務付けられ、「DATO(デジタル・アセット・トークン・オファリング)」として定義付けがなされているのです。

「DATO(デジタル・アセット・トークン・オファリング)」は500万ドル未満、500万〜1000万ドル、1000万ドル以上と資金調達額で3種類の分類がされています。

また、ユーザートークン、セキュリティトークン、コモディティと性質によっても分類がなされている状況です。

2018年12月にはICO規制の草案が発表され、その草案の中ではICOトークンは証券に分類されることや証券取引委員会に登録されることが明文化され、必要情報の開示など投資家保護の内容も盛り込まれています。

CEZAには、CEZEX、ADAXといったセキュリティトークン取引所が開設されており、セカンダリーマーケットの市場拡大を見込んだ取り組みが行われています。

タイ

タイでは2018年5月にデジタル資産事業法が定められ、ICOに対しては法整備を進めた上で、合法的な資金調達方法とすることを目指しています。

現在では二段階の審査制度が設けられており、一段階目の「ICOポータル」による審査は投資家保護のためにプロダクトや本人確認が行われます。

このICOポータルによる審査を通過したプロダクトは、タイSEC(証券取引委員会)の審査を受けるといったプロセスを経て、はじめてトークンの発行が行われます。

同年12月にはICOに対する規制緩和についての公聴会が開かれました。

ここでは、プライベートのトークン発行においては目論見書の提出が不要になるといった議論が行われています。

また、2019年2月にセキュリティトークンの発行を承認する改正証券取引法が可決され、現在は、正式施行にむけた規制の枠組み作りに取り組んでいる状況です。

アジア STO市場の展望

ICOの問題点として持続可能なビジネスモデルではないことが挙げられます。

誰でも参加できる資金調達法でありますが、その調達した資金はプロダクトとは関係のない企業にも流れ、ほとんどのトークンが今では使えなくなってしまっています。

爆発的に普及したICOでしたが、投資家保護の観点からも市場自体はしばらくの間、停滞を余儀なくされることが予想されます。

しかしながら、アメリカではSECへの登録免除規定であるRegA+を適用し、ブロックスタックがICOによる資金調達に成功するなど、法規制に準拠する資金調達方法として利用されるケースも出てきています。

すでにアジア各国ではSTOに関する取り組みが行われており、今後セカンダリーマーケットがどのような発展を遂げるのか注目が集まります。

 

ブロックチェーン技術を活用した金融のデジタルトランスフォーメーション(DX)

ドイツ国内の証券取引所の統括を行なっている企業グループであるドイツ取引所は、コメルツバンクやクレディスイス、UBSとの共同で債券取引への分散型台帳技術の導入への取り組みを行なっています。

証券取引の分野では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として分散型台帳技術によるデータ共有システムの構築への取り組みが行われており、日本でも三菱 UFJフィナンシャル・グループがセキュリティトークンとスマートコントラクトを活用した金融取引プラットフォーム「Progmat(プログマ)」を発表。

今回のドイツ取引所の債券取引には、ブロックチェーンCordaを活用して開発されたプラットフォームが使用されており、ルクセンブルクのHQLAX社が開発を手がけています。

世界各国でもブロックチェーンへの注目は高まっており、取引履歴の偽造を防止し、脱税を防止できるとして中国では金融のみならず各分野で導入が進んでいます。

・中国銀行 ブロックチェーン債券発行システムで金融債権(200億元)を発行
・バイドゥ ブロックチェーン、AI、ビッグデータを活用した「XuperChain」によるスマートシティプロジェクト(医療、交通、行政、司法)を公表
・国外への資本流出防止などを目的にブロックチェーンを活用した「デジタル人民元」の発行を予定

「暗号法(Cryptography Law)」を2020年1月に発効予定とされていますが、「デジタル人民元」の普及によって米ドルとの基軸通貨争いにも注目が集まります。

アメリカではGAFAが金融業へ進出することに対して、既存金融の秩序を乱すとして規制当局をはじめとして反対する声が上がっていますが、各分野で導入が進められています。

・Nasdaq 金融機関へのブロックチェーンPFを開発しているSymbiontに約21億円を出資
・バンク・オブ・アメリカ 貿易金融PFマルコ・ポーロ・ネットワークに参加
・IBM ブロックチェーンプラットフォーム「Food Trust」を各企業が活用

ネスレやウォルマートが食の安全性を高めるために食品トレーサビリティシステムに「Food Trust」を活用していますが、金融分野ではFacebook・Libraの失速など中国と比較すると社会的ニーズの低さによってブロックチェーンの普及が遅れているとも言えます、

日本ではERP(統合基幹業務システム)導入の際にも各企業ごとに異なるシステムを使用するといった事例もあり、企業や業界を横断した業務の統一化への取り組みは社会的関心は高いものの、実現は難しいとも考えられてきました。

一方で、金融の分野では現金や紙による取引をFintechを活用した取り組みによって効率化するキャッシュレス決済などがここ数年で普及しており、証券取引においてはセキュリティトークンとスマートコントラクトの活用がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するとして「Progmat(プログマ)」など開発が進められています。

医療や行政の分野では、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが活発に行われていますが、ブロックチェーンを導入するほど偽造防止に対してニーズが低いこともあり、ブロックチェーンの社会実装は特定の分野に限られることが予想されます。

金融の分野に関しては、「Progmat(プログマ)」のように有価証券をセキュリティトークンとして発行し、スマートコントラクトとプログラマブルマネー(デジタル通貨のようなものと想定されます)による自動決済によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現が果たされるとしてブロックチェーンを導入する取り組みには期待が寄せられています。

ドイツ取引所や中国銀行、大手銀行HSBCもスマートコントラクトを活用した債券市場の効率化への取り組みを行なっており、tzeroやOpenfinanceといったセキュリティトークン取引所とともにセカンダリーマーケットの発展を担うことが予想されます。

これまで、セキュリティトークンは発行プラットフォームを活用した資金調達方法(STO)として活用されてきましたが、既存金融商品(有価証券)のデジタル化とスマートコントラクトとの組み合わせによる金融市場の効率化への活用が行われることでしょう。

中国のキャッシュレス決済Alipayの開発・運営を行なっているアントフィナンシャルでは、ブロックチェーンを活用することで、およそ3ヶ月かかっていたサプライチェーン・ファイナンスにおける中小零細企業の資金調達(融資)を数秒でできると発表しています。

アントフィナンシャルは、これまで透明性の低かった中国の中小企業のファイナンス情報をブロックチェーンで共有・管理を行えるとして、リアルタイムでの資金調達(融資)を実現することを目指しています。

スマートコントラクトによる自動決済によって、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に普及している金融市場ですが、既存金融商品(有価証券)のみならず収益配当権などのセキュリティトークン化によって、より多くの人々がトークンエコノミーを活用したセカンダリーマーケットでの取引を実現するための取り組みも進んでいます。

ブロックチェーンへの関心は高いものの、導入に関してはその必要性がない分野も多く存在しますが、金融分野においてはその活用がどのように社会を変革していくのか今後も注目が集まります。

STO 応用的活用事例

Securitize(セキュリタイズ)」「Axoni(アクソニ)」といった米国のブロックチェーンスタートアップ企業は、高い技術をもとにして金融機関との提携を進めており、ブロックチェーンの社会実装が着実に進行しています。

そのような中で、不動産市場においては証券化プロセスの効率化を目的にセキュリティトークンを活用する事例が相次いで報じられており、米国のセキュリティトークン関連企業の「tZERO」、「Habor」は不動産投資会社と連携し、不動産のトークン化事業を手掛けています。

不動産市場では行われており、大手投資銀行が相次いでレポートを作成するなど、不動産証券化プロセスの効率化および市場の流動性向上への期待が高まっています。

JSTA・デロイト トーマツ コンサルティング合同会社・Securitize レポート

オックスフォード大学レポート

tokenyレポート

また、特殊な事例としてはNBAで活躍するプロバスケットボール選手であるスペンサー・ディンウィンディーが契約金を裏付け資産としてSTOを実施するなど、投資家がこれまで手にすることのできなかったアセットクラスの創出も行われています。

2次流通を担うセカンダリーマーケットへ上場するプロジェクトは現在のところ上記のように多いとは言えませんが、tZEROはブローカーディーラー5社と契約を締結するなど、2020年はより多くのSTOプロジェクトが誕生することが予想されます。

・NBA ディンウィンディー選手のSTOについて

米国では著名な音楽家が著作権収益や将来的なライブ活動による収益を担保にして債券を発行してきた事例があり、過去にはデヴィットボウイやジェームズブラウンが資金調達に成功しています。

このような取り組みはデヴィットボウイの債券発行(ボウイ債)をサポートしたデヴィット・プルマンに由来して「プルマン債」と呼ばれています。

金融ビジネスと音楽を結びつけ、証券化に成功したデヴィットボウイの功績は今もなお語り継がれており、音楽不況が始まることを見越して1997年に発行された「ボウイ債」は証券化ビジネスの草分け的存在ともされています。

近年では証券化ビジネスもデジタル化が進んでおり、米国のプロバスケットボール選手であるSpencer Dinwiddie(スペンサー・ディンウィンディー)は、自身の契約金を裏付け資産としてセキュリティトークンの発行を予定しています。

この取り組みは2019年9月に発表がなされましたが、NBAから契約金の譲渡に関して懸念の声が上がっていました。

懸念点として挙げられていたのは、ディンウィディーが契約の3年目にオプションを実行する可能性でした。

当初の計画では実際にオプトアウトしより高額な契約に署名した場合、「“significant dividends for investors”(投資家への多額の配当金と考えられます)」を約束しており、ディンウィディー選手はこの条項を削除し、代わりにフラットボンドを提供するなどSTOによる資金調達計画をこの4ヶ月間で修正しました。

NBAは法律事務所デベボワーズ&プリンプトンを雇い入れ、ディンウィディー選手の資金調達に関する法務チームも交えて4回の面談、3回の電話会議を行うなど、法的要件については議論が交わされたようです。

RegulationD 506(c)に準拠して今回のSTOは実施予定とされており、認定投資家限定で150,000ドル/1年間で販売。

ディンウィディー選手が発行するセキュリティトークン「SD8」を購入した投資家には3年間にわたって投資額に応じた毎月4.95%の配当が支払われます。

販売期間:2020年1月13日〜2月10日
満期:2023年2月10日(元本保証あり)

ディンウィディー選手は

“I think the prolonged conversation obviously worked out,”

“because they recognized I’m not doing anything wrong or anything illegal. They know it’s coming. They didn’t have too much rebuttal for it. There’s nothing in there that’s considered gambling.”

と語っており、今回のSTOに関して違法なことをしていないことをNBAは認め、ギャンブルと見なされるものは何もないとの見解を示しています。

ディンウィディー選手は8人の投資家をシカゴのオールスターウィークエンドに連れて行くとTwitterで発表し、RegAによる一般投資家への投資機会提供なども示唆しています。

今回の取り組みは、デヴィッド・ボウイが証券化ビジネスを音楽にもたらしたのと同じように、様々な業界におけるセキュリティトークン化ビジネスの先駆けとも考えられ、市場にさらなる流動性をもたらすとして大きな注目が集まることでしょう。

・地方債のトークン化|コンセンシス(ConsenSys)

コンセンシス(ConsenSys)はアントフィナンシャルなどの中国企業と共にブロックチェーン業界において大きな存在感を示しています。

イーサリアムの共同創業者であるジョセフルービンによって設立されたコンセンシス(ConsenSys)ですが、最近では米国証券会社「ヘリテージ・ファイナンシャル・システムズ(Heritage Financial Systems)」を買収。

これにより証券および投資顧問業務を行えるようになったために、自社ブロックチェーン である「Codefi」を使用して「地方債のトークン化事業」を展開する意向を示しています。

米国の地方債市場は数兆ドル規模に及んでおり、古くは運河や橋といった公共的なインフラ整備のために発行が行われてきました。

しかし、発行および配当の支払いなどコストが大きいことから小規模な資金調達には用いられないなど、市場の流動性は低いといった問題を抱えており、セカンダリー市場の活性化に向けてコンセンシス(ConsenSys)は地方債のトークン化事業を手掛けるとしています。

スマートコントラクトによる配当の自動支払いおよび法的要件の確認業務の効率化などが期待され、将来的にはより小額からの地方債発行が可能になることから地方自治体の活性化にもつながると考えられます。

最近では、STOによる資金調達および大手金融機関でのブロックチェーン導入が話題となっていますが、4兆ドル(約440兆円)規模の発行が行われている地方債市場におけるトークン化事業は、米国の地方自治体が資金調達をより円滑に行うためにも非常に重要な社会的役割を担うと考えられます。

 

アメリカのSTOで活用されるSEC登録義務免除要件「Regulation」について 

Securityは株や債券などの「証券」を意味します。つまり証券性を持つSecurity Tokenを活用した資金調達(Offering)のことSTOと呼ぶのです。

 

今回の記事ではアメリカでSTOを行う場合に活用されているSEC(アメリカ証券取引委員会)登録義務免除要件「Regulation」について、そして最新事例と今後の展望について解説していきます。

 

・SEC登録義務免除要件「Regulation」について

 

通常であればアメリカにおける有価証券の募集・販売はSEC(アメリカ証券取引委員会)にて登録義務が課されています。 このSECへの登録は費用が高く、多くの時間が必要とされているため、シード期における資金調達を目指す企業にとってはハードルが高くなっています。

 

しかし、SECへの登録義務の免除要件である「Regulation」を満たすことができれば登録は不要となります。

 

そのためアメリカでSTOを実施するにあたっては、下記の「Regulation」が用いられています。

 

ここからは6つの 「Regulation」について個別に見ていきます。

 

・Regulation D

現在のSTO市場で最も一般的ば「Regulation」です。

 

Regulation Dには3つのタイプがあります。

 

  • Rule 504
  • Rule 506(b)
  • Rule 506(c)

 

いずれも証券発行者はSECへの登録届出の必要がなく、私募による資金調達が可能となっています。下記でそれぞれの「Rule」の特徴についてまとめました。

 

Rule 504

  • 適格投資家限定
  • 不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)不可
  • ロックアップ期間あり
  • 最大調達額:500万ドル/12ヶ月

 

Rule 506(b)

  • 適格投資家 非適格投資家(最大35人)
  • 不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)不可
  • ロックアップ期間(6〜12ヶ月)あり
  • 最大調達額:上限なし
  • 非適格投資家への情報提供が必須

 

Rule 506(c)

  • 適格投資家
  • 不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
  • ロックアップ期間(6〜12ヶ月)あり
  • 最大調達額:上限なし
  • 適格投資家であることを証明する手続きが必須

3つの中でも506(c)が1番多く用いられており、不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)が可能であることから多くのプロダクトがSTOを行う際に用いています。

 

Regulation Dを用いたSTOを実施する際には、SECへ「Form D」と呼ばれる書類の提出が必須となります。この「Form D」の提出は証券発行手続きに詳しい弁護士に委託する場合が多いとされています。

 

また、Regulation Dを用いたSTOの場合は「ロックアップ期間」が設けられているためにSTOの二次流通市場は流動性が低いことで知られています。

 

セキュリティトークン取引所ではロックアップ期間を経てから売買が開始されるため、tZEROやOpenFinance Networkでは今年の夏からようやく取り扱いが本格化してきています。

 

Regulation S

  • アメリカ国外の適格投資家
  • 不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
  • ロックアップ期間あり
  • 最大調達額:上限なし

RegSは調達の限度額がなく、ロックアップ期間も設けられていないといったメリットがあり、アメリカ以外の国に住む投資家にむけたSTOを行う際に用いられます。

 

Rule 506(c) との併用も可能となっていますが、アメリカにおける州法の違いから併用の取り扱いは難しいとされています。

 

Regulation A+

Regulation A+には以下の2つのタイプがあり、最大調達額に違いがあります。

  • Tier1
  • Tier2

 

Tier1

  • 適格投資家 非適格投資家
  • 不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
  • ロックアップ期間なし
  • 最大調達額:2,000万ドル/12ヶ月
  • SECへの目論見書提出が必要
  • 各州の証券監督機関、委員会の審査対象
  • 年次ごとの報告義務
  • 監査済みの財務諸表の提出義務
  • 二次流通市場における取引には州法が適用

 

 Tier2

  • 適格投資家 非適格投資家
  • 不特定多数への勧誘行為(一般勧誘)可
  • ロックアップ期間なし
  • 最大調達額:5,000万ドル/12ヶ月
  • SECへの目論見書提出が必要
  • SECの審査対象
  • 各州の証券監督機関、委員会からの認定は不要
  • 年次、半年ごとの報告義務
  • 監査済みの財務諸表の提出義務
  • 二次流通市場における取引には州法が適用

 

ここまで免除規定について見てきましたが、2020年3月にアメリカでRegulationの改正が提案されました。

 

次にその改正と、アメリカにおけるSTO市場の動向について考察していきます。

 

・米国STO市場 Regulation改正について

米国では、SEC(証券委員会)への登録免除規定であるRegulationを利用して私募市場ので資金調達が行われており、これによって成長企業への投資が活性化されてきました。

 

一方で、IPO前に時価総額が高くなりすぎてしまい、上場後には株価が上がらない「オーバーバリュエーション」といった事例も近年では相次いでおり、米国においては上場市場と私募市場のあり方が見直されつつあります。

 

 そのような中で、Regulation改正の提案が2020年3月4月に行われ、下記のような内容で米国SEC HPでは発表が行われています。

レギュレーションA+ の場合:

  • レギュレーションA+ tier2:最大調達額を5,000万ドルから7,500万ドルに引き上げ
  • レギュレーションA+ tier2:二次販売の最大調達額を1500万ドルから2,250万ドルに引き上げ

 

レギュレーション・クラウドファンディングの場合:

  • レギュレーション・クラウドファンディングの募集限度額を107万ドルから500万ドルに引き上げ
  • レギュレーション・クラウドファンディング・オファリングの投資家に対する投資制限を次のように修正
    • 認定投資家に投資制限を適用しない。
    • 非認定投資家の投資限度額の計算方法を改訂し、投資できる限度額を計算する際に、年収または純資産のいずれか大きい方を選べるようにする。

 

レギュレーションD 504の場合:

  • 最大提供額を500万ドルから1,000万ドルに引き上げ

参考文献:SEC Proposes Rule Changes to Harmonize, Simplify and Improve the Exempt Offering Framework

プレIPOフェーズの成長企業にとっては、レギュレーションA+の調達限度額の引き上げによって、より多くの資金調達ができるようになります。

 

また、レギュレーション・クラウドファンディングの調達限度額の引き上げに伴い、成長企業は資金調達のオプションとして新たな選択肢を得ることにもなります。

 

最大調達限度額の引き上げおよび認定投資家規則の変更は、2012年に施行されたJOBS法(Jumpstart Our Business Startups)と同様に、中小企業/スタートアップ企業への資本投入を活性化させ、成長を促進させるといった目的があると考えられます。

 

上記の取り組みが実現した場合には、私募市場の資金調達がより活発に行われるようになり、IPOなど上場市場の社会的な役割も変化を余儀なくされることが予想されます。

 

米国では、オルタナティブ投資がVCやPEを中心に盛んに行われており、今後は新興産業市場における成長企業への投資機会の拡大が各国の資本市場においては重要なテーマになるとも言えるでしょう。

 

・米国 暗号資産法2020

 

 カテゴリー別に規制当局を明確にする法案を共和党議員Paul Gosarが提出。

  • 暗号資産コモディティ:商品先物取引委員会(CFTC)
  • 有価証券:証券取引委員会(SEC)
  • 通貨:金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)

複数の公募型STOを実施しているドイツにおいても暗号資産とセキュリティトークンは金融商品に該当すると定める発表が行われており、明確な規制が設けられることで投資家保護の実現を図る規制当局の意図が見受けられます。

 

日本においても大手金融機関によるセキュリティトークン取引所(私設取引所)開設や証券取引の効率化に向けた取り組みを進めているなど、証券会社を中心とした市場形成が行われています。

 

・米国 STO市場の今後

 

米国の最新事例を考慮すると、STO市場を発展の促進と法規制による投資家保護を図るためには下記のような取り組みが重要であると考えられます。

  • 私募による資金調達の活性化:規制緩和
  • 一般投資家への投資機会提供:SEC登録によるセキュリティトークン発行
  • 暗号資産市場の健全化:カテゴリーに応じた管轄の明確化

 

各国の資本市場の規模感にもよりますが、米国の資本市場が1996年の規制緩和から今に至る発展を遂げ、多くの成長企業を育成してきたことを考慮すると、米国における法整備のあり方が今後のSTO市場においても非常に重要な存在になるとも言えるでしょう。

 

新しい資金調達として注目を集めるSTOとは何か?メリットからデメリットまで

 

・STO(Security Token Offering)とは何か

 

STOとはSecurity Token Offering の略であり、Securityは株や債券などの「証券」を意味します。

 

証券性を持つSecurity Tokenを活用した資金調達(Offering)のことはSTOと呼ばれ、従来の資金調達に代わる新たな資金調達の方法として、世界中で事例が生まれつつあります。

 

STOとは何か、そのメリットからデメリットまでわかりやすくご説明していきます。

 

ポイントは主に以下の3つです。

  1. ICOやIPOに代わる新たな資金調達の形である
  2. 従来の証券/不動産市場に透明性と流動性をもたらす
  3. 法規制に準拠するため暗号資産投資の健全化に繋がる

 

まず証券性を持つトークン、セキュリティトークンとはどのようなものなのでしょうか?

 

・セキュリティトークンの定義

暗号資産業界ではトークンの発行が「有価証券」に該当するのか議論が繰り返されてきました。

 

「トークン発行が有価証券として証券法の規制対象となるのか?」

 

この判断基準として「Howeyテスト(ハウイテスト)」が用いられています。

 

「Howeyテスト」はその基準を以下のように定めています。

 

  1. 投資として資金の出資があること
  2. 投資先から収益が期待できること
  3. 投資先が共同事業であること
  4. 第三者の仕事による収益が期待できること

 

アメリカでは、この4項目に該当した場合にトークンは有価証券として認められると定義されています。

 

アメリカやアメリカの適格投資家を対象にしたトークン発行にはこの「Howeyテスト」に適合しているかどうかが重要になり、連邦証券法に則って登録義務が課せられます。

 

あくまで「Howeyテスト」は一つの定義にすぎませんが、世界各国で行われているセキュリティトークン発行は、その国の法規制に準拠して発行されています。

 

このことから一般的にセキュリティトークンは「ブロックチェーン上で有価証券をトークン化したもの」と定義されています。

 

(有価証券:株式や社債、不動産といった資産を持っていることを証明するもの)

 

 資産の所有や債券を証明する有価証券は、その国ごとの規制に準拠しています。

 

各国ごとに法規制は異なることから明確な定義づけは難しく下記のような解釈をアジア証券業金融市場協会(ASIFMA)は発表しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

セキュリティトークンとトークン化された証券の違い|「Progmat」「ibet」について

 

ICOの課題を克服する新たな資金調達:STO

 

STOは2017年に盛り上がりを見せたICOとはどのように違うのでしょうか?

 

一言でまとめると、STOは法規制に準拠して実施されるため、ICOのような詐欺を防げる上、より多くの投資家層からの資金調達を可能にします。

 

近年では、銀行融資のみならずVCや個人投資家からの資金調達が定着し、各国でベンチャー企業のエコシステムが拡大。

 

そのような市場環境の中で、ブロックチェーン技術を活用した資金調達として、ビットコインの隆盛とともに話題となったのがICO(Initial Coin Offering=イニシャルコインオファリング)でした。

 

 ICOは広く投資家から出資を募ることができ、銀行融資や株式上場よりも大規模な資金調達のハードルがはるかに低いという利点がありました。

 

しかし、なんの審査も資産の裏付けもなく行えるICOでは詐欺が頻発し、投資家が敬遠するようになってしまいました。

 

STOはこれらの欠点を克服した新しい資金調達手段になることが期待され、多くの企業が市場に参画しています。

 

これまで一部の適格投資家のみが参加できた有望なベンチャー企業/不動産への投資機会が一般投資家にも提供されることが期待され、米国では投資家制限の緩和に向けた法整備なども行われています。

 

さらに証券取引所と異なり、セキュリティトークン取引所では24時間いつでも取引が可能となります。

 

証券/不動産市場おける潜在的な価値は非常に大きく、デジタル化の進展とともにその利活用が見込まれています。

 

ではSTOにはどのようなメリット/デメリットがあるのかを見ていきましょう。

 

STOのメリット

 

  1. 詐欺まがいのプロダクトは淘汰される
  2. IPOよりも資金調達がスピーディーにできる
  3. 機関投資家からの投資が募れる
  4. 株式市場に手続きの簡略化と流動性をもたらす

 

1.詐欺まがいのプロダクトは淘汰される

 

STOは各国の証券法に基づいた金融商品であり、「投資家保護」によって市場の健全化を図ることができます。

 

例えばアメリカにおける有価証券の募集・販売はSEC(アメリカ証券取引委員会)にて登録義務が課されています。

 

2.IPOよりも資金調達がスピーディーにできる

 

ICOと比較すると限られた投資家からしか投資を募れないといったデメリットはあります。

 

しかし、監査機関からの審査に2年ほど時間がかかるIPOと比較すると資金調達がよりスピーディーに行えます。

 

私募による資金調達のデジタル化に向けてブロックチェーン技術の活用事例としてもSTOは注目されており、ベンチャー企業が各ラウンドでセキュリティトークンによる資金調達を行うメリットをどのように提示するのかなど、ユースケースの創出が期待されます。

 

3.機関投資家からの投資を募ることができる

 

ブロックチェーン技術を活用することで、機関投資家からの投資が募れるので、より大口の金額を集めることができます。

 

 ICOによる投機や取引所からの資産流出などのニュースが重なり、暗号資産は「新しいけど怪しい」といったイメージがまだまだ根強く残っています。

 

また、 詐欺のようなプロジェクトが乱立し、誰でも簡単に投機の対象にできたICOがまだ記憶に新しいかと思います。

 

法規制の整備やボラティリティ(価格変動)の激しさといった課題は山積していますが、ブロックチェーンの将来性については世界中が注目しています。

 

STOは各国の法規制に準じてトークンが発行されることを前提としているため、機関投資家による巨額な資金調達が行えると予想されます。

 

また、投資対象として適正価格の判断がしやすい点もICOにはないメリットです。

 

資産の裏付けがないものの誰でも参加できたICOと比較すると投資の判断の難易度は高いですが、法規制に準拠した金融商品としてセキュリティトークンの普及が見込まれます。

 

4.手続きの簡略化と流動性をもたらす

 

株や債券といった資産をトークン化することで、配当・支払いといった手続きが簡略化され、「透明性」を担保するといった側面にも注目が集まっています。

 

さらには株式市場が「24時間取引可能」になることで市場の「流動性」の向上も期待できます。

 

STOのデメリット

一見素晴らしいことだらけのSTOですが、実はデメリットも存在します。

 

  1. 投資家に資格が求められる
  2. STO実施企業の手続きが煩雑である

 

1.投資家に資格が求められる

 

各国の証券法に基づいているため投資家にも資格が必要です。例えば、アメリカではSECによって年収や資産が特定以上でないと投資できません。

 

そのためICOのように少額投資家が多額の利益を上げることはないと考えられます。

 

 STOが普及していくことで仕組みが変わってくる可能性もありますが、現状ではICOバブルのようなことは起こらないでしょう。

 

 2.STO実施企業の手続きが煩雑である

 

また、企業が「IPO」を行うためには監査機関からの審査や資料の作成といった手続きが必要不可欠で、おおよそ数年の準備期間がかかります。この準備期間が起業家にとっての障害となっています。

 

 そのため手軽に資金調達を行えるICOが普及しましたが、監査もなく資産の裏付けもない金融商品は高いリスクが伴い、事実詐欺的な事例が頻発したため合法的で資金調達のコストを軽減できるSTOに注目が集まってます。

 

STO関連企業

 

実際にどのような企業がSTOを行っているのでしょうか。ここでは業界を牽引する動きを見せている3社をご紹介します。

 

Securitize|セキュリティトークン(STO)発行プラットフォーム

 

「Securitize(セキュリタイズ)」は、これまで10社以上のSTOを実施し、その実績からセキュリティトークン市場においても高い評価を得ている米国企業です。

 

Securitizeは2020年に入り、

 

  • 不動産セキュリティトークンに関する実証実験(LIFULLとの協業)
  • Instant Access:P2Pセキュリティトークン取引
  • Securitize ID:APIで様々なプラットフォームと連携できるデジタルIDサービス

 

といった取り組みを展開しており、日本のSTO市場に大きな貢献を果たしています。

 

Securitizeについて詳しく知りたい方はこちら

 

Swarm(スウォーム)|STOプラットフォーム

 

Swarm(スウォーム)は限られた投資家しか参加できないオルタナティブ投資に一般投資家も参加できるプラットフォームとして話題を集めています。

 

未公開株や不動産をセキュリティトークン化することで、より利回りのいい投資に一般投資家も参加できるようになります。

 

すでにSwarmでは株式をトークン化した「Robinhood」、アート作品の所有権をトークン化した「TheArtToken」といったプロジェクトも誕生しており、今後もSwarmを通じてより多くの投資機会が生み出されることが予想されます。

 

Swarmについて詳しく知りたい方はこちら

 

Vertalo(ベルタロ)|セキュリティトークンによる世界の不動産市場の変革

 

Vertaloは、様々な規模の不動産への投資機会を拡大するため自社の有するテクノロジーをSaaSサービス(B2B)として提供することに成功しており、そのシンプルで安全なプラットフォームはブロックチェーン技術によるグローバルな不動産投資を活性化させます。

 

Vertaloの不動産部門であるVertalo Real Estate(VRE)は、商業用不動産ファンド「REI Capital Growth」と協業し、すでに2つのSTOプロジェクトを発表しています。

 

Vertaloについて詳しく知りたい方はこちら

 

これら3社以外の事例を知りたい方はこちらもご参照ください。

海外のセキュリティトークン発行企業21選|ビジネスモデルや将来性について

 

まとめ

 

まとめるとポイントは以下の3点です。

 

  1. ICOやIPOに代わる新たな資金調達の形である
  2. 従来の株式市場に透明性と流動性をもたらす
  3. 法規制に準拠するため暗号資産の健全化に繋がる

 これまではICOの乱立によって、多くの投資家が詐欺まがいのプロダクトによって資産を失うなど、結果として暗号資産業界への信用が失われる事態に発展しました。しかし最近では「投資家保護」を目的に規制強化が行われており、法規制に準拠して発行されるセキュリティトークンの活用が暗号資産の健全化にもつながるとされています。

 

「新しい資金調達方法」として注目を集めているSTOはアメリカだけでなく、世界の国々でセキュリティトークンの発行が行われており、日本においてもその活用が期待されています。

 

 

 

参考文献

動き始めたデジタル証券、ケネディクスと東海東京FHの挑戦

SBIやマネックス、三菱UFJ信託らが激論、STOが日本で「花開く」条件とは

SBIグループによる国内初となるSTOビジネス開始のお知らせ

続々登場、デジタル証券を担う新たなプレーヤーの戦略とは

Canadian Government Releases Final AML Regulations for Crypto Businesses

Regulations Amending Certain Regulations Made Under the Proceeds of Crime (Money Laundering) and Terrorist Financing Act, 2019: SOR/2019-240

QuadrigaCX’s missing millions is the messiest Bitcoin saga yet

Canadian Crypto Exchange QuadrigaCX Officially Declared Bankrupt

DIGITAL ASSETS AND REGISTERED EXCHANGES (DARE) BILL, 2019 

Bahamas Securities Regulator Proposes Rules for Token Sales

【イベントレポート】「【バハマ政府STO担当官来日!メディア独占イベント】バハマ政府のSTOの枠組みと、ブロックチェーン実用化事例のご紹介」

バハマがブロックチェーン大国に名乗りをあげる|海洋考古学を民主化へ

 

 

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