一般社団法人日本STO協会(JSTOA)は、「電子記録移転権利等の発行市場を担う基幹システムのガイドライン(以下、ガイドライン)」を発表。
日本では、改正金融商品取引法が2020年5月1日に施行され、セキュリティトークンは「電子記録移転権利」として定義されています。
・安全な取引の確保
・技術革新への柔軟な対応
市場関係者とともに実施した第一次ワーキング・グループの結果を踏まえ、上記の3つの原則をもとにしてガイドラインは策定されています。
基幹システムを構築・維持するために必要とされる基本機能について統一性を持たせることで、「電子記録移転権利」による資金調達の安全な取引を実現するためにガイドラインは作成されています。
第二次ワーキング・グループ以降では、既存の証券決済システムなどに関する議論を踏まえて、ガイドラインの内容については修正することを予定しています。
今回は、海外でのセキュリティトークンに関する取り組みを踏まえてガイドラインで掲載されているトークンの取り扱いについて基幹システムに実装されるべき基本機能について解説していきます。
トークンおよび取引に関する主要機能(基本的動作、保管、決済)について
・トークンの基本的動作に関する機能
有価証券としてのトークンが備えておくべき基本的な動作を定め、想定されるユースケースを把握することを目的にガイドラインに記載されています。


・トークンの保管機能
日本においては暗号資産取引所での流出事件が相次いだこともあり、トークンの保管機能に関しては慎重な検討が必要であるとしています。
日本では、株式会社Gincoが改正資金決済法・改正金商法に対応したカストディシステムを開発することを明らかにしており、コールドウォレットでの電子記録移転権利の管理などが今後は重要になることが考えられます。
第一次ワーキンググループにおいては下記のような意見が出ており、ガイドラインに掲載されています。

・トークンの決済機能
決済方法の選択(法定通貨、暗号資産)や外部システムとの連携をはじめとして、将来的にはステーブルコインやデジタル通貨での決済に対応した機能の実装が考えられ、慎重な検討が必要であるとしています。
ステーブルコインやデジタル通貨に関する法規制は国や地域によって異なるために、決済機能に関しては市場動向に合わせた実装が重要であると考えられます。
第一次ワーキンググループにおいては下記のような意見が出ており、ガイドラインに掲載されています。

・付随機能
ガイドラインには「トークン情報の管理・基幹システムのモニタリング・ガバナンス」といったトークンおよび基幹システムの管理機能について記載がされています。


・連携機能
ガイドラインには「KYC/AML/CFTサービス」といった外部システムを基幹システムに接続・連携する機能について記載がされています。

・リスクの説明体制
基幹システム採用正会員が基幹システムの運営事業者に対して、基幹システムに関するリスクおよび対応策に関する説明体制の整備についてガイドラインでは記載がされています。

・情報セキュリティ
ガイドラインでは、JSTOA「電子記録移転権利等の取引等に関する規則」第11条から第13条までを参照し、基幹システム採用正会員が情報セキュリティに関する取り組みを行っていくことを推奨しています。
・個人情報の取扱い
ガイドラインでは、JSTOA「電子記録移転権利等の取引等に関する規則」第10条を参照し、基幹システム採用正会員が個人情報の取扱いに関する取り組みを行っていくことを推奨しています。
また、ガイドラインでは
・緊急時に適切な対応が可能となる窓口の設置によるサポート体制
・電子記録移転権利等の業務や金融商品として将来的な発展を遂げるためのJSTOA会員間の情報共有
などについても記載がされています。
新たな証券規制の制定に向けて|米国でセキュリティトークンワーキンググループが設立
米国ではブロックチェーン協会(Blockchain Association)は、セキュリティトークンワーキンググループを立ち上げました。
この取り組みは、米国証券市場におけるセキュリティトークンの採用と健全な規制を促進するために、米国議会、SEC、FINRA、その他の米国の規制当局、および幅広いブロックチェーン業界のメンバーと協力することを目指しています。
共同議長にはTokenSoft最高法務責任者のAlex Levine、CoinList法務顧問のGeorgia Quinnが就任しており、特にAlex Levineは
・米国証券取引委員会(SEC)
・米国商品先物取引委員会(CFTC)
・オプション決済機関 オプションクリアリングコーポレーション(OCC)
といった機関で法務およびコンプライアンス部門のシニアオフィサーを務めていました。
現在の証券法は、紙ベースの証券の発行、保管、および取引を管理するように設計されており、証券業界の近代化を図るために明確な規制を設けることをセキュリティトークンワーキンググループは目指しています。
法規制に準拠して資産をトークン化することで、ブロックチェーン上で取引・管理ができるようになり、このことで証券市場の効率と流動性向上につながります。
しかし、証券取引委員会(SEC)と金融業界規制局(FINRA)は、
「セキュリティトークンとブロックチェーンテクノロジーは、新たに複雑な規制とコンプライアンスに関する問題を引き起こす」
としています。
セキュリティトークンはスマートコントラクトによる取引の自動化によって、既存の規制要件へのコンプライアンスを保証しています。
このことでかつては不可能であった水準で、取引の透明性、確実性の向上を実現します。
ブロックチェーン市場関係者の多くは、ソリューションを提案すると同時に、セキュリティトークンのメリットを米国の幅広い投資家市場に提供するための答えを求めています。
米国ブロックチェーン協会(Blockchain Association)のセキュリティトークンワーキンググループは、最終的に、規制当局と協議し、持続的なセキュリティトークン市場の成長を促進させる法律の制定を目的としています。
米国での事例を踏まえて、各国で市場関係者の意見を取り入れ、セキュリティトークンによる効率的な証券市場の形成を目指す取り組みが今後は重要になることでしょう。
代表的な発行プラットフォームの提供サービス
各国で様々なプレイヤーがより高度なサービスの開発に取り組んでおり、最後にSecurrencyを取り上げ、発行プラットフォームに関連するサービスについても紹介して将来的な機能開発を考えていこうと思います。
・Securrency
Securrencyの技術は、元帳にとらわれない相互運用性と「プラグアンドプレイ」によるサービス統合を実現し、次世代のグローバル金融インフラストラクチャとして機能することを目指しています。
金融市場および規制に対応した技術力によって、伝統的な金融システムと分散型台帳テクノロジー(DLT)のシームレスな統合を可能にします。
Securrency Interoperating System:分散型台帳テクノロジー(DLT)を実装した機能と既存のバンキングおよび取引に関するインフラストラクチャのシームレスな統合を可能にするように設計されたサービスとインターフェースのオープンフレームワーク
Securrency Interoperating Systemは、次の3つの重要な機能によって支えられています。
Securrency Identity™
個人およびエンティティに対する信頼性の高いID検証、認証、および承認に関する機能。
Know Your Customer(KYC)
Know Your Wallet™(KYW)
Know Your Transaction(KYT)
といった機能が組み合わさったフレキシブルなシステムが構築され、より高度な認証サービスを実現します。
Securrency RegManager™
Rules Engineは、複雑な規制および企業ポリシーを開発および施行するための、ユーザーフレンドリーでわかりやすいインターフェース。
複数の管轄における法規制を「recipes」として体系化。取引のコンプライアンスを自動化し、グローバルな証券規制の検証を可能にします。
また、Ledger-agnostic, patent-pending Compliance Aware Token™ frameworkは、デジタル化された価値が分散型ネットワーク上で効率的に移動できるようにする一方、その自己統制コンプライアンス特性を維持するといった機能があります。
Securrency InfinXchange™
分散型台帳、支払いおよび銀行ネットワーク、およびその他の金融サービス内およびその間での価値のシームレスな移動をサポートし、貸出、支払い、取引、一次および二次市場発行などのエンドツーエンドの金融サービスとの統合を実現するAPI連携機能。および規制報告ツール。
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