ステーブルコインは法定通貨に連動し、ブロックチェーン技術を活用した決済手段として注目を集めています。
国際送金の迅速化といったメリットがあり、アメリカからの経済制裁を受けている国々では避難資産としての活用もされています。
中国では暗号資産(仮想通貨)取引所が全面的に禁止されているため「人民元→OTC取引→USDT(デザー)→ビットコイン」といったスキームでビットコインの購入が行われています。
このように様々なステーブルコインの利用方法が発展してきている一方で、マネーロンダリングの温床となる危険性も存在します。
本稿では、ステーブルコインに関する法律・規制について解説していきます。
代表的なステーブルコインについて
全世界で発行(または発行予定)のステーブルコインは80種類以上にも及ぶと言われています。
その中でも代表的なステーブルコインは米ドルに連動した「テザー」「パクソス・スタンダード」「ジェミニ・ドル」「USDコイン」があげられます。
日本でもGMOインターネット株式会社が日本円に連動した「GMO Japanese Yen(GJY)」の発行予定を発表しています。
特に「テザー」は暗号資産の中でも主要通貨として知られており、ビットコイン取引高の80%を占めるなど、先に述べた事例のように中国での取引が増加しています。
最近では、ビットコインの価格上昇の際にはテザーの時価総額が上昇するといった現象が見られており、ステーブルコインの利用方法としては暗号資産の購入が現在のところ主流となっています。
ベネズエラでは法定通貨のボリバルがハイパーインフレによって価値が下がっており、ビットコインを避難資産として利用しています。
また、アメリカから経済制裁を受けているため国際送金システムが利用できない状況にあります。
そのため石油価格に連動したステーブルコイン「ペトロ」を発行しており、マドゥーロ大統領は国内の銀行に対して窓口の開設を命じています。
このように世界各国ではステーブルコインについて様々な取り組みが行われています。
ステーブルコインに関する法律・規制について
ステーブルコインは法定通貨に連動させたものだけではなく、暗号資産に連動するものもあり、法的な解釈も異なってきます。
そのためステーブルコイン発行体はどの免許や登録を行えばいいのかについて現在のところ明確にはされていません。
改正資産決済法に基づいた解釈によると発行体は「前払式支払手段発行者」として登録が必要であると金融庁は見解を示しています。
また、改正資産決済法では「本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。」と記されていることから日本では「ステーブルコインは暗号資産に該当しない」との定義を金融庁が行なっています。
海外ではアメリカでステーブルコインを暗号資産として認可している事例があり、国ごとに解釈は異なっています。
ステーブルコイン 暗号資産としての規制について
ステーブルコインへの規制については一般社団法人「日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)」が暗号資産として規制される必要性について金融庁に提言を行なっています。
これは「新たなICO規制についての提言」の中に盛り込まれたもので、
・ステーブルコインが暗号資産と同じ技術的基盤に基づいていること
・海外においては暗号資産取引所で取引が行われていること
そのため「発行体を前払式支払手段発行者として規制を行うには適切ではない」といった見解を示しています。
前払式支払手段についての規制は、ステーブルコインを想定して法整備が行われていないため、法的な枠組みとしては不適切であるとJCBAはしています。
ステーブルコイン マネーロンダリング対策について
現在のところ暗号資産については取引所において、送付人だけでなく、受取人の顧客情報の管理・共有をFATF(金融活動作業部会)が義務付けるなど規制強化が予定されています。
日本でも暗号資産交換業者向けにAML/CFT対策ツール「SHIEDL」を開発している株式会社BUIDLがマネーロンダリング対策の取り組みを行なっているなど、民間レベルでも規制強化への対応策が講じられています。
株式会社BUIDLは将来的にステーブルコインやセキュリティトークンへの応用も検討しています。
ステーブルコイン デメリットについて
法定通貨や石油価格に連動したステーブルコインが発行されていますが、それらの多くはビットコインの購入や避難資産として利用されています。
将来的には銀行を介さない国際送金としての活用も期待されていますが、既存の金融システムの秩序を乱すとして規制が必要であるとも考えられます。
キャピタルフライトの手段としても利用される危険性があり、ステーブルコインを決済手段として利用する場合にはデメリットが数多く存在します。
フィリピンのユニオンバンク(Aboitizグループ傘下)がステーブルコイン「PHK」を発行することが明らかになりました。
今回のステーブルコイン「PHK」発行はフィリピンの銀行としては初の試みで、法定通貨「フィリピンペソ」に連動しています。
フィリピンでは安全で効率的な送金に対する需要が高く、将来的には国外に出稼ぎに出ている人や島に住んでいる人がステーブルコイン「PHK」を利用することも考えられます。
すでにフィリピンではブロックチェーン技術を活用した決済システム「i2iプラットフォーム」によってシンガポール-フィリピン間の国際送金に成功しているなどその取り組みに注目が集まっています。
ステーブルコイン「PHK」について
ステーブルコイン「PHK」は「i2iプラットフォーム」上で取引が行われます。
ステーブルコインはフェイスブックLibraなど世界各国で取り組みが行われていますが、法定通貨と連動しているために価格が安定し、銀行口座を持たない人への決済サービスの提供が行えるなど注目を集めています。
一方で、マネーロンダリングに利用される危険性もあり、アメリカから経済制裁を受けているベネスエラでは避難資産として利用されているといった事例も存在します。
「PHK」はフィリピンペソと連動したステーブルコインであり、
Summit Rural Bank
Progressive Bank
Cantilan Bank
上記の3つの地方銀行において「購入・送金・償還取引・国内送金」の実証実験が行われています。
「i2iプラットフォーム」について
「i2iプラットフォーム」はブロックチェーン技術を活用した決済システムです。
相互運用が可能であるために将来的にはフィリピンだけではなく、世界中での利用も期待されています。
ユニオンバンクは、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)とともに金融業界への最先端技術の導入を進めており、フィリピンの金融業界の包括的な繁栄を目指した取り組みを行なっています。
ブロックチェーン技術を活用した送金はその一環として注目を集めており、将来的には銀行だけではなく、離島における送金システムの構築にも取り組むとしています。
「PHK」の将来性
今回の取り組みによって、ユニオンバンクの口座から「PHK」を購入し、「PHK」をフィリピンペソに交換することも可能になります。
最近では大手投資銀行のJPモルガンが、ステーブルコイン「JPMコイン」を利用した機関口座間での送金テストに成功しており、銀行によるステーブルコインへの取り組みが活性化することが期待されます。
「PHK」はより効率的な母国への送金や銀行を介さない送金が実現できるために今後も利用が拡大することが予想されます。
イラン ステーブルコイン「PayMon」発行へ
イランはアメリカからの経済制裁によって国際舞台で孤立を深めており、ホルムズ海峡における英船籍タンカー「ステナ・インペロ」をだ捕するなど、強硬姿勢を強めています。
国際金融からも隔離され、国際送金ネットワークも利用できない状況となっており、制裁回避のために暗号資産を利用する動き(キャピタルフライト)もイランでは活発に行われています。
しかしながら、2018年10月にはアメリカ金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が暗号資産取引所に対してイランによる仮想通貨利用を監視するように要求。
イランではイラン中央銀行(CBI)が国内の金融機関における暗号資産の取り扱いは禁止しているものの、インターネット上では暗号資産取引所へのアクセスが可能となっていたために、これを監視するためにFinCENは「Advisory on the Iranian Regime’s Illicit and Malign Activities and Attempts to Exploit the Financial System」と呼ばれる勧告を発行しています。
そのような中で、イランではステーブルコイン「PayMon」を発行したことが明らかにされています。
同じくアメリカからの経済制裁を受けているベネズエラではステーブルコイン「ペトロ」を発行しており、ベネズエラのマドゥーロ大統領はベネズエラ国内の銀行に対して「ペトロ」窓口開設を命じるといった取り組みも行われています。
ステーブルコイン「PayMon」について
イランではイラン中央銀行が「PayMon」と呼ばれる金を裏付けにしたステーブルコインの発行を許可したことを明らかにしました。
最近では法定通貨を裏付けにしたステーブルコインの発行が大きな話題を呼んでいますが、金や石油価格を裏付けにしたステーブルコインも世界では行われています。
「PayMon」はイラン政府とフィンテック企業Kuknosによって開発が行われ、イラン国内の暗号資産取引所や銀行とも連携が行われています。
イランではアメリカから経済制裁を受けているために国際送金システム「SWIFT」の利用も制限されており、経済制裁によって凍結されている資産の活用を「PayMon」で目指すと考えられます。
「PayMon」はSWIFTや銀行を介さずとも国際送金が可能となりますが、国際金融の枠組みからは外れているためにマネーロンダリングやテロリストへの資金供与への対策が不十分とも言えます。
そのため既存の金融システムの秩序を乱すともいえ、イラン中央銀行が「PayMon」に対してどのような規制を行なっているのか懸念されます。
ステーブルコイン「BGBP」について
バイナンスのジャージー島支社である「Binance Jersey」でステーブルコイン「BGBP」の取り扱いが行われることが明らかになりました。
ステーブルコインは法定通貨と連動し、価格が安定していることから国際送金などでの活用が期待されています。
銀行を介さずに国際送金が行われるため最近では日本でもSWIFTに代わる国際ネットワークの構築に取り組む動きも起きています。
経済制裁によって国際金融から隔離されている国々ではSWIFTを利用した国際送金が行えないケースが多く、ベネズエラでは石油、イランでは金を裏付けにしたステーブルコインの発行が行われています。
そのような中で、バイナンスが発行するステーブルコイン「BGBP」はポンドを裏付けにしていることから大きな注目を集めています。
また、バイナンスでは「BGBP」だけではなく、さまざまな法定通貨に連動したステーブルコインの発行を予定しており、ステーブルコイン「BGBP」はポンドを裏付けにしています。
バイナンスではすでにstablyが発行する「USDS.B」の取り扱いが行われており、今回の「BGBP」発行にstablyが協力していることが明らかになっています。
「USDS.B」は信託会社Prime Trustによって資産の裏付けがなされており、米ドル建てのステーブルコインです。
米ドル建ては「USDS.B」がすでに取り扱われており、ユーロ建てについてもバイナンスCEOのCZは「マイナス金利といったリスクがある」と述べていることからバイナンスによる発行は行われないと考えられます。
バイナンスチェーンについて
バイナンスでは独自ブロックチェーンプロトコルとして「Binance Chain(バイナンスチェーン)」を提供しています。
各ユーザーごとに秘密鍵を管理し、Binance DEX(分散型取引所)での取引を行うことやパブリックチェーンであることから取引の透明性の高さが特徴です。
今年の4月にローンチされてからすでに20社以上が「Binance Chain」の利用を行なっており、コンセンサスアルゴリズムに「DPoS」と採用しているために即時の取引確定が可能となります。
DPoS(Delegated Proof of Stake)とはブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムのことです。
取引におけるブロック生成(取引確定)の承認者がBNBホルダーの投票によって決定されるため、PoW(Proof of Work)と比較して計算処理や承認数を抑えることができるといった特徴があります。
そのため消費電力の軽減といったメリットが期待され、時間や経費の削減にもつながります。
しかし、BNBを多く保有するホルダーによって承認者が決定されやすいなど中央集権的な特徴を持つために承認者選出における投票の不正や、不正取引の承認が行われる危険性があることなどのデメリットも存在しています。
Libra(リブラ)について

Libra(リブラ)プロジェクトは過去にFacebookが個人情報漏洩問題を起こしていたことから金融市場をはじめとして批判的な声が巻き起こりました。
さらにその収益がLibra(リブラ)コンソーシアムに参加している企業に分配され、利用者には還元されないことについても疑問の声が湧き上がるといった事態に発展。
また、20億人のFacebookユーザーに対して金融サービスを提供できることから既存の金融システムの秩序を乱すとして、各国の規制当局や金融委員会からも批判的な意見がLibra(リブラ)には寄せられています。
その一方で、JPモルガンやゴールドマンサックスなど大手金融機関はステーブルコインの開発に強い関心を持っていることを表明し、各国の中央銀行も導入を検討していることが明らかにされています。
Libra(リブラ)の発表にともないステーブルコインについては世間からも大きな関心が寄せられており、既存の金融システムとの融合をどのように図るかが重要なポイントと考えられます。
そのことを踏まえるとLibra(リブラ)を金融サービスとして選ぶ必要性は薄く、CBCC(中央銀行暗号通貨)や各金融機関が発行するステーブルコインを将来的には利用することが予想されます。
Libra(リブラ)開発中止の可能性
7月16日にアメリカ上院銀行住宅都市委員会にて公聴会を控えるFacebook・Libra(リブラ)ですが、既存の金融システムへの悪影響を懸念する声があがっています。
・マネーロンダリング対策
・投資家(消費者)保護
・個人情報の管理
上記の3点がLibra(リブラ)の問題点とされており、30以上の政治・市民団体から開発の一時中止を求める要求する声明が出されています。
Libra(リブラ)の発表が行われた直後にも下院金融サービス委員会のMaxine Waters(マキシン・ウォーターズ)理事長が開発の一時中止を要求しており、今回新たに4名の議員がこれに賛同しました。
Maxine Waters
Carolyn Maloney議員
William Lacy Clay議員
Stephen Lynch議員
Rep.Al Green議員
#RELEASE: Committee Democrats Call on #Facebook to Halt #Cryptocurrency Plans
READ: https://t.co/S1aieAdsR1 pic.twitter.com/BIXajbg8ZR
— Financial Svcs Cmte (@FSCDems) 2019年7月2日
Libra(リブラ)はアメリカ下院住宅金融委員会での公聴会も7月17日に予定されています。
既存の金融システムの秩序を脅かすとして開発の中止を求める声にどのように応えるのか注目が集まります。
世界的大手銀行 独自暗号資産の発行を検討
有価証券を即時決済を目指しJPモルガンではJPMコインの開発が進められています。
JPMコインはドルペッグのステーブルコインで、2019年2月から販売が開始されています。
JPモルガンはここ5〜20年の間に証券のトークン化が進むと考えており、セキュリティトークンの発行も行なっています。
国債の取引は時間がかかるためにブロックチェーン上での取引が可能となれば、取引の流動性向上につながります。
報道によるとロンドンやオーストラリア、香港、カナダの銀行などでもセキュリティトークンの可能性については取り組みが行われています。
そして、セキュリティトークン発行にむけては各国の規制当局からの認可を受けられるように検討を行なっています。
JPモルガンではクライアント数社とのテストを開始するとしていますが、規制当局の承認を待つために年末まで本格的な実施は難しいとのことです。
また、ゴールドマンサックスではJPモルガンの発表をうけて独自暗号資産への興味を示唆しました。
「世界中の大手金融機関はステーブルコイン による決済について可能性を見出しており、興味を持っている」とゴールドマンサックスのデービッド・ソロモンCEOは述べています。
このように「CBCC(中央銀行暗号通貨)」や「JPMコイン」の取り組みが進められている中で、今後は「中央集権型」「分散型」と2つの暗号資産の流れがより明確になると予想されます。
各国の中央銀行・規制当局は、暗号資産による新たな金融インフラが既存の金融システムにとっての潜在的なリスクであることを認め、その対抗策として「CBCC(中央銀行暗号通貨)」の開発を進めているとも考えれます。
使用用途は異なるものの、金融市場においては競争相手としてさらなる規制強化をICOのような暗号資産に行い、一方では金融サービスの効率化を目指すことで金融システムの安定を目指すことが中央銀行や規制当局の狙いであると言えます。
日本における電子マネーの現状と課題
日本では2002年にJRが「Suica」の発行を開始し、当時から電子マネーとして活用することを検討していました。
その後、「Suica」はJR西日本の「ICOCA」との相互利用が可能となり、使用エリアが拡大。
エリア拡大とともに駅や周辺の商業施設で「Suica」が電子マネーとして利用できるようになり、利用可能店舗と1日の決済件数は下記のようになっています。
電子マネー利用可能店舗「61万6400店舗(2019年3月末)」
電子マネー1日当たりの決済件数「約784万件(2018年8月)」
そして、2016年9月からはApple Payで「Suica」での決済を行えるようになり、最近ではみずほ銀行や楽天ペイ(2020年春予定)との提携を「Suica」は行っています。
電子マネーによる決済は「Suica」を中心にして日本では普及しており、JR東日本としても経営ビジョン「変革2027」の中で「さまざまな決済手段やアプリケーションと連携し、共通基盤化を推進する」としています。
「Suica」とクレジットカードさえあればスマートフォンで決済は可能であるので、PayPayやLINE Payにとっても「Suica」とどのように共存を図っていくのかが今後の課題と言えるでしょう。
ステーブルコインと電子マネーの違い
電子マネーは法定通貨を買うことで決済を行うことができます。
一方、ステーブルコインは法定通貨とペッグされた通貨のため、法定通貨と暗号資産トークンとの交換によって決済を行います。
また、電子マネーは法定通貨への換金や利用者同士の送金が原則的に禁止されています。
ステーブルコインは現在のところ法定通貨への換金や利用者同士の送金は禁止とされていません。
そして、電子マネーは発行元がJRや一般企業であるのに対して、ステーブルコインは中央銀行やFacebook、暗号資産プロダクトによる発行といった違いがあります。
ステーブルコインは避難通貨としての利用が主な目的とされていることも大きな違いであり、電子マネーとはまた別の領域での「決済サービス」として活用が期待されています。
将来的にステーブルコインが「Suica」でも使えるようになることは、現在のところ考えにくいですが、国際送金の迅速化や銀行口座を持たない人々の決済サービスとしてステーブルコインは大きな役割を果たすと考えられます。
ステーブルコインのリスク管理と規制対応に向けて|フランス中央銀行の取り組み
#Live 🔴 Full house for the #StableCoinConference on the theme “Which ambitions for #Europe?” co-organized with @ConsenSys 🤝 Introduction by @AlainPithon, our General Secretary, followed by the opening address by Denis Beau, First Deputy Governor @banquedefrance 🗣 pic.twitter.com/BAWJySoIf9
— Paris EUROPLACE (@europlace) January 15, 2020
2020年1月15日、フランスパリでステーブルコインカンファレンス “Which ambitions for Europe?が開催されました。
カンファレンスではフランス中央銀行のデニス・ボー副総裁がJPモルガンやUBS、Facebookがステーブルコインの開発に取り組んでいることに触れ、「ステーブルコインは決済システムの強化に貢献できる可能性がある」と話しました。
貨幣のデジタル化については中国がデジタル人民元普及に向けて暗号法を施行するなど、各国で取り組みが行われており、今後は国家の通貨政策および既存の金融システムにも大きな影響を及ぼすとも考えられます。
日本でも金融庁が分散金融のガバナンス確立に向けて国際的な共同研究ファーラムを開催するなど、新たな規制枠組みの構築に向けた取り組みを行っています。
・ステーブルコインを活用したP2P決済システムの普及によって各国の通貨主権が脅かされる危険性は?
・分散型金融の発展によって既存の金融機関の役割はどうなるの?
最近では上記のような議論が活発に行われていますが、ブロックチェーン技術を応用し、貨幣や証券、各種金融サービスのデジタル化が進む中で、各国の金融市場における利害関係を整理し、国際的な共同研究を行うことが重要であると言えるでしょう。
2019年にFacebook・Libraが発表された時には「既存の金融システムの秩序を乱す」として各国の規制当局がLibra発行に対して厳しい反対意見を表明しました。
Facebook社が営利企業であることや個人情報管理問題、Libraの商品設計にも大きな批判が集まりましたが、ステーブルコインに対応した国際的な法規制の見直しが急務であると考えられます。
ステーブルコインは昨年のG7レポートで指摘されているように、マネーロンダリングおよびテロ資金の提供など大きなコンプライアンスリスクを抱えています。
そのため将来的な国際金融システムの安定に向けてはステーブルコインに対応した規制枠組みの構築に向けた国際的な協力体制が不可欠です。
Les #stablecoins » : une bonne ou une mauvaise solution pour améliorer nos systèmes de paiement ?
Retrouvez l’intervention complète de Denis Beau
👉 https://t.co/keHuAk2mB3 pic.twitter.com/gZdsdiPXoa— Banque de France (@banquedefrance) January 16, 2020
デニス・ボー副総裁は下記の3点を規制当局は重視するべきとの見解を示しています。
1 ステーブルコインのポジティブな影響(支払いの効率化)を守るためイノベーションの急速な発展に対応した実用的な規制構築
2 一貫性のある国際的な規制監督体制の整備
3 実証実験を通じて現状の決済システムの脆弱性を再検討すること
フランス中央銀行では、デジタル通貨発行計画やブロックチェーンを応用した金融システムの導入に向けた取り組みを行うなど、金融のデジタル化に向けて積極的な姿勢を見せています。
法整備に向けて国際的な共同研究およびカンファレンスが行われる中、ブロックチェーンを応用した金融機能の社会実装に向けた取り組みに今後も大きな注目が集まることとなるでしょう。
こちらの記事でデニス・ボー副総裁のスピーチ内容を確認することができます。「Denis Beau: Stablecoins – a good or a bad solution to improve our payment systems?」
参考文献
新たなICO規制についての提言 2019 年3月8日 一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会
注目される「ステーブルコイン(法定通貨等にペッグされた暗号資産)」
法定通貨の安定価値+暗号通貨の自由度を兼ねた「ステーブルコイン」、日本で発行するには?ーーブロックチェーン会計士柿澤氏に聞く
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