各産業においてオンラインへの移行が加速していることを背景に、「決済」「分散SQLデータベース」分野で大型の資金調達が確認され、「ノーコードツール」「ブロックチェーン」分野にも積極的な投資が進行しています。
「事業者による金融サービスの提供」「新たな金融/証券インフラの構築」は2020年代前半の大きなトレンドとなっており、今後は企業間の相互運用性を実現する「プライバシー保護」に関するテクノロジーにも注目が集まることでしょう。
・Rapyd:評価額25億ドル 3億ドル調達(シリーズD)/ Fintech-as-a-service APIサービス
・Sennder:評価額約10億ドル 1億6,000万ドル調達(シリーズD)/ 配送マッチングサービス
・Xentral:2,000万ドル調達(シリーズA)/ バックオフィス効率化サービス
2021年1月は上記のように「金融・物流・バックオフィス」分野にも投資が集まっており、本稿では各企業の調達事例を紹介していきます。
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Checkout.com / イギリス / オンライン決済サービス
2012年にロンドンで設立された「Checkout.com」は、評価額150億ドルで4億5,000万ドルの資金調達を実施。シリーズCで150億ドルの評価を受けた「Checkout.com」は、オンライン決済サービスを提供しており、競合企業としては下記の企業が挙げられます。
Stripe
Venmo
Verifone Systems
Adyen
2019年5月に2億3,000万ドル(シリーズA)、2020年6月に1億5,000万ドル(シリーズB)の調達を行なってきた「Checkout.com」は各国でのサービス提供に向けて資本を拡大する必要があり、
フランス
ブラジル
シンガポール
香港
インド
フィリピン
などイギリス以外の国々でも事業の発展に向けて取り組みを進めています。
Grab Financial Group / シンガポール / 金融
「Grab Financial Group」はシリーズAで3億ドルの資金調達に成功したことを発表しました。2020年には少額投資プラットフォーム「AutoInvest」で「Grab Financial Group」の金融サービスが採用され、個人や中小企業向けの金融商品の提供も開始したことで、収益は前年比40%の増加を記録。
東南アジアにおいては約600億ドルと推測される金融サービス市場規模の拡大が見込まれており、「Grab」がシンガポールの銀行ライセンスを取得したように事業会社による金融サービスの提供が今後も進行することでしょう。
CockroachLabs / アメリカ / SQLデータベース
分散SQLデータベース「CockroachDB」を提供している「CockroachLabs」は、20億ドルの評価額で1億6,000万ドルを調達(シリーズE)。
Oracle
AWS
Fauna
Cognitect
Couchbase
などが競合企業として挙げられます。
2020年は企業が業務のオンライン化を推し進めたことで、「CockroachLabs」の収益は2倍以上となり、クラウドサービスなどの30日間無料トライアルを開始するなど、より多くの開発者がサービスを利用できる機会を提供しています。
Webflow / アメリカ / ノーコードツール
HP作成をノーコードで行えるサービスを提供する「Webflow」は評価額21億ドルで1億4,000万ドルの資金調達を実施(シリーズB)。一部をプログラミングするローコード市場規模は2018年の4,000億円から2022年には2兆円を超えると推定されており、新たな事業セクターとして成長が期待されています。
「Webflow」はより中長期的な事業への投資を予定しており、資本の拡充による顧客への安心感の提供や採用活動の強化など相乗的な効果も見込んでいます。
Figma
Pantheon
Weebly
Squarespace
Wix
競合企業としては上記の企業が挙げられます。
これまで専門的な知識と技能が必要だった業務を直感的に行うことをサポートするノーコードサービスは今後もさらなる普及が見込まれています。
HQLAᵡ / ルクセンブルク / デジタル金融・証券
「HQLAᵡ」はR3 Cordaを活用したデジタル金融プラットフォームを開発・提供するルクセンブルクの企業であり、シリーズBで1,440万ユーロの資金調達に成功しています。
今回の調達はBNYメロン、ゴールドマンサックス、BNPパリバ証券サービス、シティグループが主導し、2018年8月に行われた初めての調達ラウンドで出資したドイツ取引所も参加しています。
担保証券のシームレスな取引を実現する「HQLAxプラットフォーム」を利用することで、流動性/担保管理の運用効率を最適化することができ、新たな金融インフラの構築を「HQLAᵡ」は目指しています。
ToposWare / 日本 / ブロックチェーン
ゼロ知識証明を利用した相互運用可能なブロックチェーン技術の開発を手がける「ToposWare」は2019年1月に設立されました。
2020年5月にはエンジェル投資家から1億9,700万円、そして、2021年1月には7億5,000万円の資金調達を実施しており、ブロックチェーン市場の成長を見据えた取り組みに大きな期待が寄せられています。
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まとめ
決済分野ではPaypalやSquareをはじめとしてAffirm、Stripeが市場での競争力を高めています。
ノーコードツールは個人向けのサービスとして日本でも活用が幅広い分野で進んでおり、アプリ開発からHP作成までより効率的な業務遂行をサポートしています。
今後も金融分野のデジタル化には多くの投資が集まることが予想され、デジタル証券の取引プラットフォーム開発において高い技術力を有する企業にも注目が集まることでしょう。