今回は「小規模不動産特定共同事業の登録要件」について解説していきます。
「不動産特定共同事業法(不特法)」の改正によってインターネットを通じた不動産投資「不動産クラウドファンディング」への取り組みが推進され、資産運用の1つとして人気を博しています。
これまでは金商法に基づいた「ソーシャルレンディング」が不動産投資の手法として知られてきましたが、借手の情報が匿名化されていることなどが課題とされてきました。
「不動産クラウドファンディング」は運用会社が投資家からの資産で不動産を購入し、賃料収入を分配する仕組みで、投資対象物件の情報も開示されているのが特徴です。
不特法の改正ではこの「不動産クラウドファンディング」が不動産市場の流動性を向上させるとして、主に空き家問題への活用が期待されていました。
また、「不動産クラウドファンディング」と同様に不特法改正の大きな目玉とされていたのが「小規模不動産特定共同事業」です。
企業が不動産特定共同事業に参入しやすいように登録要件が緩和されており、「小規模不動産特定共同事業」も今後は注目を集めることが予想されます。
小規模不動産特定共同事業の事例について
空き家の活用を行う際に一番のネックになるのが、リノベーション費用です。
不動産特定共同事業によって投資家から資金調達を行うにも、登録要件を満たすには資本金などのハードルが高かったため、これまでは実現が困難でした。
そこで、国土交通省は全国各地でより多くの事業者が円滑な資金調達を行えるように「小規模不動産特定共同事業」を創設しました。
これにより銀行の融資が難しかった空き家のリノベーションも不動産クラウドファンディングによって、魅力溢れる投資商品として販売できるなど、不動産市場の活性化につながると期待が集まっています。
実際に葉山市ではエンジョイワークスが運営する「The Bath&Bed Hayama」が2018年7月に小規模不動産特定共同事業の第1号募集ファンドとして誕生しており、宿泊施設として利用されています。
明治時代に建設された蔵のリノベーションを行なっており、想定利回り(税引前)年4%、運用期間4年2ヶ月の投資商品として達成金額である600万を1日で調達しました。
小規模不動産特定共同事業の登録要件について
・資本金 1,000万円
・出資の合計額 1億円以下
・投資家から受けることのできる出資額 100万円以下
このように小さい規模で不動産特定共同事業が行えるように登録要件が定められています。
他の登録要件については下記の通りです。
小規模不動産特定共同事業を行うための実務手引書~基礎編~を参照しています。
■ 純資産
・純資産≧(資本金または出資の額×90/100)
■ 免許
・宅地建物取引業免許が必須となります。
■ 業務管理者の設置
・宅地建物取引士であり、下記の要件をいずれかを満たすことが必要です。
- 3年以上の不特事業での実務経験
- 国土交通省指定の講習の受講
- 登録証明事業による証明(ビル経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター・不動産証券化協会認定マスター)
■ 約款
基準に適合していること。
■ 役員及び使用人
・不特法第6条10号に該当ないこと
・登録申請前5年以内に、不特事業に関して不正または著しく不当な行為をしていないこと
■ 財産的基礎
・借入金の全部、または一部が下記に該当しないこと
- 元本または利息の弁済の見込みがないもの
- 元本または利息の支払が約定支払日の翌日から3ヶ月以上遅延しているもの(1に掲げるものを除く)
- 経営再建を図ること、または支援を受けることを目的として、債権者との間で金利の減免、利息の支払い猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の自己に有利な取り決めをおこなったもの(1、2に掲げるものを除く)
・下記の要件のいずれにも該当しないこと
- 会社法による特別清算、破産法による破産手続き開始の申し立てが行われている者
- 民事再生法による再生手続き開始の申し立てが行われている者
- 会社更生法による更生手続き開始の申し立てが行われている者
- 外国の法令上とこれらと同種類の開始の申し立てが行われている者
- 会社法による特別清算の命令を受け、特別清算終結の決定の確定がない者
- 破産法による破産手続きの開始を受け、破産手続終結の決定若しくは破産手続廃止の決定の確定がない者
- 会社更生法による更生手続き開始の決定を受け、更生手続終結の決定、若しくは更生手続き廃止の決定の確定がない者
- 外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
直近の連続する2事業年度において、当期純損失が生じていないこと
■ 人的構成
・管理部の責任者が定められ、法令その他の規則が遵守される体制が整っていること
・管理部門の責任者と小規模不特事業の業務に係る部門の担当者またはその責任者が兼任していないこと
■ その他
・第1号事業または第3号事業の許可業者でないこと
・登録申請前5年以内に不特事業に関して不正または著しく不当な行為をしていないこと
・その他、不特法第6条各号(第12号を除く)に該当しない法人であること
参考文献
日本初。小規模不動産特定共同事業者による第1号ファンド物件誕生
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