Securitizeは2020年に入り、
・不動産セキュリティトークンに関する実証実験(LIFULLとの協業)
・Instant Access:P2Pセキュリティトークン取引
・Securitize ID:APIで様々なプラットフォームと連携できるデジタルIDサービス
といった取り組みを展開しており、日本のSTO市場に大きな貢献を果たしています。
セキュリティトークン研究コンソーシアムへの参加やトヨタ・ブロックチェーン・ラボとの協業をはじめ、米国においてもトランスファーエージェントとしてSECから認可を得ており、グローバル市場においても知名度を高めています。
すでにSecuritizeのプラットフォームを利用して、各企業がセキュリティトークンを発行しており、宝くじ販売・チケット管理システムを運営する「Lottery.com」は、2020年6月5日にセキュリティトークンによる配当を実施しました。
近年では、株主還元の施策として多くの企業が配当や自社株買いを実施しており、高配当投資への注目度は高まりを見せています。
配当の実施は業績が堅調であることの証明でもあり、事業成長・新たな市場開拓に向けて内部留保の拡充に努めつつ、継続的な株主還元を行うといった経営バランスの整理が重要となります。
「Lottery.com」は、2015年に設立され、現在は約50人の従業員を擁し、約900万ドルの収益をあげています。
STOはスタートアップ企業が、グローバルな市場から少額投資を募れるといったメリットから活用が見込まれてますが、「Lottery.com」のようなユースケースが増えることで、より多くの企業が資金調達のデジタル化を実現することに繋がります。
本記事では「Securitize」に関する最新情報やこれまでの取り組みをわかりやすく紹介していきます。
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Securitizeについて
「Securitize(セキュリタイズ)」は、これまで10社以上のSTOを実施し、その実績からセキュリティトークン市場においても高い評価を得ている米国企業です。
米国市場では、私募市場が拡大していることからSTOに関しても活発な取り組みが行われており、各企業が市場形成に向けて様々な動きを見せています。
・主な企業
セキュリティトークン発行プラットフォーム
Polymath
Habor
Swarm
セキュリティトークン取引所
tZERO
Open Finance Network
その中でも「Securitize(セキュリタイズ)」は日本市場での展開を積極的に行っており、SFV・GBファンドからの資金調達は2019年に行われたシリーズAラウンド(三菱UFJイノベーション・パートナーズ、野村HDなどが参加)の延長とされています。
最近のセキュリティトークン市場の動向としては、tZEROがイギリスの高級不動産のトークン化を2020年Q1予定していることや米国においてはブローカーディーラー5社と契約を締結したことが明らかになっています。
また、シンガポールのセキュリティトークン取引所「iSTOX」がSandboxでの実証を終え、recognised market operatorとして規制当局から承認を受けるなど、様々な取り組みが行われています。
ヨーロッパでは、スイスで「Overfuture」がSTOの実施を予定し、「PwCルクセンブルク」が、セキュリティトークン発行プラットフォームTokenyとのパートナーシップを発表しました。
・シリーズAラウンドでの資金調達について
ソニーフィナンシャルベンチャーズとグローバルブレインが2018年10月に設立したファンド「SFV・GB 投資事業有限責任組合(以下、SFV・GBファンド)」が、セキュリティトークン発行プラットフォーム「Securitize(セキュリタイズ)」に出資を行ったことが明らかになりました。
SFV・GBファンドは、フィンテック企業を中心として出資を行っており、過去には下記のような企業にも出資を行っています。
株式会社コズレ:ビックデータを活用した子育てに関するナレッジシェアメディアの運営
株式会社iCARE:オンライン保健室サービス「carely」など法人向けヘルスケアサービスの提供
株式会社フロムスクラッチ:データマーケティングプラットフォーム「b→dash(ビーダッシュ)」の開発・運営
Bitwala GmbH:ブロックチェーン金融サービスプラットフォームの開発・運営
クラウド・インベストメント:不動産事業会社向けのクラウドファンディング・プラットフォームの開発・運営
ウェルスナビ株式会社:ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」の開発・運営
Idein株式会社 :実世界の情報をIoTシステムで運用するプラットフォームサービス「idein」の開発・運営
株式会社iCARE:健康労務の自動化クラウド「Carely(ケアリー)」の開発・運営
三菱UFJフィナンシャルグループが設立したセキュリティトークン研究コンソーシアムにも「Securitize(セキュリタイズ)」は参加をしており、米国での経験と知見を持つ企業の取り組みによって、日本でもSTOへの関心が高まっていると言えます。
各国でさまざまな企業がSTOへの取り組みを進める中で、「Securitize(セキュリタイズ)」が日本の金融機関およびフィンテック企業に与える影響は大きく、金融のデジタル化に向けて今後も大きな注目が集まることでしょう。
Securitize BUIDLの子会社化について
Securitize(セキュリタイズ)は、2019年12月に日本企業であるBUIDLを買収し、100%子会社とすることを明らかにしています。
日本市場では証券取引システムのデジタル化への取り組みが行われており、三菱UFJグループが手がけるセキュリティトークンとスマートコントラクトを組み合わせた「Progmat」の開発にもSecuritize(セキュリタイズ)はSTコンソーシアムを通じて協力を行なっているとされています。
すでに日本の大手金融機関などからの十億円以上の出資を受けているSecuritize(セキュリタイズ)ですが、日本市場への進出を足がかりにしてアジア市場におけるSTOの普及を目指していると考えられます。
証券取引は、多くの時間とコストがかかることから分散型台帳技術を活用した取引情報の管理と共有による効率化への取り組みが世界各国で行われています。
金融のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けては、スマートコントラクトによる自動決済が大きな役割を果たすことが期待されていますが、証券決済に関しては法定通貨(日本円)とペッグされたデジタル通貨が必要と考えられます。
日本においてセキュリティトークン(証券のデジタル化)への取り組みが連日のように報じられているのは今後の市場の発展にとっては非常に前向きな出来事であると言えます。
東京都では環境保全活動への参加の際にキャッシュレス決済による参加費用の支払いを行なった人々に対して独自ポイント「東京ユアコイン」の発行を行う実証実験を行うことを明らかにしており、将来的には東京都独自のデジタル通貨の発行も検討していると小池百合子知事は発表しています。
一方で、アメリカ市場ではFRBがデジタル通貨発行に後ろ向きとの報道も出ており、基軸通貨であるドルの国際的な地位など既存金融の秩序を乱す取り組みについては厳しい規制が敷かれることも予想されます。
米国市場でのSecuritizeの取り組みについて
「Securitize」は2017年11月に設立されたアメリカのブロックチェーン企業で、セキュリティトークンの発行プラットフォームの開発・運営を行なっています。
最近ではIBM社が主催する「IBM Blockchain Acceleratorプログラム」に参加し、ブロックチェーン企業OTCXNと「Digital Security Offering(DSO)サービス」を構築するために提携を結んでいる他、「Securitize Readyプログラム」を開始し、パートナー企業に様々なサービスを提供しています。
2018年12月に1275万ドルの資金調達を成功させたばかりの「Securitize」ですが、有力なセキュリティトークン発行企業の一つであるtZEROとの提携も開始するなど多くの暗号資産プロダクトとの結びつきを強めています。
アメリカは、PolymathやOpenFinance、tZEROといった現在世界的にも有力なセキュリティトークンプラットフォーム企業の拠点となっています。
「Token Taxonomy Act(トークン分類法)」によってICOへの規制や新たなアセットクラスの創出といった動きも出てきていますが、現在のところはアメリカ証券取引委員会(SEC)がセキュリティトークンについての主たる規制当局となっています。
そのような中で、Securitizeが持つDSプロトコルにはトークンに関する投資家の顧客情報を監視する機能があり、投資家保護を重視する現在の暗号資産業界においては多くのプロダクトや取引所で活用されています。
このDSプロトコルはSecuritizeが独自に開発している規格で、これまで一般的に用いられていたイーサリアムのブロックチェーンと比較して、よりセキュリティトークンの取引に適応しているプロトコルです。
これにより、高い投資家保護を実現することができるとされています。
このDSプロトコルが開発される以前は、ICOに際しての顧客確認やマネーロンダリング対策の不十分さが問題になっていたことから、各プロダクトや取引所がDSプロトコルと連携して、法規制に準拠した運営やトークン発行を行うといった流れが生まれています。
「Securitize」が持つDSプロトコルは法規制に準拠しながらセキュリティトークンを発行するには優れた技術であるとして、以下のようなプロダクトや取引所が既に「Securitize」のDSプロトコルを活用しています。
プロダクト
Blockchain Capital
SPiCE
Lottery
AUGMATE
Aspencoin
CITYBLOCKCAPITAL
22X
SCIENCEBLOCKCHAIN
取引所
tZERO
SHARESPOST
Hyperion
Blocktrade
AirSwap
OpenFinance Network
代表的な例を挙げると、アメリカのOpenFinance NetworkではSPiCEVC、Blockchain Capital、Lottery.com、22X FundがSTOによって上場を果たしており、これらのセキュリティトークンは「Securitize」によって発行されました。
投資家保護を重要視する流れの中で、セキュリティトークン市場において「Securitize」の存在は今後より大きいものになっていくことが予想されます。
Securitizeの現状と課題

セキュリティトークンは法規制に準拠し発行されることで、既存の証券規制と同様の規制に基づいて投資家保護を行うことを試みるものでした。
しかし、現在主流となっているイーサリアムのブロックチェーンは誰でも送金できてしまうといった特徴があるためにセキュリティトークンの発行には不向きでした。
そこで、SecuritizeはERC20規格を拡張した「DSプロトコル」の開発によって、その課題の解決を図り、トークンの取引における投資家保護を実現しています。
Securitizeは、KYC/ALMや配当・議決権といった証券に必要な機能を発行体に提供しています。
DSプロトコルの技術力が高い評価を得ているSecuritizeですが、STO(Security Token Offering)に替わってDSO(Digital Security Offering)の呼称を広めていきたいと考えている模様です。
これには、仮想通貨発行によるICOに際して、詐欺的案件も多く発生し投機的な流行として話題となったことによって定着してしまったトークン全般への負のイメージを払拭したい考えもあるとみられます。
DSOは「デジタル有価証券」としての意味合いを持つために、暗号資産のイメージとの差別化を図ることができるでしょう。
2018年12月に行われた1,275万ドルの資金調達はDSO計画の一環として行われ、OTCXNとの提携などその取り組みは進んでいます。
IBM Blockchain Acceleratorプログラムへの参加

IBM Blockchain Acceleratorプログラムは「ブロックチェーンを利用した世界初の債券発行プラットフォーム」を目標に設立されました。
IBMは国際物流のコンソーシアム「Trade Lens」や「Hyperledger」の開発といった取り組みも行なっており、ブロックチェーン技術の活用に積極的に取り組んでいます。
このプログラムは3ヶ月におよび、SecuritizeではIBMの内部チームと自社プラットフォームのデモンストレーションを行なっています。
SecuritizeのCEOであるCarlos Domingo氏は、82兆ドルの市場規模と言われる社債市場とブロックチェーン技術の融合を目指しており、「Hyperledger」と自社プラットフォームの統合を計画しています。
SecuritizeのDSプロトコルとIBMのHyperledgerとの融合は社債発行におけるプロセスを効率化し、コストの軽減や取引執行の透明性向上を実現することでしょう。
現在のところDSプロトコルによるコンプライアンス確保に数週間から数ヶ月かかることが多いといった課題もありますが、証券購入時に即時決済できる点などメリットは多いです。
DSプロトコルはすでに多くのプロダクトや取引所が採用しており、SecuritizeのIBM Blockchain Acceleratorプログラムへの参加は、ブロックチェーン業界の発展に大きな意味を持つものと考えられます。
【IBM Blockchain Acceleratorプログラム参加企業】
Lucidity
TigerTrade
Phunware
Ferrum
Bandwagon
IPwe
Credly
MetaMe
Connecting Food
Digital Security Offering(DSO)サービスについて

2019年2月、SecuritizeとOTC Exchange Networkは、Digital Security Offering(DSO)サービスを構築するために提携しました。
この提携ではOTCXNプラットフォームとSecuritizeのDSプロトコルの統合によるDSO市場の発展を目指しています。
OTCXNはブロックチェーンによるOTC(Over The Counter)取引サービスを行なっており、2018年12月にはOTC取引所を開設しました。
OTC取引は暗号資産取引所を介さずに当事者同士が取引を行うことで、売り手からの提示価格で取引を簡単に行うことができるといったメリットがあります。
暗号資産市場を介さないために大口取引の場合では価格の高騰や暴落が起こらないことやカウンターパーティー・リスクやハッキングリスクも軽減も期待できます。
しかし、小口取引の場合は取引所よりも割高な価格での取引となることが多く、当事者同士の取引となるため詐欺の危険性が高まるといったデメリットも存在します。
今回の提携ではSecuritizeがコンプライアンスとDSOトークン発行を担い、OTCXNが有価証券の管理機関としての技術提供を行う予定となっており、将来的にはOTCXNがSecuritizeによって発行されたDSOトークンの取引所を提供することで、非効率的な証券取引に流動
性をもたらすことが期待されています。
Securitize Ready Programの提供

「Securitize Ready Program」はSecuritizeが提供するプログラムの一つで、パートナー企業が持つサービスを相互に利用し合い、多様なネットワークを構築することを目的として提供されています。
以下は、すでにこのプログラムに参加しているパートナー企業であり、今後も多数の企業が参加する予定となっています。
Coinbase Custody
OpenFinance
Rialto Trading
CBlock Capital
Securitizeの戦略的パートナーシップ担当責任者であるSteven Lucido氏はSecuritize Ready Programについて次のように述べています。
「Securitize Readyは、業界で最も広く採用されている発行および管理テクノロジーをクライアントに提供しながら、パートナーが自社のコアビジネスに集中できるようにします。それは、パートナーと私たちの双方にとって有益なことです。」
ここでいう発行および管理テクノロジーとはDSプロトコルを含めたSecuritizeの技術のことを指し、パートナー企業がより円滑にビジネスを行えるようにサポートすることで相乗効果を生み出していくことを目的としています。
Securitizeとしてはより健全で信頼されるデジタルセキュリティエコシステムの構築を目指して、パートナー企業への専門的なアドバイスを行なっていくとしています。
tZEROとの提携について

Securitizeは現在世界的にも有力なセキュリティトークンはこうプラットフォームであるtZEROとの提携も行なっています。
Securitizeは、2019年5月13日から15日にかけて行われた「CoinDesk Consensus 2019」でDSプロトコルをオープンソース化し、Githubで手に入れることができることを明らかにし、その中でDSプロトコルの技術提供を目的としてtZEROとの提携も発表しました。
tZEROのCEOであるSaum Noursalehi氏は「Securitizeは十分に機能し、高品質なサービスを提供しています。」と述べています。
tZEROではすでにSecuritizeで発行されたセキュリティトークンを選別し、いくつかは代替取引システム(ATS)に取り扱い予定とされています。
Securitize DSプロトコルについて

Securitizeはセキュリティトークン発行プラットフォームです。
「DSプロトコル」という技術の開発に成功しており、以下の機能が備わっています。
・DS Token トークン監視機能
・DS Apps 配当・議決権機能をトークンに実装
・DS Service 各機能の基盤
セキュリティトークン取引所であるtZEROがこの「DSプロトコル」を導入するなど、Securitizeの持つ技術に注目が集まっています。
・DS Token
「DS Token」はトークンの送信時に「DS Service」のRegistyサービスで投資家の情報を参照し、トークンを監視する機能を持っています。
・DS Apps
「DS Apps」は配当や議決権の機能をセキュリティトークンに実装することができます。
・DS Service
「DS Service」は次の4種類の機能があり、法規制への準拠を実現するための基盤となっています。
1 Trust 権限や重要情報のマネジメントサービス
2 Registy 投資家情報保存サービス
3 Compliance 投資家情報参照サービス
4 Comms 各種情報提供サービス
このように「DSプロトコル」はマネーロンダリング防止をはじめとして、配当や議決権の機能などをセキュリティトークン発行体に提供することができます。
ブロックチェーン業界が各国の規制とともに形作られていく中、Securitizeの取り組みは業界をリードするものであると言えます。
一般的になる語がSTOかDSOかに関わらず、Securitizeは現行の規制と革新的な業界創造を繋ぐ重要なプレイヤーの一人となるでしょ
う。
今後も、彼らの動向からは目が離せません。
用語解説
・店頭取引
証券取引所を通さず、証券会社が自ら投資家の売買の相手となる取引(相対取引)のこと。
・カストディアン
投資家に代わって有価証券の管理を行う機関。特に、国外の有価証券に投資する際、現地で有価証券を管理する金融機関のこと。
・カウンターパーティー・リスク
デリバティブ取引などの金融取引において、取引の相手方をカウンターパーティと言い、これが破綻するなどして契約が履行されずに損失を被るリスクのこと
公式系メディア
運営メンバー
参考文献
US Legislators Reintroduce Token Taxonomy Act to Exclude Crypto From Securities Laws
Lawmakers Reintroduce Bill to Exempt Crypto Tokens From US Securities Laws
Securitize raises $12.7M to deliver regulatory compliance for blockchain securities
Securitize raises US$12.75M to digitize legacy securities with blockchain technology
Securitize To Join IBM’s Blockchain Accelerator To Modernize $82T Corporate Debt Market
Securitize Announces ‘Securitize Ready’ Network
Securitize Launches Token Compliance Program
Securitize Open-Sources Its Protocol, Partners With tZERO Token Exchange
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