証券化ビジネスとブロックチェーン|小規模案件のトークン化について

ブロックチェーン
Business people working over laptop development vector illustration. Web development, interface, coding. Computer concept. Design for website templates, posters, banners

今回は、ブロックチェーンを活用した証券化コスト削減によるこれまで証券化できなかった小規模な実物資産の証券化(トークン化)について考察していきます。

 

日本の大手金融機関が保有する「ローン担保証券(Collateralized Loan Obligation:CLO)」は低金利による資産運用の困難さから近年では増加傾向にあります。

 

CLO:格付けの低い複数の企業へのローン債券をパッケージ化した投資商品

 

国内金融機関のCLO保有額
農林中央金庫(農林中金)七兆九千億円
三菱UFJフィナンシャル・グループ 二兆四千七百三十三億円
ゆうちょ銀行 一兆五千二百四十一億円

 

コロナウィルスの感染拡大を発端にした原油・エネルギー・ 航空業界の混乱および今後引き起こされる可能性のある様々な経済危機の影響によって、「ローン担保証券(CLO)」による損失リスクは高まりをみせていると言えます。

 

サブプライムローン問題から10数年が経過し、CLOの市場は6600億ドル規模に成長した一方で、高リスク投資を助長させるとして、

 

・資金調達手段の多様化

・バランスシートの良化

 

といった本来、証券化(securitization)によってもたらされるべきメリットおよび証券化ビジネスのイメージを毀損しているといった側面も存在しています。

 

また、これまでの証券化ビジネスは

 

・SPC管理のための作業が膨大

・小規模案を複数取り扱うにはの多くのアレンジャーを必要とする

 

といった課題を抱えていたために、近年では、案件のトレンドが小規模化している不動産・金銭債権のみならずPublic Private Partnership(PPP)インフラといったオルタナティブアセットが証券化される事例も増加している傾向にあります。

 

PPP方式によるインフラ整備は、国の財政資金のみならず民間資金も活用した官民連携によって発展途上国のインフラ投資市場を活性化するために取り組みが行われています。ADB(アジア開発銀行)はアジア太平洋地域におけるインフラ需要を約1.7兆(約190兆円)としており、市場の活性化が期待されていますが、政治・自然災害リスクなどから信用格付けはBBB以下の案件が多く、事業性が課題ともされています。

 

時代の移り変わりとともに多様な投資機会を提供してきた証券化ビジネスですが、今後はより正常な形で市場が発展することが期待されます。

 

証券化ビジネスの法規制について

日本は不良債権処理問題を背景に不動産市場においては証券化が進行しました。

 

 

また、近年では自治体の財源確保(地方空港運営など)を背景にインフラファンド投資も市場が形成されています。

 

オルタナティブアセット投資の現状と将来性

日本では東証インフラファンド市場が2015年に創出され、

 

 ・ジャパン・インフラファンド投資法人
・エネクス・インフラ投資法人
・東京インフラ・エネルギー投資法人
・カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
・日本再生可能エネルギーインフラ投資法人
・いちごグリーンインフラ投資法人
・タカラレーベン・インフラ投資法人

 

といった銘柄が上場しており、合計時価総額は959億円(2020年2月20日)となっています。

 

現在のところ再生可能エネルギーのファンドを中心として市場が形成されていますが、インフラの整備、維持に民間の資金を活用する取り組みとして近年ではEGS投資の観点からも大きな注目を集めています。

 

東南アジア地域でのPPP方式インフラ整備に関するファンドへの投資は非常に難しいと言えますが、日本のインフラファンド投資は景気に左右されにくい、より安全性の高いオルタナティブアセット(投資商品)として日に日にその存在感を高めています。

 

証券化ビジネスは不動産や「ローン担保証券(CLO)」といった金銭債券のみならずエネルギー発電や公共インフラ(空港、港湾)にも対象を広げています。

 

また、多様な実物資産が証券化されることで、より多くの投資家への投資機会を提供できるといったメリットがあり、近年では証券化業務の効率性を向上させるためにブロックチェーンを活用する取り組みが行われています。

 

三井物産、LayerXが次世代アセットマネジメント会社を設立

 

三井物産、LayerX、SMBC日興証券、三井住友信託銀行は2020年4月にブロックチェーン技術を活用した次世代アセットマネジメント事業を協業で行うために新会社を設立することを明らかにしました。

 

新会社である「三井物産デジタル・アセットマネジメント(仮名)」は、ブロックチェーンを活用した実物資産の証券化および管理コスト削減に取り組むためにシステム開発および実証ファンドの組成を計画。

 

大企業も参画し、アセットマネジメント領域におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されるとあって大きな話題を集めています。

 

三井物産:オルタナティブな実物資産のアセットマネジメント
LayerX:ブロックチェーン技術を活用した証券化・証券の管理の効率化
SMBC日興証券:金融商品の販売
三井住友信託銀行:不動産流動化(証券化)、コンサルティング

 

日本ではLayerXを中心としてブロックチェーンの社会実装が着実に進行しており、今後も様々な分野で協業による実証を通じて、実用化に向けた取り組みが行われることが将来的な市場の発展につながるとして、大きな期待が寄せられています。

 

また、世界各国では実物資産のトークン化への取り組みも行われており、Wave Financial Groupによるバーボンウィスキーのトークン化の事例を最後にご紹介いたします。

 

米国 Wave Financial Group バーボンウィスキーをトークン化

ウイスキーは、「時間が経つほどに熟成し、商品価値が向上していく」といった特徴があります。

 

投資商品としては長い期間保有することで、価格が上昇していくといったメリットがウイスキーにはあり、近年では世界的にもウイスキーの売上が向上していることからも市場の拡大が予想されています。

 

米国のデジタル資産企業のウェーブ・フィナンシャル・グループは、ケンタッキー州のワイルダーネス・トレイル蒸留所と共同で「ウェーブ・ケンタッキー・ウィスキー2020デジタルファンド」を立ち上げました。

 

これは、約2,000万ドル(約21.8億円)相当のバーボンウィスキーをブロックチェーン技術を活用してトークン化し、最大で400万本分のトークンとして販売する取り組みです。

 

ブロックチェーンを活用したトークン化によって、より多くの投資家に投資機会を提供し、市場の流動性を向上させるとして実物資産のトークン化への取り組みは今後も各国で行われることが予想されます。

 

まとめ

これまで手にすることのできなかったアセットクラスへの投資機会の増大は、より多くの投資家を育成します。

 

・これまでアレンジャーの不足によって組成されてこなかった小規模不動産の証券化

・インフラ、ウィスキーといったこれまで証券化されてこなかったアセットの証券化

 

ブロックチェーン技術による証券化・証券管理プロセスの効率化によって、上記のような事例が実現できる可能性があるとされており、各国の法規制に準拠した形でのトークンの活用など、新たな市場の創出が期待されています。

 

近年では、クラウドファンディングやソーシャルレンディングなど少額投資への関心が高まる中で、ブロックチェーン技術を活用したトークン化によってユニークな投資対象が世の中に出回ることで、日本の投資市場もより一層の拡大が図られることでしょう。

 

・参考文献

「リーマン」類似、投資急増 農林中金など3社 CLO、計12兆円
 大手金融機関が、信用力の低い米国企業向けの貸出債権を束ねた金融商品「ローン担保証券」(CLO)への投資を急増させている。

 

CLOの火薬庫、くすぶる危険性-高債務の米企業に迫るトラブル
ローン担保証券(CLO)はウォール街の魔術が編み出した金融商品の1つで、数十年前から存在している。よく似た債務担保証券(CDO)と同様に、高リスクの債権をまとめてパッケージ化するためのツールだ。

 

課題多いアジアのPPP、加賀隆一・アジア開発銀行官民連携部部長(1) | インフラビジネスJAPAN
アジア大洋州のインフラ需要は1年間で約1.7兆ドル(約190兆円)――。ADB(アジア開発銀行)の推計が話題を呼んでいる。この需要を賄うには各国の財政資金だけでは足りず、民間資金の活用が必要だ。民間投資は進むのか。ADBの本拠地フィリピンでPPP(官民連携)事業に携わる加賀隆一官民連携部部長に聞いた。 (全2回)

 

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/7392.pdf

 

証券化・SPCビジネスのパイオニアが語ったトレンドと未来とは!?公認会計士と税理士のビジネスチャンス【PR】 | 公認会計士ナビ 会計士・監査法人業界専門WEBメディア
公認会計士や税理士の専門分野に、「証券化」という領域がある。 1990年代後半から2000年代前半にかけて、大きく成長した証券化マーケット。世間ではそこを証券化の最盛期とし、近年は成熟期、人によっては衰退期と捉えている人もいるかもしれない。 しかし、証券化マーケットにおいて、業界のトッププレーヤーたちはその変化の兆しを...

 

インフラファンドへの投資は広がるか | 大和総研グループ
最近、東証のインフラファンド市場に上場する銘柄の出来高(売買高)が増加している。インフラファンドは不動産系やエネルギー系、商社系など7銘柄が上場しているが、前年と比較できる5銘柄を月平均の出来高を見ると、直近では前年を上回っている。

 

リーマンショックから10年、拡大した証券化市場を振り返る:不動産金融の勃興の中で【第6回】 | 東京共同会計事務所求人・採用サイト
東京共同会計事務所の求人・採用サイトです。証券化、ストラクチャード・ファイナンス、SPC、FAS(M&A、企業再生、企業価値評価)、国際税務、資産税、事業承継、ウェルス・マネジメントなどの分野で公認会計士や税理士、税理士試験合格者などを募集しています。

 

PPP(Public Private Partnership)支援 | 事業ごとの取り組み | 事業・プロジェクト - JICA

 

日本における「不動産の証券化」の歴史と背景 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン
前回は、企業が私募リートを組成することで得られるメリットを説明しました。今回は、日本における「不動産の証券化」の歴史と背景について見ていきます。

 

大和ハウス工業|土地活用|今さら聞けない「不動産証券化」(7)不動産証券化の歴史(1)
今さら聞けない「不動産証券化」(7)不動産証券化の歴史(1) 大和ハウス工業の土地活用ラボ for Bizは、企業価値を高め、社会と人に貢献するために、CRE戦略に大きな関心をお持ちのビジネス・パーソンのみなさまに向けて、情報発信を行うサイトです。

 

LayerXが三井物産、SMBC日興証券、三井住友信託銀行と合同で新会社を設立。ブロックチェーン技術を活用した次世代アセットマネジメント事業で協業
株式会社LayerXのプレスリリース(2020年3月19日 13時00分)LayerXが三井物産、SMBC日興証券、三井住友信託銀行と合同で新会社を設立。ブロックチェーン技術を活用した次世代アセットマネジメント事業で協業

 

Investing in Kentucky Bourbon with Wave Financial
Tokenizing Drink Investors will soon be able to gain exposure to a new type of asset through an upcoming fund – Whiskey/Bourbon backed digital securities. This...

コメント

タイトルとURLをコピーしました