株式会社LIFULLは、デジタル証券プラットフォーム開発企業Securitize Japan株式会社と協業し、不動産特定共同事業者を対象にセキュリティトークン発行アプリの提供を行うことを発表しています。
これまで不動産セキュリティトークン(デジタル証券)市場においては、米国で有限会社(LLC)の持分権をRegDに準拠してトークン化するスキームやドイツでも新築不動産プロジェクトへの参加券を裏付け資産とするトークン発行がBafinから承認されるなど、国ごとに法規制に準拠した取り組みが行われてきました。
株式会社LIFULLとSecuritize Japan株式会社は、SaaS型アプリの提供によって、
・不動産特定共同事業法(不特法)に準拠した不動産セキュリティトークンの発行
・スマートコントラクトによる出資持分の譲渡制限
・DVP(Delivery Versus Payment)
などを実現し、ブロックチェーン技術を活用した不動産領域におけるデジタル化を推進しています。
日本でも不動産投資クラウドファンディング市場の拡大とともに一般投資家が1口1万円からの少額投資を行えるようになり、今後はセキュリティトークン発行アプリの活用によるデジタルアセット市場との相互の連携や新たな投資家層の獲得などが期待されます。
不動産投資クラウドファンディングについて
クラウドファンディングは不特定多数の人々がインターネットを経由して、成長見込みのあるプロジェクトへの資金提供を行うサービスです。
CAMPFIRE (キャンプファイヤー)やMakuake(マクアケ)といったサービスが日本では展開されており、出資者には商品やサービスが見返りとして提供されています。
不動産投資クラウドファンディングは不特定多数の投資家から資金調達を行い、集まった資金で不動産を購入します。
この不動産の運営によって得られた収益を投資家に分配するといった仕組みを採用しており、運営会社が直接不動産に投資をするといった特徴があります。
少額からの投資が可能であり、案件によっては1万円からの投資が可能といったケースも存在します。
投資家は運用期間中に不動産の管理といった作業も必要なく、不動産投資を行うことができます。
最近ではソーシャルレンディングといった手法もありますが、こちらは案件ごとにファンドを組成し、投資家から集めた資金を融資する貸付型の不動産投資です。
不動産投資クラウドファンディングは投資家に対して家賃収入を分配しますが、ソーシャルレンディングは金利収入を収益としているため投資手法としての違いがあります。
また、不動産投資クラウドファンディングは不動産への直接的な投資となるため不特法が適用されますが、ソーシャルレンディングは金融商品取引業(第一種、または第二種)と事業者への融資を行うために貸金業の登録が必要となります。
同じ不動産投資であっても不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングにはこのような違いがあります。
不動産特定共同事業法について
不動産投資クラウドファンディングサービス「CREAL」は不動産特定共同事業法に基づいて運営されています。
不動産の流動性向上にむけた取り組みの一環として不動産特定共同事業法は平成29年に改正され、登録要件が資本金1億円から1000万に改正されるなど規制緩和が行われました。
・宅地建物取引士を事務所ごとに1人以上設置する
・不特事業への3年以上の実務経験
・国土交通大臣指定の講習を受講する
・ビル経営管理士など登録証明事業による証明
このような業務管理者の設置を始めとして財産的基礎や人的構成についても不特事業の種類ごとに登録要件が定められています。
「CREAL」は第1号事業と第2号事業で定められた電子取引業務の認可に基づいて運営が行われており、インターネットを通じて様々な不動産への投資を少額から行えます。
不動産領域へのブロックチェーン技術の活用
IT技術を活用することで少額からの不動産投資が可能となり、不動産市場においても流動性の向上が期待されています。
最近ではクラウドファンディングのみならずVRによる内見サービスなど最先端技術の導入が不動産業界でも進んでおり、今後はAIやブロックチェーン技術の活用が予想されます。
ブロックチェーン技術について
ブロックチェーンは複数のコンピュータでのデータ管理を行う分散型のデータ管理システムのことで、特定の管理者を必要としないことから「分散型取引台帳システム」とも言われています。
電子取引においては特定の管理者による中央集権型のデータ管理システムを採用し、不正やデータの改ざんを監視してきましたが、管理者によってデータの書き換えや不正取引が可能です。
ブロックチェーンは取引ごとにブロックが生成され、暗号化された情報が格納される仕組みを採用しており、取引データの改ざんを行う際にはすべてのブロックのデータを改ざんしなくてはなりません。
ブロックごとに情報が同じでなければ整合性が取れないために取引データの改ざんを防止することができるのです。
スマートコントラクトについて
スマートコントラクトはブロックチェーン上のプロトコルの1つであり、契約の自動化が可能となることから多くの暗号資産に実装されています。
不動産取引においても契約のフローがスマートコントラクトによって自動化され、仲介業者を介する必要がなくなります。
そのためこれまでかかっていた人件費や手数料などのコストが削減されるようになります。
また、スマートコントラクトによる契約の実行の際には内容の変更ができないため、契約条件の改ざんを防止することもできるのです。
・不動産取引がオンラインで自動的に行える
・透明性の高い不動産取引の実現
・不動産情報管理の効率化
上記のようなメリットがスマートコントラクトを実装したブロックチェーンを活用することでもたらされ、より円滑な不動産投資が行われることが期待されています。
まとめ
最近では不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて行われる少額の不動産投資が注目を集めています。
株式会社ブリッジ・シー・キャピタルが運営する「CREAL」は不動産投資クラウドファンディングとして多くの投資家が参加しており、これまでは一部の富裕層しかできなかった大型不動産にも1口1万円から投資ができるようになりました。
誰でも手軽にできる不動産投資として注目を集める「不動産投資クラウドファンディング」とデジタル証券(セキュリティトークン)市場の相互的な連携は日本の不動産市場のデジタル化を促進することが期待され、厚みのある資本市場の形成に向けて今後も大きな注目が集まることでしょう。
参考文献
不動産特定共同事業者としての許可取得に基づく不動産投資クラウドファンディングサービス「CREAL(クリアル)」開始
何が違う?不動産投資型クラウドファンディングとソーシャルレンディング
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