【2021年1月】海外スタートアップ企業の資金調達額一覧

2021年1月第4週は、米国では新たな大統領としてジョー・バイデンの就任式が行われ、日本では東京五輪の開催中止を示唆する報道がなされるなど、世界情勢の大きな混乱とともに新たな動きが見られています。

 

スタートアップ市場においては金融サービスやeスポーツ、データ分析領域で大型の資金調達が行われており、旅行業界の回復を見据えて従業員の出張を効率的に管理するサービスにも高い期待が寄せられています。

 

近年では、より分散化された事業やサービスが普及しており、それらを統合するプラットフォームやツールの開発・提供に多くの資金が投じられている中、システム全体の自動化を実現する「ハイパーオートメーション」に今後は注目が集まることでしょう。

 

本稿では2021年1月第4週に行われたスタートアップ企業の大型資金調達を紹介し、各企業の取り組みを考察していきます。

 

iSTOX:シリーズA 5,000万ドル(STO・デジタル証券)

シンガポールでデジタル証券取引所を運営する「iSTOX」はシリーズAラウンドで5,000万ドルの資金調達に成功しており、

 

日本政策投資銀行

JICベンチャーグロースインベストメンツ

東海東京フィナンシャルHD

モバイルインターネットキャピタル

十六銀行

 

など日本の投資家が参加しています。

 

プライベートエクイティはこれまで一部の機関投資家や認定投資家限定の投資商品とされてきましたが、スマートコントラクトによる発行プロセスの低コスト化の実現によってiSTOXでは100シンガポールドルから投資が可能です。シンガポール政府はブロックチェーン技術を積極的に推進しており、証券のデジタル化による決済時間の短縮や新たな投資商品の組成など「iSTOX」による資本市場の活性化にも大きな期待が寄せられています。

 

デジタル証券の発行、管理、取引プラットフォームである「iSTOX」は調達資金を活用して中国重慶やヨーロッパ、オーストラリアでの事業展開を予定しており、プライベートエクイティへの少額投資の普及が各国の資本市場にどのようなメリットをもたらすのか今後の展開に注目が集まることでしょう。すでにシンガポール金融管理局(MAS)からの承認を得ている「iSTOX」が世界での市場優位性を獲得することで、米国のみならずアジアを中心としたSTO市場の形成も見込まれます。

 

VSPN:シリーズB+ 6,000万ドル(eスポーツ)

中国でeスポーツ関連の様々なサービスを提供している「Versus Programming Network(VSPN)」はシリーズB+ラウンドで6,000万ドルの調達に成功。全世界におけるeスポーツの市場規模は2020年の9.74億ドルから2023年には16億ドルに成長すると予測されており、中国のeスポーツトーナメントの70%以上と提携する「VSPN」の潜在的な企業価値は非常に大きいと言えます。

 

「Tencent」が主導したシリーズBラウンドでは1億ドルの調達を行い、その3ヶ月後のシリーズB+では「Prospect Avenue Capital(PAC)」、「Guotai Junan International」、「Nan Fung Group」から6,000万ドルを調達したとあって期待の高さが伺えます。

 

「eスポーツ業界は初期段階を経て、新しい時代に突入しています。来年、VSPNは、多様なeスポーツ製品とコンテンツを紹介することを楽しみにしています…そして、パンデミックが終わるまでの日数を数えています。」

 

VSPNの創設者兼CEOであるDinoYingはこのように述べており、中国のeスポーツ市場の発展と「VSPN」の国際戦略をもとにした成長性には今後も注目が集まることでしょう。

 

Aerobotics:シリーズB 1,700万ドル (アグリテック)

2014年に設立された「Aerobotics」は農作物の品質管理ツールを提供しており、画像解析による将来的な収穫量・スケジュールの推定などを実現によってアフリカ農業の発展をサポートしています。これまで8,100万本の木と100万本以上の柑橘類の画像処理を行ない独自のデータ分析基盤を有していることが高く評価され、シリーズBラウンドで1,700万ドルの調達に成功。

 

農作物や農業の管理のデジタル化によって生産性を高めることを目的に農業分野においてはAI技術の活用が進んでおり、「Aerobotics」はオーストラリア、ポルトガルにも拠点を構えるなど合計18カ国で事業を展開しています。米国においても樹齢推定、収穫予測システムの特許を申請していることから世界的な展開を今後は予定しているとされ、食料の安定供給といった社会課題の克服に向けて「Aerobotics」の活躍が期待されています。

 

 

SOCi:シリーズD 8,000万ドル (マーケティング支援)

 

人々がGoogleでの検索よりもSNSでの評価を参考に商品やサービスの価値を推し量るようになった現在において「ローカライズされたマーケティング」の必要性は日々高まりをみせています。企業が各地域での市場戦略を構築するにあたって参照するSNSやレビューサイトの情報を一括で管理し、広告の作成からインサイトレポートを提供するプラットフォームのを「SOCi」は提供。

 

これまでは異なる複数のサービスにログインしていましたが「SOCi」が提供するプラットフォームを利用することでよりシームレスで効率的なマーケティング運用が可能になります。よりパーソナライズされたマーケティング戦略の構築・実施をサポートする「SOCi」はシリーズDラウンドで8,000万ドルの調達を実施しており、JMI Equity、Ankona Capitalなどが参加しています。

 

「SOCi」は、2020年に100以上の新規顧客を獲得し、Ace Hardware、Anytime Fitness、The Hertz Corporation、Nekter Juice Barなどの大手企業がプラットフォームを利用しているなど「ローカライズされたマーケティング」のさらなる普及が見込まれています。

 

TripActions:シリーズB 1億5,500万ドル (旅行)

コロナウイルスの感染拡大の影響から企業活動における出張の割合は極端に減少していますが、出張の予約から経費精算までを一括して行えるサービスを提供している「TripActions」は評価額50億ドルで1億5,500万ドルを調達。2020年には旅行業界の業績を大きく低迷したことで6億2,500万ドルの融資を受けている「TripActions」ですが、今回のシリーズEラウンドにはAndreessen Horowitz、Lightspeed Venture Partners、Zeev Ventures、Greenoaks Capitalが引き続き参加しています。

 

※6億2,500万ドルのうち5億ドルは新サービス「TripActions Liquid」の開発費用

 

旅行業界の回復を見据え、大型の調達を行なった背景には

 

・企業の出張市場が週ごとに3-6%で回復している

・現在は20%程度だが2022年には75%まで出張市場が回復する

 

といった予測があることを「TripActions」の広報担当者は明らかにしており、時間の経過とともに企業活動における出張が増加することを示唆しています。

 

リモートワークの普及によって従業員は各住居に点在していることから出張の予約から経費精算をシームレスに行える「TripActions」のサービスの必要性はさらに高まるとも考えられ、出張の際に個人がクレジットカード使用することなく支払いを行えるコーポレートカード「TripActions Liquid」の提供など「TripActions」の将来性に多くの著名な投資家が期待を寄せています。

 

 

・参考文献

Digital securities platform iSTOX closes $50 million Series A to make private equity accessible to more investors

Chinese esports player VSPN closes $60M Series B+ round to boost its international strategy

South African startup Aerobotics raises $17M to scale its AI-for-agriculture platform

TripActions secures $500M credit facility for its new corporate travel product

Soci raises $80M for its localized marketing platform