米大手ペイパル、リブラ協会からの脱退を表明

米大手ペイパル、フェイスブック主導のリブラ協会からの脱退を表明 デジタル通貨

ペイパル、リブラからの離脱を発表

米国大手電子決済企業・ペイパル ホールディングスは2019年10月4日、フェイスブックが主導するステーブルコインプロジェクト「リブラ」を運営するリブラ協会からの脱退を表明しました。

通貨発行権とそれに基づくシニョリッジを独占してきた政府及び規制当局は当初よりリブラに対して金融システムとしての国際金融への影響に懸念を表明しており、これまでも批判の声が相次いでいました。
今回のペイパルの脱退は、リブラ協会に加盟していることでの規制当局からの規制強化を懸念していると見られており、先日ビザやマスターカードなどの大手クレジットカード企業もこのような懸念による協会からの離脱を検討していると報じられていました。

ペイパル側は離脱に伴う声明の中で、リブラの目指すビジョンへの賛同を表明し、今後の協業に関しての対話は続けていくと発表しているため、将来的なリブラ協会復帰への道が断たれたと判断するのは早計でしょう。しかし、今回のペイパルの離脱に伴って、その他の加盟企業の離脱の流れが加速するとの見方も出ており、離脱企業の数によっては、2020年前半に予定されているリブラのサービスの提供にも影響が出る恐れがあるとされています。

17億人を救うリブラ

2019年6月18日、フェイスブックは新たな仮想通貨プロジェクト「リブラ」を発表しました。リブラのホワイトペーパーによれば、リブラは既存の金融システムにおいて銀行口座を持たない人々について問題意識を抱えており、「多くの人々に力を与える、シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラになる」ために、全ての金融システムを誰もが簡単に使えるようにしたいとのビジョンを掲げています。

 

日本国内では、銀行口座の保有率がほぼ100%と高い普及率を誇っています。しかし、リブラのホワイトペーパーによれば世界には10億人が携帯電話を持ち、約5億人がインターネットを使える現在においても、銀行口座を持つことのできない人が17億人も存在するといいます。リブラによれば、貧しい人々ほど金融サービスを受けるために多くのお金を支払う必要があり、銀行口座を持ちたくとも持てない人々への調査では、彼らは十分な資金がなく、手数料も高額なことや予測ができないこと、そして銀行までの距離や必要な書類を用意できないことをその理由に挙げたといいます。

 

リブラはそんな人々でも安価に金融サービスを受けられるようにするために発足しました。これまでも、同様のビジョンを掲げたプロジェクトは存在しましたが、リブラがこれほどの注目を集めるのには理由がありました。それが、プロジェクトを運営するリブラ協会に名を連ねる企業です。

 

世界的企業で構成されるリブラ協会

発表と同時に世界中で話題となったフェイスブック主導のステーブルコインプロジェクト・リブラは、スイスに本部を置くリブラ協会によって運営されています。リブラ協会は各国の企業の集合体であり、評議会と理事会によって運営される非営利団体です。2019年6月の協会設立当初は、以下の企業がメンバーとして名を連ねていました。

 

決済: Mastercard、PayPal、PayU (Naspers’ fintech arm)、Stripe、Visa
テクノロジー・マーケットプレイス: Booking Holdings、eBay、Facebook/Calibra、Farfetch、Lyft、 Mercado Pago、Spotify AB、Uber Technologies, Inc.
電気通信:Iliad、Vodafone Group
ブロックチェーン:Anchorage、Bison Trails、Coinbase、Inc.、Xapo Holdings Limited
ベンチャーキャピタル: Andreessen Horowitz、Breakthrough Initiatives、Ribbit Capital、Thrive Capital、Union Square Ventures
非営利組織、多国間組織、学術機関: Creative Destruction Lab、Kiva、Mercy Corps、Women’s World Banking

(IT media ビジネスオンラインより抜粋)

 

これまでのステーブルコインとは一線を画す世界的企業の参画が話題を呼び、リブラ協会のステーブルコインプロジェクトは瞬く間に世界中の人々の耳にするところとなりました。そしてそれは、これまで通貨の発行や金融政策を担ってきた各国政府や規制当局も例外ではありませんでした。

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【外部リンク】
Libra-ホワイトペーパー(公式)

ペイパルの脱退とリブラへの懸念

アメリカではリブラのプロジェクト発表後、下院議会金融委員会委員長マキシン・ウォーターズ下院議員がフェイスブックに対し、全てのプロジェクトを中止するように要請しました。これまで、通貨発行権と金融政策を担ってきたのは紛れもなく各国政府です。フェイスブックがステーブルコインを用いて新たな金融システムを作り上げることは、最終的には国家の通貨発行権とも対立しかねないことを意味します。

そこに参画する企業も、同様にフェイスブック陣営に参画することとなり、規制当局の監視の目は一層厳しくなるでしょう。今回正式にリブラ協会からの脱退を表明したペイパルや、すでに報じられているビザ、マスターカードなどの企業も例外ではなく、これらの規制の厳格化と向き合わなければならない未来が来るでしょう。

一方、リブラ発足当初の発表ではリブラ協会に参画する企業が具体的にどのような利益を得られるのかについては明らかにされていません。今後、世界の基軸となるコインを作り上げることができれば、そこから各企業にもたらされる利益も多大なものになるでしょうが、今のところはフェイスブックが立ち上げたリブラに参画するというマーケティング的な側面が強く感じられます。一方で、既存の金融政策を主導してきた政府サイドからは多大な懸念が表明されたため、リスクマネジメントの観点から考えても、今回のペイパルの協会離脱の判断は理に適ったものであるとの見方ができるでしょう。

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