株取引が、今や誰にとっても身近なものになったように、セキュリティトークンの普及にもまた、高い流動性が欠かせないでしょう。
そのため、セキュリティトークン業界では、発行プラットフォームだけでなくセカンダリーマーケットとしての取引市場の整備も積極的に進められています。
セカンダリーマーケットにおける取引所の代表的なプレイヤーのひとりが、「OpenFinance Network(OFN)」です。
OpenFinance Network(OFN)について
OFNは米国証券取引委員会(SEC)の規制に準拠したセキュリティトークン取引所として2018年に設立されました。
代替取引システム(ATS:Alternative Trading System)ライセンスを取得しました。
ブローカー・ディーラーとしてもSEC・FINRAに登録されているOFNは2018年5月に「Harbor,Republic、Securitize」を含むブロックチェーン業界における主要企業との提携を行うなど注目を集めており、米国の厳格な証券法規制に準拠した初の取引所とあって、その存在は大いに注目されています。
OFNは、その後も「Huobi、Polymath、TokenSoft」との提携を結び、2018年12月にセキュリティト―クン取引所のベータ版サービスをオープンし、現在までに
SPiCEVC
Blockchain Capital
Lottery.com
22X Fund
といった企業がSTOによって上場しています。
これまでSTOによって上場したセキュリティトークンの売買は認定投資家に限定されたものと考えられてきましたが、12ヶ月のトークン売却制限期間を経て、取引が個人投資家間でも可能となります。
これはSTOの普及に大きな影響を及ぼすと考えられるでしょう。
一般人にもセキュリティトークンは広まるのか?

世界各国ではOFN以外にもセキュリティトークン取引所が相次いでオープンしています。
2019年1月にはエストニア金融情報機関(EFIU)からEU内での運営についての認可を受けたDX Exchangeがセキュリティトークンの取引を開始しました。(2019年11月に取引所は閉鎖されています)
DX ExchangeはNASDAQと提携を結んでおり、
Alphabet(Google)
Apple
Amazon
Microsoft
Intel
Netflix
Tesla
などのNASDAQ上場株式をERC20規格によってトークン化し販売しています。
ユーザーは各々の企業の株式に裏付けられたERC20トークンを購入することで、実質的にその株式を購入したことになります。
この仕組みは、NASDAQ上場株式の流動性を一層向上させるだろうと期待されています。
株取引に造詣の深い読者ならば、ブロックチェーン上で既存の株式を取引させることが、なぜ流動性を高めることに繋がるのか疑問に思われるでしょう。
より詳細に述べれば、各上場企業の株式がトークン化されることで、既存の証券取引所の開場時間にかかわらず、24時間365日取引が可能となるだけでなく、これまでの最低取引単位の1株をさらに細分化して取引ができるようになったのです。
株式のトークン化は、株式それ自体を部分的に購入あるいは売却することができるということを意味し、結果として株式売買に対する資金面での障壁が軽減するだろうと考えられるのです。
これは、機関投資家やプロの投資家ほどの資金力を持たない一般の投資家にとっては朗報であり、積極的な市場への参入を促す材料となるでしょう。
また、DX Exchangeが独自で発行している「IGWTトークン」はDX Exchangeに初めて上場したセキュリティトークンです。
IGWTトークンの保有者はDX Exchangeの利益の10%を配当として受け取ることが可能です。
NASDAQとの提携や独自の取引所セキュリティトークンの発行を行なっているDX Exchangeですが、セキュリティトークンへの投資は未だ認定投資家に限定されるに留まっています。
セキュリティトークン取引は認定投資家だけのもの?

現在のところ、DX Exchangeと同様にOFNにおいてもセキュリティトークンに対しての投資を行えるのは認定投資家に限定されています。
ICOにおいては個人投資家もトークンに対しての投資を行えましたが、規制や審査が必要とされていなかったがために詐欺紛いのプロダクト(スキャム・プロダクト)が乱立しました。
このことが原因で暗号資産業界への不信感を抱いた認定投資家たちはICOを積極的な投資対象としては見なさず、それに伴って市場への資金投入も消極的になったことから、市場全体の停滞を招くこととなりました。
STOが世界中の投資家から注目を集めているのはセキュリティトークンが株式や債券、不動産といった証券を裏付けとして、各国の規制に準拠した形で発行が行われるからであり、セキュリティトークンの取引市場の整備が発展途上である現在は、セキュリティトークン取引所は認定投資家による取引の場に留まっていると言えるでしょう。
よって、市場において高い流動性を生む要因の一つである「短期的な投機筋による取引」が未だ限定的であるために、OFNやtZERO、DX Exchangeの取引所においてもセキュリティトークンの取引それ自体はさほど活発には行なわれていないのが現状です。
では、個人投資家による取引の機会が全くないかと問われると、その答えはNoです。
全ての取引が各国の規制基準を満たすことが求められ、厳格なコンプライアンスに守られている中で、OFNではSPiCEとBCAPの売却制限期間が切れたために認定投資家ではない米国投資家でも取引することが可能となりました。
このOFNの指定保有期間とは何を意味するのでしょうか?
OFNは保有期間が過ぎれば個人投資家でもSTO取引が可能

OFNではセキュリティトークン取引においては米国を本拠とする個人投資家に12ヶ月の売却制限期間を設けています。
STOによって発行されたセキュリティートークンは米国法上、制限付証券と見なされます。
SECによれば制限付証券とは、発行会社や発行者の関連会社から未登録の私募で取得した証券のことです。
そして、この制限付証券を取得・保有している場合、これを市場で売却するためにはSECによる登録義務の適用除外を受けなければ
なりません。
そして、その適用除外のための条件を示しているのが、Rule144と呼ばれる規制です。
これによれば、その制限付証券の発行者が1934年証券取引所法上の登録義務の対象となっていない場合は、少なくとも1年間その制限付証券を保有しなければならないとされています。
そのため、OFNにおいても、米国の投資家に対しては12ヶ月の売却制限期間が設けられていますが、2019年第二四半期にSPiCEとBCAPの売却制限期間が切れたためにこれら2種のトークンについては認定投資家ではない米国投資家でも取引することが可能となりました。
上場したセキュリティトークンを取得した後、その即時転売が認められておらず、既存の米国株式等と同様に制限付証券として売却制限期間が設けられている点も、法の下の規制に裏付けられた制度であるSTOの大きな特徴と言えるでしょう。
セキュリティトークンの将来は?

読者にとって最も気がかりなことの一つは、これから先セキュリティトークンやSTOがどのような未来を辿るのか、ということでしょう。
しかし言うまでもなく、未来は不確実性に満ちており、それは誰にもわかりません。ですが、一つ確かなことは、STOの革新性は既に世界中で大きなうねりとなって動いているということです。
資本主義の恩恵を受ける世界の国々では現在多くのセキュリティトークンが発行がされており、その際にSecuritizeやPolymathといったトークン発行プラットフォームを活用した事例は数多く見受けられます。
また、トークン化された株式だけでなく、不動産投資を募るための配当型トークン(Resolute.Fund)や暗号資産取引所の収益に応じた収益分配型のトークン(Kriptomat)などの発行も行われており、STOの汎用性の高さを伺わせる先行事例が各国で続々と出てきています。
そんな中、OFNはセカンダリーマーケットにおけるセキュリティトークンの流動性向上にとって大きな役割を果たすことが期待されています。彼らがセキュリティトークン業界でのキープレイヤーの一人であることは疑いが無いでしょう。
tZEROやDXExchangeと同様、今後の動向に注目が集まります。
参考文献
Press Release: OpenFinance Network (OFN) Strikes Key Partnerships in the Security Token Industry
DXエクスチェンジ、STO上場とセキュリティトークン取引所を開始
DXエクスチェンジが2019年1月7日にオープン!新しい金融商品であるデジタル・ストックについて発表
Rule 144: Selling Restricted and Control Securities
OpenFinance Launches Regulated Trading Platform for Security Tokens
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