証券のデジタル表現からネイティブデジタル証券へ|既存システムとの融合による金融商品のデジタル化の促進に向けて

デジタルアセットエコシステムを既存の市場に取り入れることで、新たな経済成長を目指す取り組みが米国では行われています。

 

市場が成熟していく中で、ブロックチェーン技術に法規制や商慣習が対応していないことが課題の1つとされていますが、最近ではSTOに関する法整備が各国で行われ、分散型金融(Defi)に対しても市場拡大とともに規制を設けるべきであると考えられます。

 

本稿では、証券・金融・不動産といった領域における既存システムとデジタルアセットの融合の事例を解説し、金融商品のデジタル化の促進に向けた課題について考察していきます。

証券のデジタル表現からネイティブデジタル証券への発展にむけて

ロッテルダムのエラスムス大学は、論文「Security Token Offerings」を発表しており、現在のSTOに関する3つの課題を指摘しています。

 

1 金融商品をデジタル化したものではなく、現在は従来の証券をデジタルに表現したにすぎないこと。(Digital presentation)

2 ERC-20プロトコルで開発されていること。

3 フォークは重要なサイバーセキュリティリスクをもたらす可能性があり、重要な技術的課題であること。

 

そのため次世代の証券は、現在のセキュリティトークンのような証券のデジタル表現ではなく、ブロックチェーン技術を活用したデジタルネイティブな「プログラム可能な証券」であるべきとしています。

 

これは「Native digital securities(ネイティブデジタル証券)」とされており、「分散型台帳のスマートコントラクトで作成された、法的に認められた証券の主要な記録」と定義しています。

 

ネイティブデジタル証券は、ブロックチェーン上の修正を簡単かつ低価格で実行し、透明性の向上といったメリットを証券管理にもたらします。

 

また、投資商品の考えられるすべての機能とバリアントを表すdescription languageによって、

 

・任意の組み合わせによるデジタル資商品の作成

・すべての発行業務をブロックチェーン上で低価格で実行できる証券商品の作成

 

が可能になるとしています。

 

この論文を作成するにあたり100以上のSTOの分析が行われ、現在のところ米国を中心にケイマン諸島、英国、スイス、シンガポールがセキュリティトークンの発行に取り組んでいるとしています。

 

今後はリヒテンシュタインなど法整備が行われた国で、ネイティブデジタル証券が普及する可能性があると予想されており、証券発行におけるスマートコントラクトの利活用などユースケースの創出が見込まれます。

米国通貨監督庁(OCC) 国立銀行によるステーブルコインの裏付け資産管理を許可

米国通貨監督庁(OCC)は、米国の国立銀行の監督機関として

 

・国立銀行による暗号資産カストディサービスを許可

・暗号資産決済に関する方針の検討

・国立銀行と連邦貯蓄協会によるステーブルコインの裏付け資産管理を許可

 

といった取り組みを進めています。

 

金融機関による暗号資産カストディサービスが普及することで、従来の金融市場とデジタルアセットの融合が図られると考えられ、その提供と同時に暗号資産決済に関する規制の明確化を求める声が、米国議会上院の銀行住宅都市委員会からはあがっています。

 

また、これまで明確な規定が存在しなかったステーブルコインの裏付け資産管理についても連邦公認銀行による取り扱いを許可したことで、利用者保護といった観点でより信頼性の高いサービスの提供が可能となることでしょう。

 

このように米国では積極的なイノベーションの活用と同時に、明確な規制を設けることでより安全な市場の形成を実現しており、既存市場の秩序を保ちつつ新たなエコシステムを創出し、経済成長を図る取り組みが着実に行われています。

 

米国ブロックチェーン企業Circle CEO Jeremy Allaire氏は次のように述べており、毎日数十億ドルに及ぶとされる国立銀行と連邦貯蓄協会のステーブルコイン関連業務が明確に規制当局に承認されたことを歓迎しています。

 

「本日新たに発行されたOCCからのガイダンスは、米国の金融システムにおけるステーブルコイン(digital dollar stablecoins)の大きな進歩を示しています。発行者として、このガイダンスは、インターネット上でステーブルコインを使用するための強力でオープンな標準を構築するために採用したアプローチを検証するものです。」

 

韓国 ブロックチェーン技術を活用した不動産ファンド事業について

韓国では、ブロックチェーン技術を活用した不動産ファンド事業の展開に向けてデジタルアセット企業Fund Bloc(ファンドブロック)とWooriグローバルアセットマネジメントと提携したことが明らかになっています。

 

この取り組みは、ブロックチェーンを活用した第三者機関を介さない不動産取引を実現し、市場の流動性向上を実現すると考えられ、Fund Blocはプラットフォームの提供、Wooriグローバルアセットマネジメントは不動産ファンドの管理・スキーム構築支援を担当するとされています。

 

法規制に準拠したデジタル不動産プラットフォームは、取引の安全性・透明性を向上させ、投資家が24時間365日利用できるといったメリットをもたらすと考えられ、最近では分散型金融取引所であるUniswapで米国不動産ブロックチェーン企業RealTが発行する不動産トークンが海外投資家に向けて販売されています。

 

現在のところその取引量は不動産市場においてもごくわずかなものではありますが、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが定着するなど、不動産の利活用に大きな変化が起きている中で、ブロックチェーン技術を用いた新たな事業展開を各国の企業が模索していると言えます。

 

まとめ

国ごとに法規制は異なりますが、セキュリティトークンの発行に向けては公証役場での手続きが必要になる場合があるなど、現在のところ「証券のデジタル表現」であるとも考えられます。

 

最近では、これまで手作業で行われてきた業務をブロックチェーンを活用して効率化する取り組みは証券市場で実証が行われるなど、「ネイティブデジタル証券」の利活用が将来的には期待されます。

 

行政サービスのデジタル化など、これまで紙で行われてきた業務がデジタルに移行することで公証役場での手続きが不要になる可能性もありますが、中長期的な取り組みによって市場関係者の理解醸成を図ることが重要であると言えます。

 

また、各国においてユースケースの創出に向けた取り組みを各企業が連携して進めているものの市場に与える影響は限定的なものであり、国際協調による相互的な発展を目指すことが市場のさらなる成熟と発展に向けては必要であると考えられます。