Libra(リブラ)プロジェクトへの規制やデメリット

デジタル通貨

世界のイノベーションを牽引してきたフェイスブックがなぜ、Libraのような複雑な仕組みを施した金融商品を発表したのか多くの人々は疑問に思っています。

 

それはフェイスブック社に金融商品の組成に詳しい人材や暗号資産の開発に取り組んだ経験が不足していたからなのかもしれませんが、例えば無名の企業がETFの仕組みを採用し、その利益が利用者に還元されないステーブルコインを開発した場合、それはただの企業の金儲けのためだと考えられるでしょう。

 

Libraについてはアメリカ議会をはじめとして各国の規制当局からも批判が上がっており、その多くはフェイスブックが過去に顧客情報を不正流出させた企業である点や既存の金融システムの秩序を乱すといったものでした。

 

それを踏まえてフェイスブックがLibraのローンチを延期する可能性を示唆したことをCNBCが報じました。

 

>>Facebook warns investors that Libra digital currency may never see the light of day

 

Libra デメリットについて

 

ステーブルコインLibraは国際送金システムSWIFTや銀行を介さないためにより効率的な国際送金に利用でき、銀行口座を持たない人に向けての決済サービスを提供するとしています。

 

また、20億人以上もいるフェイスブックユーザーに対して支払手段を提供するために、Libraは提供と同時に世界で最も利用されるステーブルコインとなるでしょう。

 

しかし、本人確認の徹底がなされない場合にはマネーロンダリングの危険性があり、ステーブルコインへの規制も各国では整備されていない状況にあります。

 

また、銀行を介さずに国際送金が可能であるために、既存の金融システムにとっては厄介な存在であることは否めません。

 

自分たちの仕事が奪われるだけでなく、既存の規制の枠組みにとらわれない金融サービスの提供によって金融システムが混乱する危険性があるからです。

 

フェイスブックとLibra協会加盟企業が儲けるために何らかの暗号資産を開発するのであれば問題ないのですが、Libraは決済手段であるステーブルコインを営利目的に活用するといった取り組みであるとして、多くの批判を集める結果となりました。

 

実際にステーブルコインは国際送金よりもビットコインを購入するために利用されているケースが多く、現在のところは米ドルに連動した「テザー」が人気を集めています。

 

Libra ローンチ延期の可能性を示唆

 

フェイスブックのような世界的企業がステーブルコインの開発を行うのは、暗号資産業界の将来的な発展にとっては大きな意味を持ちます。

 

しかし、実際に発表が行われ、多くの議論を呼んでいる現状においてはフェイスブックの認識の甘さや取り組みの不十分さが指摘されています。

 

特にプライバシー保護については多くの批判が寄せられており、個人情報を不正流出させる企業が将来的に金融機関となることは常識的に難しいと考えられます。

 

また、規制への準拠など時間をかけて開発を進めていくとしていますが、ステーブルコインはすでに様々な企業が取り組みを進めており、フェイスブックといえども強豪との競争の前にこれだけの批判を集めたプロジェクトを軌道に乗せるのは非常に困難な道であるとも言えるでしょう。

 

自社の抱える社会的な問題(顧客情報流出)とそのリスクを考慮すると、ステーブルコインといった金融サービスの提供は大きな批判を浴びることは事前に予測できたと考えられますが、フェイスブックはSECに提出した最新の四半期報告書で下記のように明記しています。

 

In addition, market acceptance of such currency is subject to significant uncertainty. As such, there can be no assurance that Libra or our associated products and services will be made available in a timely manner, or at all. We do not have significant prior experience with digital currency or blockchain technology, which may adversely affect our ability to successfully develop and market these products and services.

 

「Libraがすぐに利用可能になるという保証はありません」といった報告をしており、ローン延期の可能性が示唆されています。

 

Libra 下院公聴会について

 

7月18日(日本時間)に行われた下院公聴会ではリブラプロジェクトの開発中止について激しい議論が行われました。

 

議会側は「リブラプロジェクトを規制する法案の成立までプロジェクト中止」を求めていましたが、フェイスブックの子会社「カリブラ」の責任者であるマーカスは「時間をかけて規制への準拠を目指し、Libraの発行を行う」と答えました。

 

マーカスは議員からの詰問に対しても「開発中止」については譲歩しない構えを見せましたが、Maloney議員からは開発中止の代替案が提示されました。

 

これは「SECと連銀の監督下でリブラのパイロット版の実施する」といったものであり、100万人以下の規模で行われるとMaloney議員はしています。

 

しかしながらこの代替案についてもマーカスは承諾する姿勢は見せず、開発中止や代替案については頑なに態度を保留する形となりました。

 

これを受けて、今後はどのような規制がリブラに対して行われるのか注目が集まります。

 

G7ではリブラについての特別会議が行われる予定とされており、各国は国際的協調によってリブラに対してのルール作りを進めることとなりそうです。

 

>>リブラ上院議会公聴会|顧客のデータ保護について

 

リブラ「信用の担保」について

 

 

今回の下院公聴会においてはリブラについて1836年のアメリカで行われていた「ワイルドキャットバンク(ヤマネコ銀行)」と似ているとの指摘が議員からあり、「信用の担保」がリブラではどのように行われるか注目が集まります。

 

「ワイルドキャットバンク(ヤマネコ銀行)」:1836年に第2次アメリカ合衆国銀行の定款更新が拒否されたことで、アメリカは「フリーバンキング」の時代に突入しました。金融における秩序は崩壊し、誰でも銀行券(紙幣)を発行できるようになったのです。しかし、その価値の裏付けはそれぞれの企業や組織の「信用」といった曖昧なものであったため、現代においては商品券のようなものでした。それを取り扱う企業や組織のことを当時は「ワイルドキャットバンク(ヤマネコ銀行)」と呼んでいました。

 

リブラはリブラアソシエーションといった特定の組織によってステーブルコイン の発行を行うため、「中央集権型」の特徴を持ちます。

 

そのためリザーブした資金を資産運用に使う可能性があるとして顧客の購買データの取り扱いのみならず、多くの懸念事項が存在していると言えるでしょう。

 

顧客データの流出によって約5400億円もの罰金を課せられたフェイスブックがどのようにして「信用の担保」に取り組むのか今後も大きな話題を集めることが予想されます。

 

また、日本円が裏付け資産として利用されることが明らかになりました。

 

リブラは法定通貨とペッグされ、価格が安定しているといった特徴を持つステーブルコインとして発行が計画されており、複数の通貨や国債によるバスケット型の採用を検討しています。

 

そのためリブラを日本円で購入し、他の通貨よりも円が安くなった場合にリブラを利用して決済を行うと差額分の利益が発生します。

 

現在のところ日本は暗号資産による少額決済についても課税対象となっており、日本の税制上ではリブラを利用するたびに確定申告の必要性が出てきます。

 

Libra ホワイトペーパーについて

 

2019年6月18日、Facebookを運営するFacebook, Inc.は新たな仮想通貨プロジェクト「Libra(リブラ)」を発表しました。

 

Libraのホワイトペーパーによれば、Libraは既存の金融システムにおいて銀行口座を持たない人々について問題意識を抱えており、「多くの人びとに力を与える、シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラになる」ために、スマートフォンでテキストメッセージを送るが如く、全ての金融システムを誰もが簡単に使えるようにしたいとの目標を掲げています。

 

Libraのホワイトペーパーによれば、「全世界のオーディエンスに対応することを意図しているため、 Libra ブロックチェーンを実装するソフトウェアはオープンソースです。つまり、これをベースに誰もが開発を行うことができ、多くの人びとがこれを利用して金融ニーズを満たせるようになっています。」とのことで、これは、Libraプロジェクトは全世界的なステーブルコイン計画であることを示しています。

 

このプロジェクトの運営に当たっては、スイス・ジュネーブを本部とするLibra Association(リブラ協会)が設立され、VISAやMastercard、Spotify AB、 Uber Technologiesなど名だたる企業が名を連ねていることからも、実現による影響力の大きさは容易に想像ができるでしょう。

 

そんなLibraプロジェクトについて、世界中の既存金融システムからは批判的な声が相次いでいます。

 

Libraプロジェクトの概要と世界の声

 

Facebookが本拠とするアメリカでは2019年7月16、17日に公聴会が開かれ、前述の通り、米国下院金融サービス委員会はLibraプロジェクトの開発中止を求めました。

 

また、IMF(国際通貨基金)や各国の中央銀行は、LibraプロジェクトはLibraのステーブルコインが超国家的な広がりによって法定通貨に準ずるような存在になることを懸念しています。

 

これらの批判は、Facebookを初めとしたLibra Association のメンバーの組織的な性格によるところが大きいと言えるでしょう。

 

彼らは金融政策の適切化を目的にしているわけではなく、あくまで営利目的の企業であるからです。現在、専ら法定通貨を発行している各国の中央銀行はIMFのメンバーです。

 

彼らのような各国中央銀行は営利を目的としてはおらず、あくまで資本主義下における金融政策を主導している政策機関としての機能を果たしています。

 

この点において、営利企業の集合体であるLibra Associationとは大きく異なった性格を持っていると言えるでしょう。

 

営利企業には、各々出資者がおり、必ずしも一貫した意思決定がなされるとは限りません。

 

種々のビジネス上の観点から、方針や政策が大きく、しかも急激に変更される可能性も否定はできないのです。

 

無論、そのような急激な方針転換は、Libraプロジェクトとそこに関わる自社の信用を失墜させかねないという点でそれほど高い蓋然性は持ち合わせていないとも考えられるでしょう。

 

しかし、ここで重要なのは、あくまで、金融政策の適正化を目的としたIMFなどとは組織的な性格が異なり、そのような可能性も否定はできないということなのです。

 

このように、Libraプロジェクトを巡っては期待の声とともに、各国から激しい批判も巻き上がっています。

 

既存の金融システムとの協議の難航も予想される中、これまでの世界の反応を取りまとめました。

 

アメリカ Libraプロジェクトの中断を要請

 

アメリカ下院金融委員会委員長であるマキシン・ウォーターズ議員はFacebook側に、規制当局がLibraプロジェクトに関する審査を終えるまでの間、Libraプロジェクトの開発を中断するよう要請しました。

 

世の中に実装されれば、既存の金融システムに対する影響は少なくないと言える今回のLibraプロジェクト。

 

アメリカとしては、その既存金融システムの舵取り役として、十分にその影響と対策を審議したいといった狙いがあると思われます。

 

当然のことながら、議会や規制当局にとってもLibraプロジェクトほどの大規模なステーブルコイン計画は前例のないもので、世界的な金融規制の枠組みに適合するかについては今後多くの議論が必要とされています。

 

また、ウォーターズ議員はFacebookが暗号通貨による支払いをユーザーの生活に浸透させようとしている今回の取り組みについて、ユーザーや既存金融を保護する明確な規制の枠組みがないことについても懸念を表明しています。

 

一方、このことについてFacebook広報担当者は「開発が進むにつれ、議員の質問に対応することを楽しみにしている」と述べています。

 

Libraプロジェクトに対して懸念を抱いている議員は小規模で超党派的な議員グループを形成しており、、公聴会は一般公開されました。

 

この他にも、このLibraプロジェクトの遂行に当たっても、個人情報などのデータプライバシーについてFacebook側に説明責任を求める動きが「#BreakUpBigTech」 としてtwitterなどで広がりを見せるなど、Facebookの運営においてしばしばユーザーの個人情報保護の観点から批判を受けてきたFacebook, Inc.への世間の目は厳しいものであると言えるでしょう。

 

そんな中、米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル会長はFacebookとFRBが会合を開いたことを明らかにしました。

 

パウエル会長は暗号資産やデジタル通貨については潜在的に大きな可能性があると述べており、FRBがLibraプロジェクトについての規制に関与する可能性を示唆しています。

 

今後のLibra普及に向けて、既存金融システムとの調和が課題となるであろうFacebook, Inc.の米国議会や関連機関との協議の模様にも引き続き注目していく必要があるでしょう。

【関連記事】
Libra(リブラ)に対する世界の反応|プロジェクト中断や規制の可能性

ヨーロッパ Facebookのシャドーバンク化や主権通貨への懸念を表明

 

ヨーロッパにおいても、Facebookの発表したLibraについてすでに批判的な声が上がっています。

 

欧州議会のマーカス・ファーバー議員はFacebookのシャドーバンク化への懸念について言及しました。

 

シャドーバンクとは、銀行ではない証券会社やヘッジファンドなどの金融機関が、資金の貸付を行う金融仲介であり、一般的に免許制などで厳格に規制されている銀行と比較して規制が緩いため、情報開示も少なく、多額の資金を投資家から調達してレバレッジをかけられるという仕組みになっています。

 

そのため、規制当局も厳密にはその実態を把握しきれていない現状があり、これらが破綻した時の世界経済への影響は甚大なものがあるとして懸念されています。

 

2007〜2009年にかけてのサブプライムローン問題が明らかになる以前にも、欧米のペーパーカンパニーを介してシャドーバンクからの多額の資金調達が大規模に行われており、これが世界的な金融危機の一因になったとの声もあります。

 

今回のLibraにおいても、Libra自体が銀行業規制の外側にいるにも関わらず多額の資金を容易に動かせることから、シャドーバンキングの温床になるのではないかといった点が懸念されているものです。

 

Libraのシャドーバンク化の懸念について、Facebookの世界的な影響力を背景として、Libraプロジェクトに対する既存金融システムからの批判的な声は非常に大きいものとなっています。

 

また、フランスのブリューノ・ル・メール財務相はLibraプロジェクトによるステーブルコイン計画が将来的に主権通貨になる可能性について、ステーブルコインは価格が安定しているために国際送金だけでなく、政治経済が悪化している国々では商取引に使われる可能性があると言及しています。

 

商取引の増加については、Libraのホワイトペーパーの中でも「グローバルに、オープンに、瞬時に、かつ低コストで資金を移動できるようになれば世界中で多大な経済機会が生まれ、商取引が増える、と私たちは考えます。」と述べられており、Libra の目指すあるべき姿の一つと捉えられるでしょう。

 

Libraの価格は、世界各国の銀行預金や短期債券に裏付けられており、純粋な仮想通貨と異なって実態の伴った価値を有します。

 

その点で、高インフレ率に悩まされている国では価値の安定性を保つLibraのステーブルコインである「グローバルコイン」が種々の商取引に用いられ、結果として法定通貨に準ずるような存在になり、そこからLibraの超国家的な広がりを見せることを世界の規制当局は警戒していると考えられるでしょう。

 

また、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁はLibraプロジェクトについて世界最高水準の規制を受ける可能性やイギリス中央銀行がG7、国際決済銀行、IMF国際通貨基金などと協力し、精査を行うと述べています。

 

カーニー総裁はFacebookのプライバシー保護やマネーロンダリング防止対策についても疑問を投げかけており、Libraプロジェクトについては厳しい態度を表明しています。

 

中国 大手IT企業はLibraプロジェクトへの参加はしない意向

 

全世界的なサービスを展開する上で無視できないのが、巨大な人口規模を有する中国の存在でしょう。

 

無料メッセンジャーアプリ企業​WeChatの親会社TencentのCEOである​ポニー・マー​氏はLibraプロジェクトが成功するキーポイントは「規制」にあると述べています。

 

Tencentは2018年3月、暗号資産やデジタル通貨についてのリスクを考慮してその発行は自社では行わず、暗号資産事業には関与しないと表明しています。

 

また、アリババグループの金融関連会社​Ant FinancialのCEOエリック・ジン氏もデジタル通貨からは距離を置くことを2018年に明言しており、Libraプロジェクト発表以前も「これに対する 我々の姿勢は変わっていない」と表明しています。

 

​QR・バーコード決済サービスAlipayを運営するAnt Financialも、各地域の決済サービスプロバイダと1社ずつ提携する従来の戦略をもとに海外市場への展開を拡大しており、ブロックチェーンに基づく戦略は採っていません。

 

これら中国企業のブロックチェーンビジネスに対する姿勢は、中国共産党による規制を背景としており、このために中国ではFacebookへのアクセスができず、2017年に中央銀行は暗号通貨の提供についても禁止しています。

 

中国国内での規制とLibraのステーブルコイン計画について、オープンソース・デベロッパー・コミュニティCSDNのYan Meng副社長は「中国はすでに十分に確立された決済ネットワークを持っているためステーブルコインの需要はないかもしれません。」と述べています。

 

また、Yan Meng副社長は「すでにAliPayが中国という世界人口の20%を占める1つの巨大経済からユーザーを獲得していることからLibraが世界規模の支払いネットワークを実現することは難しい。」とLibraの世界的な普及についても言及しています。

 

これまでに世界中で数多の暗号通貨プロジェクトが発表されてきましたが、Libraはその中でも一際話題に上ったプロジェクトの一つでしょう。

 

開発初期段階にあるステーブルコイン計画が、各国議会や規制当局までに相次いで批判的意見を表明させていることも、このプロジェクトが他のステーブルコイン計画のもたらすインパクトとは比較にならない影響力を持っていることの証明と言えます。

 

Libra Association はLibraのホワイトペーパーの中で、世界で17億人の成人が従来の銀行システムの外にいるという課題を示し、もっと多くの人々が金融サービスや安価な資本を利用できるようになる必要があると述べています。

 

しかし、既存の金融システムの外側にいる人々を救おうとするあまり、既存の金融システムに馴染んだ政府や規制当局、金融機関との摩擦を生じさせるのは結果として金融システム全体の新たな歪みを生むことになりかねません。

 

取り残された人々を救うために、別の人々を取り残すことは、真の金融革命とは言い難いでしょう。Libraが、今後各国の既存金融システムとの調和をいかに図って行くのか、引き続き注目していく必要があります。

【関連記事】

Libra(リブラ)ホワイトペーパー解説|ステーブルコインの将来性

Libra 国際決済銀行(BIS)からの批判や収益化の仕組み

ステーブルコインの現状と課題|Libra(リブラ)とCBDC

参考文献

Halt Libra? US Lawmakers Call for Hearings on Facebook’s Crypto

Facebook Talked to the Fed About Libra, Chairman Powell Says

Facebook’s New Crypto Faces Scrutiny From European Authorities

Facebook warns investors that Libra digital currency may never see the light of day

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