この記事では各分野におけるスマートコントラクトの社会実装と中国における法整備に向けた取り組みを解説していきます。
米国ではSEC(アメリカ証券取引委員会)が、スマートコントラクトコードの監視による分散型金融エコシステムへの監督を強化することを目的としてソフトウェア会社に対し「ブロックチェーンフォレンジックツール」の提案を求める取り組みを実施しています。
・契約目的(contract purpose)
・トークンの販売仕様(token sale specifications)
・購入と販売の制限(purchase and sale restriction)
・ホワイトリストまたはブラックリストのアドレス(whitelisted or blacklisted addresses)
・権限管理(permission management)
といったスマートコントラクトのロジックを分析するツールの購入をSECは検討しているとされ、スマートコントラクトの社会実装が進む中
・リスクの監視
・コンプライアンスの改善
・SECのポリシーの報告(デジタルアセットに関する)
の実現を目指す取り組みが米国では進行しています。
各分野におけるスマートコントラクトの社会実装
スマートコントラクトは、単一での導入による効率化のみならずIoTセンサーとの組み合わせによる相互的なメリットの享受が重要であるとされ
食品物流においては
・IoTセンサーによる品質管理データの管理
・データに基づいた契約(支払い)の自動実行
といった効率的なデータ活用とそれに基づく合意形成の自動化などによって業界全体で年間1,000億ドルの節約が図られるとコインテレグラフ・コンサルティングとVeChainは示唆しています。
ワインや海鮮食品の分野では偽装品の流通といった課題を抱えており、スマートコントラクトとIoTセンサーの相互運用は、食の安全性を担保する上でも活用が見込まれています。
中国の大手IT企業Tencentによるワインの偽装防止を目的としたブロックチェーンプラットフォームの開発なども行われており、より多くの分野で社会実装が進行。
また、金融市場においてもスマートコントラクトの採用が行われており、スペインではサンタンデール銀行とIberpay(イバーペイ)等が共同で国家決済システム(SNS)を活用したPoC(概念実証)を実施。
・自動即時取引(2万件以上)の実行
・平均処理時間 2.5秒/件
といった結果が報告され、「セキュリティ、効率性、トレーサビリティと整合性、および規制の遵守を最大限に保証」することによる決済分野においてもスマートコントラクトの利活用が進むことが予想されます。
中国における法整備に向けた取り組み
一方で、中国ではトークンの偽装によるスマートコントラクト詐欺事件が報告されており、その金額はおよそ15.3億円に及ぶとされています。
この詐欺事件は2019年から行われており、Telegramにおいてトークンの交換事業を運営する10名は、スマートコントラクトサービスの提供によっておよそ1300人の人々からお金を騙し取ったとされています。
2017年から中国では暗号資産取引所の運営や利用が禁止されていたもののOTC取引によって多くの資金が暗号資産に流入。
2020年1月には暗号法が施行され、デジタル人民元の実証が各都市で行われるなどブロックチェーン技術に多くの関心が高まる中での詐欺事件の発覚は規制当局による規制の強化への懸念が示唆されています。
そのような中で、ビジネスにおけるスマートコントラクトの利活用に際して管理規定を定める取り組みも行われており、中国大手WEBサービス会社「JD.com(京東商城)」は、規制当局との協力によって草案作成を検討しています。
「JD.com(京東商城)」によるレギュレーションファーストな取り組みが社会実装を推進
「JD.com(京東商城)」はスマートコントラクトの普及に向けて
・当事者のプライバシーの尊重
・裁判所での契約紛争の際にスマートコントラクトを証拠とする方法
・裁判所で知的財産の所有権の証明を示すためにブロックチェーンを証拠とする方法
に関してのベストプラクティスをガイドラインで提案しています。
スマートコントラクトは、ブロックチェーンを「信頼できるデバイス」から、産業を活性化させる主要な「エンジン」にアップグレードする “potentially upgrade [blockchain] from a ‘trust device’ to a key ‘engine’ that drives an industrial wave.”
と大手不動産開発企業Evergrade Groupの調査レポートは示唆しており、スマートコントラクトの法的効力(拘束力)の確認および容認に向けた「JD.com(京東商城)」の取り組みは市場の健全な発展に向けて非常に重要な役割を果たすことでしょう。
ブロックチェーン上の証拠(署名)が真実かつ効果的であることを保証し、公証サービスとして普及するか否かに関しては、法的な見解を議論するフェーズにあると考えられ、「JD.com(京東商城)」が提案する「区块链 电子合同存证应用指南 Blockchain—Electronic contract deposit guidelines」などを通じた社会的議論の活性化が期待されます。
コメントを残す