2020年は伝統的なIPOの弊害として、初値が売り出し後に公開価格の2倍以上となるものの数日後には価格が乱高下する事例が相次いで確認されました。そのため、直接上場(ダイレクトリスティング)による上場をAsanaやPalantir、Slackなどは選択しており、2021年は上場市場の構造的変化がさらに加速することが予想されます。
また、BuzzFeed、BarkBox、SoFiはSPAC(特別買収目的会社)での上場を検討しているとの報道も確認されており、多くのユニコーン企業が誕生した2010年代と比較するとより流動性の高い市場が形成されることが2020年代は期待されます。
本稿では、2021年にIPOの可能性が高い企業について詳しく解説していきます。
>>【IPO・2021】米国株AI(人工知能)ユニコーン企業3選|Darktrace・DataRobot・ThoughtSpot
Coinbase(コインベース)

・時価総額
280億ドル(2020年12月)
・沿革
2012年設立
2020年12月上場申請
・資金調達状況
資金調達ラウンド数 10
総資金額 5億4,730ドル
主要投資家数 5
投資家数 59
・最近の資金調達ラウンド参加投資家
・Secondary Market
True Capital Management
Fundamental Labs
Chainfund Capital
Manhattan Venture Partners
・Series E
Manhattan Venture Partners
Polychain
Andreessen Horowitz
Tiger Global Management
Y Combinator
Benjamin Kong
・M&A
2020年5月 Tagomi
2019年2月 Neutrino
2019年1月 Blockspring
2018年8月 Distributed Systems
2018年6月 Venovate、Keystone Capital Corp. 、Digital Wealth 2018年5月 Paradex
2018年4月 Earn.com、Cipher Browser
・出資
Bitso 6200万ドル 2020年12月8日 シリーズB
Blocknative 500万ドル 2020年11月9日 シード
Multis 220万ドル 2020年9月28日 シード
・競合会社
BitGo
itBit
GEMINI
・業績
2018年:売上高 5億2,900万ドル 営業利益 1億5,900万ドル
2018年:売上高 5億4,300万ドル 営業利益 1億6,300万ドル
※ bqintel社予想
・従業員
人数:770名
CEO:ブライアンアームストロング
CFO:アレシアハース
・特色
2012年に設立された暗号資産取引所コインベースは、これまでY Combinatorやa16zからの資金調達を実施し、2018年には企業価値80億ドルの評価を得ていました。米国暗号資産市場の黎明期を支え、最近ではカストディをはじめとして多角的な事業戦略によって世界を代表する暗号資産企業となったコインベースは、IPOに向けてSECへ上場を申請。
ビットコインが過去最高の23,600ドルの値をつけたタイミングでの発表は暗号資産市場でも大きな話題を読んでおり、従来の株式市場において暗号資産取引所の株式が売買される記念すべき年に2021年はなることでしょう。ブロックチェーン市場で分析事業を手掛けるメサーリの発表によると現在の評価額は280億ドルと推定されており、ビットコインの決済利用が2021年は増加すると想定した場合にはその価値はより向上していくとも考えられます。
金融インフラとして社会的知名度を高めるといった観点でもコインベースの上場は暗号資産市場においても大きな役割を果たすことが期待され、3500万人以上のユーザーが利用する世界的な暗号資産取引所としてコインベースは大きな飛躍を遂げることでしょう。
We have confidentially submitted our draft registration (Form S1) with the Securities and Exchange Commission. https://t.co/U6d0sVz0aX
— Coinbase (@coinbase) December 17, 2020
>>米国株・新規上場(IPO)予定のユニコーン企業|類似の日本企業について
UiPath(ユーアイパス)

・時価総額
102億ドル(2020年12月)
・沿革
2005年設立(ブカレスト)
2020年12月上場申請
・資金調達状況
資金調達ラウンドの数 9
総資金額 12億ドル
主要投資家数 6
投資家数 25
・最近の資金調達ラウンド参加投資家
・Secondary Market
G Squared
・Series E
Anchor Capital
Accel
IVP
T. Rowe Price
Madrona Venture Group
Tiger Global Management
Tencent Holdings
Coatue
Dragoneer Investment Group
・M&A
2019年8月:StepShot
2019年10月:ProcessGold
・競合会社
Automation Anywhere
Blue Prism
Kryon
・業績
2019年
年間経常収益(ARR):3億6,000万米ドル
新規経常収益(ARR):6,000万米ドル(2019年第4四半期)
・従業員
人数:42名
CEO:Daniel Dines
CFO:AshimGupta
・販売先
Amazon
Bank of America
Verizon
6,300以上の取引先
Fortune 20企業の50%が顧客に
・特色
UiPath(ユーアイパス)は、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)を活用した業務自動化事業を手がけており、今年の7月にはAnchor Capitalが主導したシリーズEで2億2,500万ドルを調達。評価額は2019年のシリーズDラウンドで70億ドルと算定され、2020年にはDX(デジタルトランスフォーメーション)への関心の高まりとともにUiPath(ユーアイパス)には102億ドルの評価額がついています。
業務の個別最適化を推進するRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)サービスは、企業/部門間の業務効率化を目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みとして導入する企業が多く存在します。定型業務をデジタル技術によって大替/補完することで企業活動の効率化を図ることで人件費削減につながることからRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)への需要はデジタル化の文脈の中で、より高まることでしょう。
Hand in hand with a robot, every person can break the work barriers and find new employment opportunities. Tune in for more Human + Robot stories that 🚀 human achievement, tomorrow at #UiPathReBootWork! pic.twitter.com/LydewqqHWO
— UiPath (@UiPath) December 16, 2020
>>米国株・2021年に直接上場を検討しているユニコーン企業について
まとめ

Coinbase(コインベース)、UiPath(ユーアイパス)の他にも下記の企業が2021年には上場する可能性が高いとされています。
開発コード共有・管理プラットフォーム:GitLab
マルチクラウドインフラ管理・運用サービス:HashiCorp
統合データ分析プラットフォーム:Databricks
2020年はテック系スタートアップ企業を中心に精鋭株が上場し、ロビンフットや暗号資産取引サービスを活用して個人投資家が投資を行う環境が今まで以上に整備されました。実体経済と金融経済の乖離は一段と大きくなったことがどのように米国株式市場に影響を及ぼすのか現在のところ未知数ではありますが、2021年も企業の成長が経済を活性化していくことでしょう。
また、上場時に株主の売り出しを行わないダイレクトリスティングはSpotifyやSlackが行ったことで、知名度を高めていますが、2020年の相場ではIPO銘柄に投資が集中し、初値が2倍以上となるケースも少なくありませんでした。現在のIPO市場の構造的な問題に対して有用性の高い方法としてダイレクトリスティングを推奨する声は高まりを見せており、投資銀行によるプライシングの課題や費用面を考慮して今後はその事例が増加することも予想されます。
>>【米国株IPO・2021】Databricks(データブリックス)が提唱するLakehouse (レイクハウス)とは?
・参照