IPO市場2021・フィンテック銘柄|アメリカ・スタートアップ企業が実現する金融のDX

データを活用して経営環境や事業運営の科学化を図る取り組みが進められ、今後はそのデータの「信頼性」を担保する技術への関心が高まることが予想されます。これまでは国家が紙幣や価値観、規制の「信頼性」を担保してきましたが、中央集権型の国家統制は資本主義の限界とともに年々、困難な運営を余儀なくされています。

 

そこで台頭してきた国家観が「監視資本主義」であり、第三極政党の影響が増大などを要因に国際的な競争力を落としている欧州各国を尻目に2020年台は中国を中心に新たな国家と国民のあり方が再定義されることでしょう。また、これまで国家やコミュニティ形成の根幹を支えてきたのは人と人とのつながりなど目には見えない情緒的な感覚でしたが、今後はそれらをデータに置き換え企業経営に活用する取り組みも進行しています。

 

2020年はDX、デジタル化の文脈で「企業/部門ごとにサイロ化されたデータの連携」の促進が大きな関心を集めましたが、自社ビジネスのデータ分析を行い、ソフトウェアによって事業を数値化することもまた重要です。米国ではAI企業「Databricks(データブリックス)」が、大リーグミネソタ・ツインズに所属する選手の動作をデータ化し、そこで得られた貢献度・プレー予測をチームの戦術に取り入れています。

 

野球などスポーツの分野ではこれまで感覚的な能力を打率や防御率といった大雑把な数値化で測定してきましたが、膨大なデータを統合する「レイクハウス(Lake House)」と「SQLアナリティクス」による分析の高速化はミネソタ・ツインズのみならずさまざまな事業領域に新たなインサイト(洞察)と広い意味でのカスタマーエクスペリエンス向上をもたらします。

 

そして、「監視資本主義」を是正する取り組みとして日本では2022年6月までに改正個人情報保護法が施行される予定であり、データの利活用推進と個人情報保護などアンビバレントな要素のバランス調整に多くの時間が必要となることでしょう。

 

低成長時代における国家衰退を食い止めるべくデータの利活用による新たなインサイト(洞察)の獲得によって企業成長、市民生活の活性化を図ることが期待されていますが、人口減少や公共インフラの老朽化などクリティカルな課題にダイレクトに訴求することのない表層的な領域でデータエコシステムの議論はとどまっているのも事実です。

 

経済産業省がまとめた中間報告書「DXレポート2(中間取りまとめ)」では「日本企業の9割以上はDX進まずデジタル競争の敗者に」といった報告がなされており、行政のデジタル化、スマートシティへの取り組みによって国民一人一人の意識改革を図ることが重要となります。市民生活において「データの利活用による新たなインサイト(洞察)の獲得とカスタマーエクスペリエンス向上」の必要性は今後さらに高まると想定され、国家的なデジタル社会の実現への取り組みではカバーできない領域を民間企業のサービスが担うことが期待されます。

 

本稿では2021年以降にIPOが期待されるフィンテック銘柄に着目し、アメリカ・スタートアップ企業が実現する金融のDXについて考察していきます。

 

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Stripe(ストライプ):決済画面遷移をなくし離脱率の低下を実現

2021年にはデジタル金融領域でトークンエコシステムの拡大が予想され、Defi(分散型金融)への規制やブロックチェーンインフラの整備が進むことでしょう。米国ではOCC(通貨監督庁)がステーブルコインを利用して金融機関がペイメントサービスを行うことを承認され、資産運用市場ではMicroStrategy社が600億円相当のビットコインを追加で購入するなど、貨幣価値とそのあり方が大きく変化しています。

 

また、中国やバハマにおけるCBDCの実際の利活用を通じて、各国の中央銀行が従来の金融市場への影響を検証する取り組みも行われると考えられます。日本で「ふくおかフィナンシャルグループ」がデジタルバンク(チャレンジャーバンク)「みんなの銀行」を設立するなどビジネスモデルの抜本的な変化への対応が必要となることでしょう。

 

上記のように金融領域ではスタートアップ企業のみならず中央銀行や金融機関がDX/デジタル化への取り組みを進めており、そのような市場環境の中で画面遷移なくシンプルな利便性を提供する決済プラットフォーム企業「Stripe(ストライプ)」は評価額700〜1,000億ドルで追加の資金調達を予定しています。

 

「Stripe(ストライプ)」のソフトウェアは、企業が支払いサービを提供する際に活用され、eコマース市場の成長とともに幅広いショッピングサービスで普及が進み、決済の際に画面遷移がないことから「離脱率の低さ」が特徴です。ECサイト運営事業者は従来のフィジカルなショッピングをデジタルに置き換えるだけでなく、決済の際にも顧客に高い利便性を提供できることから「Stripe(ストライプ)」はAmazon、Salesforce、Lyftなどでも導入されています。

 

2020年4月にはアンドリーセンホロウィッツやセコイアキャピタルなどから360億ドルの評価額で6億ドルを調達(シリーズG)。現在はIPOの計画を明らかにはしていませんが、競合企業としてはSquare、Paypalが挙げられ、より優れたビジネスモデルを有する企業としてその価値を高めています。

 

Stripe(ストライプ)」を導入することで「画面遷移時に離脱してしまう」といった顧客の行動を防止することが可能となりカスタマーエクスペリエンス向上の一例として世界的な普及が見込まれています。

 

 

>>アメリカIPOスケジュール【20211月第3週】AffirmPoshmarkが上場

Paxos Trust Company:金融インフラの高度化

デジタル技術を活用した金融サービスの導入によって顧客の不満を解消し、カスタマーエクスペリエンス向上を図る取り組みへの期待が高まる中、後払いサービス企業「Affirm(アファーム)」、株式投資サービス企業「Robinhood(ロビンフッド)」は2021年のIPOを目指しているとされています。(Affirmはカナダの分割決済プロバイダーPayBrightを1月4日に買収

 

また、アメリカのスタートアップ市場では金融インフラをデジタルに変革する企業も登場しており、事業運営全般をソフトウェアによって高度化し、運用効率を高める動きも確認されています。ブロックチェーンを活用した証券取引・決済システムを開発/提供する「Paxos(パクソス)」はシリーズCラウンドで1億4,200万ドルを調達

 

Paxos Settlement Service」は証券保管振替・決済機構を介することなく効率的な証券システムの運営を実現でき、ブロックチェーンがもたらす「非改竄性」によって取引・決済の「信頼性」を担保する金融インフラの利活用が今後は進むことでしょう。

 

暗号資産領域と従来の金融領域の融合は着実に進んでおり、アメリカ・ワイオミング州では暗号資産取引所「Kraken(クラーケン)」が「Kraken Financial(クラーケン・フィナンシャル)」を設立。これは暗号資産企業が銀行を設立した新規性の高い事例として大きな注目を集めており、フィンテックサービスのみならずブロックチェーン技術を活用した金融インフラの高度化にも2021年は高い関心が寄せられるでしょう。

 

現在、「Paxos(パクソス)」はシリーズCラウンドを終えたばかりですが、投資家のビットコイン需要の高まりとともに暗号資産取引所「itBit」の取引高は急増しており、「PayPal」や「Revolut」との連携によって新たな成長フェーズに到達していると言えます。このように暗号資産企業はブロックチェーン技術を活用した新たな金融インフラの構築を従来の金融市場とは異なる領域で展開しています。

 

暗号資産取引所「Coinbase」がIPOを2021年に予定していることを踏まえると2020年代の金融市場における暗号資産企業の存在感はさらに高まることが予想され、デジタルな「信頼」を担保するブロックチェーンベースの金融インフラの整備に今後も注目が集まることでしょう。

 

 

>>ブロックチェーン/暗号資産企業とIPO|2021年における国家超越と非中央集権の現在

まとめ

暗号資産/ブロックチェーン市場の有望企業の多くはシリーズB-Cラウンドでの資金調達を実施しているフェーズにあり、2025-2030年にかけてIPOを行う可能性が高いと予想されます。従来の産業構造を中心としたエコシステムとは異なる暗号資産/ブロックチェーンに特化したベンチャーキャピタルも立ち上がっており、カスタマーエクスペリエンス向上から証券取引の効率化までをカバーする幅広い知見が金融市場への投資においては必要です。

 

デジタル技術の導入事例もフィンテックから金融インフラへと高度な発展を遂げており、シリーズB-Cラウンドの暗号資産/ブロックチェーン企業に着目し、2021年以降のIPO市場の移り変わりを予測することも今後は重要になることでしょう。

 

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