IPOが期待される20社のアメリカ・中国のユニコーン企業2021|経済安全保障(エコノミック・ステイトクラフト)と将来性

ニューヨーク証券取引所では米国において主に事業を行なっていないとされる中国企業3社が上場廃止となるなど、2021年は株式市場においても経済安全保障(エコノミック・ステイトクラフト)の観点から中国企業への厳しい規制が講じられると考えられます。市場全体ではビットコインが新たな金融商品として高いパフォーマンスを見せる中、長引く新型コロナウィルスへの対応と実体経済の回復への期待感がどのような影響を株式市場にもたらすのか大きな注目が集まることでしょう。

 

1月6日には米国で議会合同会議が開催され、上下院で過半数に至らずとも1月20日には新たな大統領(代行)が選出されるとあって2021年以降の市場経済を占う上でも大きな分岐点となることが予想されます。「外国企業説明責任法」の施行など投資家保護の実現に向けて取り組みが進んできた米国株式市場ですが、新たに選出される大統領の意向次第では市場環境の不安定化も想定され、IPOを目指す企業にも大きな影響を及ぼすことでしょう。

 

本稿ではIPOが期待される20社のアメリカ・中国企業について分析し、経済安全保障(エコノミック・ステイトクラフト)の影響と将来性を考察していきます。

 

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IPOが期待されるアメリカ企業

2015年以降はデータ分析の高度化を支える米国テック企業がシリーズE/Fで大型調達を実施し、2020年のIPO銘柄として大きな注目を集めたスノーフレイク、アサナ、パランティアの成功は引き続き多くのテック企業をIPOへ向かわせる大きな要因となっています。しかし、2020年12月にはロブロックス、アファームがIPOを延期する事例もあり、量的緩和の影響でIPO株に多くの投資が集まる現在の市況を踏まえて公募価格の再設定などを検討しているとされています。

 

初値が2倍以上になる銘柄も多く、今後はIPO費用を抑え、ロックアップ期間なしで創業者等が上場の恩恵を受けられる直接上場を推奨する声も高まりを見せています。2010年代は最新技術を活用したプラットフォームビジネスとシェアリングエコノミーの思想が結びつき、付加価値の高い民泊事業や宅配サービスなど従来のフィジカルなビジネスがデジタルによって再定義された事例も確認されました。

 

しかし、2016年の米国大統領選挙での個人情報の不正利用や中国企業の台頭の影響から最近ではセキュリティやデータの真贋性を担保するビジネスに多くの投資が集まっており、「サイバーセキュリティ」「ブロックチェーン」は2021年以降の政治・経済など様々な分野において必要不可欠なビジネスとなることでしょう。

 

様々な分野で軍事行動を伴わない攻撃が激化する中、経済安全保障(エコノミック・ステイトクラフト)の観点から各企業への影響を分析していきます。

 

>>AI/機械学習のプレIPO企業2021|サイバーセキュリティ・データ分析予測銘柄

 

ブロックチェーン市場 ユニコーン企業5社

1 Coinbase

2 Bitmain

3 Bitfury

4 Digital CurrencyGroup

5 Chainalysis

暗号資産市場ではビットコインが資産性の高い投資商品として機関投資家から人気を集める一方、XRPの証券規制違反の疑惑が市場に大きな影を落としており、暗号資産取引所「Coinbase」も「投資家保護」をめぐって不安定な運営を余儀なくされると想定されます。

 

上場を見越した場合にはICO銘柄の違法性が大きく報じられるたびに上場廃止など運営の見直しを迫られることとなり、市場全体では分散型金融(Defi)取引所へのマネーロンダリング規制を求める声も2021年は大きくなることが予想され、国家的な経済安全保障(エコノミック・ステイトクラフト)を脅かすほどではないもののやや不安定な材料が確認されます。

 

ビットコインの値上がりによって投資家の多くが暗号資産市場に参入している中、マイニングマシン企業への関心も高まっており、「Canaan」、「Ebang」に引き続いて「Bitmain」、「Bitfury」がIPOに近い企業として知られています。

 

「Bitmain」は創業者間の和解が成立し、2022年の米国IPOを目指すとしており、「Bitfury」はこれまで1億7,000万ドルの資金調達を実施するなど事業の拡大に向けては「Ebang」が1億ドル以上をIPOで調達した事例は参考になることでしょう。

 

ビットコインなどの投資信託を販売する「Grayscale」を子会社に有し、VC事業も展開する「Digital CurrencyGroup」、ブロックチェーン分析企業「Chainalysis」もブロックチェーン市場では大きな存在感を発揮しています。

 

取引所、マイニングといった従来のビジネスモデルからさらに派生した事業領域の企業が着実に成長を遂げている一方、市場全体の不確定要素は法規制の厳格化などの観点から少なくなく、IPOよりも未公開株式企業として事業成長を図る傾向も今後は強まるとも考えられます。

 

ブロックチェーン市場では株式や社債などを担保しないICOによる資金調達を行う企業が過去には多く存在しており、すでに大型の資金調達を実施している企業/プロジェクトはIPOによって厳しい監査を受けることなく株式市場とは異なる枠組みで発展を遂げることでしょう。

 

また、中国企業が積極的にブロックチェーン市場に参画していることから米国ではなく香港や上海でのIPOを目指すことが予想され、2021年は「Digital Currency Group」、「Galaxy Digital」、「ConsenSys Ventures」などのVCの取り組みにも注目が集まります。

 

>>これから伸びる注目のスタートアップ企業とは?シリーズD前に1億ドル以上の資金調達に成功したアメリカ・中国企業

2021年:データエコシステムのさらなる発展

6 DataRobot(データロボット)

7 ThoughtSpot(ソートスポット)

8 Confluent(コンフルーエント)

9 Databricks(データブリックス)

10 HashiCorp

11 GitLab(ギットラボ)

12 DoubleVerify

 

米国のデータ分析企業としては「自動機械学習プラットフォーム」の開発/提供を手がける「DataRobot(データロボット)」、AIを活用し企業データからより高度なインサイトを取得することを促進する「ThoughtSpot(ソートスポット)」が評価額15億ドル以上で大型の資金調達を実施。

 

膨大なデータ処理を可能にするイベントストリーミングプラットフォーム開発企業「Confluent(コンフルーエント)」、「データとAIの民主化」の掲げる「Databricks(データブリックス)」もシリーズEでそれぞれ45億ドル、62億ドルの評価を得ており、データエコシステムのさらなる拡大を促進する技術力を有する企業の台頭が期待されます。

 

データの信頼性を担保する技術を駆使してデータ駆動型社会のガバナンスの構築を図る構想が国家の戦略としても広く認識され、2020年代は「データ」にまつわる様々な産業が誕生することでしょう。上記の4つの企業の他にも異なるインフラ・環境下でも統一された操作性やセキュリティ構築の自動化を実現する「HashiCorp」が評価額51億ドル(シリーズE)で1億7500万ドルを調達。

 

Gitリポジトリマネージャー「GitLab(ギットラボ)」も評価額27億ドルで約2億7000万ドルを調達し、広告運用のデータ分析事業を手がける「DoubleVerify」も2020年10月に3億5,000万ドルを調達するなどIPOを見据えた大型調達が米国では確認されています。

 

これらのデータ分析企業の多くは2010年代のフィジカルなビジネス領域をデジタル技術を駆使して改善、拡大する事業をさらに発展させ、データそのものをどのように駆使するかに特化したビジネスモデルを構築しており、2021年はより高度なデータ分析サービスの普及によって様々な産業がよりデータエコシステムと結びつきを深めることでしょう。

 

>>Apache Kafka」開発企業「Confluent(コンフルーエント)」のIPOの可能性について

IPOが期待される中国企業

13 猿輔導(Yuanfudao)

14 美术宝(Meishubao)

15 知乎(Zhihu)

16 微医(WeDoctoor)

17 思派(Medbanks)

18 丁香园(DXY.cn

中国企業は米国市場からの撤退を余儀なくされるのみならず国内においても金融規制によってグループ会社全体の弱体化が図られる事例も確認されており、対外的には「超限戦」によって国際社会の既存秩序の変革を促しつつ、国内では厳しい規制を施す市場環境に翻弄されていると言えます。

 

世界的には、既存の国家的枠組みを維持し、新たな秩序を構築するため規制強化は今日においてはその対応領域が無秩序化しているために効力を失い、国家的な取り組みでは経済安定保障を実現するのは困難な時代に到達していると考えられます。

 

デジタルな技術を活用した監視資本主義が国家運営の安定性を維持するために採用されている2021年において既存秩序の変革をどのような形で成し遂げるのか様々な方法が検討されており、不確定要素が増大する市場環境の中で中国企業はその対応と事業拡大を同時並行で進める必要があり、よりタフで堅実なビジネスモデルの構築が測られることでしょう。

 

インフラ整備を目的とした資金提供/内政干渉によって他国の国家運営への影響力を高め、サイバー攻撃による個人情報漏洩などで企業の社会的信頼を失落させるなど「超限戦」は顕在化しつつありますが、潜在的には様々な領域で「非軍事の戦争行動」は行われており、混沌化する社会構造の中でより高度なイノベーションを創出しなくてはならない時代に突入しています。

 

そのような中で、中国国内においてはその市場規模の巨大さからエドテック領域でユニコーン企業が誕生しており、評価額155億ドルと推定されるオンライン教育企業「Yuanfudao(猿輔導)」、オンラインで美術の教育事業を展開する「美术宝(Meishubao)」がシリーズDラウンドで2億1,000万ドルを調達するなど、多くの資金が投じられています。

 

また、Q&Aサイト「知乎」はシリーズFラウンドで4億3,400万ドルの調達を実施し、2021年には香港証券取引所でのIPOを予定。

 

日本において高い知名度を有する中国企業はアリババやアントグループ、テンセントなどがありますが、市場全体では多くの有望企業が成長を遂げており、株式市場の新たな中心地として香港・上海証券取引所は2021年以降の市場経済を牽引していくことでしょう。

 

中国フィンテック企業/ECプラットフォーマーの台頭は2015年あたりから国際経済において大きな存在感を発揮してきましたが、上記の3社のようにオンライン教育ビジネスが大きな発展を遂げているのも中国市場の特徴であり、「社会的意義の高い」ビジネスとデータエコシステムの利活用が2021年は多く確認されるとも考えられます。

 

ヘルスケア領域では「微医(WeDoctoor)」が香港証券取引所でのIPOを予定し、ビッグデータを活用したヘルスケア事業を展開する「思派(Medbanks)」はシリーズE1で3億ドル調達を調達。

 

医療従事者の情報共有プラットフォーム「丁香园(DXY.cn」は、Eラウンドで5億ドルを調達し、疾病予防や健康促進の観点から今後も大型の資金調達が中国ヘルスケア領域では確認されることでしょう。

 

>>【米国株IPO2021Databricks(データブリックス)が提唱するLakehouse (レイクハウス)とは?

経済安全保障とサイバーセキュリティ

19 BigID

20 Clumio

カリフォルニア州消費者プライバシー法など個人情報をより厳格に管理することで経済安全保障を維持する取り組みが米国では確認されています。

 

サイバーセキュリティの分野では「BigID」が高度な機械学習によって個人情報と機密データをマッピングし、データの自動検証によってコンプライアンスの遵守を可能にするソリューションを提供。個人情報の管理/共有をより厳格化することは国家のみならず民間企業の技術力を活用することも期待され、「BigID」はシリーズDラウンドで7,000万ドルの調達を実施しています。

 

シリーズCまでに総額1億8,600万ドルの資金調達を実施している「Clumio」はデータを暗号化し、安全な管理環境を整備するBaaS(Backup as a Service)を提供しており、在宅勤務の影響でサーバー攻撃対象領域の拡大への対応策として導入が広がっています。ユーザー認証/検証をはじめとして多要素認証、高度なエンドポイントセキュリティなどゼロトラストモデルの確立とともにマネージド・セキュリティ・サービス(MSS)への需要も高まりを見せています。

 

2025年には466億ドル(2020年:316億ドル)に増加するとされるMSS市場の拡大とともにサイバーセキュリティ企業のIPOも増加することが予想され、経済安全保障の観点からもスタートアップ企業の最先端の取り組みに期待が寄せられています。

 

>>米国株・2021年に直接上場(ダイレクトリスティング)を検討している企業|資本政策や市場戦略

まとめ

IPOは企業にとっては1つの通過点であり、社会的信頼の獲得とともにさらなる事業投資を促進することにつながります。経済安全保障を前提とした国家運営においては市場からの締め出しによって、その影響力を削ぎ落とすことなど様々な施策が検討されますが、技術力の観点からより高度な攻撃への対応が必要不可欠となり、最先端のサイバーセキュリティが大きな注目を集めることでしょう。

 

データエコシステムの利活用と安全なデータ管理/共有は表裏一体の性質を有しており、データのサイロ化を改善すると同時に国家間でのブロック経済を整備するなどより混沌とした社会構造の中で、企業はそれぞれの分野で成長を遂げることが求められています。

 

>>Roblox(ロブロックス)の企業分析|2021年のIPOに向けてビジネスの将来性を解説