機関投資家とデジタル証券/資産|ファンド型STOによる資金調達の促進

2017年と比較すると2020年12月は世界経済は景気後退期の真っ只中であり、米国が担ってきた全世界的な政治/経済システムの脆弱性が露呈しつつあります。

 

2020年以前から現代社会構造の構造的欠陥は指摘され、政治の世界では第三極政党の台頭によって国家システムそのものへの信頼が薄れつつあった中、新型コロナウイルスの感染拡大はさまざまな社会システムの崩壊/再構築を加速させました。

 

その中においてデジタル資産は、一般投資家から米国を中心とする機関投資家へと投資家層が移り変わっており、インフラストラクチャー/法律の整備のみならずファンダメンタルズの観点からも市場拡大が見込まれている状況にあります。

 

株式や不動産への少額投資が普及し、日本でも資産運用のあり方が変化しつつありますが、一般市民にとっては「ビットコイン=怪しい」「デジタル資産市場=リテラシーの低い層を対象とした危ない市場」といったイメージが今もなお強く残っています。

 

そのため今後も一部の投資家を対象としたアセットクラスとしてビットコインを中心とした市場拡大が進む中で、どのようにしてデジタル資産への投資を活性化させるのか、日本においても各社の事業戦略とともに一般市民への理解醸成が重要であると言えます。

 

本稿では、米国の機関投資家が牽引する市場環境の中で、どのようにデジタル資産は認知を拡大しているのかを紹介し、ファンド型STOによる資金調達の促進とデジタル資産投資の活性化についても考察していきます。

 

機関投資家による大口投資=新たなアセットクラスとしての社会的地位の確立

米国では、マイクロストラテジー社が4億2,500万ドルに及ぶビットコインの購入を発表後、自社の現金資産をデジタル資産に置き換え、インフレリスクをヘッジする取り組みに注目が集まっています。

 

日本では税制上、デジタル資産を企業が保有するメリットはありませんが、米ドルの紙幣発行が2020年は急増していることを背景に米国では株式や不動産など法定通貨に紐づいている資産を回避し、国家の信用に担保されることなく資産としての価値を有するビットコインへの投資が活発になり、様々な領域に影響を及ぼしています。

 

市場の健全化に向けては、米通貨監督庁(OCC)が「ビットコインを禁止するつもりはない」とCNBCのインタビューで述べるなど、米国においては新たなイノベーションを積極的に活用しようとする機運が醸成されている一方、Defi(分散型金融)市場においてはKYCを行わずとも取引が行われてしまうことからマネーロンダリングを助長させているとの見方もあり、今後は規制が課せられ、またその規制を掻い潜るべく様々な手法が考案されることも想定されます。

 

デジタル資産市場は自由度の高さから時として従来の金融市場では考えられないような事例も発生し、有望なプロジェクトであってもスケーリング/リスクマネジメントの失敗を原因として市場から淘汰されてしまうことも少なくありません。

 

現在は、希少性の高さから主に機関投資家によるビットコイン投資が盛んに行われる一方、「Ethereum as an asset class(アセットクラスとしてのイーサリアム)」への確信が高まりつつあるとグレイスケールインベストメンツは見解を示しており、Defi(分散型金融)市場における利活用が進むイーサリアムにも今後は注目が集まります。

 

Defi(分散型金融)市場に規制が施された場合、イーサリアムの資産としての価値はどのように評価されるのかは未知数な部分はありますが、「機関投資家による大口投資=新たなアセットクラスとしての社会的地位の確立」は今後の市場を分析する上でも有用性の高い指針になることでしょう。

 

そのような考察をもとに今度はファンド型STOによる資金調達の促進を検証していきます。

 

ファンド型STOによる資金調達の促進

価値が担保されていることと、その価値の希少性が担保されることは≠であり、必ずしも実物資産のトークン化がデジタル資産市場において投資対象として認められるわけではありません。

 

その資産がどのように価値を有するかはまた別の問題でもあり、そのような意味で担保資産の精査も重要であると言えます。

 

従来の未公開株式/不動産市場で一部の投資家のみが取り扱うことのできた銘柄をトークン化する新たな社会実験を通じて、デジタル資産市場の裾のを小規模ながらも拡大することがセキュリティトークンの現在の役割でもあり、ビットコイン/イーサリアムを中心として発展を遂げる市場の恩恵を従来の株式/不動産などの市場にもたらし、相互発展を遂げることが最適解であると言えます。

 

そのような観点からセキュリティトークン市場を俯瞰したときに2021年において事例の創出が期待されるのが、「直接上場」と「ファンド型STO」であると考えます。

 

直接上場の事例は2020年12月現在、確認されていませんが、フランスでは映画製作会社「LogicalPictures(ロジカルピクチャーズ)」が、投資ファンド「21 Content ventures」の立ち上げを発表。

 

この投資ファンドの資金調達はTezosブロックチェーンを活用したSTOで行われ、制作される映画(シリーズ)の将来的なポートフォリオからの収益配分権をセキュリティトークンとして発行します。

 

Logical PicturesGroupの社長であるFrédéricFiore氏は「映画、テレビシリーズ、ドキュメンタリーは、特にNetflixなどのストリーミングプラットフォームの台頭により、過去数年間高い需要があり、パンデミックはこの上昇傾向を加速させました」と述べており、今後8年から10年で100から200本の映画に資金を提供することを目指しています。

 

最大で1億2100万ドル(1億ユーロ)に及ぶ21 Content ventures STOは、まず適格投資家に10万ユーロから提供され、年率平均リターンは4%〜6%とされています。

 

この映画ファンド型STOには、フランスの銀行グループBNPパリバの子会社Portzamparcも参画しており、調達資金の回収やサブスクリプションプロセスを管理するとしています。

 

鬼滅の刃のような一部の作品を除き、多くの映画は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、作品の公開延期などの影響が出ています。

 

一方、映画制作/配給市場では、大々的な映画公開よりもサブスクサービスでの提供の方が収益を獲得できる傾向にあるためにディズニーは株主からの要請でDisney+を開始するなど産業構造が変化しています。

 

そのような中でファンドを活用した資金調達は民間からの資金供給/セキュリティトークンによる二次流通が期待できることから大きなメリットを市場にもたらし、今回のSTOは「映画製作者とプロデューサーが劇場用かストリーミングサービス用かを考慮せずにプロジェクトの開発と資金調達を支援できる。」とFrédéricFiore氏は述べています。

 

米国でもVertaloが不動産ファンドのSTOを発表しており、2021年のSTO市場を占う上でも「ファンド型STO」の事例が創出されることは大きな意味を持つと考えられます。

 

まとめ

デジタル資産市場においてセキュリティトークンが担う領域は今後拡大することが予想され、映画などコアな領域から「資産のトークン化」の実現が図られています。

 

「機関投資家による大口投資=新たなアセットクラスとしての社会的地位の確立」といった観点では担保されている資産の価値が変数となりますが、様々な資産がトークン化されることで市場の拡大が進むことでしょう。