【農業×ブロックチェーン】活用事例|TPPや日米FTAの影響

ブロックチェーン

今回は日米FTA(自由貿易協定)による農業への影響やブロックチェーン技術を活用し、新たな農業ビジネスに取り組む事例を紹介していきます。

 

参議院選挙後に日米FTAの発表が行われるとされていますが、農作物と自動車への関税率の引き下げによって国内産業の衰退が不安視されています。

 

日本では2019年2月にEU加盟国(現在28各国)との経済連携協定である日欧EPAが発行され、TPP11と比較すると下記のような関税率の変化があります。

 

TPP11

 

品目
無税輸入枠(オーストラリア)6000t
牛肉関税下げ26.6%
豚肉高価格帯(従価税)1.9%
低価格帯(従量税)125円/kg

 

日欧EPA

 

品目1年目2年目
ソフトチーズ輸入枠拡大2万t(製品換算)2.1万t
枠内関税下げ21〜37.5%19.6〜35%
ハードチーズ関税下げ24.7〜27.9%23〜26.1%
牛肉関税下げ27.5%26.7%
豚肉高価格帯(従価税)の関税下げ2.2%2%

 

日欧EPAによって国内の農林水産業は最大1100億円の生産額減少が見込まれており、日米FTAも同様の影響があると考えられます。

 

日米FTAの概要

 

2019年4月に行われた日米貿易交渉第一回会合では

 

・農産品
・自動車

 

といった物品貿易を中心に議論が行われました。

 

日本市場におけるアメリカからの輸入品が他国の物品との価格競争などで不利にならないことを目的としており、特に農産品と自動車についてはアメリカは高い関心を抱いています。

 

特に牛肉・豚肉はオーストラリア・カナダ産が日本で幅広いシェアを獲得していることから、アメリカとしても輸入量の増加を求めています。

 

しかし、日本の農業に与える影響は大きく、すでにTPP11、日欧EPAによって牛肉は年間59万トン以上を輸入しています。

 

日欧EPAはTPP11を超える水準で輸入量や関税が適用されているため、日米FTAも同様の譲歩が見られると予想されています。

 

アメリカは2018年12月21日に『対日貿易交渉目的』を公表しており、下記の22項目を提示しています。

 

交渉項目
物品貿易
衛星植物検疫(SPS)
税関・貿易円滑化・原産地規則
貿易の技術的障害(TBT)
良き規制慣行
透明性・公表・行政措置
サービス貿易(電気通信・金融含む)
デジタル貿易と越境データ移転
投資
知的財産
医療品・医療機器の手続的公正性
国有・国営企業
競争政策
労働
環境
腐敗防止
貿易救済
政府調達
中小企業
紛争解決
一般規定
為替

 

両国ではまず物品貿易に関する交渉を行い、その他の分野では「適切な時期に」交渉を行うとしています。

 

2020年にアメリカ中間選挙を控えているためにトランプ大統領としてもアメリカ国内の農業従事者からの支持を取り付けたいという狙いがあります。

 

 

日米FTA 農業への影響

 

農作物についてはアメリカとTPP11加盟国、EUの国々とでは関税率に大きな差が生まれています。

 

特に牛肉と豚肉においては下記のような関税率の差が生まれています。

 

TPP11加盟国(オーストラリア・カナダ) 26.6%
EUの国々(日欧経済連携協定締結国) 26.7%
アメリカ 38.5%

 

アメリカとしては早期妥結を目指していることが明かされており、TPP11の水準である26.6%の関税率を適用すると考えられます。

 

BSE(牛海綿状脳症)月齢制限撤廃
防カビ剤表示撤廃
遺伝子組み換え食品表示撤廃

 

これらについても議論が交わされており、「日本産の農産品の消費量減少」「食の安全性の基準変更」といった影響が考えられます。

 

自由貿易の推進によって国内農業の構造改革を行い、国際競争力を高めるといった狙いがあるといえますが、国内の農家は後継者不足などの問題を抱えており、価格競争による国内産業の衰退を危惧する声も少なくありません。

 

日米FTAのメリットとしては輸入品の物価が下がり、国内物価の価格競争が行われることで消費者にとっては安価で物品を購入できることが挙げられます。

 

輸入品による供給が増えるため国内で天候不良が起こった際にも安定した価格で物品の購入ができます。

 

また、関税の引き下げの対象となっている輸出品については海外での売り上げが見込めるため、自由貿易の恩恵を受けることができます。

 

農業におけるブロックチェーン技術の活用

 

2017年6月には「改正畜産経営安定法」が成立し、酪農家が生産した生乳を農協が全量買い取ることを定めていた「指定団体制度」が廃止されました。

 

その代わりに酪農家が農協を介さず直接メーカーと取引を行う場合には補助金が出るようになります。

 

酪農家の多くは新たな流通経路を構築しなくてはならないために、流通や販売経路が構築されている海外メーカーに有利になるように「指定団体制度」が廃止されたともいえます。

 

そのような中で、農業においては「誰がどこでいつ生産し、出荷・加工されたのか?」をブロックチェーン技術によって確認し、サプライチェーンの透明性を向上させる取り組みが進められています。

 

生産者と消費者がブロックチェーン技術によって直接やりとりできるようになるなど「食の安全性」を守るためにもこの取り組みは注目を集めており、安全基準の異なる海外の食品であっても製造過程や鮮度などが把握できると期待されています。

 

海外農作物の輸入増加に伴い食品汚染が不安視される中、ブロックチェーン技術によって生産農家と直接取引ができるようになれば、市場の価格変動に関係なく安全な農作物を購入することができます。

 

生産者にとってもどのような経路で自分が生産した農作物が販売されているのかわかるようになります。

 

また、手作業で行われていた事務作業のコスト削減といったメリットもあり、サプライチェーンの効率化も図ることができます。

 

ブロックチェーンプラットフォームにおいて生産から出荷までの工程がデータとして記録されるため、将来的には第三者による融資システムが農業分野でも構築される可能性もあります。

 

海外では倉荷証券システムが農業で活用されており、農業金融の1つの手法として注目を集めています。

 

ブロックチェーンを活用するとデータの改ざんが不可能となり、金融機関が融資を行う際にもブロックチェーン上の取引履歴が信頼性を保証します。

 

海外での活用事例 「IBM×マヒンドラ財閥」

インドの農業発展を目指すマヒンドラ財閥は2016年11月にIT大手企業「IBM」とのブロックチェーン技術を活用した「サプライチェーンファイナンス」の共同開発に乗り出しました。

 

ブロックチェーン技術による農作物サプライチェーンの透明性向上によって、農業生産者がより円滑な資金調達を行えるよう取り組みが進められています。

 

マヒンドラ財閥は農業の効率性向上を促進させるためさまざな取り組みを行なっており、農家へのトラクターの販売をはじめとして、融資サービスなどマイクロファイナンスにも力を入れています。

 

海外での活用事例 「IBM×Twiga」

 

IBMと農作物物流サービスを展開する「Twiga Food」はブロックチェーン技術を活用することで、売上履歴から融資の可否の判断を行える小口融資サービスの開発を共同で行っています。

 

この取り組みはケニアの農作物小売店にむけて実証実験が行われており、すでに200件以上の融資を実行しています。

 

ケニアの農作物小売店はブロックチェーンによってお店のクレジットスコア(信頼性)が保証され、信頼が高まるほどにさらなる融資枠の獲得も可能となります。

 

これまでは金融サービスを受けることのできなかった農作物小売店もブロックチェーンによって回転資金の確保や事業投資を行えるようになります。

 

海外での活用事例 「IBM Food Trust」

 

「IBM Food Trust」はブロックチェーン技術を活用した食品サプライチェーンネットワークを構築しています。

 

IBMの持つIoTやビックデータの活用も行えるため、食品サプライチェーンの透明性向上が可能となります。

 

食品情報の共有によって品質管理も期待されており、生産者と小売業者だけでなく、加工や流通に携わる業者とも協力して業務の効率化を図ることもできます。

 

サプライチェーンの最適化によって食品廃棄物削減といったメリットも存在し、保管温度情報などもブロックチェーンで管理することが「IBM
Food Trust」では可能となります。

 

海外での活用事例「AgriDigital」

 

AgriDigitalはオーストラリアの農作物取引プラットフォームです。

 

穀物取扱業者CBHグループとの連携によって、ブロックチェーン技術の導入を進めており、農作物のサプライチェーンの全行程を管理することができるブロックチェーンプラットフォームとして開発が進められています。

 

スマートコントラクトによってリアルタイムでの取引が可能となり、AgriDigitalでは希望価格と取引を事前に設定しておくことで最適なタイミングで売買を行うことができます。

 

参考文献

 

TPP、日欧EPA 「2年目関税」突入 牛・豚肉一段と下げ

日欧EPA発効へ ワインやチーズ安く? 外食産業も期待

農業界でのブロックチェーン活用-バイヤーと生産者をつなぐブロックチェーン技術-

Mahindra and IBM to Develop Blockchain Solution for Supply Chain Finance

IBM and Twiga Foods Introduce Blockchain-Based MicroFinancing for Food Kiosk Owners in Kenya

米、対日交渉で為替も協議 要求22項目を提示

日米貿易交渉は当面物品中心に早期妥結は日本にとって得策か?

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