デジタルヘルスケア市場におけるブロックチェーンの活用事例|スタートアップ企業の取り組み

遠隔医療やデータ連携によるヘルスケア市場の効率的な運営を目指す取り組みが進む中、デジタルヘルス市場の拡大とともに中国や米国ではスタートアップ企業による大型の資金調達が相次いでいます。

 

近年では、個人統合医療への関心の高まりから既存の医療の枠組みとは異なる領域で、代替医療・量子医療といった事例も確認されており、ヘルスケアの多様化が進行。

 

人それぞれの遺伝子/健康情報に基づき「医療のあり方」を見直す機運の高まりとともにデジタル技術の積極的な活用はどのような影響を私たちの生活に及ぼすのでしょうか?

 

本稿では、医療スタートアップの資金調達動向を交え、ブロックチェーン・IoTの利活用の事例を紹介し、医療のデジタル化を解説していきます。

 

医療スタートアップの資金調達動向

 

デジタルヘルスケア市場では遠隔医療、遺伝子医療、オンライン保険の分野で有望なスタートアアップ企業が誕生。

 

遺伝子医療によって50億ドルの企業価値と評価されている「Tempus」をはじめとして処方箋価格の比較サービス企業「GoodRx」、オンライン保険企業「Oscar Health」なども米国では高い評価を得ているスタートアップ企業として知られています。

 

中国では、遠隔医療事業を手掛ける「WeDoctor」が企業価値55億ドルに到達している他、オンライン保険サービス企業「Waterdrop」、AI技術を活用したガン医療サービス企業「Yitu Technology」が企業価値20億ドル以上の評価を得ています。

 

デジタル化/DXといった文脈で社会的な関心も高い医療分野においては、その非効率性の改善に向けて多岐にわたる事業が展開されており、診療時の会話文字起こしサービス企業「Suki」などユニークな事例も確認されています。

 

日本でも海外のユースケースを参考にしたサービス展開が見込まれ、各国の法規制や公衆衛生環境に基づいたより包括的な比較研究がデジタルヘルスケア市場の成長を促進させるなど、体系的な理解の醸成が今後は求められるでしょう。

 

ブロックチェーンの活用事例

 

ブロックチェーン技術は、医療品のトレーサビリティに有用性の高い技術として導入が進められており、流通経路の把握や偽装品防止によって信頼性を担保するデジタルな仕組みを構築します。

 

医療品に関するデータの透明性向上は、患者が誤って異なる処方箋を服用してしまい健康被害がもたらされるリスクを軽減することにつながり、市場全体の健全化を実現します。

 

韓国では、医薬品・流通・医療機関等との実証実験の実施を「Samsung SDS」が発表。

 

・手作業で行われていた業務のデジタル化

・返品・回収の検証

・入出庫の自動履歴管理

・IoTと連動した温度履歴追跡

 

上記のような実証内容を予定しており、「医薬品の流通履歴管理サービスを介して製品別履歴管理、リアルタイム流通履歴の追跡、自動レポート機能の実装にコンプライアンスと業務革新が可能だろう」と「Samsung SDS」の首席研究員であるイ・ウンヨン氏は述べています。

 

2021年には、「流通履歴自動レポート」「リアルタイム検証システム」「医薬品e-リコール」サービスの商用化、2022年3月にはグローバルサービスの提供を予定しています。

 

デジタルヘルスケアとブロックチェーン技術

 

サムスンSDSのイ・ウンヨン氏は、ヘルスケア市場におけるブロックチェーン技術の価値は、2018年の1億7680万ドルから2025年には56.1億ドルに成長すると示唆しており、2025年までにはヘルスケア・ソリューションの55%がブロックチェーン技術を導入した事業の商用化に取り組むとしています。

 

参加企業間のデータ共有を効率化し、物流面においても真偽証明、履歴追跡、紛失・盗難防止といった利点をもたらすブロックチェーン技術は、医療のデジタル化を促進し、より良いデジタルヘルスケアサービスの提供を実現することでしょう。

 

IoTを活用した医薬品の品質管理とブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティサービスが組み合わさることで、新たな価値が創出され、データの信頼が担保されることで、スマートコントラクトによる保険金の自動支払いへの応用も可能となります。

 

ブロックチェーン技術以外にも、IoTデバイスにデジタルアイデンティティを付与し、データの信頼を担保するといった方法も提唱されており、従来の人と紙によるビジネス構造では困難とされてきた付加価値の提供がデジタル技術によって実現できると考えられます。

 

遠隔医療、遺伝子医療、オンライン保険市場が成長を遂げる中、ブロックチェーン技術は「信頼できるデータの共有」といった利点を各ビジネスモデルもたらし、デジタルヘルスケアのアップデートを支える技術として活用が見込まれます。

 

健康データ共有プラットフォーム企業「Human API」が、累計で3,660万ドルの資金調達に成功しているなど、効率的な医療データ共有には大きなニーズが存在しており、ブロックチェーン技術の有用性を検証する取り組みが今後は求められます。

 

「Human API」には「Samsung Ventures」が出資しており、「Samsung」によるデジタルヘルスケア市場の変革にも注目が集まります。

 

まとめ

 

デジタルヘルスケア市場は、個々人のニーズに対応するためにWHO(世界保健機関)が掲げる「肉体的な健康」「精神的な健康」「社会的な健康」「霊的な健康」をカバーする多岐にわたるサービスの展開が見込まれます。

 

一方、人によって体質や生活習慣が異なるために「健康促進のために毎日水を2リットル飲んでいたが、内臓を冷やしてしまい機能を低下させていた」といったようなケースなど、何が正しい情報なのかを正確に個々人が判断することも重要です。

 

現在は、従来のビジネスモデルでは非効率とされてきたモデルの見直しなど、常識とされてきた従来の定義を再構築する動きが活発になっており、スタートアップ企業はそのエコシステムの拡大を促進する上でも重要な役割を果たすことでしょう。