マイナンバーカードのデジタル化|生体認証を搭載したデジタルIDシステムについて

現在、日本のマイナンバーカード交付枚数率は19.4%(2020年9月1日時点)であり、世界の中でもデジタル競争力ランキングが27位(前年比-4位)となるなど、積極的なデジタル技術の活用が必要であると考えられます。

 

行政のデジタル化に向けては、制度改革をはじめとして従来の社会構造を効率化する取り組みが行われており、これまでデジタル技術の活用を阻害してきた要因を分析、改善することが各地方自治体・企業にも求められています。

 

デジタル時代におけるビジネスモデルの最適化の事例として近年では、Online Merges with Offline(オンラインとオフラインの融合)、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった言葉が用いられてきましたが、行政が主導して規制改革を実行し、産業構造のデジタル化によって新たな雇用やビジネスモデルの創出を促進することは国家の経済成長に向けても非常に重要な意味を持つことでしょう。

 

本稿では、行政のデジタル化に着目し、マイナンバーカードのデジタル化や生体認証を搭載したデジタルIDシステムの是非について考察していきます。

 

マイナンバーカードのデジタル化に向けて

2020年版のデジタル競争力ランキングでは、2位 シンガポール、5位 香港、8位 韓国がラインクインしており、デジタル時代に対応した法整備によって技術革新による恩恵を十二分に受けられる国家運営が行われています。

 

韓国や台湾は早期に防疫システムを開発し新型コロナウィルスの感染防止策を講じるなど、デジタル技術を活用した迅速な危機対応(クライシスマネジメント)を実現。

 

一方、現在の日本においては特別定額給付金の給付においても人海戦術を駆使した膨大な事務作業が発生しているなど、デジタル化への対応が遅れていると言えます。

 

また、感染者数の確認/集計作業がFAXで行われるといった事例も確認されており、人による作業が信頼を担保してきた従来の社会システムの非効率さが日本社会の大きな課題として露呈。

 

そのため日本政府はマイナンバーカードと各種証明証の一体化をはじめとして銀行口座との連動、スマートフォンへの搭載を目指すとしており、2022年までに全国民への普及を目標に掲げています。

 

デジタルIDアプリ「xID」の開発/提供を手がけるxID株式会社は、NFC(近距離無線通信)を活用したマイナンバーカードとデジタルIDアプリの連動を実現しており、今後はマイナンバーカードの普及とともにサービスの利活用が拡大することが予想されます。

 

xIDは、すでに石川県加賀市、株式会社Relic、株式会社ラフールといった地方自治体や企業と提携しており、日本国内における本人確認・認証のデジタル化の推進に大きな貢献を果たしていると言えます。

 

生体認証を搭載したデジタルIDシステムについて

シンガポールでは、2003年に開始された国民デジタルIDシステム「SingPass」が普及しており、2018年からはスマートフォンの生体認証を活用した「SingPass Mobile」が提供されています。

 

人口が約564万人(内シンガポール人/永住者:399万人)であるシンガポールでは、約380万人が「SingPass」を利用。(2019年)

 

すでに「SingPass」は、180以上の政府機関や民間企業が提供する500を超えるデジタルサービスへのアクセスを実現しており、シンガポールではNational Digital Identity(NDI)プログラムの下、各組織や企業が独自で本人確認システムを構築することなく、安全なデジタルIDシステムの整備が行われています。

 

そして、2020年にはシンガポール科学技術研究庁が生体認証技術会社「iProov」、各国でデジタル政府の基盤構築を手がける「ToppanEcquaria」と協業し、「SingPass」に顔認証技術を導入。

 

「SingPass」を介して取得された顔認証データは、政府の保管するデータと照合され、「一致スコア」の算出が行われます。

 

「一致スコア」のみが企業に送信されるため企業側はパーソナルデータの管理コストが軽減されるとったメリットがあり、シンガポール科学技術研究庁も30日間以上の顔認証データの保管は行わないとしていることなどプライバシー保護への配慮もなされた制度設計が施されています。

 

一方、顔認証に対してはプライバシー保護と監視の危険性に関して懸念の声も上がっており、機密性の高い生体認証データを処理するにあたっては誤認のリスクなどが問題視されています。

 

実際にシンガポールにおいても顔認証デジタルIDシステムが始まったばかりであり、日本での導入に向けてはそのユースケースを参考に議論の活性化が期待されます。

 

まとめ

2000年代から現在にかけてはインターネットの普及とともに、電子国家として有名なエストニアをはじめとして行政のデジタル化を推進する取り組みが各国で進行。

 

官民が共通で利用が可能なデータ連携基盤とデジタルIDの提供によって、シームレスで利便性の高い社会を実現し、市民生活や企業活動をより良いものにすることは日本社会においても最重要課題であると言えます。

 

デジタルIDシステムの利便性とセキュリティを巡ってはどちらを優先するかといった議論がシンガポールでは展開されており、日本でのデジタルIDの普及に向けては先駆的なユースケースを参考に最適化を図る取り組みが必要であると考えられます。