規制や利用に伴うガイダンスが明確になることで、DeFi(分散型金融)アプリケーションは、2022年までに普及することをリサーチ&アドバイザリ企業であるGartnerは示唆しています。
DEX(分散型取引所)全体の取引高は9月は236億円に達するなど、8月の116億ドルから大幅に増加。
ガバナンストークンの発行によって利用者にインセンティブを提供するプロジェクトの取引高は増加し、それ以外のプロジェクトは成長率が停滞する傾向にあるものの市場全体ではエコシステムの拡大が続いています。
本稿ではDeFi(分散型金融)規制の可能性を踏まえ、リスク軽減に向けたガイダンス制定について考察をしていきます。
DeFi(分散型金融)のリスク

最近では監査を受けていないスマートコントラクトアプリケーションが市場に出回ることで、コードの脆弱性などのリスクが指摘されています。
DeFi(分散型金融)市場においては長期的に価値のあるプロジェクトが誕生している一方、短期的な利益のために開発者が市場を混乱に陥れることも少なくありません。
DEX(分散型取引所)は本人確認(KYC)、マネーロンダリング規制(AML)への対応が最小限で済むことから従来の中央集権的取引所のようにコンプライアンスやリーガルに多くの費用を投じる必要がありません。
そのことから今後は、DEX(分散型取引所)を規制するため開発企業やドメインプロバイダーに対して規制当局がガイダンスの遵守を命じるといった事態に発展する可能性も考えられます。
しかし、DeFi(分散型金融)を活用したマネーロンダリングの危険性に関しては、トランザクションが公開され透明性を担保された取引を実現でき、追跡可能といった特徴からそのリスクを軽減できるといった議論も交わされています。
CEXs can enable money laundering through their private databases but this is not true for DeFi where every tx is public and transparent. DeFi is much more trackable than private banks and CEXs. I don’t see regulators going after open protocols, but rather individuals using them.
— tendies.eth (@hotendies) October 1, 2020
金融市場全体ではDeFi(分散型金融)は小規模な市場であると言えますが、国家の法的枠組みからは逸脱した領域における資金移動に対して潜在的なリスクを危惧する声もあがっており、早期にガイダンスを制定することで健全な市場形成を促すこともまた黎明期の産業構造を支える上では重要であると言えるでしょう。
最近では銀行秘密法(BSA)違反の疑いから暗号資産取引所BitMEXの幹部らが米商品先物取引委員会(CFTC)に訴追されるといった事例も確認されており、イノベーションの健全な利用には法規制への遵守は必要不可欠であると考えられます。
分散型金融(DeFi)市場と中央集権型金融(CeFi)の融合

ブロックチェーン市場における潜在的な需要は、中央集権的な従来のプラットフォームからdApp(分散型アプリケーション)の広範な可用性を探求するプロジェクトに移行しており、顧客やビジネスパートナーが第三者機関を介さずとも取引ができるDeFi(分散型金融)市場はさらなる拡大が見込まれています。
一方、規制やガイダンス制定に向けた議論が本格化していないために市場の健全性を疑問視する声も少なくなく、そのことが市場参入の障壁となっているとも考えられます。
特に暗号資産投資に馴染みのない投資家は、従来の取引所がもたらす取引の安全性や安心感を重要視する傾向にあり、現在のDeFi(分散型金融)は中上級者向けの市場であるとも言えるでしょう。
そのような市場環境の中、世界最大の暗号資産取引所であるBinanceは「Binance Liquid Swap(BSwap)」を発表。
BSwapは、中央集権型取引所による「自動化マーケットメーカー(AMM)」としてトークンのスワップや預託機能を有し、預託したトークン数に応じてインセンティブが発生します。
Binanceの利用者を対象とした分散型金融(DeFi)サービスの普及は、これまでBinanceが培ってきた知識と経験を市場にもたらすと考えられ、投資家の参入障壁を軽減することにも繋がるでしょう。
まとめ

保険業界では、農業分野で天候リスクをヘッジする「分散型パラメトリック保険」をArbolがチェーンリンクの協力のもと提供。
銀行口座を持たない農家に対しても信頼できる降雨データフィードに基づいて、自動的にスマートコントラクトで支払いを実行できることから悪天候など自然災害が発生した際にも保険会社による現地調査コストの削減を実現します。
このようにDEX(分散型取引所)のみならず周辺領域においても分散型金融(DeFi)は普及しており、スマートコントラクトとその他のサービスの相互運用を実現するといった観点からチェーンリンクの分散型オラクルは有用であると言えます。
チェーンリンクは様々なプロジェクトとの協業を発表しており、各産業分野における分散型オラクルの利活用から分散型金融(DeFi)市場の将来性を予測するのも面白いかもしれません。
以上、「DeFi(分散型金融)市場の健全化に向けたガイダンス制定について|中央集権型金融(CeFi)との融合」でした。
・参考文献
DeFiの成功に中央集権型取引所は不可欠だ──『ビジネスブロックチェーン』著者【寄稿】
分散型取引所ユニスワップ、1日あたりの取引高でコインベースを抜く
バイナンス、コインベース、フォビ…取引所はなぜ「分散型」サービスの開発を急ぐのか
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