暗号資産規制

暗号資産カストディ業務|AML/CFT規制強化にむけて

2020年春に予定されている資金決済法の改正によって、暗号資産のカストディ事業者は暗号資産交換業として規制の対象となります。

 

しかしながら、カストディ業務も規制が具体的でないとして、一般社団法人新経済連盟は「ブロックチェーンと暗号資産に関する要望」として以下の提言を行なっています。

 

・カストディ事業者への該当性及び規制内容の判断はリスクベースアプローチを採用し、必要最小限の規制とする
・秘密鍵の管理方法によってリスクのないケースは、カストディ事業者とならない旨、ガイドラインにおいて明確化する
・コールドウォレットの定義を「流出リスクが十分に低減されている又は それと同視できる状態での保管」とし、物理的な遮断に限定しない

 

暗号資産業界でもAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)に関する取り組みが、FATF(金融活動作業部会)を中心行われており、カストディ事業の重要性が日に日に増しています。

 

今回は「暗号資産カストディ業務への規制」について解説していきます。

 

カストディ業務の現状と課題

 

金融機関においては年々、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与リスクへの規制が厳格化されており、それと同時に人件費やシステム開発費の増加が、大きな負担となっています。

 

カストディ業務は証券取引において用いられる用語ですが、有価証券の投資を行う機関投資家に対して厳格な証券の管理や保管を行うことを指します。

 

暗号資産取引所コインベースがすでにカストディサービスを提供しており、サイバーセキュリティ対策や監査証跡、複数署名といった厳格な財務管理サービスによって顧客の暗号資産を守る取り組みを行っています。

 

イギリス王立造幣局の事例のようにカストディ業務を専門で行い、各プロダクトと提携する取り組みも進められています。

 

日本ではカストディ業務に対しての規制が発表されており、暗号資産取引所と同様に顧客の本人確認(KYC)や内部管理体制整備、カストディ業者に対して登録制度を設けるといった規制内容を設けています。

 

暗号資産カストディ業務はFATF(金融活動作業部会)によるマネーロンダリング・テロ資金供与規制の対象とされているため、より厳格な管理体制が求められています。

 

利用者の暗号資産 分別管理について

 

資金決済法63条の11「利用者財産の管理」では暗号資産交換事業者は、ユーザーから預かった暗号資産をコールドウォレットで管理することやホットウォレットで暗号資産を管理する場合には同種・同量の履行保証暗号資産をコールドウォレットで保管することを定めています。

 

暗号資産カストディ業務の課題

 

現在の暗号資産カストディ業務は具体的な範囲が明確でないことや少額預金であってもカストディ業務が行われることなどが課題とされています。

 

一般社団法人新経済連盟が発表した「ブロックチェーンの社会実装に向けた提言~暗号資産の新法改正を受けて」においては暗号資産カストディ業務についての提言が行われており、「リスクベースアプローチ」の採用が記されています。

 

暗号資産カストディ業務を行う際には、管理の態様ごとにリスクを調査し、その内容や許容範囲ごとに必要最低限の規制を行うことで、事業者の負担を軽減することができると考えられます。

 

すべての管理態様で同様の規制を行なった場合にはそのコスト(人件費やシステム開発)が増大してしまうため暗号資産業界そのものの衰退につながりかねません。

 

また、2of2マルチシグ(事業者とユーザーが秘密鍵を保管し、どちらかが揃わないと暗号資産を動かせない)や事業者が秘密鍵を預からない場合はカストディ業務には該当しないと考えられ、ガイドラインでの明確な定義が必要であると言えます。

 

コールドウォレットについて

 

ビットポイントのハッキング事件では自主規制団体が定めたルール(保管割合を全体の20%以下)に則って、ホットウォレットに暗号資産を管理していました。

 

ハッキングされた金額はコインチェック事件の時と比較すると、少額ではありますが、日本ではここ数年で巨額なハッキング事件が複数回にわたって行われており、ホットウォレットでの暗号資産の管理はさらなる見直しが必要であると言えます。

 

コールドウォレットでの管理は金庫にハードウェア・ウォレットを保管するするだけではなく、下記の場合も含めることを一般社団法人新経済連盟は要望としてまとめています。

 

・流出リスクが十分に低減されている状態での保管

・パブリックなネットワークに繋がっていない状態での保管

 

また、暗号資産がロールバック可能な状態にある場合、暗号資産に対して十分な保険や保証が付与されている場合においては上記と同様の状態での保管と見なすとしています。

 

暗号資産交換業者規制について

 

交換業規制は3種類に分類され、カストディ事業者は双方に関係する規定、「管理」特有の規定が適用されます。

 

双方に関係する規定

 

・交換業としての登録
・情報の安全管理
・委託先に対する指導
・広告規制
・利用者の保護等に関する措置
・AMLに関する規制(犯収法)

 

「管理」特有の規定

 

利用者の暗号資産の分別管理
履行保証暗号資産の保有
利用者の優先弁済権

 

「交換」特有の規定

 

不公正取り引きの禁止(金商法)

 

 

「リスクベース・アプローチ」について

 

日本では暗号資産取引所ビットポイントがハッキングの被害にあうなど、暗号資産の保管に対してこれまで以上の厳重な規制を設ける必要があると言えます。

 

しかし、資金決済法の改正による暗号資産カストディ業務への規制は、具体的な内容について定義されないことから、マネー・ローンダリング対策やテロ資金供与リスクのための業務負担が増大が考えられます。

 

そこで、一般社団法人新経済連盟が提言を行なったのが「リスクベース・アプローチ」の採用です。

 

「リスクベース・アプローチ」とはマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与リスクの特定や評価を行い、リスクに見合った対策を講ずることです。

 

リスクに応じて、効果的なコントロールを目指すもので、

 

・リスクアセスメント
・リスクに応じた取引確認
・リスクに応じた顧客管理
・疑わしい取引の届け出

 

といった「リスクベース・アプローチ」が再改正犯収法では取り組まれてきました。

 

暗号資産業界における「リスクベース・アプローチ」について

 

暗号資産業界においてもFATFが「FATF解釈ノート7b」を発表したことで、暗号資産取引所において受取人の顧客情報の管理・共有が必須となることが今後は予想されています。

 

暗号資産のカストディ業務においてもリスクベース・アプローチに基づいた規制によって、暗号資産取引所をはじめとした各種機関の業務負担が増えない取り組みが重要であると言えます。

 

しかしながら、海外ではコインベースが暗号資産カストディ業務として

 

・サイバーセキュリティ対策
・監査証跡
・複数署名

 

といった財務管理サービスを提供しているため「リスクベース・アプローチ」がどのように採用されるのか注目が集まります。

 

この「リスクベース・アプローチ」の考えは2012年に「FATF勧告」が改訂されたのをきっかけに全面的に採用されたことで、金融業界では広がりを見せました。

 

暗号資産カストディ業務 イギリス造幣局の事例

 

イギリスでは王立造幣局が暗号資産(仮想通貨)へのカストディサービスを行うことが明らかになっています。

 

暗号資産「temtum」の秘密鍵保管業務を行うとして、造幣局によるカストディサービスに注目が集まります。

 

日本ではビットポイントによる不正流出事件が起こったばかりですが、コールドウォレットへ可能な限り暗号資産を保管することでセキュリティ対策を行うとしています。

 

しかし、内部犯行などヒューマンエラーを未然に防ぐことは難しいといえ、暗号資産業界においてもカストディ業務の必要性は日に日に高まっています。

 

参考文献

 

【プレスリリース】ブロックチェーンと暗号資産に関する要望を金融担当大臣ほか関係大臣宛てに提出

リスクベース・アプローチの取組み 再改正犯収法に対応した実効的なAML/CFT態勢の構築

金融庁「仮想通貨カストディ業務の規制」「仮想通貨から暗号資産への呼称変更」など、研究会最終回の詳細レポート第一弾

英王立造幣局が仮想通貨のカストディサービスを提供へ

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