各国の暗号資産市場動向や活用事例【2019年7月】

 

この記事では2019年7月における暗号資産動向を国別・分野別でご紹介します。

 

今月は6月から引き続き、Libraへの批判やFATFの規制強化などが話題になっています。

 

規制強化の流れから中央銀行が発行するステーブルコインにも注目が集まっており、既存金融システムの秩序を守り、発展を目指す取り組みが今後は暗号資産業界でも増えていくことが予想されています。

 

海外ではブロックチェーンを産業に活用する取り組みが各国で行われており、日本でも政府が量子コンピュータに対応するために機密情報の暗号技術開発を検討しています。

目次

日本

 

 

日本政府 ハッキング対策に暗号技術を導入へ

 

「量子コンピューター」は量子力学による情報処理能力の高さから「夢の技術」と呼ばれており、日本政府も2023年を目標に量子コンピューターによる新たな暗号技術の導入を目指しています。

 

国内では理化学研究所とNTT、NEC、東芝が共同事業を行い、海外ではIBMやグーグルでも量子コンピューターの開発が行われています。

 

中国では量子コンピューターの開発が進んでおり、将来的に量子コンピューターを使ったハッキング対策を日本政府としても早急に整備する必要があるとしています。

 

安全保障上の問題から量子コンピューター対応の暗号技術の開発が急務となっており、総務省や経済産業省が中心となって検討会の開催などが予定されいます。

 

この暗号技術は民間の金融機関の参考としても導入が検討されるとしており、機密情報の保護にむけて官民一体の取り組みに注目が集まります。

 

丸紅「We power」との提携を発表

 

「We power」は再生可能エネルギーの売買契約をイーサリアムブロックチェーンで簡易的に行えるオークションプラットフォームの開発を行っています。

 

これは再生可能エネルギー事業者と投資家(顧客)をマッチングさせ、業界の流動性向上につながるとされています。

 

この提携ではオーストラニアでの再生可能エネルギー事業を目指し、数億円規模での普通株転換権付き融資契約を結んでいます。

 

「We power」はエストニアで電力データのトークン化に成功しており、この経験を生かしてオーストラニアでの事業を行うとしています。

 

丸紅はブロックチェーン技術を「電力事業」に活用する取り組みを進めており、日本国内でもアメリカのLO3エナジーとの実証実験を2019年2月にも開始しています。

 

富士通 ブロックチェーンによるKYCサービスの開発

 

最近ではマッチングサービスやシェアリングサービスを利用する人が増えてきていますが、ユーザー情報や信頼度の詐称が問題とされており、サービス利用の検証が必要不可欠です。

 

そこで富士通では「IDYX(IDentitY eXchange)」と呼ばれるユーザー情報や信頼度をブロックチェーンで確認できる技術の開発を行っています。

 

「IDYX」によってサービスを利用するたびにユーザーと取引先の評価情報をブロックチェーンで管理・共有することで情報改ざんを防止し、正当性を保証します。

 

その評価情報を基にして下記の項目から「信頼度スコア」が生成されます。

 

何人から評価を受けているか?
信頼度の高いユーザーから評価されているか?

ユーザーには本人情報のみが提供されるため情報漏洩の危険性もないとされています。

今後はオンライン上での本人確認の機会が増えることが予想され、富士通の取り組みに今後も注目が集まります。

 

アメリカ

 

 

SEC リスク監視のためにブロックチェーンデータの定期購入を検討

 

マネーロンダリング対策の一環としてFATF(金融活動作業部会)が「解釈ノートとガイダンス」を採択するなど、国際的な規制強化が行われています。

 

そのような中で、SECはブロックチェーンデータの定期購入についてHP上で発表しています。

 

アメリカでSTOを行う際にはSECが定める登録届出の免除規定「Regulation」に準拠してセキュリティトークン発行が行われます。

 

下記のようにRegulationは定められており、セキュリティトークン発行プラットフォームや取引所はこの規制に準拠するように各企業やプロダクトへサポートを行っています。

 

RegulationD(506b,506c)
RegulationA+
RegulationCF
RegulationS

 

SECはこのRegulationによって、セキュリティトークン市場の健全性を保証していると言え、今回のブロックチェーンデータの購入は、暗号資産のリスク監視やコンプライアンス向上への取り組みを強化していくものと考えられます。

 

SECをはじめとして規制当局に対しては、暗号資産に対する規制対応の遅れを指摘されていましたが、最近では業界全体で規制強化への取り組みが見られるなど暗号資産業界も新たなフェーズに入ったと言えるでしょう。

 

Polymath 2つのプロジェクトを中止

 

Polymathは「Service Provider Marketplace」と「PolyMesh」ネットワークの開発に注力するため、2つのプロジェクトの開発を中止することを明らかにしています。

 

PolyMeshブロックチェーンの開発によって業界でも最高峰のセキュリティトークン発行プラットフォームを目指すとしています。

 

イギリス

 

 

英金融行動監視機構 Libraについてさらなる調査の必要性を指摘

 

7月2日、英金融行動監視機構(FCA)はLibraが目指す世界規模の金融サービスについて、市場の健全性への影響や技術・法的取り扱いなどを精査する必要があると指摘しています。

 

フランス

 

National flag of France waving and blowing in the wind against the blue sky

 

不動産のトークン化で小口取引が可能に

 

パリ郊外に面するブローニュ=ビヤンクールにある不動産「AnnA Villa」はイーサリアムブロックチェーン上でトークン化され、売買が行われました。

 

この不動産は650万ユーロの評価を受けており、トークン化によって100個の小口化に成功。

 

今回の取引によってトークンの所有者は6.5万ユーロから不動産投資が可能となります。

 

さらにトークン所有者はこの不動産トークンを1000個に小口化することが可能となります。

 

そのためブロックチェーン上では650万ユーロの不動産に対して6.5ユーロから投資が可能となり、「不動産の小口化」による市場の流動性向上が期待されています。

 

イーサリアムブロックチェーンを活用した不動産取引は「Propy」によってウクライナやスペイン、日本で行われた事例があります。

 

最近では不動産事業者がセキュリティトークンの発行によって資金調達を行うと行った事例も出てきており、アメリカではセントレジス・アスペンリゾートが1800万ドルの資金調達に成功しています。

 

このセントレジス・アスペンリゾートのSTOに携わったElevated Returnsはタイの不動産「Seamico Securities」などのセキュリティトークン化によって、2億5000万ドルの資金調達を計画しており、業界全体で大きな取り組みが行われています。

 

暗号資産についての苦情が増加中

 

フランス金融市場庁(AMF)は7月2日に「Cartographie 2019 des marchés et des risques」を発表。

 

この中ではフランス金融市場とそのリスクについての分析が行われており、暗号資産への苦情案件が2019年2月から増加していることを明かしています。

 

フランス金融市場庁は5月に発表した年次報告書でも暗号資産の詐欺についての相談が2016年18件、2018年2625件と約145倍に増加していることを明かしており、「PACTE法案」による投資家保護の取り組みが急務であると言えます。

 

スイス

 

 

Dukascopy Bank ステーブルコインを開発

 

スイスのオンライン銀行「Dukascopy Bank」がステーブルコインを開発を発表しました。

 

Dukascopy Bankは今年1月にも暗号通貨取引所「Bitstamp」と提携しており、金融と暗号資産の融合にむけて積極的な取り組みを行っています。

 

ERC-20規格を使用して発行されるステーブルコイン「Dukascash」はユーロ、スイスフラン、ドルにペッグされています。

 

7月3日から実証実験が行われ、およそ1000万スイスフランのDukascashトークンがDukascopy Bankに保管されます。

 

これは未発行のトークンとしての取り扱いになるそうで、将来的には最大10万スイスフラン分が顧客販売用に提供される予定とされています。

 

 

スイス最大の証券取引所「SIX」にビットコインキャッシュのETPが上場へ

 

イギリスでは暗号資産の価格形成が不透明であることからビットコインETFなど個人向けの暗号資産デリバティブの禁止の提案をイギリス金融行為監督機構(FCA)が発表しています。

 

価格変動(ボラティリティ)の高さがデリバティブとしては不適格とされ、投資家保護の観点からも暗号資産デリバティブは各国の規制当局から承認が却下されるケースが少なくありません。

 

しかし、そのような中でスイス最大の証券取引所「SIX」ではビットコインキャッシュのETP(上場金融商品)が上場しています。

 

暗号資産のスタートアップ企業である「Amun AG」がこのETP(上場金融商品)上場をサポートしています。

 

SIXは暗号資産デリバティブの上場を目指しており、将来的にはSIX Digital Exchangeと呼ばれる暗号資産取引所の開設も目指しています。

 

各国ごとに暗号資産デリバティブに対する対応は異なりますが、投資家保護や規制強化の流れの中でどのような取り組みが行われるのか注目が集まります。

 

中国

 

 

重慶市 ブロックチェーン技術を行政手続きに活用

 

中国重慶市ではブロックチェーン技術を行政手続きに活用しようとする取り組みが行われています。

 

アリババの子会社であるアント・フィナンシャルのブロックチェーン技術を利用したプラットフォームでは、企業設立時の登記手続をサポートし、最短3日での登記が可能となります。

 

重慶市ではこのプラットフォームへサイト上から必要書類をアップロードするだけで自動審査が行われ、煩雑な書類手続きなどは不要になります。

 

中国では暗号資産取引所は禁止されていますが、公共サービスへのブロックチェーン技術導入には積極的で、上海、浙江省、江蘇省、安徽省では司法手続きにも活用されています。

 

他にも地下鉄や病院でもブロックチェーン技術の導入が進められており、その取り組みはブロックチェーン業界でも最先端と言えるでしょう。

 

シンガポール

 

 

ブロックチェーン活用した「中古車情報マーケットプレイス」設立

 

シンガポールの自動車販売サイト「sgCarMart」はOcean Protocolのブロックチェーン技術を活用した「中古車情報マーケットプレイス」を発表しました。

 

・走行距離
・事故記録

 

上記のような情報の改ざんを防ぐことができ、自動車売買の際における情報の正当性を保証することを目的としています。

 

また、ブロックチェーン上でデータ管理・共有を行うことで「点検・保険・リコール時の対応」など自動車売買以外でも効率的な業務を行うことができると期待されています。

 

キプロス

 

 

ブロックチェーンに関する法案を作成へ

 

キプロスではブロックチェーン技術に関する法案を2019年末までに整備すると発表しています。

 

様々な産業分野での応用を目指しているキプロスは分散型台帳技術(DLT)についてのロードマップを作成し、国家戦略としてブロックチェーンを活用することを明らかにしています。

 

特に土地調査や税金、関税、賭博、金融といった分野でブロックチェーン技術の実装を予定しています。

 

オーストラリア

 

 

商業物件賃借用の銀行保証にブロックチェーンを活用

 

オーストラリアではIBMと大手銀行3社が商業物件賃借用の銀行保証の透明性向上を目指してブロックチェーン技術を活用したプラットフォームのベータ版を発表。

 

「Lygon(ライゴン)」と呼ばれるこのプラットフォームでは商業物件賃借用の銀行保証の発行・管理を行い、詐欺の軽減やセキュリティ強化が期待されています。

 

オーストラリア・ニュージーランド銀行
コモンウェルス銀行
ウエストパック銀行
ショッピングセンター運営企業「Scentre Group」

 

といった大手銀行や企業が参加しています。

 

7月3日から8週間にわたってScentre Groupの商業物件を賃借する顧客情報やトランザクションの収集などの実証実験が行われます。

 

オーストラリアで商業物件を賃借する際には銀行保証が必要となり、「Lygon(ライゴン)」を使用することで、書面発行までの期間を1ヶ月から1日に短縮できるといったメリットがあります。

 

キューバ

 

 

経済制裁回避に暗号資産の導入を検討

 

キューバではアメリカによる経済制裁を回避するために暗号資産の導入を検討していることをフェルナンデス経済相は明らかにしました。

 

ベネズエラでは「Petro(ペトロ)」と呼ばれる独自暗号資産が2018年から導入されており、アメリカからの経済制裁を受けている国々では同様の取り組みが検討されていると考えられます。

 

カナダ

 

 

カナダの暗号資産取引所 ATMに暗号資産売買機能を追加検討

 

カナダの暗号資産取引所「Coinsquare(コインスクエア)」は「Just Cash(ジャストキャッシュ)」を買収しました。

 

Just CashはATMに暗号資産売買機能を追加できるソフトウェアを開発しており、低コストで「暗号資産売買ATM」の提供が可能となります。

 

暗号資産取引所を使うことに抵抗のある人々にATMでの暗号資産購入を提供することで、より多くの人々に暗号資産を普及させることを目指しています。

 

Just Cashのソフトウェアによって何百万台規模での暗号資産売買機能追加が可能となり、飛躍的な台数増加が期待されています。

 

ベネズエラ

 

 

大手銀行が「Petro(ペトロ)」の取引窓口設置へ

 

ベネズエラ最大手銀行「Banco de Venezuela」はベネズエラ独自の暗号資産「Petro(ペトロ)」の取引窓口の設置をニコラス・マドゥロ大統領から命じられました。

 

ベネズエラではハイパーインフレによって法定通貨であるボリバルの価値が暴落し、「Petro(ペトロ)」の利用を支援するキャンペーンも今年の4月にも行っています。

 

経済的にも不安定であるベネズエラでは避難通貨として「Petro(ペトロ)」の利用が進められています。

 

国際物流

 

 

TradeLens 新たに2社が参加へ

 

TradeLensに世界第5位の海運会社ハパックロイド(Hapag-Lloyd)とオーシャンネットワークエクスプレス(Ocean Network Express:ONE)が参加したことが明らかになりました。

 

オーシャンネットワークエクスプレスは日本郵船、商船三井、川崎汽船によって構成され、3社のコンテナ船の事業統合によってできたものです。

 

サプライチェーン

オラクル 蜂蜜のサプライチェーンをブロックチェーを活用

 

IT大手オラクルは蜂蜜のサプライチェーンをブロックチェーンで追跡する珍しい取り組みを行っています。

 

IOTA 食物アレルギー追跡にブロックチェーを活用

 

IOTAはPrimorityと提携し、食物アレルギー追跡にブロックチェーン技術を活用しています。

 

金融

 

 

Libra デビッド・マーカスが批判に対して回答

 

Libraの担当者であるデビッド・マーカス(David Marcus)はLibraへの批判に対して下記のように述べています。

 

「Libraを利用する際にFacebookを信用する必要はない」
「FacebookはLibraに対して特別な責務を持つわけではない」

 

デビッド・マーカスはLibraへの批判や不信感を認めた上で、Libraを有用性のある金融サービスとして提供することを目指すとしています。

 

Facebookへの不信感が高まりから、アメリカでは公聴会が開催される予定となっており、デビッド・マーカスは上院銀行住宅都市委員会と下院金融サービス委員会のいずれにも証人として参加を表明しています。

参考文献

 

米SEC、主要仮想通貨のブロックチェーンデータの定期購入を検討|技術理解に積極性示す

Polymath Sharpens Its Focus on Bringing Securities to the Blockchain

Polymath Scraps Two Projects, Honing in on Vision for Digital Securities

WePower 公式サイト

大手商社の丸紅、ブロックチェーン活用のエネルギー売買プラットフォーム企業と提携

 

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