Cordaのユースケースや仕組み|社外(複数の組織間で行われる)業務の効率化および最適化に向けて

世界有数の金融グループであるHSBCは、100億ドル相当の私募債をCorda上へ移行したことを明らかにしています。

 

これまで私募債は書類で管理されていたために顧客は電話での問い合わせによって記録内容を確認していました。

 

今回、Cordaを活用した「digital vault」と呼ばれるプラットフォームが構築されたことで、

 

・顧客はリアルタイムで私募債の管理記録を把握
・他のプレイヤー(アセットマネジャー、監査人)へのアクセス許可権限
・将来的なトークン化への対応

 

といったメリットがあるとしています。

 

資産のトークン化は各国で明確な法的根拠を探っている段階になりますが、将来的な市場の形成を睨んだHSBCには今後も大きな注目が集まることでしょう。

 

Corda(およびCordaを活用した貿易金融プラットフォーム「マルコポーロ」)は下記のように各国の金融機関で活用が行われており、今回は「社外(複数の組織間で行われる)業務の効率化および最適化」に向けたCordaのユースケースや仕組みを解説していきます。

 

2019年1月 「Corda Settler」「Corda Network」「Corda Token」をリリース
2019年4月 「SBI R3 Japan」 設立
2019年4月 貿易金融ブロックチェーンプラットフォーム「マルコ・ポーロ」 初の取引を実施
2019年5月 カナダ銀行 Cordaを利用してシンガポール金融管理局とクロスボーダー決済の実証
2019年8月 R3 シャリア(イスラム法)に対応した金融システム構築に向けて「Wethaq」とパートナーシップ契約を締結
2019年9月 「ウェルズ・ファーゴ」 Corda Enterpriseを利用して米ドルペッグのステーブルコイン開発を発表
2019年9月 「マスターカード」 マルコポーロに参加
2019年9月 「バンク・オブ・アメリカ」 マルコポーロに参加
2019年9月 「ダイムラー」 マルコポーロに参加
2019年10月 マルコポーロ ロシアとドイツ間の取引を実証開始
2019年11月 「バンク・オブ・ニューヨーク・メロン」 マルコポーロに参加
2019年12月 マルコポーロ 7週間の試験運用を完了(25か国、70社以上の組織が参加)
2020年1月 SBI R3 Japan 三井住友FG・SBIHD・マネータップとの協業を発表
2020年1月 CTIA R3 LLC社と開発パートナー契約を締結
2020年2月 TIS株式会社 Cordaを利用して給付金自動請求の実証実験を開始

社外(複数の組織間で行われる)業務の効率化および最適化に向けて

日本ではブロックチェーンの導入事例が少ないことから

 

どのようにブロックチェーンを活用していいのか?
なぜブロックチェーンが重要なのか?

 

といった声も少なくありません。

 

そのような市場環境ではありますが、各業務をブロックチェーンに紐づけることでどれだけのコスト削減を実現できるのかが実証を通じて広く知れ渡り、

 

「これまでのデータベース(中央集権型)では実現できなかった業務効率化のメリット」

 

を享受できることが証明され、そのユースケースが増えることで各企業が導入を検討する機会も増えると考えられます。

 

また、現在のところブロックチェーンは各分野で

 

・書類やモノのデータ管理、共有:業務の効率化
・既存サービスの効率化(および代替)

 

を目的に導入が行われています。

 

これまでは社内の業務効率化に使われてきたシステムは個々の企業で特性が異なるために、ブロックチェーンを導入することで

 

「社外(複数の組織間で行われる)業務の効率化および最適化」

 

を図れることがブロックチェーンを活用する大きな理由と考えられています。

Cordaについて

Cordaは

 

・1ブロックに対して1トランザクションを格納
・全順序性ではなく半順序のデータモデル

 

であることからブロックがチェーン状ではなく、

 

・取引(ブロック)ごとに情報を格納
・プライバシー保護を実現

 

といった特徴を有しています。

 

複数のトランザクションを1つのブロックに格納しないことで、データの共有は必要な範囲で行うことができ、データの閲覧権限を限定することで取引におけるプライバシー保護を実現しています。

 

また、半順序のデータモデル、取引(ブロック)ごとに情報を格納することで、ゼロ知識証明を採用せずとも効率的な処理を可能としています。

 

CordaはNotaryノードを採用し、

 

・トランザクションの取得、検証
・Outputの記録、署名の提供

 

といった機能によって、2重支払い防止の検証も実現しています。

Cordaの仕組み

Corda networkには、複数のノードが存在し、その中の「Notaryノード」は、取引を認証、承認し、(ビットコインでいうところのプルーフ・オブ・ワーク)2重取引を防止する機能を有しています。

 

Corda network上では、分散型アプリケーションCorDapps(コーダップス)が動作しており、

 

「ステート(State)」
「コントラクト(Contract)」
「フロー(Flows):取引の一連の流れを規定」

 

といった機能を有し、特定の取引者間のみで情報共有が行えるpeer-to-peerのデータ取引を実現します。

 

・State Contract について

 

【IOU(借用証明書)の場合】

 

Stateは、CASH、BONDといった静的モデルを表現し、ある時点において台帳上で共有されるfactのことを言います。

 

・State:プロパティ・パラメータを設定(借り手・貸し手・金額・期限)
→Contractに対する参照情報、参加者情報を入れることができる

 

State:CASH → Contract:CASH
State:BOND → Contract:BOND

 

上記のようにStateは対応したContractを参照します。

 

また、1つのトランザクションの中に複数のStateを入れることができるのがCorDappsの特徴です。

 

トランザクションには3つのタイプ(issuance・update・exit)があり、現実世界の業務内容とともに古いStateは新しいStateの置き換えられ、遷移していきます。

 

過去のStateは台帳(ledger)から消されずに監査のために残され、references(トランザクションのHash)によってチェーンのように繋がります。

 

・Flows

 

トランザクションの作成、署名、送信、検証といったプロセスを規定し、例外処理・シリアライゼーションを実施します。

 

また、Cordaは、未使用トランザクションアウトプット(UTXO)を使用することで複数の取引を同時に処理できるのも特徴です。

 

トランザクションは、複数のStateのうち1つのStateの更新が行われないことで、そのトランザクションそのものが無効になるアトミックとなっています。

 

このような特徴からCordaは金融機関におけるDelivery Versus Paymentの検証などにも活用が見込まれています。

R3 Corda ユースケース

香港金融管理局 タイ銀行 CBDC導入プロジェクトにCordaを活用

香港金融管理局はタイ銀行と共同でCordaを活用したCBDC導入プロジェクトを2019年3月-12月まで実施。

 

Inthanon-LionRock」と呼ばれるこのプロジェクトは、香港とタイの参加銀行がピアツーピアで送金と外国為替取引を行えるようになり、決済コストの削減を図るために行われました。

 

このプロジェクトでは香港金融管理局が概念実証(PoC)を10行の銀行とともに成功させたことを明らかにしており、今後は

 

・他の金融機関プラットフォームへの接続
・ビジネスユースケースの調査

 

の共同研究を実施する合意も発表されています。

 

Cordaを活用することで、CBDCの決済に関する仲介コストを削減できるだけでなく、2重取引のリスクを回避するといった報告がなされており、スマートコントラクトを活用したボーダレスな決済は、リアルタイムかつアトミックな支払い(PvP:Payment-Versus-Payment)を実現するとしています。

まとめ

そのことからCordaは貿易金融をはじめとしてエネルギー、製薬と言った業界でも活用が行われており、R3コンソーシアムでは取引の際にも必要な範囲での情報共有が参加企業間で可能となっています。

 

ブロックがチェーン状ではなく、半順序のデータモデルとなることからCordaはブロックチェーンではなくDLT(分散型台帳)とされてきましたが、その技術はこれまでのブロックチェーンのデメリットを克服するものであり、近年ではブロックチェーンと呼ばれることもあります。

 

【参考文献】

・HSBC

https://www.coindesk.com/hsbc-puts-10b-of-private-placements-on-r3s-corda-blockchain

Inthanon-LionRock

https://www.bot.or.th/English/FinancialMarkets/ProjectInthanon/Documents/Inthanon-LionRock.pdf

https://www.bot.or.th/English/AboutBOT/Activities/Pages/Inthanon_LionRock.aspx

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