CBDC発行に向けた各国の最新事例|推進派と懐疑派を比較

CBDC(中央銀行デジタル通貨)への取り組みが各国で行われる中、バハマは今年の10月にもCBDC「サンドドル(Sand Dollars)」の発行を予定。

 

日本においても日本銀行が「デジタル円」への研究を本格的に開始したことをはじめとしてCBDCへの関心が高まっており、会津大学ではデジタル地域通貨「Byacco(白虎)」が食堂などで利用が開始されるといった事例も確認されています。

 

本稿では、キャッシュレス決済がもたらしたCBDC発行への影響や国ごとに異なるCBDCへの取り組みについて考察していきます。

 

オーストラリア準備銀行 CBDCには懐疑的な姿勢を示す

オーストラリアでは、デビットカードと同様に銀行口座から即時支払いができる「EFTPOS(エフトポス)」と呼ばれる機能がキャッシュカードに備わっており、スーパーなどではレジで簡単に端末(Pay Wave)でキャッシュレス決済をすることができます。

 

2009年4月に「EFTPOS Payments Australia Ltd(ePal)」が設立されたことをきっかけに本格的な導入が行われ、961,247台のEFTPOS端末と30,940台のEFTPOS対応ATMがオーストラリアには設置されています。(2018年6月時点)

 

近年では、クレジットカードを用いたキャッシュレス決済に多くの手数料が課せられることから「リースト・コスト・ルーティング(LCR)」の適用を求める声も上がっています。

 

MastercardとVisaといった国際決済ネットワークによる決済は手数料が高額であることからオーストラリアではEFTPOSによるオンライン決済が8月に開始されるなど、事業者にとって低コストな決済方法が確立されつつあります。

 

そのような中、オーストラリアの中央銀行である「オーストラリア準備銀行」は、CBDCは従来の金融システムへ潜在的な影響をもたらすとして、その発行にむけては懐疑的な姿勢をみせています。

 

新しい決済プラットフォームが順調に機能していることが1つの理由とされており、預金資金が商業銀行から失われることによる資金調達コストの増大、銀行システムのトラブルによって資金の引き出しができなくなるリスクについても懸念を表明。

 

高齢者などデジタル化に対応できない国民もいるため従来の紙幣による決済はなくならないともしており、「Retail Central Bank Digital Currency: Design Considerations, Rationales and Implications」のレポートはCBDCのデメリットも示唆する内容となっています。

 

フィリピン 金融サービスの拡大・コスト削減に向けてCBDCの実現可能性を研究へ

フィリピンでは新型コロナウイルスの影響でキャッシュレス決済サービス「GCash」の登録者数が2,000万人を超え、総取引数が約20.7億米ドル(2020年1-7月)となるなど、これまで現金が主流とされてきた決済市場に大きな変化がもたらされています。

 

今年の7月には、CBDCの実現可能性と政策への影響を研究することを目的としたワーキンググループが設立され、UnionBankがデジタル債券発行プラットフォームの開発を進めるなど、金融・証券分野のデジタル化が進行。

 

CBDCの発行によって金融サービスの裾野が広がり、コスト削減につながるとフィリピン中央銀行はしており、法定通貨(現金)の使用が減少する可能性についても言及しています。

 

バハマと同様に国土の多くが島国であるフィリピンにおいては金融包摂の実現に向けてCBDCの活用は非常に重要であると考えられ、既存の金融システムへの影響や物価の安定、法律など「包括的な議論」が必要な段階にあります。

 

アジアでは中国をはじめとして、タイやシンガポールなどでもCBDCの商用化に向けたユースケース創出への取り組みが進み、カンボジアでは日本企業「ソラミツ」が新しい決済インフラの開発に向けてHyperledger Irohaを活用した技術サポートを実施。

 

現在のところ各国の中央銀行が、実現可能性を中長期的に検証することがCBDCの発行に向けては重要であると言え、「(CBDCの研究は)知識共有と密接なコミュニケーションの継続的なプロセスになるだろう」とフィリピン中央銀行総裁、ベンジャミン・ディオノ氏は述べています。

 

ヨーロッパ デジタルユーロは現金を補完する役割を担う可能性を示唆

Illustration of European Union flag

ヨーロッパにおいてはフランスでデジタルユーロに関する実証や研究が積極的に行われていますが、欧州中央銀行(ECB)ラガルド総裁は「デジタルユーロは現金を補完する役割を担う可能性があり、置き換えることはできない」としています。

 

これは9月21日に行われた仏独議会議会のオンライン会議での演説「Jointly shaping Europe’s tomorrow」で明らかにされたもので、法定通貨とCBDCの共存といった観点ではヨーロッパ特有の通貨システムの形成も見込まれます。

 

CBDC発行に関連するメリットやリスク、運用上の課題をECBは慎重に検討している段階にあり、タスクフォースによる調査や研究の報告を前にして将来的な法的通貨の役割を明確に示したことは今後のデジタルユーロの方向性を決定する上でも重要な出来事であると言えます。

まとめ

中国やバハマが世界に先駆けたCBDCへの取り組みを進めていますが、両国は数年前から研究を継続して行ってきた実績があり、金融包摂の実現など社会的課題の克服といった大きなニーズの有無が各国の取り組みの差に現れているとも言えます。

 

実際に日本でデジタル円が必要か?と問われれば、一般市民目線からはPayPayかクレジットカード決済でも十分であるとも言えますが、ソラミツ株式会社のように海外展開によってCBDCの発展に貢献している企業も存在します。

 

キャッシュレス決済の普及にともないCBDCへの積極的な取り組みを進める国もあれば、そのデメリットから慎重な見方を示す国もあり、より多様化していく決済の分野において通貨はどのような役割を果たしていくのか、今後も大きな注目が集まることでしょう。