ステーブルコイン

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは?ブロックチェーンと電子マネー

今回は各国の中央銀行が取り組んでいるCBDC(中央銀行デジタル通貨)について解説していきます。

 

ブロックチェーン技術の金融インフラへの導入は取引における「処理速度」や「ネットワーク環境」への影響などが懸念されており、技術的な問題からCBDCの実現はまだ難しいとされています。

 

決済サービスとして実際に導入・利用が行われるには数年の実証実験が必要とされており、慎重な運用が必要不可欠とされています。

 

現在のところCBDCは

 

ホールセール型:金融機関での取引(大口取引)
リテール型:一般市民による取引(小口取引)

 

の2種類に分類され、各国の中央銀行はホールセール型CBDCの研究・開発に取り組み、金融機関の決済システムの利便性向上を目指しています。

 

しかし、リテール型CBDCについては現在の銀行による預金機能や決済サービスを中央銀行が行うといったデメリットも存在し、既存の決済システムへの影響も未知数な部分が大きいとされています。

 

各国の一般市民は今でも現金を利用している人が多く、特に高齢者の人々はデジタル通貨導入による弊害を受けやすい存在です。

 

スウェーデンでは完全キャッシュレス化を2021年までに目指すとしていますが、一部の国民からは不満の声も上がっています。

 

このようにCBDCの実現にむけては課題も多く見受けられますが、ブロックチェーン技術による決済サービスの導入には多くの国が前向きに取り組んでいます。

 

トルコ中央銀行によるデジタル通貨発行

 

IMF(国際通貨基金)は報告書「フィンテック(Fintech)に関する5つの事実」を公開しました。

 

各国の中央銀行におけるデジタル通貨発行が現実的なものとなっているとの記載があり、決済手段としての暗号資産の活用が期待されています。

 

スマートコントラクトや分散型台帳技術によって、国際送金の迅速化といったメリットがあり、法的通貨にペッグされているため価格変動(ボラティリティー)も少ないといった点から大手銀行でもステーブルコインの開発が行われています。

 

発展途上国の銀行口座を利用できない人々の決済手段としてFacebookもLibraを発表しましたが、こちらは「既存金融システムの秩序を乱す」として批判を浴びています。

 

国際的な金融の安定化を目指して行われてきた今日までの取り組みが、営利目的の企業によって破壊されるといった潜在的な危険性に対して、各国の規制当局や規制団体は警報を鳴らしています。

 

そのため今後は中央銀行によるデジタル通貨発行が暗号資産業界においても重要なテーマとなることが予想され、その取り組みに注目が集まっています。

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トルコ中央銀行によるデジタル通貨発行について


トルコ政府が2019年から2023年にかけてのロードマップにおいてデジタル通貨発行計画を発表しました。

 

これはトルコ中央銀行によるデジタル通貨発行を定めたもので、ウルグアイやスウェーデンでも同様の取り組みが行われています。

 

特にスウェーデンでは2021年までに国内の完全キャッシュレス化を目指しており、デジタル通貨の発行もその一環として計画されています。

 

しかしながら、スウェーデン国民の中では現金による支払いを好む人もおり、特に高齢者にとってはキャッシュレス化に反対する人も少なくありません。

 

日本においてもPayPayやLINE Payなどによってキャッシュレス化が進んでいますが、実際のところSuicaとクレジットカードでほとんどの決済を行えてしまうため今後はサービスの淘汰が行われると考えられます。

 

また、中国では行政サービス、アメリカでは選挙の投票にブロックチェーン技術を活用する取り組みが進められており、デジタル通貨のみならず様々な分野でブロックチェーン技術の活用が行われています。

 

トルコにおいてもロードマップの中で、交通機関や税関へのブロックチェーン技術導入についても明らかにされています。

 

トルコリラの急落とブロックチェーン


ベネズエラでは物価上昇率が約268万%(年率)にも及んでおり、OTC取引によってビットコインが避難資産として活用されています。

 

トルコにおいても法定通貨であるトルコリラが急落した際には暗号資産取引所の取引量が増加するなど、国民の多くは政府や銀行を信用できない状況にあります。

 

そのような中で、政府や特定の組織による価値の裏付けを必要としない暗号資産は避難資産として活用されており、特に価格変動の少ないステーブルコインはその活用が期待されています。

 

これまではドルや円に交換しておけば価値の保全ができましたが、政治的な理由でアメリカから制裁を受けている国では暗号資産を避難資産として実際に活用しています。

 

トルコでは中央銀行によるデジタル通貨発行計画が明らかにされていますが、トルコ国民がどこまで中央銀行を信用し、デジタル通貨を利用するかは不透明な状況にあると言えます。

 

もしも日本銀行がデジタル通貨を発行したとすると、現在みずほ銀行や三井住友銀行で行われている国際送金の業務を中央銀行が担うことになるのかなど導入においては多くの議論が必要となることでしょう。

 

1 日本


 

日本の中央銀行である日本銀行は雨宮正義副総裁が「金融政策への有効性、金融システムの安定性の向上に貢献するかは検討する必要」と2018年10月に述べており、CBDCについては検討段階としています。

 

2019年7月には決済インフラとしての現金の利便性や銀行の信用仲介の減少などCBDCによる実体経済への悪影響を指摘しつつも、CBDCへの調査研究は必要との姿勢をみせています。

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2 韓国


 

韓国では中央銀行である韓国銀行(BOK)がCBDC発行について「銀行の預金残高が減少する」として経済的にはマイナスとの意向を表明しています。

 

CBDCは金融政策に悪影響であり、経済の不安定化につながるとしています。

 

3 香港


 

香港では2019年5月に香港金融庁とタイ銀行がパートナーシップを締結し、CBDCの共同事業実施の可能性が示唆されていました。

 

しかし、香港の中央銀行である「香港金融管理局(HKMA)」によるCBDCの発行計画はないと香港財経事務及庫務局からは発表がされています。

 

すでに決済インフラは整備されていることからCBDCの必要性がないとしています。

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4 イギリス


 

イングランド銀行(BoE)は2018年5月にCBDCによる金融リスクをまとめた報告書を発表しており、CBDC導入については柔軟な対応を行うとしています。

 

5 スイス


 

暗号資産の聖地・クリプトバレーのあるスイスでは、自国デジタル通過「eフラン」が金融に与える影響について調査を行うと2018年5月に発表しています。

 

中央銀行であるスイス国立銀行が暗号資産に対しては基本的に中立の立場を取るとしており、発行については銀行との競合になるリスクも含めて慎重な姿勢をみせています。

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6 バハマ


 

バハマ中央銀行は2020年にCBDCの導入を目指し、「サンド・ドル・プロ ジェクト」というプロジェクトを行なっています。

 

これはCBDCが幅広く使われることを目指し、CBDC発行に必要な企業選定を行なっています。

 

バハマは島国でその島の数はバハマ国内で700にも及びます。

 

そのため銀行やATMではなく、CBDCの導入への取り組みが世界に先駆けて行われています。

 

全ての人々が金融サービスにアクセスすることができて、利用することができるといった「金融包摂」といった概念がバハマ中央銀行の取り組みから見て取ることができます。

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7 ウルグアイ


 

ウルグアイ中央銀行では2017年11月に法定デジタル通貨「eペソ」を半年間1万人に発行し、試験的な取り組みを行いました。

 

8 エクアドル


 

エクアドル中央銀行はドル化政策に関するコストの作戦を目的に電子通貨「ディネロ・エレクトロニコ」を2014年12月に導入しました。

 

9 ドイツ


 

ドイツの中央銀行はCBDCの危険性を警告しており、既存の金融システムを不安定にし、銀行の経営を悪化させるとしています。

 

10 ロシア


 

ロシア中央銀行は2019年6月にCBDCの潜在的なメリットやリスクについてのレポートを公開しています。

 

そのレポートでは匿名性が欠如していることがCBDCの欠点としており、ロシア中央銀行としても研究調査を進めるとしています。

 

また、プーチン大統領は政府発行のデジタル通貨「クリプトルーブル」の発行計画を明らかにしており、法定通貨とする法案の提出も行われています。

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11 スウェーデン


 

スウェーデンの中央銀行であるRiksbankでは「e-Krona」プロジェクトに取り組んでおり、匿名性のデジタル通貨の発行を目指しています。

 

Riksbankは2021年までにスウェーデン国内の完全キャッシュレス化を掲げており、2019年の実証実験を経て、「e-Krona」をスウェーデンにおける主要通貨として流通させるとしています。

 

12 ノルウェー


 

ノルウェー中央銀行はCBDCの導入を検討しており、その影響について調査を進めるとしています。

 

13 オランダ


 

オランダでは2015年からDNBCoinと呼ばれる国家暗号通貨についての取り組みが行われており、2018年にはその金融システムへの影響が検討されています。

 

オランダ中央銀行(DNB)はCBDCの可能性について調査を進めるとしています。

 

14 中国


 

中国は暗号資産取引所を禁止している一方で、ブロックチェーンによるデジタル通貨については2014年から調査を進めていました。

 

中国は AlipayやWeChat Payといった決済サービスが当たり前で、中央銀行である中国人民銀行(PBoC)は商業銀行間でデジタル通貨による取引を2017年にすでに行なっていました。

 

銀行によっては現金の受け取りを行わないところも出てくるなど、デジタル通貨の普及による弊害もありますが、金融政策のさらなる促進に向けて中国政府はCBDCを活用する姿勢をみせています。

 

2018年10月には中国人民銀行のデジタル通貨研究所が人材募集を行うなど、CBDCの開発にむけて取り組みが進められています。

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15 イスラエル


 

イスラエル銀行のCBCD調査チームは2018年11月にCBCD発行を推奨しないと発表しました。

 

金融政策や決済など金融システムへのリスクが懸念され、イスラエルではCBCDの発行は技術的にも難しいとしています。

 

16 タイ


 

タイ中央銀行である「タイ銀行」はアメリカフィンテック企業「R3」とのブロックチェーン技術開発を行なっており、将来的にはこの技術がCBCDに導入されるとしています。

 

これは「インタノン(Inthanon)」と呼ばれるプロジェクトで、R3の分散型技術であるコルダを使用。

 

銀行間での大口決済に用いられるようになることが予定され、2019年には利用が開始されるとしています。

 

タイ銀行総裁は現金からデジタル通貨への切り替えは3〜5年を要すると予想しており、今後もタイ銀行の取り組みには注目が集まります。

 

17 カナダ


 

カナダ中央銀行は「プロジェクト・ジャスパー」と呼ばれるCBCDプロジェクトが実施されています。

 

カナダ中央銀行はスウェーデン国立銀行とのCBDCについての会議を2019年10月17日にも予定しており、積極的な取り組みを行なっています。

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18 パキスタン


 

パキスタンの中央銀行である「パキスタン国立銀行(SBP)」は2025年までにCBDCの発行を目指していると明らかにしています。

 

2019年4月の電子マネー機関(EMI)立ち上げの際にこの発表は行われ、2030年までには展開を予定しているとしています。

 

19 シンガポール


 

シンガポール金融管理庁は「Project Ubin」と呼ばれるCBCDプロジェクトを実施しています。

 

これは民間のブロックチェーン企業と共同でブロックチェーン技術の応用について調査を行うもので、すでに2017年9月、2018年3月に調査報告書を発表しています。

 

下記の企業が第1回、第2回と参加しており、CBCDへの取り組みが進んでいます。

 

第1回

 

Bank of America Merrill Lynch
Credit Suisse
DBS Bank
Hongkong and Shanghai Banking Corporation (HSBC) Limited
JP Morgan
Mitsubishi UFJ Financial Group
OCBC
R3
Singapore Exchange (SGX)
United Overseas Bank (UOB)

 

第2回

 

Bank of America Merrill Lynch
Citi
Credit Suisse
DBS Bank Ltd
HSBC Ltd
JP Morgan
Mitsubishi UFJ Financial Group
OCBC Bank
SGX
Standard Chartered Bank
UOB

 

また、シンガポール金融管理庁は下記の企業と技術的な提携を結んでいます。

 

Accenture
R3
IBM
ConsenSys
Microsoft

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CBDC 世界の取り組みと今後について


 

CBDC:Central Bank Digital Currency

 

国際決済銀行(BIS)は世界の中央銀行の中央銀行として知られており、現在の金融業界においては大きな影響を持つ国際機関です。

 

暗号資産に対しては「投資詐欺」として厳しい姿勢を見せていましたが、中央銀行が発行するステーブルコイン「CBDC」については一転して支援を発表。

 

スウェーデンやシンガポールなどの中央銀行が「CBDC」発行に取り組んでいることから、導入にむけて国際決済銀行としても協力する姿勢を見せています。

 

CBDCは中央銀行といった既存の金融システムがブロックチェーン技術を生かしてより円滑に決済ができることを目指したステーブルコインです。

 

中央集権的な特徴を持ち、取引の際には相手の名前を明記するなどこれまでの金融サービスと同じように「非匿名性」であると考えられています。

 

そのためCBDCは暗号資産でありながらも国際金融の秩序を乱すことなく監督できるとして国際決済銀行としても態度を改めたとも考えられます。

 

しかし、Facebook・Libraに対しては20億人のユーザーを抱えている影響力の大きさから「金融システムの秩序を乱す」として批判的な姿勢を見せています。

 

大手IT企業の金融業界への参入はその個人顧客の多さから既存の金融機関からは脅威とされており、国際決済銀行は包括的な公共政策の必要性を年次報告書では述べています。

 

なぜなら、大手IT企業の金融業界への参入はデータ保護や競争政策の観点からこれまでの法的な枠組みの中では対応ができないからです。

 

ステーブルコインであっても「分散型・中央集権型」といった特徴の違いがあり、これ以上の大手IT企業による金融業界への参入を防ぐためにもCBDCへの支援を表明したとも考えられます。

 

Libraの発表によって金融業界としてもその脅威に対応するべく、CBDCの開発への取り組みをより強化していくことが考えられます。

 

参考文献

 

Volumes Surge on Turkey’s Crypto Exchanges as Lira Tanks

トルコ、中央銀行のデジタル通貨を新経済ロードマップに掲げる

FB参入の衝撃、国際決済銀行もデジタル通貨の発行支援へ

否定から一転 国際決済銀行が「中央銀行デジタル通貨」の発行に賛成の意を示す=FT

巨大IT企業の金融進出に警鐘 国際決済銀行が報告書

仮想通貨批判の急先鋒が宗旨替え? 国際決済銀行トップが中央銀行デジタル通貨を支援する姿勢

中央銀行デジタル通貨、その1

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