社債投資

社債市場におけるブロックチェーン技術の活用事例

社債の引受業務によって、証券会社が社債の売買を行う場合、手数料はおよそ「0.1%〜0.5%」とされています。

 

少額の起債だと証券会社に入る手数料が少ないため、これまでは数十億円規模でないと証券会社による社債引受は行われないといった課題がありました。

 

このような課題を解決するためにもブロックチェーン技術の活用が期待されており、下記のようなメリットがあるとされています。

 

・社債の小口化
・仲介コストの削減
・より簡易的な社債の発行

 

一般に社債を発行する場合には、投資家からの購入申し込み事務を担う証券会社など引受会社のほか、社債権者のために債権の回収を容易にする社債管理者、決済照合を担う証券保管振替機構など多数のプレイヤーが存在します。

 

これらの人手、プレイヤーに対するリワード削減、更に時間コストの削減のため新たなブロックチェーン技術を活用し、より迅速かつ低コストでの債券取引を目指した取り組みが進められており、日本でも野村HD/野村総合研究所が2020年夏の実用化にむけて実証実験を行なっています。

 

野村HD 社債をブロックチェーンで管理へ|小口売買で市場の活性化

 

ブロックチェーン上にはスマートコントラクト機能が実装されており、不正の防止や契約の自動化といった面で多くの分野で活用への取り組みが行われています。

 

日本でもブロックチェーン技術を活用する取り組みは各分野で盛んに行われています。

 

TOYOTA:自動運転データの収集・管理

住友商事 bitFlyer:賃貸契約 不動産情報の管理・共有

 

今回、野村HDは有価証券取引をブロックチェーンで管理する取り組みを野村総合研究所(NRI)と共同で行うことを発表しました。

 

野村HDでは2020年夏の実用化に向けて、社債のブロックチェーン上での管理を目指すとしています。

 

ブロックチェーン技術を活用することで、業務の効率化だけでなく、社債市場の流動性向上にも繋がると期待が集まっています。

 

野村HD ブロックチェーンを活用した社債管理について

 

野村HDと野村総合研究所は今年8月にも新会社を設立予定となっており、より低コストで取引履歴や発行条件をブロックチェーン上に記録できる仕組み作りを行うとしています。

 

社債は取引ごとに権利移転が必要となるため、証券会社の事務作業の多さが長年、課題とされてきました。

 

また、証券会社としても少額社債の取り扱いは手数料ビジネスとして採算が合わないため、数十億円以下の規模で社債発行は行われにくいといった課題も存在します。

 

ブロックチェーンを活用することで、このような課題を解決できるとして社債市場の流動性向上に期待が集まっています。

 

社債の発行がより少額から可能になり、作業プロセスの効率化も図れることから証券会社にも大きな恩恵がもたらされると考えられます。

 

また、これまでの社債市場では証券会社と投資家による相対取引が行われてきましたが、取引の活性化によってより透明性の高い価格形成が行われるといったメリットも期待されています。

 

実用化に向けて証券会社と機関投資家との実証実験を行うとしており、1年以内にはブロックチェーン上で社債の管理・発行を予定しています。

 

「有価証券×ブロックチェーン」について

 

海外ではフランスの大手投資銀行ソシエテ・ジェネラルの子会社である「ソシエテ・ジェネラルSFH」が1億ユーロ(約125億円)分の社債をトークンとして今年4月にも発行しています。

 

この社債トークンはイーサリアムブロックチェーン上に発行されており、社債の発行や取引の活性化が期待されています。

 

企業としても投資家から直接投資を募ることができるので、より円滑な経済活動が可能となります。

 

最近ではSTOへの取り組みもブロックチェーン業界では活発になっており、株式をセキュリティトークンとして発行することで資金調達を行う事例が報告されています。

 

>>BTGが10億ドル以上のSTOを計画|Tezosについて解説

>>Aspencoinホワイトペーパー解説|アメリカ・不動産STO

 

法規制に準拠した資金調達方法でありながらも、IPOのように時間とコストがかからないことからSTOは注目を集めており、投資家としてもより少額からの投資が可能となります。

 

また、ICOがアメリカではじめてSECによって承認されるなど、ブロックチェーン業界でも法規制に準拠し、市場の健全化を目指す取り組みが広がっています。

 

トークンの有価証券への該当基準などがより明確になっている中で、日本でも野村HDのような事例が今後は増えていくことが予想されます。

 

ブロックチェーン技術導入によるメリットについて

 

 

 

社債の管理や発行にブロックチェーン技術を活用することで、

 

・取引の履歴や現在の債券保有者が簡単に分かる

・利払いや償還業務の手間が省ける

 

といったメリットが生まれ、各業務コストの削減が見込まれ、金銭面においてより顧客に対し参加しやすい市場が形成されるでしょう。

 

また、債権の小口化により、より一層の低コストでの債券購入が可能となります。

 

今まで参集できなかった顧客の新たなニーズを開拓するシナジー効果も見込まれ、現行のシステムよりも多くのファンドを募る機会形成が見込まれます。

 

これまでは、顧客の個人情報はそれぞれの組織のデータベースに属していたため、情報の共有ができず情報の精査が困難でした。

 

しかし、分散型システムであるブロックチェーンであれば各組織と共有・管理することが可能であり、より透明度の高い取引が実現できます。

 

将来的には、社債取引だけでなく、より高度な債券取引にも対応することが期待されています。

 

ブロックチェーン技術の活用事例

 

世界銀行 ブロックチェーン債

 

世界銀行は2018年8月にブロックチェーン技術を活用した債券「ブロックチェーン債」の発行を行い、1億1千万豪ドルの資金調達を行いました。

 

これはオーストラリアのコモンウェルス銀行と共同で行われ、世界初のブロックチェーン技術を活用して発行された公募債として「bond-i = Blockchain Operated New Debt Instrument 」と名づけられました。

 

この「ブロックチェーン債」は起債から決済のプロセスをより効率的に行うことを目指して発行され、リアルタイムで取引情報の管理・共有が実現できるとして注目を集めています。

 

東京証券取引所 業界連携型DLT実証実験

 

東京証券取引所ではブロックチェーン技術を活用した「約定情報連携システム」の検証を行なっています。

 

・システムの統一化
・業務慣行の整理
・耐障害性の向上

 

約定照合業務は上記のような課題を抱えており、最先端技術の活用による業務プロセスの改善や効率性の向上に今後も取り組むとしています。

 

社債市場の見通し|ハイイールド債やセキュリティトークン

 

日本の社債市場は、信用度の高い企業が投資対象とされ、格付けの低い企業が発行する「ハイイールド債」は発行されないといった状況が続いていました。

 

投資家としてもリスク回避のためにBB格クラスの企業が発行する社債は対象外として、企業の信用が低下した場合には投げ売り(強制売却)が行われるなど、画一的な投資方針などが社債市場の活性化を妨げていたとされています。

 

しかし、長期的な金融緩和が行われる中で高い利回りを期待する機関投資家が「ハイイールド債」を求める傾向が強くなっています。

 

今年の4月にはアイフルが「ハイイールド債」の発行を発表しており、新たな資金調達方法として注目を集めています。

 

また、最近ではソフトバンクグループが最大4,000億円にも及ぶ個人向け社債の販売を発行するなど、社債による資金調達が活発に行われています。

 

私募債について

 

少人数私募(投資家50名未満、発行金額1億円未満)を中小企業が行う場合には、

 

・返済計画(借入から償還)
・ビジネスモデル
・募集要項

 

といった社債発行の目的と用途を明確にし、社債原簿(社債台帳)の管理体制の整備を行う必要があります。

 

そのほかにも財務諸表や社債発行にあたって説明会の開催を事前に行い、資金調達後には計画的な会社経営によって償還にむけた堅実な取り組みを行うことが重要です。

 

また、社債を発行する場合にはさまざまな事務手続きが発生し、人的コストが増大するといったデメリットが存在するため、ブロックチェーン技術の導入で、より効率的な社債の管理・共有ができると期待されています。

 

社債 セキュリティトークン化について

 

 

日本において中小企業が社債をセキュリティトークンとして発行しようとした場合にはどのような取り組みが必要になるのでしょうか?

 

日本ではセキュリティトークンを発行する場合には金融商品取引法の適用対象となり、電子記録移転権利に分類され、1項有価証券として株や社債、国債と同様の規制が課せられます。

 

1項有価証券として発行や管理にコストがかかることからセキュリティトークンが現在の日本で普及するのは難しいといえます。

 

厳格な規制のもとではSTOが普及しないとして、新経済連盟は規制の柔軟性を求める提言を今年の7月にも行なっています。

 

ドイツやフランスでは社債をセキュリティトークンとして発行する取り組みが行われており、日本でも社債市場の活性化にむけてセキュリティトークンが注目を集めています。

 

社債 セキュリティトークン活用事例

 

ドイツではSTOへの積極的な取り組みが行われています。

 

P2Pレンディング企業である「Bitbond」では社債をセキュリティトークンとして発行することで、資金調達を行なっています。

 

この「Bitbond」のSTOは公募債として、幅広く投資家から投資を募ることに成功しています。

 

アメリカで行われるSTOはSECへの登録免除規定である「Regulation」を適用して行われるため私募の範囲で行われることが多いですが、ドイツでは法規制が異なるため公募でのSTOが実施されています。

 

また、フランスでは「ソシエテ・ジェネラル・グループ」がカバードボンド(債権担保付き社債)をセキュリティトークンとして発行しています。

 

これは自社向けに発行されているため資金調達を目的とはしていません。

 

しかしながら、1億1200万ドル(約125億円)にも及ぶカバードボンドをブロックチェーン技術を活用して発行した取り組みとしては世界的にも前例がなく、大手銀行の取り組みとして大きな注目を集めました。

 

ソシエテ・ジェネラル|社債をセキュリティトークンとして発行

 

フランスでは2018年6月に暗号資産に関する投資家保護や規制緩和の方針をまとめた「PACTE法案」が閣議決定され、2019年4月に採択されました。

 

フランス国内では黄色いベスト運動(燃料税値上げに反対するデモ)が続いており、雇用創出やイノベーション促進といった経済成長への施策が必要不可欠です。

 

そのような状況で、フランス政府はPACTE法案の中で6項目の景気刺激策を講じることを定めました。

 

この法案の中ではブロックチェーン企業に対する事業計画やマネーロンダリング防止策の提出、その承認・申請について規定が設けられています。

 

経済発展のために多くのブロックチェーン企業のフランスへの誘致を政府とフランス金融市場庁(AMF)は目指しています。

 

そんなフランスの暗号資産(仮想通貨)規制ついてご紹介いたします。

 

フランス PACTE法案について

 

Assemblee Nationale (National Assembly) in Paris.

 

フランス政府はPACTE法案によって暗号資産による経済施策を打ち出しました。

 

このような国家プロジェクトの一貫として暗号資産が活用されるのは世界的に見ても異例です。

また、2019年4月にはブリュノ・ルメール経済財務大臣によって、ブロックチェーンへの5700億円の投資計画が発表されました。

 

プロジェクトの支援や法整備の取り組みへの投資によってさらなる発展が期待されます。

 

空港の民主化や保険業界のみならず、あらゆる分野でのブロックチェーン活用をこの投資計画では目指しており、世界の中でも挑戦的な取り組みと言えるでしょう。

 

フランスがここまで攻めの姿勢を貫いている理由としては、国内での暴動の沈静化や財政の悪化など国家存亡の危機に瀕していることが考えられます。

 

そのような背景がある中で金融業界ではすでに取り組みが進められています。

 

ソシエテ・ジェネラルがセキュリティトークン発行へ

 

 

世界的な投資銀行として知られるソシエテ・ジェネラルは日本をはじめとして世界80ヵ国以上で事業を展開しています。

 

その子会社である「ソシエテ・ジェネラルSFH」はイーサリアムのブロックチェーンを利用し、セキュリティトークンの開発に成功。

 

今回は自社向けに担保付社権として発行されているため実際に売買が行われることはありませんが、その金額は125億円にも及びます。

 

このようにフランス国内ではSTOへの積極的な取り組みが行われています。

 

また、ソシエテ・ジェネラルは金融だけではなく、2017年にはIBMによる貿易プラットフォーム「we.trade」、2018年には「KomgoSA」という取引プラットフォームに参加しています。

PACTE法案によって保険会社による暗号資産投資が可能に

 

Saving Insurance Plans Ideas Finance Growth Analysis Concept

 

今回の法案では保険と仮想通貨を組み合わせた投資商品の提供ができるようになりました。

 

万が一の事態に備えて保険に加入している人が多いと思いますが、学資・終身保険といった積立式の保険は資産運用の一つとして知られています。

 

このローリスクな資産運用方法と仮想通貨を組み合わせた投資商品がフランスでは景気刺激策として用いられようとしています。

 

通常の資産運用に用いられる保険は基本的に毎月定額を積み立て、5〜15年の加入期間が設けられています。

 

そして、期間が終わった後にはその総額の何%(予定利率)かが上乗せされて返戻されるといった仕組みです。

 

保険による資産運用のデメリット

 

 

長期間の加入が必要であったり、もしもの時に解約せざるを得ないといった場合には元本割れのリスクはあります。

 

経済状況によっては毎月の積立額を払えないといった事態もあるかもしれません。

 

また、100万円を投資しても保証金と保険会社の利益の分は差し引かれてしまいます。

 

そのため運用自体は90万円といったように実際に戻ってくるお金が少ないといったケースが少なくありません。

 

しかし、定期預金よりも利率が高く、いざとなれば保険金はおりるため、資産運用としては始めやすいのが特徴です。

 

節税対策にもなり、毎月自動的に貯金ができるのでローリスクな資産運用といえます。

 

現在のところフランス政府が仮想通貨の価格変動(ボラティリティ)のリスクに対してどのような策を講じて運用を行っていくのか明らかにはなっていません。

 

世界に先駆けたこの取り組みを通じて、どこまで顧客に利益がもたらされ、フランスの景気回復に繋がっていくのか注目が集まります。

 

まとめ

 

今回の法案の本当の狙いはパリ空港公団(ADP)の民主化および、株式売却による財源確保です。

 

フランス政府はパリ空港公団の株式50.6%を保有しています。

 

マクロン大統領が所属する政党「En Marche!(アン・マルシュ!)」副代表のJoel Giraud氏によると、暗号資産を取り扱う投資ファンドがこの株式を購入することが経済活性化に繋がるとしています。

 

国家の財源確保にむけて、様々な産業分野での国有株売却がフランスで行われようとしています。

 

参考文献

 

仏金融会社ソシエテ・ジェネラル子会社、約125億円分の債券トークンを発行

Banks Can’t Snub Crypto Startups Thanks to France’s New Blockchain Law

200兆円規模の仏生命保険業界、仮想通貨への投資が可能に

仏保有株売却へ法改正準備 来週閣議決定、公的債務削減狙い

仏金融大手ソシエテ・ジェネラル子会社、債券トークンを発行。仮想通貨イーサリアムのブロックチェーンを利用

フランス経済財務大臣、「ブロックチェーンは仏政府の優先事項」

欧州の金融ブロックチェーンを加速させる仏ソシエテ・ジェネラル:イーサリアム上で125億円相当の債券発行

日本初の「投機級」社債 アイフルが公募

ソフトバンクG、個人向け社債4000億円発行へ

社債の活用②-少人数私募債

業界提携型DLT東証実験JPX

世銀が初の「ブロックチェーン債」発行

ブロックチェーン関連の世界支出、2023年に約1兆6908億円に到達【IDC予測】

 

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