ビットコイン資産運用2021年の市場展望|金融機関の市場参画について

日本では過去にハッキング事件が社会問題となったことから社会通念上、デジタル資産に対する抵抗感が強く、インフレへのヘッジ手段としてビットコイン投資を推進する動きは顕在化していない状況にありますが、「売却を目的としない価値保全手段」として米国ではビットコインによる資産運用が定着しています。

 

2020年はPayPalがデジタル資産取引サービスを開始し、MicroStrategyがビットコインへの投資を続けており、各国の金融機関や投資運用会社もデジタル資産市場に参画した節目の年となりました。

 

今後は一部の企業のみならず保険会社や年金基金が参画する可能性をJPモルガンは示唆しており、将来的な社会構造の変化に備えるための「最適なアセットクラス」としてビットコインの認知が海外では拡大しつつあります。

 

本稿ではビットコイン投資の最新事例を参考に、2021年の市場展望について考察していきます。

 

2021年 ビットコインが金融領域に定着したその後

 

金融機関/証券取引所におけるデジタル資産の取り扱いの事例としては、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)におけるイーサリアム先物取引が2021年2月に予定され、シンガポールではDBS銀行がDBSデジタル資産取引所の開設を進めています。

 

スイスではSIXデジタル証券取引所の開発が進められておりデジタル証券とCBDC決済の実証が行われるなど、ブロックチェーン技術を活用した金融インフラ整備によって各市場の相互発展が期待されます。

 

また、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス、Cboe Global Marketsが相次いでデジタル資産インデックスサービスを提供する計画を発表しており、投資家がデジタル資産へのアロケーションを検討する際にも金融領域を支えてきた伝統的な企業によるデータ提供は市場の信頼性を担保する上でも重要です。

 

米国における既存金融とデジタル資産市場の統合が進む中、各国では投資企業やプライベートバンクによるデジタル資産市場への参画が相次いでいます。

 

英国の投資運用会社であるRuffer Investmentはインフレヘッジを目的として運用資産の約2.7%に相当する約5億5000万ポンドのビットコインを投資ポートフォリオに加えたことを発表。

 

ロンドン証券取引所(LSE)に上場しているRuffer Investmentは270億ドル以上を運用し、年金基金、ファミリーオフィス、企業、保険会社などにサービスを提供している伝統的な投資運用会社です。

 

英国ではSBIフィナンシャルサービシーズが、デジタル資産のマーケットメイカー企業B2C2の株式を取得するなど各企業の連携によって市場の拡大が進んでいます。

 

ヨーロッパではイタリアでも富裕層向けプライベートバンク事業に強みを持つ銀行Banco Generaliがデジタル資産管理企業であるConioと提携を発表。

 

Banco Generali以外にもBanco Sellaがイタリアの銀行としては初めてデジタル資産の取引サービスを今年の3月から提供しており、金融機関の市場参画が今後も続くことが予想されます。

 

2021年にはビットコイン投資が一般的なものとなり、派生商品や関連サービスが創出され、エコシステムの拡大がより幅広い領域に及ぶことでしょう。

 

今後10年間でどのような投資商品が生み出されていくのか?

 

世界的な投資信託企業Fidelity Investmentsや機関投資家向けファンドNew York Digital Investment Group(NYDIG)は、ビットコインのカストディサービスを提供しています。

 

ビットコインは2021年から年金のポートフォリオに加わり、IT企業や伝統的な保険会社も大口投資を実施していることから今後も機関投資家の市場参画をサポートするインフラ整備が進むことが予想されます。

 

富裕層が資産運用の1つとしてビットコインを活用する時代がすぐそこまできていると考えられ、ビットコイン以外のデジタル資産の投資価値がどのように向上していくのかにも注目が集まることでしょう。

 

2020年はデジタル資産投資の始まりであると仮定した場合、今後10年間でどのような投資商品が生み出されていくのか市場の拡大が期待されます。

 

米国の投資会社であるOne River Asset Managementはデジタル資産専門の投資運用会社を設立し、2021年には10億ドル規模でビットコイン・イーサリアムに投資する計画を発表。

 

新会社であるOne River DigitalはヘッジファンドElwood Asset Managementと技術提携を結び、有名投資家から投資を募り、ファンドの管理/カストディは金融機関であるNorthern Trustとデジタル資産取引所コインベースが担当します。

 

このように各企業が連携して管理/運用するケースとGrayscaleのデジタル資産投資信託Grayscale Bitcoin Trust(GBTC)が現在は主流となって、市場の拡大を促進しており、2021年以降も巨大な資本力を有する企業/ファンドがビットコインへの投資を行い、そのことでデジタル資産全体の社会的信用力の獲得につながることが予想されます。

 

ビットコインをめぐる議論はすでに価値保全から決済手段、個人投資家から機関投資家へと移行しており、各投資家がアセットアロケーションを検討する上で「最適な資産」であると言えます。

 

デジタル資産市場は次なる「最適な資産」を創出するのか、それとも市場全体が「最適なアセットクラス」となるのか2021年も目が離せない展開が続きそうです。

 

ビットコインを活用した資産運用のあり方

 

機関投資家によるビットコイン投資を裏付ける証拠として、ブロックチェーン市場の分析を手がけるChainalysisは各ウォレットごとのビットコイン保有数を数値化しています。

 

1000以上のビットコインを保有するウォレットは2020年に302の増加となっており、米国では企業によるビットコイン投資が普及するなど、機関投資家が中心となって市場全体の底上げがなされています。

 

新規参入の機関投資家は、店頭取引(OTC)によって市場への影響力を小さく止めることで価格の大きな変動を抑制する工夫を施し、最高値を更新した場合にも売却しないことが1つの特徴です。

 

これまでの大口投資は利確によって価格暴落を引き起こす要因となってきましたが、機関投資家ごとにビットコイン投資の目的は異なります。

 

インフレをヘッジするために現金の代替資産としてビットコインを認識している場合には長期保有する傾向にあり、「売却を目的としない価値保全の投資」としてビットコイン投資はその性格を変化させています。

 

ビットコインを活用した資産運用のあり方を巡っては2021年に本格的な議論が開始されると想定され、日本でもより多くの投資家がその可能性と恩恵を享受できる環境の整備が必要となることでしょう。

 

まとめ 2021年 ブロックチェーン企業の成長性が加速

 

日本では企業が将来的な危機に備えて、価値保全の手段としてビットコインを運用することは現在のところ主流ではありませんが、市場動向を捉えた企業戦略として2021年は議論がかわされるとも想定され、世界的な潮流に対応できるかが問われていくとも考えられます。

 

PayPalは2021年にデジタル資産の決済サービスを導入店舗で開始するとしており、決済手段としてビットコインが定着することで投資商品としての新たな価値が創出されることでしょう。

 

機関投資家向けデジタル資産取引所itBitを運営するPaxosはPayPalのデジタル資産取引サービスをサポートしており、シリーズCラウンドで1億4,200万ドルの資金調達に成功。

 

合計で2億4,000万ドルをPaxosは調達しており、PayPalなど既存金融領域とデジタル資産をブリッジする役割を担うことで、世界的なブロックチェーン企業として成長を遂げていくことが期待されます。

 

CoinbaseがIPOを目指し、上場申請を行うなど2021年も引き続きデジタル資産市場の発展が社会的需要の高まりとともに続くことが予想され、各国のブロックチェーン企業はその成長性を加速させていくことでしょう。