アメリカではFRB(アメリカ連邦準備理事会)が今月末にも2008年12月以来の利下げを行うとしています。
当時は住宅市場の低迷などによって2008年1月に0.75%の緊急利下げを行うなど景気が急激に減速し、2008年9月にはリーマン・ブラザーズが経営破たんしました。
その結果、失業率は悪化し、消費者物価指数(CPI)も急落。
将来の見通しの不安感が高まり、設備投資が急減したことが、景気減速に拍車をかけたとされています。
2009年2月には「米国経済再生法案」が成立し、7,870億ドルにも及ぶ景気刺激策をオバマ政権は講じ、2010年からは在庫純増や個人消費の回復によって、景気は持ち直しの兆しを見せ始めました。
2010年以降は設備投資増加や雇用回復によって景気回復局面を迎え、今日までの持続的な景気拡大につながっています。
今回は2019年におけるアメリカ景気減速の原因と今後の見通しについて解説していきます。
アメリカ 2019年4〜6月期 景気概況
アメリカ2019年4〜6月期においては下記のような景気概況となっています。
・小売売上高は前月比0.4%増
店舗を持たない小売り業が1.7%増となっており、小売業の売上全体を底上げしています。
・ISM製造業景況感指数の下落
ISM製造業景況感指数は今年に入ってから「56.6→54.2→55.3→52.8→52.1→ 51.7」と下落を続けています。
製造業は米中貿易摩擦やメキシコへの報復関税といった要因で減速しており、2018年1月〜6月には「57.3〜60.2」で推移していたことを踏まえると、今後も不安定な状況が続くことが予想されます。
ISM製造業景況感指数:景気の先行指標。50%を基準として上回ると景気拡大、下回ると景気後退とされています。
・設備投資は0.6%のマイナス
ガスや石油の立坑・油井といったインフラ投資が10.6%の減少。
・失業率3.7%
現状では、7月15日にダウ工業株30種平均が過去最高値を更新するなど活況を呈しているようにみえますが、米中貿易戦争によるリスクの懸念から企業の設備投資が減少する結果になっています。
また、2019年4〜6月期の実質GDPは前期比2・1%増となっており、4〜6月期の3.1%から減速していることがわかります。
2019年4〜6月期は政府機関の一部閉鎖解除や政府による支出・投資が7.9%増加しており、このような特殊要因がなかった場合には実質GDPは1.25%とされています。
つまり米中貿易摩擦の影響によって企業が設備投資を行いにくい状況となっており、ファーウェイへの規制緩和など米中貿易摩擦問題の解決がアメリカ経済回復への最善の策であるとも考えられます。
2017年末に行われた大型減税の景気刺激策によって、家計部門では雇用の改善や個人消費の押し上げが行われており、企業部門の回復がアメリカ経済の今後の課題と言えるでしょう。
アメリカ 家計部門について
2019年6月のアメリカ雇用統計では、失業率が3.7%、非農業部門雇用者数22.4万人増加となっており、堅調な労働市場であることが伺えます。
また、アメリカ長期金利が2%を割り込むレベルまで低下したことで、住宅ローン金利が低下しています。
アメリカ住宅市場においては16ヶ月のマイナスとなっていますが、2019年6月の中古販売件数は前年同月比2.2%減と、減少幅は小さくなってきています。
住宅ローン金利低下と堅調な労働市場が住宅需要の安定化につながっていると言えます。
FRBの利下げは住宅市場の活性化にもつながるとされていますが、住宅価格指数は上昇しており、住宅ローン金利の低下と住宅価格高騰に今後は注目が集まることが予想されます。
参考文献
米小売売上高:6月は予想上回る伸び-利下げ巡る議論、複雑化も
米雇用者数、予想上回る22.4万人増-利下げの論拠弱まる公算も
低金利が米住宅市場を下支えか アセットマネジメントOne株式会社
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