昨今、不動産業界では地方を中心に増加の一途を辿る空き家の存在が問題となっています。
近年では、商店街などでもシャッターが降りたまま、長年買い手が見つからない物件も増えてきています。
そのような課題を解決するためにクラウドファンディングによって資金調達を行い、古民家カフェなどにリノベーションすることで空き家の再利用を目指す動きも活発化してきています。
日本では平成29年に不動産特定共同事業法が改正され、小規模不動産特定共同事業が行われています。
これにより資本金1億円以上の不動産業者に限られていた「不動産の小口化」の実施が資本金1000万円以上の事業者にも可能になり、一層の不動産の流動性向上が期待されています。
不動産の小口化による資金調達について
「不動産の小口化」によって不動産投資の活性化も期待されており、空き家再生による不動産投資市場への経済的な影響は500億円にも上るとされています。
また、投資家は少額から投資を行えるようになります。
そのため参入障壁が低くなることによる投資機会の増大といった効果も期待され、資金調達がより効率的に行えるようになります。
従来は不動産投資は実質的に資金力のある限られた投資家にしか行うことができませんでしたが、この不動産の小口化によって一層多くの投資機会の提供が可能となります。
今回はそんな不動産の小口化の新たなる手法として注目を集める「不動産のセキュリティトークン化」について解説していきます。
不動産のセキュリティトークン化について
国土交通省が発表した改正不動産特定共同事業法は「空き家利用による地方創生」を大きなテーマとして掲げており、セキュリティトークンによる不動産の小口化はこの問題に一石を投じるのではないかとの期待の声が上がっています。
セキュリティトークンとは、ブロックチェーンを用いて株式や債券などの 有価証券をトークン化したもので、これは物件等の不動産も証券化と同様の考え方で行える手段となります。
セキュリティトークンとそれを用いた資金調達法であるSTO(セキュリティトークンオファリング)の市場自体が黎明期ということもあり日本国内では「不動産のセキュリティトークン化」はまだ実施されていませんが、既に海外ではアメリカやスイスといった国々で実施された例が見受けられます。
不動産がセキュリティトークン化された場合、ブロックチェーン技術による契約の自動化が実現するために、同じく不動産を証券化するREITなどと比較しても、取引所の開場時間に縛られることがないために事実上24時間・365日取引が行えるといった投資家にとってのメリットがあり、市場の拡大が期待されています。
通常の不動産投資の場合にはインターネットやメール、書類のやり取りが必要となりますが、セキュリティトークンを用いた取引の場合にはスマートコントラクトによる自動契約が可能となります。
不動産会社の店舗に行かなくても投資が可能であり、ブロックチェーンによる不動産投資という話題性も兼ね備えています。
ブロックチェーンの重要な技術特性である分散型台帳技術によって投資家にとって不利な契約や不正が行われるのを監視することができ、またデータ改ざんも実質的に不可能となります。
しかし、暗号資産業界は仮想通貨によるICOを悪用した詐欺まがいのプロダクトが乱立したイメージが未だに根強く残っているため、日本ではブロックチェーン技術を活用した案件に対する投資には消極的な姿勢を見せる投資家も少なくない状況が続いています。
世界の「不動産のセキュリティトークン化」事例
そんな中、世界的にはアメリカ・コロラド州のセントレジスアスペンリ ゾートが株式をセキュリティトークンとして「Aspencoin」を発行した事 例が話題を呼びました。
最小投資額は$10,000USDではありましたが、発行・取引プラットフォーム 「Templum」 やクラウドファンディングプラットフォームIndiegogoでもトークンが販売され、日本円にしておよそ20億円の資金調達に成功しました。
Templumでセキュリティトークンを発行する際にはアメリカ証券法で定められたRegD・RegS・RegA+といった規制について、弁護士からのサポートを受けることができます。
日本では現在のところセキュリティトークン発行プラットフォームは存在しないため、金融庁が定めた「改正資産決済法」などの法規制に準拠して実施されたSTOの例もありません。
日本の不動産市場は約2600兆円の規模を誇っていますが、J-REITなどによって証券化されている不動産は未だに約30兆円とされています。
「不動産の小口化」と同様に「不動産のセキュリティトークン化」も不動産市場の流動性向上を目指す上では有力な投資商品として、その活用が期待されます。
海外では株式をセキュリティトークン化して資金調達を行い、不動産の売買プラットフォームや不動産投資事業の収益を投資家に配当として分配するケースが見受けられます。
セキュリティトークンの発行は、各国の法規制に準拠して行われており、海外のユースケースをどのように日本で活用することができるか検討が進められています。
以下は、代表的な海外不動産業界のSTOによる資金調達の事例です。
Aspencoinホワイトペーパー解説|アメリカ・不動産STO
Resolute.Fund|アメリカ不良債権投資STOの特徴や配当について
参考文献
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