私たちの実生活は、在宅勤務の普及によって大きな変化を迎えようとしています。
ZOOM会議など自宅にいても円滑なコミュニケーションが図られるようになった一方、これまで当たり前のように行われていた通勤がなくなったことで、仮想オフィスサービスの利用や生産性を高めるための施策の実施を各企業が検討しています。
上記のようなサービスが普及することで、オフィスを利用することなくどこにいても仕事に参加でき、PCカメラによる自動撮影によって業務の監督も行うことができます。(Remotty)
組織的経営のあり方の見直しをはじめとして、これまでとは異なる働き方がすでに実現されており、新しく台頭している不動産の利活用に関するサービスについて今回は解説していきます。
積水ハウス ブロックチェーンを活用した賃貸入居サービスを提供へ
積水ハウスは2021年1月期第1四半期決算短信において、売上高が5,980億9,600万円(前年同期比+25.3%)、営業利益に関しては、508億6500万円(+48.8%)であることを発表。
純利益は、306億2600万円(+29.5%)におよび、近年ではドローンやVR、ブロックチェーン技術を活用して新たな事業領域にも取り組んでいます。
住宅の点検には人手が必要とされ、多くの手間と工数をかけて作業を行なわれてきましたが、ドローンを利用することで、より効率的にサービスを提供できるようになります。
また、これまで点検することのできなかった場所の点検や危険を伴う高所での作業についてもドローンが代わりに行なってくれます。
VRを活用した内見サービスは、従業員の確保が難しい店舗では作業量の軽減化、引越しを検討している人にとっても実際に物件を見に行く手間や時間を省くことができるといったメリットがあります。
そして、ブロックチェーン技術を活用したKYC(本人確認)によって、賃貸に入居する時の個人情報から内見、生活インフラの申し込みを不動産仲介会社を介さずワンストップで提供するサービスの提供を積水ハウスは発表しています。
これまで内見の際にはスタッフの方と同伴で自動車に乗って移動し、引越しの際には、賃貸契約書をはじめとして多くの書類のやり取りが必要とされてきました。
鍵の受け渡しに関しても、入居前日に仲介業者の店舗に出向いて取りに行くといった手間もあり、これら一連の手間と時間を短縮するために、積水ハウスは企業間情報連携推進コンソーシアム「NEXCHAIN(ネクスチェーン)」 が提供するブロックチェー ン技術を活用しています。
ドローンやVR、ブロックチェーン技術といった最新技術を活用して業務効率化を図る取り組みを積水ハウスは積極的に展開しており、不動産市場のDX(デジタルトランスフォーメーション )の実例として大きな期待が寄せられることでしょう。
最近では、不動産市場においても一戸建ての宿泊施設などが人気を集めており、様々なニーズに対応したサービスの開発が求められています。
賃貸入居をスマホ一つで完結できるようになれば、不動産仲介業者の作業も効率化でき、より付加価値の高いサービスの開発・提供に専念することが可能となると考えられます。
アフターコロナ時代における就業環境の変化について
顧客と直接会わずともオンラインで交流する機会が増えたことで、移動時間は削減され、より効率的な業務遂行を実現できるようになったとの声がある一方で、デジタル化に対応した組織作りに関しては多くの企業が頭を悩ませていると考えられます。
業務をオンラインで完結させるためのツールや思考の転換が求められる一方で、オフラインでの交流によって創出されていた業務の淘汰が進行し、これまでとは異なる取り組みが一部の部署や従業員には必要になることでしょう。
オフィス間借り・貸し会議室サービスの普及
株式会社スペースマーケットは、オフィス間借りのマッチングサービスを提供しています。
空いているスペース(オフィスのみならず球場なども対象としています)を貸し借りするシェアリングエコノミーサービスを1時間単位で提供する「三方良し」なビジネスモデルで注目を集めており、主幹事証券会社を大和証券に2019年12月20日に東証マザーズに上場しています。
近年では、貸し会議室サービスを手がける株式会社TKPが公募増資と第三者割当増資で241億円の資金調達を行ったことで、積極的なM&Aを実施するなど、遊休不動産を利活用したビジネスモデルが日本でも発展を遂げています。
コロナウィルスの影響で、サービスを活用する機会は現在のところ減少していると考えられますが、今後はオフィス間借り・貸し会議室の利用によって、新たな統制環境および企業文化の醸成のあり方を模索する取り組みが企業には求められるかもしれません。
週に5日同じオフィスで働くことが珍しくなる時代においては、遊休不動産がこれまで以上に増加することも予想され、新たな不動産ビジネスの創出においてはシェアリングエコノミーの概念が大きな鍵を握ると考えられます。
一方で、高い賃料を支払って豪華なオフィスを構えることによる企業ブランディングよりも固定費を削減し、より堅実な経営を行うことが企業には求められているとも言えるでしょう。
さらに防疫処置が施された施設の整備も重要であると言え、続いては「ホテルシェルター」の事例をみていきましょう。
防疫強化と宿泊施設の活用
コロナウィルス感染者数が減少している台湾や韓国では、2003年のSARSの教訓からマスク購買システムや隔離治療を実施。
感染対策の模範的な事例として大きな注目を集めており、今後は日本でも防疫組織と対策の整備が重要であると言えます。
今後も感染拡大が不安視される中で、「HOTEL SHE,KYOTO」などを手がけるCHILLNNは「自宅にいることが安全とは限らない人」と宿泊施設をマッチングさせる「ホテルシェルター」を5月1日からスタートさせています。
HOTEL SHE, OSAKA (大阪・弁天町)
HOTEL SHE, KYOTO (京都・東九条) 5/8 スタート予定
ご家族のいる家庭では、子供は自宅待機しているのに親御さんは出勤せざるを得ないというケースも少なくありません。
家庭にウィルスを持ち帰ってしまい、共に過ごしている家族に迷惑がかかってしまうといった危険性がある中で、「ホテルシェルター」は感染症対策を施した運営を行い、安全な住環境を提供しています。
また、医療従事者を対象に無償で客室(「Ten to Ten(テントテン)04札幌ステーション」)を提供している株式会社FULLCOMMISSION・フジコーポレーション株式会社といった企業もあり、今後は「防疫」を意識した宿泊施設の提供が重要であると考えられます。
まとめ
実際のところ自粛期間が終わったとしても商業施設などではどのような対策を講じ、利用者に安全な環境を提供するべきなのか未知数な部分が数多く存在します。
企業では取引先との関係構築や組織形態のあり方など、これまでとは異なるデジタル化への対応に迫られており、消費意欲減退の影響で、業種によっては収益構造そのものが機能しなくなるといったケースも考えられます。
小売・旅行・航空業界においては長期的な影響が出ることが予想され、不動産の利用者が減少する中で、今後は防疫強化のためのソリューションの開発・提供が各産業において重要であると言えます。
今後も不動産業界で行われている最新の取り組みを調査していこうと思います。
セキュリティトークン市場においては米国不動産のトークン化によって海外投資家への投資機会の提供・暗号資産の新たな活用事例が報告されていますが、商業不動産などは稼働率の低下が見込まれているため、より慎重な不動産物件の選定が課題であると考えられます。
不動産開発に多くの資金が投じられている東南アジア諸国においても防疫対策が重要であるとされ、どのように防疫の体制・機能を実装した不動産開発に取り組んでいくのかなど、より幅広い視点から不動産市場を動向を調査してまいります。
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