米国ではテック系スタートアップ企業の大型IPOが続いており、2019年のUber/Lyftから今年12月に注目を集めたDoorDash/Airbnbまで多くの企業が上場を果たしています。
特に2020年はSnowflakeがソフトウェア企業としては最大のIPOに成功し、時価総額が700億ドル(約7兆3500億円)に到達するなど、ここ10年の米国資本市場を象徴するIPOの事例が誕生。
しかし、ドイツ銀行は投資家が今年度の利益を年末にかけて温存するとの想定から株価が上昇傾向にある銘柄にも「冬来る」としています。
年末にかけてはやや低調な動きも予想される米国株式市場ですが、2021年も引き続きテック系スタートアップ企業の上場が見込まれており、本稿では今後の市場動向について詳しく解説していきます。
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テック系スタートアップ企業のIPO動向

2010年から今年にかけては未公開株式投資によって莫大な利益をあげる投資家が続出し、Weworkのようにやや投機的な事例など実体経済と金融経済の乖離を象徴するような案件も2019年には確認されました。
上場後に株価が急落する「IPOゴール」は未公開株式投資のデメリットとして上場市場の構造を歪ませる要因となっていましたが、2020年にはSPACが急増し、未公開株式投資は形を変え、より高リスクな投資手法として資本市場を形作っています。
しかし、巨大な未公開株式市場を有する米国では次々に世界的な企業が生み出されており、2020年はテック系スタートアップの資金調達額トップ10に入っていたSnowflake/DoorDash/AirbnbがIPOを実施。
DoorDash is officially on the @NYSE! We’re proud to take the next step toward our mission of growing and empowering local economies. https://t.co/5OuZDxMN2Z
— DoorDash (@DoorDash) December 9, 2020
現在の株式市場における「保有している株式を売ってでもIPO銘柄に投資する」傾向が終わる前に大型の資金調達を行うことが継続的な事業展開には必要であると考え、量的緩和に後押しされた強気な市況であるこのタイミングでIPOを選択する企業が増加したのが2020年でした。
上場せずに未公開株式市場で成長を維持することを目指していた企業もIPOを実施するまたとないタイミングであった2020年ですが、この傾向が2021年も継続するのかは未知数な部分が存在します。
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2021年の米国IPO市場予想

強気相場の中で、米国ではテック企業がIPOを実施する中、中国企業の締め出しは2021年の米国市場においても大きな影響を及ぼすことが想定されます。
米中の軍事的対立の危険性も高まる中、中国企業に対する投資が制限され、これまで相互的発展を実現していた両国の関係性にも大きな亀裂が生じています。
未公開株式市場において存在感を発揮するユニコーン企業UiPath/Databricks/Robloxなどはこの情勢を鑑みてIPOを目指す必要があり、強気相場における成功事例がそのまま2021年も引き継がれるとは言い難い点も存在します。
この10年は、テクノロジーを活用した「シェアリングエコノミーにおけるP2Pマーケットの開拓」のビジネスモデルが大きな発展を遂げ、大きな資金が投じられてきました。
従来の宿泊業を改革したAirbnbの時価総額は有名ホテル3社よりも巨大になり、ネットワークの拡大とともにコミュニティにおける新たな価値創造を実現し、それはかけがえのない経営資源として多くの人々からの支持を集めています。
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— Airbnb Japan (@Airbnb_jp) December 14, 2020
「ドットコム時代(1999-2000)を除いて、これほど多くの企業で大型の資金調達を見たことがありません。そして、評価は私が理解した分析指標からは切り離されているように見えます。」とRevolutionVentures/DavidGolden氏は述べています。
強気相場における勢いも相まって初値が売り出し価格の2倍以上になる傾向が続く中、2020年は誰もが予想しえない1年となった一方で、その振り戻しがどのタイミングで引き起こされるのか2021年は注視が必要となります。
>>米国株・2021年に直接上場を検討しているユニコーン企業について
まとめ

Snowflakeは「仮想ウェアハウス(Virtual Warehouses)」によって大きな市場優位性を獲得しており、運用効率が良く制限のないデータプラットフォームといったビジネスモデルはこれまでの「シェアリングエコノミーにおけるP2Pマーケットの開拓」とは異なる新たなテック企業の潮流を垣間見ることができます。
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— Snowflake (@SnowflakeDB) December 7, 2020
ソフトウエアを前提とした経営の実現は日本でもDXの文脈で多くの議論が交わされており、テック系スタートアップ銘柄への注目度は今後も高まることが予想されます。
EGSや宇宙産業など2010年代に潜在的な需要を高めた企業も着々とそのエコシステムを拡大している傾向にあり、ビックテックのこれまで以上の経済的支配の拡大と中小企業の合併/減少など2021年もこれまで以上に資本市場が大きく変動する年となることでしょう。
>>【米国株IPO・2021】Databricks(データブリックス)が提唱するLakehouse (レイクハウス)とは?
・参考文献
Analysis-Amateur traders’ euphoria leaves red-hot U.S. IPOs with money on the table
The 2021 tech IPO pipeline is filled with high-growth cloud stocks — as long as the market holds up